大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal   作:リクソンLv.6

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第33話:「怒角天」-罪と罰-

ハルが惑星モルスにやってくる前……別の宇宙でプラズマ怪獣ハンティングを繰り広げていた頃のこと───。

 

─異次元─

「あのレイオニクスどもめ…!」

砂の惑星、デュサリアで受けた傷跡を回復させながら巨大ヤプールが溢れんばかりの怨念をぐつぐつと積もらせている。

ヤプールといえどあそこまでの強力な攻撃に加えて、ましてやレイブラッドの力が関与しているとなれば傷の治りが遅くなるというのも不思議ではない。

『ヤプールよ…力を望むか───』

「!?」

なぜレイブラッドがここに!?

突然、異次元空間内に現れたレイブラッド星人に驚愕するもレイブラッドであればおかしくないことに気づいた。

『ヤプールよ…力を望むか───』

レイブラッドは繰り返し問いを投げかける。

圧倒的な覇気に気圧されながらもヤプールはレイブラッドの前に一歩前進する。

もちろん答えは決まっていた。

 

「その力、我が物としてくれる!!」

 

表情は全く変わらないもののレイブラッドの口元には、確かに笑みが浮かんで見えた。

─────その手に浮かぶ『バトルナイザー』の邪悪な悪意を共に孕んで…。

◆◆◆

お互い急速に"彼"が、"彼女"が近づいてくる気配を感じていた。

これはレイオニクスの持つ能力なのか、はたまた彼らから溢れ出る波動によるものかは定かではない。

「ハル…決着をつけましょう。」

「アリス……!」

皮肉にも二人の思いは同じだった。

どちらかが倒れるまで、この戦いは終わらないと。

そしてここで最後にするのだと。

「「!」」

二人がバトルナイザーを掲げて間もなく赤い翼と白い翼がすれ違う。

その二色の閃光が幾度か衝撃波を起こして…1つだけが残った。

地面に叩きつけられ土埃が舞う。

その正面に悠々とした態度で翼をたなびかせながら群がる塵を吹き飛ばす怪獣が降り立った。

「その程度?」

ひれ伏すハルとグエバッサーを見下してアリスは言う。

あっけなさすぎる。まさかホントに倒れたっていうの……?

いや、ハルに限ってそんなことあるはずがない。

ぐるぐると思考が加速するアリスを不穏なまでの静けさが包む。

 

『ハル、アリスを…アリスを助けてあげて────』

 

ニーナの最後の言葉。

片膝をついたまま、ハルはうつむいて奥歯をかみしめる。

あの瞬間からハルの脳裏にその言葉が焼き付いて離れない。

「……ッ!」

アリスに対しての怒り、恨みが積もり続ける中でもこの言葉を片時も忘れることができなかった。

相反する二つの思いが自分の中で交錯している。

「俺は……。」

堪忍袋の緒が切れたのかアリスは声を荒げて襲い掛かる。

「そっちがその気なら、望み通りにしてあげるわよ!やりなさい!ファイブキング!!」

大きく振りかぶられたレイキュバスの右腕が空を切り裂いてハルに迫る。

流れる時間が酷くゆっくりに感じた。

沸々と体に流れる血液が沸き上がり波打って俺に呼びかける。

 

『殺せ…殺せ…殺せ!』と。

 

振り下ろされた衝撃は凄まじく、巻きあがっていた土埃が一瞬にして吹き飛ばされた。

「……ッ!」

アリスが奥歯を噛み締めてその表情を歪ませる。

マグマゴモラの片爪とファイブキングのハサミが打ち合い、火花を撒き散らして、その一撃を防いだのだ。

ハルの影とシルエットがユラりと動いて立ち上がったのが見えた。

「…………。」

さっきまでとは比べ物にならないくらいのオーラがハルから溢れ出ている。その狩人の瞳は鋭く、冷徹。睨まれた獲物は呼吸を忘れてしまうくらいだろう。

もちろんそれはどんな相手だろうと関係はない。

マグマゴモラの口角が上がった。

ニヤリと笑うその表情は正しく悪魔そのもので、ジュゥゥッ…と紅蓮の爪が徐々にハサミを溶かしてめり込んでいく。

それはまるで蝕む激情の業火のように───

「ギ"ィ"ィ"シ"ャ"ア"ア"ア"ア"ア"」

「!…かハッ……!!けほっごほっ……」

ファイブキングの発狂、そしてリンクした右手に突き刺さる熱さと痛みの感覚がようやくアリス自身さえ獲物の内の1体でしか無いなのだと気付かせた。

「ハァっ!」

バトルナイザーを横に振りかざしてハルの腕が空を切る。同時に連動してファイブキングに突き刺さした左手を自らの方へと引き寄せ、ゴルザとメルバの顔面目掛けて右ストレート!

「!?────グウゥゥッッ!!」

予測不能な攻撃に驚きを隠せないまま、強引に引っ張られる力を利用して放たれる一撃を直に受け止めたファイブキングは頭部に大きな打撃を受ける。

更にそこへ追撃!マグマゴモラの尾がファイブキングの顎を弾き上げた。

「────!!」

そのまま仰け反るようにして後方に吹き飛んで行くファイブキング。

「ウ"ォ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ッッ!!」

マグマゴモラは叫びながら炎を纏う爪を振り上げ、追い討ちをかけた。

振り下ろされる一撃。

よろけた隙にテールウィップが横一文字に振り抜かれ薙ぎ倒されるファイブキング。そして連動して身体が吹き飛ぶアリス。

彼らの怒りはこんなものでは収まらない。

ゴモラは転がるファイブキングの頭を無理やり掴んで引きずるかのようにその頭を持ち上げる。

同じくしてハルはもう随分と崩れたアリスの髪を握り締め、引きちぎるかのように顔を持ち上げる。

ここで始めて二人は顔を合わせた。

 

彼の瞳には一点の光もなく、見開かれた黒目の奥に燃える情動がギロリと私の眼を睨んでいた。

 

彼女の瞳には澱んだ闇が暗く漂っていながら、俺なのか…それとも別の何かに対する恐怖がベッタリと張り付いている。

 

「キシャァァァォオオオ!!!」

大空に果てしなく拡がるマグマゴモラの雄叫びと共に、左右に伸びた灼熱色の双角が揺れてエネルギーが溜まっていく。

「─────やれ。」

鷲掴みにした右腕を大きく広げ、ファイブキングを乱雑に投げ飛ばす。その勢いは殺しきれずに岩盤に激突。前のめりに倒れるようにして崩れ落ちた。

 

そして魂を灼き穿つ奔流が放たれる。

「ファ……ファイブキング!」

だがファイブキングは咄嗟のアリスの声に答えるように体を捻りながら飛び上がって回避。そのまま間髪入れずに超コッヴの胴体にエネルギーを集めて発射した。

マグマゴモラは体を回転させて躱そうとするものの命中し、爆発。

「ガ"ァ"ッッ」

悲鳴のような雄叫びと共に僅かに体勢を崩す。

その隙を狙いメルバの両目から電撃が放たれ更に追い討ちをかけようと大空から飛びかかる。しかしマグマゴモラはあびせ蹴りのように前転しつつ尻尾を力強く振りかざす"大廻転打"でファイブキングを地に叩きつけた。

「……ッ!」

「────グガッ"…」

先程のダメージを受けてなお、その凄まじさは健在。ゴモラは距離を取りなおし体勢を立て直す。

「まだ…まだよ……ファイブキング…………立って…!」

「……終わりだ。」

自らの苦しみ、ファイブキングの痛みに耐えながらアリスは微かに喉を震わせてファイブキングに指示を飛ばす。

再び立ち上がる姿がマグマゴモラの眼光を鋭くさせ、全身から紅蓮の炎を湧き上がらせながらその身に纏った。

「ウ"ォ"ォ"ォ"ォ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"」

雄叫びと共に両手を左右に開いて力を溜め込むと再びマグマ超震動波が放たれる。

「ヒッ…あ……。」

恐怖が空気を押し上げて喉を閉める。思わず溢れた微かな悲鳴、その一瞬の隙を逃してくれるほどレイオニクスバトルは甘くはない。

刹那、身を護ろうと突き出された左腕は荒ぶる神への供物と成り下がる。

植物のように幾本もの細胞が絡み合い形成されたファイブキングの左腕。そのガンQの瞳はそのエネルギーを吸収しきれずに爆裂!

突き抜けた超震動波が左腕を内部から捲り上げて宙へと弾け飛ぶ。

「あ"あ"ァ"ァ"ァ"っ……!!」

アリスは絶叫し左肩を右手で抑えながら硬い地面にペタンと崩れ落ちた。 その左腕はプラプラと力なく揺れる様子から、完全に活動を終えてしまったことが伺える。

頬に一筋の線を滲ませて────。

 

痛い。苦しい。こんな感情を抱いたのは自らの過去と決別した…この手で母星を滅ぼしたあの日以来だ。

地響きが未だ、深く鈍く轟いてこちらに近づいている。

赫灼した三日月の角が燃え盛り滅ぶ街の姿を想起させた。

爆裂音のような凄まじい雄叫びを上げてマグマゴモラは最期の一撃を"アリス"に放つ──!!

 

ズガアアアアアン!!!

 

それは一瞬だった。

大地を粉砕するようなあまりの威力。周囲の瓦礫や砂煙に衝撃を与えて轟々と砂埃が舞って全て吹き飛んでしまう。風圧でアリスの美しく伸びた白髪がパタパタとなびき……まだ何故か自分が生きていることを確認する。

 

「────!」

 

そこに在るは1枚の障壁。黒と白のモノクロ姿が強烈なまでの印象に残っている。しかし、姿は以前のモノよりもずっとトゲトゲしく、特徴的だった顔と胸部の発光体は歪に変容していながらスラリとした立ち姿に、妙にマッチしていた。

 

「ヤツも見ない間に変わったな。」

「ケ、ケレ…ス……?どうしてここに…………」

そう言って気を失ったアリスのボロボロの姿を横目で一瞬だけ見下ろし、変わり果てた荒れ狂う"好敵手(ライバル)"を瞳に写した。

「ケレス!何のつもりだァ…!!」

怒りで震え上がっている声だ。今のハルには到底冷静などという言葉は当てはまらない。それこそ普段からは考えられないほどのドスの聞いた唸る声で吠えた。

「俺の邪魔をするなァァァァアッッ!!」

言い終わる前にゴモラがケレスに向かって駆け出した。

「フン…貴様、随分と…………あぁ。"高 飛 車(・ ・ ・)"になったものだな。」

ケレスは鼻であしらいつつバトルナイザーNEOを迫るマグマゴモラにかざす。それは過去の自分を覗き込むかのように。

 

「そこで足踏みしている貴様が、この俺に勝てると思うな!行くぞ!ゼットン!!」

 

To be continued……

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