大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal 作:リクソンLv.6
暗い。それは暗い闇の中をひたすらに走った。私の背中はこの闇とは対照的に酷く明るい。
息は既に上がっている。
絶叫しながら滲む視界に全てを委ねて、私はただ走ることしかできなかった。
心臓の鼓動が高まり酷く
それが周りの音をかき消してしまっていた。
「姉さん!」
鋭く私を呼ぶ声に私は無自覚なままに振り返った。
視界に余る星々は私の滲んだ視界からか、はたまた街の作りだした陽炎でぐにゃりと歪んで見える。
そんな背景をバックに"妹"が私を呼び止めたのだ。
──そんな馬鹿な。嘘だ。ありえない。
「あんた…どうして……」
「頑張って逃げて来たの……」
嫌でも聞こえてきたはずの怨嗟はこの時には怖いくらいに静まって、揺らめく炎の海がチリチリ…メラメラと嘲笑しげに歌っていた。
「ボク、もう歩き疲れちゃって…おんぶしてよ姉さん。」
「…………"男"なんだから、それくらい頑張んなさいよ。」
「男だからとか、そんな事言わずにおんぶしてよ……。」
"その子"は駄々をこねながら、じっとこっちを見つめていた。靴も履かず、ズタボロで少し焦げた服を着ていて……
顔もそっくりだ。
目の前に居るコイツは"あの子"じゃない。似せていたからこそ私の肩が震えた。奥歯を噛み締めながら宇宙人どもに街を襲われたあの瞬間を思い出す。
「アイリスは……アイリスは!"妹"よ!!私のたった一人の妹なのよ!それにあの子は───」
『私の目の前でお前らに殺されたんだ!!』
目の前の偽物に私は怒りと悲しみ、そして憎悪を叩きつける。するとそいつは髪をかきあげるように触り舌打ちを打ってその本来の姿をさらけ出す。
「ンだよ。最初からバレてんじゃねぇか。ま、バレたところでお前みたいなガキを捕まえるくらい造作もないんだけど…な!!」
全身を黄金の鎧で着飾った宇宙人が襲いかかる。黄金……と言ってもその金色は誰かに自らの力を見せつけ全てを我が物にしようとする、言わば汚れた金色だ。
「テメェもあの古びた街に住んでた連中共と同じところに送ってやるよ!」
私自身もそう思った。「あぁ。これは死ぬな。」って。
首がキツく締まり呼吸が出来なくなる。宇宙人の右腕にある刃がすぐそこまで近づいて来ていた頃には目の前はチカチカして何も考えられなくなっていた。
……でも、奇跡は起こった。
ドサッという音と共に私は地面に叩きつけられた。目を開いた先には金色の宇宙人が動かなくなっていた。
次の瞬間、遠のく意識とは裏腹に背後からの凄まじい覇気と邪気によって無理やり意識が起こされた。
身の毛がよだち、振り返ることすら許されない空気が漂っていた。
「貴様…立つがいい。」
言われて始めて私は息を吸った。少し戸惑いながら私は立ち上がりその姿を見た。
青色と銀色の身体。顔は途中から角のように二股に別れ、身体は少し浮いていた。コイツも宇宙人だ。しかし一つだけ分かることは、確実にこの街を襲った連中とは品も格も遥かに上だという事だ。
「我を恐れているな…?」
私は答えることすら出来ずに、その宇宙人を見つめていた。多分この時、私は震えていなかったと思う。
だが目の前にいるソレに対して恐れを持たない者は全宇宙を探しても1人として居ないはずだ。
「フッフッフッ…ハッハッハッハ!貴様…宇宙人が憎いか。よかろう……我はレイブラッド星人。貴様に力を与えてやる。」
突然笑い出したレイブラッドと名乗るその宇宙人は私の頭の中を見ているかのように言い当て、その人差し指を私の胸の中に押し込んで来た。指はそのまま胸の奥へと入り込み何か雫のようなものが落ちた気がした…かと思えば不思議な高揚感と力が滾り、それと同時に目の前のレイブラッド以外に対して怒りや嫌悪感が溢れ出てきたのだ。
「なに…これ……」
「全て破壊しろ…貴様の赴くままに…全てを……!!」
その言葉を皮切りに彼女はいつしか手に握っていた機械から怪獣を呼び出し、目に入るもの全てを破壊し始めた。
懐かしいもの。
思い出のある場所。
楽しかったこと。
それらを贔屓すること無く、皆平等に破壊した。宇宙人の連中も含め破壊の限りを尽くした。
最後にはその星さえも……。
◇◇◇
不思議な気分だった。
かつてこれほどまで満ち足りた気持ちは感じたことが無かったからだろうか。
『私にはアリスが泣いてるように見えるな……』
「……」
ふと、その言葉が湧いて出てきた。
泣いている?私が…?そんなはずはない。
だって私にはレイブラッド様から頂いた力があるんだから。
自問自答を繰り返し、気がつくと辺りはもう夕暮れを過ぎて星が輝く静かな夜だった。
──あぁ、そっか。
「もう私には力"しか"残って無いんだ。」
それはそれは暗い…暗い闇夜の空に怪獣たちの咆哮が響いていた。
◆◆◆
「ま、待ってくれ!ホントに知らないんだ!というか誰がナビゲーターの居場所なんて知ってるんだよ!おい、おいおいおい……待て待て待て!待ってくr」
「……やれ、ゴモラ。」
名前も知らない宇宙人をアリの如く踏み潰させる。
いや、知らないからこそ他人を物のように扱えるのだろう。
今まで人であろうとし続けた。人になろうとしていたから守りたい人も物もこの手から溢れ続けたんだ。
ならば心なんてものはこの俺に必要ない。
今はアリスをこの手で───。
「次はどいつだ。」
遠くで怪獣たちの声が聞こえてきた。俺はバトルナイザーにゴモラを戻し、続けてグエバッサーを召喚する。
グエバッサーの背に乗り、星々の
◆◆◆
─宇宙─
「……一体いつになったら惑星モルスに着くんスか!!」
痺れを切らしたレイジが遂に声を上げた。いや…逆によくここまで持った方だ。と言った方がレイジの為だろうか。
ザムシャーと合流して早くも5日が経っていたからだ。
「まぁ落ち着けレイジ。ここで熱くn……」
「熱くもなるっスよ!今ハル先輩が何処でどうなってるかも分からないのに!」
レイジの言葉に私は口を噤むしかなかった。
「逆にリーダーの方がおかしいっスよ!ハル先輩がどうなってもいいって言うんスか!?」
「そんなことは……」
私が言葉を返せずにいると沈黙を貫いていたザムシャーが口を開いた。
「着いたぞ。」
「「え?」」
そこに有るのは虚空のみ。ぽっかりと空いた空間には惑星と思しきものは何一つ見えない。
「着いたって……何も無いじゃないっスか!?」
「レイジ、上だ!」
リーダーが指差す空を見上げるとそこには一瞬何かの見間違えかとも思ったが、それは確かに存在した。星々を塗り潰すかのように広がる禍々しい闇の渦。
「なんだ……あれ……?」
異変が起きた。それはまるでブラックホールのように周りのものを飲み込み始めたのだ。勿論例外なく我々さえも。
「……っ!」
私は咄嗟に自動操作になっている操縦桿を握り空域から脱しようと試みるも時すでに遅し。
ザムシャーは落ち着いた様子で渦の中へと吸い寄せられて行くが、レイジと私は酷く取り乱していた。
──そして、1人と1機の宇宙船が闇の渦へと引き込まれてしまった……
「う……うぅ…ん……」
見知った天井。
どうやらオレはまだ兎龍丸の中に居るみたいだ。
「渦に飲み込まれて、そこから……」
起き上がり船内を見回すと神妙な面持ちでモニターを眺めるリーダーを見つけた。
続き、窓から外を覗き込むとそこには所々植物があるであろう緑と青…あれは水なんだろうか。しかし全体はくすんだ茶色で表面がボコボコしている星が佇んでいた。
しかしザムシャーの姿が見えない。まぁ大方、『強者を見つけた〜』とかそんな感じだろう。
そう考えているとリーダーが声を掛けてきた。
「起きたか、レイジ。どうやら我々は無事…かどうかはさておき……惑星モルスに辿り着いたようだ。」
「アレが───」
レイジは今一度その惑星を見つめる。
あの星の何処かにハル先輩が……
「リーダー!一刻も早くハル先輩の所へ行くっスよ!」
先程から表情を変えないリーダーはその言葉の後、10数秒置いて呟いた。
「そうしたいのは山々だが…如何せん数が多すぎる……」
そしてオレはリーダーが硬い表情でモニター見ていた理由が分かった。
そこに映し出されている無数の怪獣たちが、この星には
それだけでは無い。怪獣を操るレイオニクスや、もしかするとキングジョー軍団率いるペダン星人だって居るかもしれない。
──でも。
そんな怪獣無法惑星にハル先輩は一人で戦ってるんだ。
オレたちがこんな事をしている今も…。
なら、オレがここで引き下がってどうする!
「リーダー!この星は見てるように怪獣が居るのは分かるっス。正直オレも生きて帰れる気はあんまりしてないっス。それでもハル先輩はこんな星で戦ってるんスよ!?なのに、仲間のオレたちが行かないで誰が行くって言うんスか!!」
レイジの熱弁に気圧されたのかリーダーはフッと笑った。
「──考えていても、仕方ない…か。そうだな……。」
レイジはその言葉に頷くと、操縦席に飛び乗りリーダーにこの言葉を叩きつける。
「リーダー!指示を!」
「目標はハル君の救出!兎龍丸、惑星モルスへ発進!!」
「了解っス!!」
To be continued……