大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal   作:リクソンLv.6

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第26話:哀傷の大地に落つる雫

「私がここに来たのは…他でもない、ニーナ。あなたと………『レイオニクスバトル』をする為よ。」

そう彼女が口にして数時間も経たない頃だ。

 

メキメキメキ!…ズガアアアアン!!

ドゴォォオオン!!

大木が土から抉れ宙へ巻き上がった。それぞれの色に輝く光の帯が空を彩りながら辺りを滅却している。

「もうめちゃくちゃだ!」

「どうしちゃったの!?アリス!」

2人を乗せた白き翼が彩られた空を駆け巡る。

ニーナの問いにアリスはずっと口を開くことは無かった。アリスはただ虎視眈々とニーナ目掛けて怪獣を攻撃させている。

「グエバッサー、まだ行けるか!?」

グエバッサーはこちらを見ること無く少し頷き、弾幕の雨の中避け続ける。

だが…正直ギリギリだ。アリスの使う合体怪獣の事はよく分からんが、これだけの弾幕を避けられているだけでも賞賛されるべきだと思ったくらいだ。

「グエッ!」

グエバッサーが吠えた。前に視線を戻すとそれはそれは高いと思っていた断崖絶壁が近づいていたのだ。

それがグエバッサーの合図だと気づけなければ俺たちは今頃、遥か上空から剣山の如く尖った木々たちに貫かれたかコンクリートよりも硬い地面に叩きつけられたかのどちらかだっただろう。

その直後グエバッサーは壁の際で直角に旋回すると速度を落とす様子も見せずに断崖を駆け昇る。

また、あの殺風景な荒野が目に入った。

戦いがあったのだろう、あちこちで地面が岩柱が。

そして怪獣たちの亡き骸が傷を負って朽ちていた。

「……チっ!」

アリスは弾くように手を前に突き出し命令を送る。

「攻撃が…止んだの……?」

「いや!まだだ!」

合体怪獣の背中から生えた青色の水晶体が尻尾の方から順に光り始めた。

それは何かを解き放とうとしているかのように。

「……なんかヤバい!!グエバッサー!避け──」

風向きが変わったその刹那。

合体怪獣のありとあらゆる部位から放たれた光線は、今までのような"なんとか避けられていた"雑な光線の応酬でなく"確実に仕留めるため"のものだった。

更にその光線は一気に集光し、虹色の一本槍となってその白い翼を(あか)に染めた。

フラフラと揺れ動きながら荒野に伏せる姿はまるで落ち葉の様だ。

「ぐうぁっ!」

かろうじてグエバッサーの尽力によってニーナは怪我をせずに済んだものの、怪獣とリンクしているハルの左腕はグエバッサーと同じ痛みを受ける。

そんな様子を見下しながらアリスと彼女の怪獣は降り立った。合体した5体の怪獣たちの呼び声が聞こえる。

「なんなんだ……その怪獣はよ!?」

 

「この子こそ!5体の怪獣たちの力が融合し生まれた、合体…いや、超合体怪獣──ファイブキング!!」

 

「ファイブ、キング……。」

 

ニーナはその名前を呟くと少し置いて小さく頷く。

俺とグエバッサーを背にバトルナイザーを握りしめ、立ちはだかるファイブキングの前に飛び出たのだった。

「ニーナ!……今の君じゃ、無理だ!!」

俺は呼び止めた。

生きて帰ってくると思えなかったから。

 

俺は必死に右手を伸ばした。

彼女に生きていて欲しかったから。

 

俺は叫んだ。

もう誰も失いたくなかったから。

 

彼女はこう言った。

「これはアリスが私に対して挑んできた戦いだもの。理由はどうあれ最後には闘わないといけないんでしょ?それが早いか遅いかってだけ。」

そう言って1歩、また1歩とニーナはハルから遠ざかっていく。

──ドクン!

心臓が跳ねた。デュサリアの時と同じだ。

映像がフラッシュして脳と視界に流れ込んでくる……

ブツッ……

その途端彼の視界は暗転し消えた。

◆◆◆

風が吹き塵が舞う。

「待たせちゃってごめんね、アリス。」

「………ハルは。」

「私と戦うんでしょ?……それに彼、もう動ける身体じゃないわ。」

ニーナはハルがうつ伏せになった姿を思い浮かべながらアリスに言った。

「そう…。」

「ホロボロス!お願い!」

『バトルナイザー・モンスロード!!』

ニーナのバトルナイザーから放たれた光球は青き獣の姿へと変わっていく。満身創痍という訳ではないが、その体には先の戦いの傷痕がありありと残されたままだ。

「行け!ファイブキング!!」

「行って!ホロボロス!!」

二対の体躯がぶつかり合い、大地に衝撃が走る。

ホロボロスの豪快な一撃がファイブキングの左腹部を打った。続けざま、上半身から放った電撃がファイブキングを包み激しく砂埃が舞った。

僅か数秒。

「うっ!?ぐあっぁ……!」

ニーナは首が締め付けられたような感覚に陥った。

そうして煙からレイキュバスの右手と共に首を締め上げられたホロボロスが姿を現したのである。

いとも簡単に投げ捨てられたホロボロスを凶悪な顔つきで見下ろすファイブキングとは対象的にアリスは苦虫を噛み潰したような顔にも見えた。

ホロボロスは距離を取り再び青白い電撃を放つ。

「──なるほど…。通りで効いてない訳だわ……」

片膝をつきながらニーナは呟く。そう言ったのは彼女が目にしているファイブキングの行動からだった。

ファイブキングはホロボロスの電撃をガンQの左手で吸収すると超コッヴの胴体から光弾を発射して反撃。倒れるホロボロスを蹴り上げ、そのまま尻尾で叩き落とす。

「かハッ……」

血と砂が混ざりあった口の中、ホロボロスと同じ衝撃を受けたニーナは吐血した。

バトルナイザーを握る手から力が抜けそうになるがなんとか持ち堪えた。ニーナは膝を立て、立ち上がり再びホロボロスを向かわせる。

「ホロボロス!もう1度!」

「……何故…」

2体の怪獣の攻防が繰り広げられる。

しかし、その均衡はほとんど続かなかった。

ボロボロでまともに動けていないホロボロスをファイブキングがただ蹂躙しているだけだ。

「……どうして…!」

 

───それでも、彼女と怪獣は立ち上がった。

 

「…なんで、なんでなの!?何処からそんな力が湧いてくるのよ!?お願いだから……もう倒れてよ!!」

アリスは哀しい表情で叫ぶ。

その叫びに呼応するようにファイブキングはハサミを振り回し、ホロボロスを切りつける。

「理屈じゃないよ。……アリス。」

アリスがハッとして前を向くと、ファイブキングの一撃はホロボロスの肩で止まっていた。

「グルルルルル……」

ホロボロスが唸りを上げる。身体から蒸気が吹き出しメキメキと音を立てて、その姿かたちがみるみる変容していくではないか。

白眼だった両目は赤く染まり、両腕が獣の前足の形状からヒトに似た五本指の手に手甲鉤(てっこうがま)をつけたような形状に変化。そのまま立ち上がり二足歩行へ。

「グルルラァ…」

肩にのしかかるハサミに手をかけ、ファイブキングの顔を見てニヤリと笑うと一気に握りしめてハサミにヒビを入れた。

「いっ…つ……。覚悟してはいたけど、これ程の痛みだなんてね……」

右手を抑えながらアリスは言う。それと同時に、これ以上のら痛みに耐えて挑み続けてきたニーナに対して慄いた。

「グルアアアァァアッッ!!!」

そしてホロボロスは咆哮と共にファイブキングを投げ飛ばす。すぐにファイブキングも体勢を立て直し、額からゴルメルバキャノンを撃つが先の形態よりも瞬発力が上回っているのか軽々と避けきり手甲鉤で腹部に穿撃を加えた。

ダメージを受けながらもファイブキングは尻尾を振るう。が、ホロボロスはその尻尾を掴み膝蹴りを腹部に食らわせ反対方向へと投げ飛ばす。

「あなたが何を考えていて、私と戦い始めたのかは分からないわ。……でも、なんだか私にはアリスが泣いてるように見えるな…。」

「私は──」

 

『──どうした、アリスよ。』

 

アリスが何かを言おうとしたその時。

頭の中で聞こえた声によって身の毛をよだち、全身を恐怖が駆け回った。開きかけた口が閉じて、息を飲むことすらままならなかった。

「レイブラッド…様……」

『その小娘の抹殺…貴様には赤子の手をひねるよりも楽な作業であろう。それとも──」

「……っ!」

『レイブラッド様!私はまだやれます!』そう言いたいはずが一向に口が開こうとしない。

 

レイブラッドの魂が私に囁く。

"戦え"と。

それこそがこの私、アリスに許された唯一のことなのだから…と。

 

『それでいい……。貴様に必要なのはくだらん絆でもちっぽけな友情でもない。"力"…ただそれだけなのだ。フハハハハハハハハ!!』

 

レイブラッドの不気味な笑いが木霊する。耳を塞いでも、それは直接頭の中に響いてくるのだった。

「ハァ…ハァ…ハァ……」

「ア、アリス…?」

ニーナが呼びかけてもアリスは答えようとしなかった。いや、答える余裕が無かったと言った方が正しいだろう。

「うわあああああああああ!!!」

ほぼほぼ悲鳴とも捉えられるアリスの叫び声と呼応するように倒れていたファイブキングが起き上がり大きく跳躍する。

「キシャアアアアアア!!」

「グルラアァァァッッ!!」

2体の怪獣たちが互いに威嚇しあう。その声はだだっ広い荒野一帯に広がった。

◆◆◆

「うっ……。っ!ニーナ!!」

俺は意識を取り戻して辺りを見回す。そこにはやはり彼女の姿は無い。しかし、遠くで砂煙が高く上がっているのが見えた。

多分あそこに……

直後、頭に音が響いたかと思えば次には怪獣の声が。

俺は痛む身体を無理やり起こし彼女の戦う戦場へと駆けた。

◆◆◆

ドガシャアア……

地響きと共に砂埃が舞う。ファイブキングはその巨軀と腕力でホロボロスの身体を押しつぶしたのだ。その一撃に思わず両膝から崩れ落ちるニーナ。

その後も幾度となくファイブキングはホロボロスを痛め続けた。

もはやニーナの目に光は無かった。ただ、自分の怪獣がやられていく様を見ているだけ。

「キシャアアアアアア!!」

ファイブキングは右手のハサミを振りかざし、そのままゆっくりとした動きで振り下ろす。それはさながら処刑される罪人に贈る最後の情けのようにも見えた。

ニーナは乾いた目を閉じることなく死を覚悟する。

そして、最後の一撃が放たれた時。

───衝撃と痛みは襲ってこなかった。

「あ……」

ニーナの目に微かな光が宿る。

そこにはホロボロスを庇う1匹の怪獣と私の前に駆け寄って来た1人の男の姿があった。

前見た時よりもうんと凛々しく頼もしい。

「ハ、ル……」

「ごめん。俺がもっと早く来ていれば……。」

「ハル、アリスを……アリスを助けて上げて…私には無理だったみたい………。」

「……グルルラアァ。」

ホロボロスは最後の力を振り絞りハルとゴモラにそう吠える。まるで"後は頼む"と言っているかのように。

そう言い残してニーナとホロボロスは目を閉じた。

「ニーナ!?おい…おい!ニーナ!返事しろって!」

ハルがいくら呼びかけようとも2人から返事はかえってこない。

その身体からは既に生気が抜けているのを感じる。

ただ、そこに死体があるだけのように思えてしまった。

俺は、何も出来なかった。

また、目の前で人が死ぬのを見ているだけ……。

「真のレイオニクスバトルの勝利条件は、怪獣またはレイオニクスの死…。」

呟くとニーナの身体が突如輝きだし光の粒子となって俺の両手から溢れて空へ上がっていき始めた。

「待て待て待て待て!待ってくれ!頼む!頼むから……!行かないでくれ!!」

涙を零しながら俺は空へ消えていく光に縋り付いた。

だが、俺など気にも止めずニーナは宇宙へと帰っていく。

俺は地面に力無く座り込み、静かに大粒の涙を流した。

「なんで……いつもこうなんだよ……。」

「それが、レイオニクスに選ばれたあなたの運命よ。」

悠々と近づいてきたアリスにハルは鋭い視線を送る。

「ふざけんな!元はと言えばテメェがニーナと戦わなきゃこんな事になってねぇだろうが!!」

立ち上がり、ハルはアリスの胸ぐらを掴んで顔を引き寄せた。そのまま掴んでいた手を払い、彼女は1度も顔色を変えることなく淡々とこう答えるだけだった。

「私たちはレイオニクス。どの道、戦うしか無いでしょう?」

「───っっ…!!アリス…テメェこの野郎ォ!!」

ハルはアリスに向かって拳を振りかざした。しかし、その拳が振り下ろされる直前。

アリスの口角がクイッと上がりバトルナイザーを高く掲げる。

「ファイブキング!」

2人の間をファイブキングの光線が分け隔てたのだった。

流れるようにファイブキングはゴモラを押し退けアリスを掻っ攫いながら天高く飛翔。

後には1人の男と一匹の怪獣が残された。

ポツリ……

頬に水気を感じて目をやると、そこに雨粒が落ちてきた。そして雨は次第に勢いを増していきハルの体を濡らしていく。

服を泥だらけにしながらハルは仰向けに寝転がると空に向かって怪獣の如く吠えたのだった。

 

To be continued……

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