大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal 作:リクソンLv.6
「うぅ〜…寒い…………。」
夜から明け方にかけてはどこの星でも寒かったが、ここは砂漠の星であったデュサリアと同じくらいには寒い。俺は体を縮こませて、だだっ広い荒野を練り歩く。全く変わらない風景は来た道がどの方向だったかを忘れさせ、自分がちゃんと進んでいるのかを疑わせてくる。加えて時たま聞こえる怪獣たちの咆哮が俺の何かを刺激し、徐々に苛立ちが積もっている感じがしていた。
◆◆◆
「まだ行けるか!?ラゴラス!」
傷を負いながらもラゴラスは迫る怪獣…変形怪獣ガゾートに対し威嚇の唸りを上げて立ち上がる。
それは突然現れた。俺がグエバッサーに乗りこの荒野を飛んでいると、子供の泣いているような声を発して空から襲って来たのだ。ガゾートは得意げに空を駆けまわりグエバッサーと空中戦を展開。プラズマ光弾で撃ち落とされ動けなくなったグエバッサーに代わりラゴラスを呼び出し、今に至る。
ラゴラスは口からガゾートを追い掛ける形で冷凍光線を発射する。しかしそれはガゾートに掠りもせず、空へと吸い込まれていく。
「……くっそ!当たらないか!」
空、高所にいる相手に攻撃が当てづらくなるというのはよくあることだが、怪獣相手ではその比では無い。
しかしラゴラスはそんな不利な状況でも戦い続けた。
「頑張るぞ!ラゴラス!」
ラゴラスの凍てつく冷気にあてられながら俺はラゴラスに声援を送る。
空を舞うガゾートは急加速しラゴラスの懐に潜り込み、そのまま腹部へ体当たりを仕掛けた。
──!!
「今だ!ラゴラス!ガゾートを押さえつけるんだ!!」
ラゴラスはその瞬間ガゾートの翼を掴み取ると勢いを殺しながらゼロ距離で冷凍光線をガゾートの口の中に直接ぶち込み全身を氷漬けに変えてしまう。更に振りかぶった尻尾で叩きつけて粉々に砕くと勝利の雄叫びを澄み切った空に轟かせるのだった。
「よっしゃああああ!」
ハルもラゴラスと同じく勝利の雄叫びを上げながら振り返るとそこには何もないだけの荒野が終わり、遠くに森林と湖が見え…た……。
「マジかー……」
自分が荒野だと思っていた場所は荒野では無かったらしい。真下にパラパラと落ちていく土塊を見ながらそう思った。
───崖。そう、崖だったのだ。
分かりやすく言うなら、クレーターの中に今見えている森林と湖があると言うべきだろう。もしくは今立っているこの場所は下の生物を逃がさないようにする壁だとも言えよう。ここから下まで目算1kmはくだらないと思う。
俺は再び顔を上げて湖の奥を見てみるが霧が掛かってよく見えない。
「これ…どんなデカさしてんだよ……。」
「キィエェェェェエ!!」
どうにか見えないか目を凝らしているとラゴラスが何かに気付いて俺を呼びながら空を睨む。見上げると何かがとんでもない速度で俺とラゴラスの上を通り過ぎて、数秒も数える間もなく衝撃波と轟音、そして爆発音が大地に響き渡った。
「今度は何だよ…!?」
目を開けると砂埃や土塊が舞い、とても目を開けていられない状況だ。やがて粉塵や土煙が晴れると視界が突然下に向かってスクロールし始めていた。
つまり、客観的に言うと"落とされた"ということだ。
「ぎゃあああああああああああ」
ハルはあたふたしながらもバトルナイザーを取り出し叫ぶ。
「ラゴラス戻れ!えーっと!頼む!グエバッサーぁぁぁああ!」
『バトルナイザー・モンスロード!!』
暖かい光に包まれて気づけば俺は白い羽毛に抱かれていた。
「お疲れ様ラゴラス。助かったよ…ありがとう、グエバッサー」
そのままグエバッサーは俺を落とさないようにゆっくり湖のほとりに着地した。俺はグエバッサーから降り、背後にそびえる断崖絶壁を見上げているとその上をステルス戦闘機のような三角形のシルエットが空を過ぎ去って行った。
「あれも怪獣なのか…」
俺は目線を戻し目の前に広がる湖を眺める。
「今までとは打って変わって…って感じだな。」
するとグエバッサーが嘴を湖に沈めてゴクゴクと飲み始めたのを見て俺も湖の水を両手で掬い口に運ぶ。
それはとても冷たくて美味しかった。その冷たさが頭を冷静にさせ、俺はこの星に来て初めて落ち着いた時間を過ごすことが出来た。
しかし、そんな平静も二声の
「やれぇ!ゲードス!」
「何をしている!ゾアムルチよ!」
声がした方を凝視すると遠くで2人の宇宙人がバトルナイザー片手に怪獣たちへ指示を送っているのが見えた。怪獣たちはその命令に従い戦闘を再開。ゾアムルチが殴打と噛みつきで先行し、ゲードスと呼ばれた怪獣も攻撃を受けながら反撃を返す。一進一退の攻防が続く中、2体は互いに胴を蹴り合って距離を取らせると両者共に放った青白い光線が正面衝突して相殺。光り反射する水面が波高々に揺れてその戦闘の激しさを表していた。
「ここに居たら巻き込まれそうだ……グエバッサー!離れるぞ!戻れ!」
そう俺が呟きグエバッサーに声をかけたの同時にゲードスは触覚飛ばしてゾアムルチに巻き付けるとそれを通じて電撃を流し出した。ゲードスの電撃を浴びて苦しむゾアムルチだったが触覚の根元に破壊光線を命中させ、ちぎれたことで形勢逆転。触覚のあった部分を抑えるゲードスに対して3度目の破壊光線を撃ち込みゲードスは海の藻屑ならぬ湖の藻屑となった。
「なんて戦いなんだ…!」
ハルは息を呑んでその光景をいつしか食い入るように眺めていると、ゾアムルチはこちらを向いた。
「そこに居るのは誰だ?……まぁいい貴様も湖の底に沈めてくれるわ!行けぇ!ゾアムルチ!!」
勝利したレイオニクスがバトルナイザーを振り下ろすとゾアムルチの赤い眼が俺たちを睨みつけて、こちらへの距離を詰め出したのだ。
「やっば!アイツこっちに来る!」
俺はバトルナイザーを握り締める。負傷したグエバッサーを戦わせる訳にもいかない。ゴモラは…戦えるかもしれないが……逃げるべきなのか…!?
俺が迷っている間にも決断は迫られる。
『──伏せて!!』
森林の奥から聞こえた声に従い、俺は体を丸め地に伏せる。聞き覚えのある獣の声が頭上を飛び越えていく。
刹那、青白い稲妻が俺の眼前を迸り迫るゾアムルチを跳ね除けた。
青い体表とオレンジ色の外骨格、四足歩行な所やその白い鬣は獅子に似ている。
その怪獣の名は──!!
「ホロボロス!ってことは…」
「久しぶり…ハル!」
「ニーナ!!」
感動の再会を喜びたい所だが、今はそれどころではない。
ホロボロスは前傾姿勢で戦闘態勢に切り替わり、ゾアムルチも体勢を立て直す。
ゾアムルチの破壊光線を軽々と躱しながら近接戦闘でダメージを与えていく様子はさながら怪獣プロレスの様で、久方ぶりにホロボロスの暴れっぷりを見て俺は密かに心が踊った。
体に電撃を纏わせ高速回転しながらの突進で怯んだところに紫色に光る強固な爪の一撃。それを受けたゾアムルチは水面に向かって倒れ込み爆発し大きな水飛沫を上げた。
「ふぅ…倒せた……。」
「ニーナ!ありがとう。また、助けられちゃったな……」
俺はホロボロスにも手を振って感謝を伝える。ホロボロスは軽く頷いてニーナのバトルナイザーに戻ってきた。
「それにしても次に会うのがこんな場所だとは思わなかったよ。ニーナはどうやってこの星に?」
「アリスから手紙が届いて…封を開けたら扉が出てきて……気づいたらここに。まるでおとぎ話みたい。」
おおよそ来た方法は同じ…か。
とはいえここに来てアリス以外で初めての見知った顔と出会えたことに俺は安堵していた。
この再会が"あんな"結末を迎える事になるなんて…この頃の俺は一瞬足りとも想像すらしていなかった。
To be continued……