大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal 作:リクソンLv.6
──夢を見た。
目前に広がるのは光の…と言うべきか、とにかく広く白い空間。なんだか少し温かみを感じる場所だった。
『君もまた選ばれてしまったのか……。』
あの時…バトルナイザーを手にした時とは違う、青年の様な声。見渡しても姿は見えないが確かにそこに居るということだけは分かる。
「えっと、あなたは?」
俺は恐る恐る尋ねた。
『俺は…君の力になれる存在だと思ってくれて構わない。』
「俺の力に?一体どういう──」
俺は訳が分からず、困惑していた。
『レイブラッドが再び甦ろうとしている。ヤツが甦ればこの宇宙は──いや、全宇宙はヤツの思うがままになってしまう。本当なら俺が倒さないといけないが…生憎、今の状態ではロクに戦うことすら出来ない。君に頼むことは間違いなのは承知の上でだ…君にレイブラッドを倒して欲しい!』
「……は、はぁ。」
正直、訳が分からない。現実離れしてるというか突然過ぎて何が何だかと言ったところだ。
──だが。コレが、コレこそが。バトルナイザーを手にした責任なんだと、これから俺が成すべき事なのだと不思議だが疑うことは出来なかった。
「あ、そうだ。アンタの名前聞いて無かっ──」
◆◆◆
ぼんやりとした脳が次第に目を覚まし状況を把握する。俺は寝ていたらしい。気がつくと知らない天井の表面が少し剥げている所をずっと凝視し続けていた。
「あ、ようやく起きた!」
聞き覚えのある声だ。俺は上半身を軽く起こして声の主を見て言う。
「俺なんでココにいんの?」
絢香は一瞬キョトンとしたがその顔はすぐに鬼の形相へと変わっていった。──何かマズイことでも言ったっけ?
「『俺なんでココにいんの?』じゃないわよ!!私が近づいたら急に倒れるわアンタの自転車は使い物にならないわ、もうホント散々だったんだから!!」
「悪かったよ……」
「あ、あとコレ。ハルが何処にいるか教えてくれた子が持ってたんだけど……」
絢香の手にはクリスタルをチェーンと繋げたようなネックレスが握られていた。
「アンタが持ってて。なぜだかよく分かんないけど、その方が良い気がするの。」
「なんだコレ。まぁサンキュ。」
クリスタル内部には二本角のような突起がついた機械…的な紋章が刻まれていた。
「ゴホンっ!……もう良いですか?」
「「あ……」」
病院の看護師が怪訝そうな顔をしながら腕を組んでいた。表情から察するに少々苛立っていると判断するのは容易だ。
「じ、じゃあ私、先に戻ってるね!」
絢香は気まずそうにしながら周りに小さくお辞儀をして戻って行った。
これは後から聞いた話だが絢香も俺を運ぶ途中で足を切ったり色んな所を怪我していたらしい。──申し訳ないことをしたものだ。後で謝っておこう。
◆◆◆
─1週間後─
日本各地での怪獣被害は甚大なものだったがZAPの尽力や世界の援助もあり、少しづつ『普通』という名の落ち着きを取り戻しつつあった。
「ようやく外出許可も降りたか〜!長いようで短かったけど、やっぱ日差しを体いっぱいに浴びるのは気持ちいいな!」
「そうは言ってもこれからよ。この惨状を元に戻すまでどれだけ時間がかかることか…。それにアンタも退院したばかりなんだから無茶しないでよね。」
──そうだ。怪獣が出現しなくなったとはいえ色んな物が奪われ、破壊し尽くされていった。失ったものも大きい。全国各地においても行方不明者等々が後を絶たないと聞く。奇跡的にクラスメイトや知り合いが怪獣含む事故で…というのは無かったが他の人は違うかもしれない。その事を忘れてはならないと心に刻むのだった。
「……ねぇ!ちょっと聞いてる!?」
「え、あぁゴメン。何だって?」
「人の話くらいちゃんと聞きなさいよね!それで、アンタはどうすんの?『お祭り』行くの?」
話によると本来なら何週間か前に執り行われるハズだったのだが怪獣の出現と被ってしまったらしい。だが怪獣の出現も収まったという事も祝して、お祭りをすることになったらしい。祭りと言っても恐らくは屋台の無い花火を打ち上げるだけのものだろうが、人々にとっては平和の証にもなるからだろうか。
「そうだなぁ、特にすることも無いし行くかもな。」
俺は鞄を背負い直しながらどっちつかずな返事を返すと「ふ〜ん」と絢香はぶっきらぼうに返し、各々自宅の安否を確認しに戻って行った。
「……マジ?」
家がある。別に悪いことでもなんでもないがコレには驚きを隠せない。中もこれといって被害も無く、あんな戦いを繰り広げておいて無事とは……『頑丈』というかなんというか。
帰り道はあえて遠回りに学校方面を目指した。学校の状況を見たいというのもあったがそれよりも絢香の方が俺は気になっていた。来た道とはほぼ逆方向へ歩みを進める。──いつもより早足で。
『四次元怪獣反応!四次元怪獣反応!』
その不吉な機械音は俺の足を更に速めさせた。
学校前を通り過ぎかけた時、目に入ったのは明らかにその光景に似つかわしい『穴』がそびえ立っていた。その穴はまるで獲物が来るのをじっと待ち誘い込む罠や食虫植物の様にすら見える。
「入るしか…無いのか……」
唾を飲み込み一息置く。
「ここで倒さなきゃまた同じ事を繰り返されるだけだ!やるっきゃない…コレが俺の成すべき事なら!」
齢17歳の小さな体は無をも吸い込む無限へとその身を投げ入った。──その瞬間、意識が途切れ、深い闇へと落ちていった。
気が付くと俺は見知らぬ街にいた。見渡す限り瓦礫が広がっている。
空にはビルやトラック、地球の様々な物が浮いている。ここは地球じゃない……!
「一体何が起こっているんだ。それにブルトンはどこに!!」
俺は不安と混乱が入り混じった感情に襲われていた。だが、ここで悩んでいても始まらない。ブルトンを探して俺は一歩踏み出した。
「くそ、全然見つからない…」
しばらく歩いているがブルトンは愚か手がかりすら見つからない。
「あれ?この柱さっきも見た気が…」
しばらく歩いていると、また同じ柱だ。明らかにおかしい。俺が困惑している時、再び地面が大きく揺れ始めた。
「ブルトンか!?」
俺はすぐにバトルナイザーを構えた。すると、大きな地響きとともにビルの横側からビルが生えだしたのだった。まるで巨大な根が張り巡らされたように。
「おいおい嘘だろ……?」
その光景を見て呆然と立ち尽くしてしまった。
「そうか!!…ココは──」
──四次元空間。それは3次元に生きる我々には想像すらも許されない世界。空間をも時間をも全てを超越した「ソコ」には『常識』の二文字は存在しない。
その途端、奇っ怪な音と共にブルトンがどこからか姿を現した。
「行くぞ!ゴモラ!」
だが、ゴモラが召喚されると、ブルトンは再び姿を消してしまった。
「しまった……!」
俺は周りを見渡したが、姿は見えない。
すると再びブルトンの気配を感じた。
俺はとっさに振り向いたが、そこには何もいなかった。
そして次の瞬間、ゴモラは背後から強い衝撃を受けそのまま倒れ込んだ。砂を払いながら顔を上げると、目の前にブルトンが出現し躊躇なく突進を仕掛けてくる。
「まずい!」
俺は四次元攻撃に動揺していた。すると今度は俺の足元が開き、そこから木の根が伸びてきた。俺は咄嵯にジャンプしてかわす。だが、着地しようとした時にはすでに遅く、腕を掴まれてしまう。そのまま俺を投げ飛ばし勢いよく地面に叩きつけられ、激しい痛みに襲われた。
「うぐぅ…」
なんとか起き上がろうとするも、俺の腕はブルトンの操る木の根にしっかりと捕まれており抜け出せない。
(このままじゃ殺られる!)
俺は必死に抜け出そうとするが、ビクともしない。ブルトンは以前ゴモラを痛めつけている。度重なる連戦でゴモラも満身創痍な状態だ。
「このままじゃ…せめてゴモラだけでも……!」
俺は覚悟を決め、声を荒らげて叫ぶ。
「お前!俺の事狙ってんだろ!……いいぜ。相手してやんよ!お前の相手はこの俺だァァァァ!!」
怪獣。しかもトップクラスの不条理に人間の言葉が届くのかは分からない。だが幸か不幸か俺の声は届いた様だ。その瞬間ブルトンが俺に向かって突進してきた。
俺は目を瞑り、死を待った。閉ざされた瞼の前で一筋の衝撃波が走った。
「え?」
俺は恐る恐る目を開けると、ゴモラが俺の前に立っていた。ゴモラは『余計な事しやがって』とでも言いたげな顔でこちらを睨みフンスと鼻息を鳴らした。
「ゴモラ!」
ゴモラのお陰で拘束が解け、俺は立ち上がる。
「助かったぜ!ありがとうな。」
俺が礼を言うと、ゴモラは小さく吠えた。
「よし……反撃開始だ!行け!ゴモラ!」
そう言うとゴモラはブルトンの方へ駆け出した。しかし、またもやブルトンは姿をくらます。ゴモラの背後にブルトンが現れ、攻撃を繰り出しこれを軽々と回避。
「くっ、ここはアイツの作り出した四次元空間、言わばヤツの庭だ。分が悪いな。」
そう言うとゴモラはブルトンの方へ駆け出した。しかし、またもやブルトンは姿を消した。すると、ゴモラの背後に車や建物が現れ、攻撃を繰り出してくる。ゴモラは避けるがその先にも車が。
「ギシャアアア!!」
ゴモラが悲痛な叫びを上げ倒れ込む。
先程とは比べ物にならないほど連続瞬間移動で俺らを翻弄している。恐らく今までは全力ではなかったのだろう。
(どうにか、この四次元空間から脱出出来れば…!)
俺は必死に思考を巡らせる。
その時、立ち上がったゴモラがブルトンに体当たりをした。すると、ブルトンは数メートル吹っ飛んだが地面に衝突する前に瞬間移動をする。
「?」
俺はある事に気付く。そういえばブルトンは車を浮かばせ攻撃してきたりするが、何故か近くにあるとすぐに距離を取っていた。
「いけるかもしれない…」
俺はそう確信し、ブルトンは触覚を出し四次元攻撃を仕掛けようとする。
「今だ!」
俺が叫ぶと、それに応えるかのようにゴモラが尻尾をなぎ払い車を飛ばす。
車は空中で回転しながら一直線でブルトンに向かい──見事直撃。
ガソリンとぶつかった衝撃で触覚が燃え上がり周りの世界が光になって消えていく。どうやら作戦は成功したようだ。
「よくやったぞ!ゴモラ!!」
俺の声に応えてくれたのか、こちらを振り向き大きく吠えたのだった。
気が付くと俺達は学校に戻っていた。無事戻ってこれたらしい。だが、まだ気は抜けない。四次元攻撃を使えなくなったとしてもブルトンは十分に強力だからだ。
「頼むぞ、ゴモラ!」
「ギャオオオオンン!!!」
ゴモラが雄たけびを上げると、ブルトンがゴモラに突っ込んできた。
だが、ゴモラはブルトンの攻撃を受け止める。
「よし!効いてる!」
ブルトンの攻撃は確実にダメージを与えているようだったが、同時にゴモラにもダメージを受けているようで徐々に傷が増えてきた。
「このまま押しきれればいいんだが…」
俺はゴモラを応援する他なかった。
◆◆◆
─お祭り広場─
「ちょっと早く来すぎたかな…」
絢香は整えた髪を指で弄りながら彼が来るのを待っていた。
(せっかく浴衣も着てきたんだから来なかったら、ひっぱたいてやるんだから!)
「ん?」
1人の子供の周りに人が集まり、ざわざわと随分物騒がしい。
「ホントだって!学校で怪獣がやり合ってたんだ!」
「なんだって!?」
「嘘だろ。子供だぞ?」「でも本当だったら?」
子供の戯言と一蹴する大人も居れば、その言葉を信じ動揺する大人もいて広場全体がごった返し始めた。
数分経ったか学校側から大きな衝撃音が響いて来た。そこからは爆弾が爆裂したかの如く、皆学校とは真逆の方向へ押しかける。何よりも先に。誰よりも先に──
人波が過ぎ去り、小さな風が吹いた。
「怪獣なんて大嫌い。」
◆◆◆
ブルトンは高速回転攻撃を繰り返すがゴモラはそれを全て受け止める。
「このまま押しきれ!ゴモラ!」
俺が声をかけるとゴモラは大きく吠え、尻尾をなぎ払った。ブルトンはそれを避けようとしたが、尻尾の方が速く直撃。ブルトンは吹っ飛び学校に衝突し割れた窓ガラスが空へと舞い上がる。
「今だ!」
俺が叫ぶとゴモラは驚異の跳躍を見せ、ブルトンの頂点に尻尾を叩きつける。
ゴモラの重量で地面が陥没する。
「グゥオオオオンン!!」
ゴモラが雄叫びを上げると、ブルトンは気圧されたような素振りを見せジリジリと後退し始めている。
「ゴモラ!行けえぇ!!」
俺は無意識のうちに叫んでいた。
俺の声に反応するようにゴモラは両腕を振り上げブルトンに掴みかかる。
ゴモラはバレーのサーブを上げる様に空中に放り投げる。
「ゴモラ!超振動波だ!」
俺はゴモラに指示を出す。両手を広げゴモラは雄たけびを上げる。三日月型の角にドンドンエネルギーが溜まっていき、赤橙色の光を放つ光線を放った。
「グオオォーン!!!」
ブルトンは抵抗するもなす術なく直撃。暗闇の夜空に一筋の花火が打ち上がった。
「やった……か?」
煙の中からはブルトンの亡骸だけが残っていた。俺は安堵し、一息ついて地面に座り込む。
「──お疲れ様。」
声の方に目を向けると、浴衣姿の絢香が片足に体重を乗せて佇んでいた。暗い影で覆われているがその表情は酷く落ち込んでいる様に見える。
「い、行こうとはしたんだ!ただ、目の前にブルトンが現れて…あぁ!ブルトンっていうのは後ろの残骸になってる怪獣の事で、その──」
「分かるわよ。それくらい。ねぇ…そのゴモラ操れるんでしょ?ちょっとコッチに近づけてくれる?」
──怪獣は嫌い。平気で私たちの大切なものを壊すし、奪うし、踏みにじる。それで、多くの人が傷つけられてきた。私だってその内の一人だし、家族だってそうだ。
「ガウゥッ。」
ゴモラが絢香の眼前まで顔を近づける。
「俺の言うことは聞かねぇのに絢香の言うことは大人しく聞くのかよ……」
──でも。この子のお陰で大切な人が無事に帰ってきたと考えると今までの考えは変わるかもしれない。
「ありがとう。ハルと戦ってくれて。それと…これからもハルを助けてあげて。」
「ガウゥッ。」
「なんか言った?」
絢香は自分の身長よりも大きい角に額をつけながらボソリと呟く。ハルには聞こえなかった様だがゴモラにはしっかり伝わったと思う。
「「!」」
突如。あまりにも突然、奇怪な音と共に背後に黒い穴が開いた。ゴモラでさえ物凄い勢いでその穴に引き寄せられていく。
「なんだこれ!吸い込まれる……!ゴモラ!!」
「ハル!!」
ゴモラに指示を送り、綾香を遮蔽物の裏側へ押し込ませる。
俺とゴモラはそのまま飲み込まれた。
地球編 完
To be contenued…