大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal   作:リクソンLv.6

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第23話:虫螻狂煽歌

「ふぅん…結構やるじゃない。私の目に狂いは無かったわね。」

ホロボロスの一撃によってゾアムルチが水面に倒れ大きな水飛沫が上がる。

壁とも呼ばれる高さの崖に腰掛け、棒の付いた双眼鏡を目元から離す。通常とは形状の違うバトルナイザー…バトルナイザーNEOを器用に手の中で回し、その戦闘を見届けていたのはアリスだ。

アリスは椅子から降りるように崖から飛び落ちる。ある程度まで落ちると傘を開きふわりと浮かんでハルとニーナの前に降り立った。

「アリス!?」「アリスさん!久しぶりね!」

「えぇ、久しぶり。ハルは久しぶりでもないけど。」

ハルへの冷たい対応とは裏腹にニーナに対してニコリと笑うアリス。ニーナが前に話した時よりも元気で快活になった気がするがそれは置いておいて。

するとハルがアリスに警戒しながら聞いてきた。

「それで、今度は何をしようってんだ?」

「別に何もしないわよ。ただ挨拶しに来ただけ、特に深い理由もなければ貶める魂胆も無いわ。」

それを聞いてもハルは警戒を緩めず懐疑的な態度をとっていた。続いてニーナがアリスに尋ねた。

「どうして私がここに呼ばれたの?この星に居る宇宙人のほとんどがレイオニクスのようだけれど…私は真のレイオニクスじゃないのよ?」

「えぇ。もちろん知っているわ。私が招待状を送った5人は私のお気に入りなの。真のレイオニクスではないあなたに送ったのは……ま、私の気まぐれってところかしら?」

つまり、俺もアリスのお気に入りってことか…。

「………っと…お喋りはここまでみたいよ?」

「?」

「もう来たっていうの!?」

森の奥が何やら騒がしい。アリスはともかくニーナは何か知っていそうだ。それにこれは…"羽音"……?

「おいおいおいおい!キングマイマイ、マジャバ、ゴキグモン、バンピーラにシルドバン!サタンビートルまで!?」

その直後、おびただしい数の昆虫怪獣たちが群れを為して襲ってきたのだ。俺は驚きと恐怖のあまり声を荒らげて叫ぶ。

「それじゃ、私はこの辺で!頑張ってねハル、ニーナ。」

「えっ!?ちょっ!アリス!?」

危機的状況の真っ只中、アリスは手を振り一瞬にして姿を消した。面倒事に巻き込まれたアリスがこうなるのはいつもの事だが、今はそんな悠長にしている暇はない。

「と、とりあえず逃げよう!流石にあの数は2人でもムリだ!」

「う、うん!」

俺とニーナは迫り来る昆虫怪獣たちに背を向けて走り出したが、昆虫怪獣たちもそれを逃すまいと追いかけて来る。

「「ハァッ…!ハァッ…!ハァッ……!」」

怪獣たちの咆哮搏撃が飛び交う森の中をひたすらに走った。

「ハル!あそこ!」

ニーナの指差した先の岩肌に小さな洞穴のようなものが。俺とニーナはそこに転がり込むと、身を潜めて息を殺す。昆虫怪獣たちは俺たちを見失ったようでしばらくの間、辺りを飛び回っていたがやがて何処かへ飛んで行ったようだ。

「ハァッ……ハァ……、ふぅ…。ここまで来れば大丈夫かな……?」

──────ジリ…

「あぁ、だな……。一体なんだったんだ…?あの怪獣たち。」

よく考えてみれば妙だ。奴らは別種族にも関わらず、全く統率が乱れないまま俺たちを狙ってきていた。一部の生物同士が共生関係を結ぶことはあれど、あの数が共生関係を結ぶなんて事あるのだろうか?

───ザリ……

「そういえば『もう来たの!?』って言ってたけど…ニーナ、何か知ってるのか?」

「うん。実はハルと合流する前に別のレイオニクスと戦うことになって───」

ニーナが話し始めた時だ。真っ赤な目が暗い洞穴の中で揺らぎ、ハルたちを捉えていた。2人が何かに気づいた瞬間その怪獣は姿を現し、2人目掛けて鋭い爪を突き刺してきた。

「ハル!危ない!!」

ニーナは咄嗟に俺を突き飛ばし、その怪獣の一撃はニーナの背中を掠めた。

「甲虫みたいな見た目、透明になって奇襲…間違いない!こいつ、バグダラスか!!」

そして次の攻撃を狙いすまし、爪を振り上げた…かと思いきやバグダラスの動きが止まりニーナを挟み込んで洞穴から外に向かって飛び出したのだ。

「ハル……ッ!」

ニーナの悲痛な叫びが聞こえ、バグダラスは空高く飛び上がった。そして、数秒後バグダラスとニーナの姿は見えなくなった。

「ニーナ!!」

2人は必死に手を伸ばしたが、それはニーナの指先に触れることなく空を切った。

「くそ!……俺の手はまた届かないのかよ!」

リーダーとレイジとの…あの瞬間を思い出し、俯いて強く拳を握りしめるハル。

少し目線を上にやったその視線の先には──

 

バトルナイザーが転がり落ちていた。

 

無意識に腰のバックルに触れる。そこには自分のバトルナイザーがしっかり固定されていた。

ハルの瞳が見開いた。

「早く…!一刻も早く……!!」

ニーナのバトルナイザーを手にハルはバグダラスの飛んで行った方向に走る。他の奴らなんてどうでもいい。だが、飛び去ったはずの怪獣たちが進む道を塞ぐように立ち塞がる。そして、その先陣を切りキングマイマイがその大きなハサミを振り下ろしてきた。

「邪魔だァ!」

俺の声と同時に飛び出したゴモラがキングマイマイのハサミをガードし爪撃(そうげき)で腹部を水平に抉り取る。

「ゴモラ!コイツらを捻りつぶせ!!」

俺の思い・感情と呼応したのかゴモラの肉体は炎のような光に包まれ、真紅に染まりレイオニックバーストを引き起こした。

◆◆◆

「前はよくもやってくれたなァ…!」

骸となったバグダラスの前に倒れたニーナに激昂し続けるゼットン星人。

「テメェが邪魔をしなけりゃ、あの球は俺のもんだったのによォ!!」

「私はあなたの言ってるあの球っていうのを何か知らないし、人が大切にしているものを私は奪ったりしない!」

ゼットン星人に突き飛ばされながらもフラフラと立ち上がったニーナは負けじと言い返すが、ゼットン星人の表情は怒り一色に染まる。

「ムカつくぜ……!このアマァ!!やれ!インセクタス!!」

バグダラスを一撃で無きものとしたインセクタスの鋭い角がニーナに襲い掛かる。絶体絶命かと思われたその時、横槍を入れるように青白い光線がインセクタスとニーナを分かつ。

「誰だ!」

「!」

振り返った先にはバトルナイザーを構えたハルとラゴラスの姿が。ハルはニヤリと笑うとニーナに向かってもう1つの、ニーナのバトルナイザーを放り投げる。

アリスは振り返りざまにバトルナイザーを掲げて叫ぶ。

「来て!ホロボロス!!」

『バトルナイザー・モンスロード!!』

光球はインセクタスを跳ね除け、ホロボロスへと姿を変えていく。気づけば隣にハルが立ちラゴラスも自然にホロボロスと肩を並べていた。

「なるほど、インセクタスか……どうりで昆虫怪獣たちの統率が取れてた訳だ。」

ハルは冷静に分析するとゼットン星人に向き直る。ゼットン星人は舌打ちをしてハルたちを睨みつけると再び激昂して叫ぶ。

「貴様ら……嬲り殺しにしてくれるわァ!!」

 

「行こう!ハル!」「行くぜ!ニーナ!」

 

ハルとニーナの声が重なる。2人に続くようにホロボロス、ラゴラスも飛び出した。

◆◆◆

「ふぅ…………ん…。これくらいのイベントは軽く越えて貰わないとね?」

人心地が付いた表情を上手く隠してアリスは2人の戦闘を見ていた。ニヤリと笑いかけた瞬間、ただならぬ覇気と身の毛のよだつ邪悪が背後から吹き抜ける。私にとっては今や寧ろ心地よい。

「どうか致しました?レイブラッド様?」

怨念が集まりレイブラッド星人の形に象られていく。完全復活では無いにも関わらず思念体でここまでのオーラが溢れ出ているのは流石と言ったところか。

『随分と楽しそうではないか……』

「ええ。レイブラッド様が用意して下さった、この最高の星で数多のレイオニクスが泥臭く欲深く戦っているんですもの!こんなに楽しいもの他にありませんわ!!」

『ほう…そうか……。───アリスよ…貴様に命を下す。』

 

『            』

 

『頼まれてくれるな…?』

「……えぇ。勿論…。レイブラッド様のお願いだもの!必ず果たしてみせるわ!」

レイブラッドはフハハハと高笑いをして闇の中へと消えていった。心臓の鼓動が五月蝿くて堪らない。

こんな思いは"あの時"以来だ。

アリスはバトルナイザーをギュッと握りしめて震えた溜め息を漏らした。

 

To be continued……

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