大怪獣バトルウルトラモンスターズEternal 作:リクソンLv.6
「……仲間か。─────フン……下らん。」
冷たくあしらっていたケレスの前にレイモンが近づく。
「何の用だ。」
「君に頼みがある───。」
思いがけない頼み。その内容にケレスは驚きながらも、同時に嫌悪感に満ちた表情でレイモンを睨んだ。
「何?……ふざけるな!」
ケレスは視線を2人に移す。
「俺がこんな奴らと手を組むだと?」
「「ええええ!?」」
2人は顔を見合せて驚きの声を高らかに上げた。
それもそのはず、ケレスが嫌悪を示したのと同様に2人は彼に対しての印象は"惑星破壊爆弾を起動させたヤバいやつ"でしかない。
他の行いなど知る由も無かった。
「ま、待ってくれ!レイモン…貴方がそう言うのには何か理由があるのか!?」
「そそ、そうッスよ!いきなり力を合わせろ〜って言われても困るっていうか……」
焦燥の色が浮かぶ中で2人はレイモンに詰め寄り口早に捲し立てた。レイモンは静かに頷き、落ち着かせるように言う。
「確かに、今すぐ協力を求めても難しいかもしれない」
そして一度視線を下げて間をおいて続けた。
「恐らくハルはまた暴走する。それが、どういう状況でどのような時になるかは分からない。けれど…その時は君たちの手で彼を止めて欲しい。」
リーダーは未だ不安そうにレイモンを見ながらも、レイモンに対して口を開いた。
「……レイモン、本当に俺たちでいいのか?何故君自身ではなく……?」
「……」
レイモンはただ微笑み、静かに頷いた。だが、その笑みの奥に潜む確固たる覚悟をリーダーは感じ取る。
「俺には分かる。君たちがレイブラッドを打ち倒す…その未来が。────すまない…時間みたいだ。」
気が付けばレイモンの身体は徐々に光の粒子となり始めていた。
「待て!話は終わっていない!……貴様がアイツにそこまで肩入れする理由は何故だ!答えろ…レイモン!!」
ケレスの問いかけは虚しく、レイモンの身体は眩い光を放って消えてしまった。
◆◆◆
三度、兎龍丸の砲撃がマグマゴモラを撃つ。しかしその効果は薄く、ほとんどが吸収され始めた。
完全に攻撃が効かなくなるのも時間の問題か。
……風が吹き抜ける。
「デリャアアアアア!!」
角を狙ったザムシャーの一撃が入る。
天空から疾風の一閃がマグマゴモラに振りかかったのだ。
「邪魔をするな!」
ケレスは叫ぶ。自分の獲物を討たんと太刀を振るう巨躯の戦士に。
ギリギリ…!バチバチ…!と火花飛び散る中、ザムシャーは小さき者の姿を横目に声を上げる。
「話は後だ!」
しかしザムシャーが押さえつけるのをものともせず、ゴモラは角を振り回し刃を跳ね除け、タックルで吹き飛ばした。星斬丸を地面に突き立て、衝撃を減衰。EXゼットンの横に並び立つ。
「やはり強敵……。──!」
突如EXゼットンがその爪を振るわんとするのを星斬丸の峰で打ち払い、お互いにその姿を見据える。
「何のつもりだ…?」
「俺は貴様に警告した筈だ。」
邪魔をするなら容赦なく───
といったところか。貴様にとっての好敵手なのだろう。
……さりとて。
睨むケレスを鼻で笑いザムシャーは応えた。
「我にとっても彼奴は強者。貴様が先に倒せねば、所詮そこまでだったということよ。」
「なんだと?」
問答にザムシャーはニヤリと笑う。
「……来るぞ!」
ザムシャーが叫び、2人の視線はゴモラに移した。
マグマゴモラは唸りを上げ、両角を激しく揺らす。
角から迸る赤橙色の超高温の光が今にも解き放たれんと、周囲の空気を蒸発させていた。
「キ"シ"ャ"オ"オ"オ"オ"ア"ア"ア"ア"!!!」
叫びと共にゴモラは地面に向けて角を一気に突き刺す。
大地が轟音と共に揺れ動き、灼熱の衝撃波が放射状に地を裂きながら広がった。
ザムシャーは星斬丸を面で構え、EXゼットンは両腕を交差させて衝撃を相殺しようとする……が。
完全には防ぎきれず、二人は数十メートル後方に吹き飛ばされた。地面に叩きつけられながらも素早く体勢を立て直すザムシャー。
「ムゥ……!」
あの一瞬で受けた熱と衝撃は想像以上。
短期決戦でヤツを仕留めなければ、我々に勝ち目は無い。
ザムシャーの視界の端ではEXゼットンから煙が立ち上り片膝をついていた。
「これが最善手であるか…。」
寸秒の時が過ぎ、ある"結論"へと結びつけたザムシャーは星斬丸を握り直す。
その口元に微かな笑みが浮かんでいた。
だがそれと同時に。戦士としての血が滾る。
反応よりも早く、脚を1歩前へと踏み出している。
ザリ…と砂が足底と擦れて直後、踵が浮き2m程の小石がつま先の辺りで盛り上がる。
爆風に似た衝撃が地面を這いながら一直線、ゴモラ目掛けて跳躍すると星斬丸を振り下ろす。
刃は右肩に切り刺さった───が岩盤を斬るような鈍い音。刃が押し返される。
「硬い…!」
次の瞬間、ゴモラの尾がしなやかに伸びる。鞭のように鋭い攻撃だ。
ザムシャーは紙一重で躱すとバク宙で距離を取った。
「ならば──!」
地面に着地したザムシャーは一歩踏み出し低い姿勢で再び飛び込む。
今度は逆手に持ち替えた星斬丸で足の甲部を狙い、刃を突き立てる。その時、金属同士が擦れるような不快な高音が響く。
「!」
「グ"ラ"ラ"ラ"ア"ア"ア"ア"ッ!」
鋭い爪が彼めがけて振り下ろされていた。瞬時の判断でザムシャーは小手を翻し、二刀目="流星刀・真打"を繰り出し…ガキンッという金属音とともに刃と爪が激突!
拮抗する力──いや違う。ほんの僅かばかりか、ザムシャーが押し負けていた。
汗が額を伝う──冷たいものではない。高熱による発汗だ。
その思考を上書きする高熱が蝕むのを背筋で感じたザムシャーは刃を振り払いEXゼットンの豪火球をスレスレで回避。
ザムシャーの影に隠れていたというのもありマグマゴモラはコレを避ける事に失敗。
生まれた隙、ゴモラの胸に罰天の刀傷をつけたザムシャーは叫ぶ。
「今だ!!」
「余計な真似を……だが!!」
ケレスがゼットンに指示を送る。マグマゴモラの至近距離にテレポートしたゼットンが後頭部を回し蹴りで蹴り飛ばす。
直後、よろけた前面に再びテレポート。腹部に連打撃を叩き込んだのち、ゼロ距離で最大火力の火球を放つことでようやくその巨体を地に伏せさせることに成功した。ゴモラも限界を迎えていたのだろう、光となってハルのバトルナイザーへと格納されていく。
「ぐっ…」
「これで…形勢逆転だな。」
それと同じくハルは片膝をついてその場に崩れ落ちた。気配を感じ、顔上げるとバトルナイザーを顔の前に向けられていた。
ハルは全身をピクリとも動かさない。
冷徹な瞳が俺を見つめていた。
傷に塗れた全身。息も整っておらず荒い吐息の音が盛れていたし、その時自分も同じようになっていた事に気づく。
血と土の泥臭い匂いが混ざりあって鼻腔を突き刺す。
『俺はこのまま殺されてしまうのだろうか。』
そんなことばかりが頭の中を駆け回る。
「敢えて今一度聞こう。貴様は何だ。何者だ。」
「俺は……」
静かだ。それはそれは静かな時が過ぎた。
喉の奥がどん詰まって全く言葉が出ない。
………………俺は何なのだろう。
俺を信じてくれた人を振り回し、
託された想いも果たせず、
自分で決めた事すら成し遂げられない。
一体何なんだ俺は…。
下唇を噛んで、ハルにまた沈黙が降りた。
そこにゆっくりと、しかし力強く踏み込んだ足音が聞こえてくる。ただ真っ茶色だった視界が青い空色に変わる。
数秒後にじんわり顎の痛みを感じてきた。蹴られたんだとそこでようやく気がついた。
息する間もなくケレスはハルの襟元を掴んでくすんだ顔をあげさせる。
「いい加減貴様の泣き事を聞くのも飽き飽きだ。」
地球人よりもよっぽど怪力なケレスによってハルの体はいとも簡単に浮き上がった。
「おい。貴様は何だ。」
「俺は…」
「貴様はどうしてここに居る!」
「……」
ケレスの怒号は確実にハルの心を抉っていく。
「仲間が危険に晒された時、真っ先に動いた貴様はどうした!」
「正義だとか守るだとか甘っちょろい戯れ言をほざいていた時の貴様はどうした!」
「失ったモノはもう戻らん!それでも前に進まねばならない!我々レイオニクスの戦いとはそういうものだ!」
「そんな覚悟のまま突っ立っているなら、この俺が今ここで殺してやる!」
ハルの服の襟を掴んでいたケレスの右手が緩む。……途端、ケレスは拳を振り抜いた。
鈍い音と共にハルの体は宙を舞い、数メートル程先の岩壁に叩きつけられた。咳き込んで肺が酸素を求めるが、血の塊と一緒に溢れて苦しいだけだ。
まるでこの数分間が永遠であるかのように思えたほど。
俺はどれだけ情けない男なのだと思った。
それでもケレスは間髪入れず俺に言葉を吐き捨てる。
「立て。立て!立て!立ち上がれ!!何のために貴様は戦い始めた!?何を思ってそこで寝転がってる!!」
俺がここに居る意味……
自問自答を繰り返したところで答えなんて返っては来なかった。あたりまえだ。
だからこそ俺には答えが欲しかった。
誰でもいい、なんでもいいから縋れるものが欲しかった。
これが弱いと言わずしてなんだと言うのだ。
自責と自傷の念が繰り返し交互に自分を襲う。
「今、貴様が拳を握り締めているのは何故だ!?答えろ!」
言われて初めて気がついた。それと同時に感じたものがある。
何も出来なかった無力感。
激しい苛立ちと焦り。
───そうか。
俺は……
"悔しかった"んだな。
うつ伏せのハルの首根っこを鷲掴み、再び顔を上げさせる。勢いよく振りかぶられた二度目の拳が鋭い速さで空を切る。
「───!」
大きな破裂音がハルの眼前で鳴った。
ケレスの問い詰める拳を止めたのは紛れもなく、ハル…その人だった。しかし、その目には何か大きな栓が抜けたかのように強く燃えていた。
「くどい上に長い。」
拳は止めたものの、ハルの力で抑えるには到底無理があった。一撃でミシリと骨の軋む音が、そのまま地面へと拳は落ちていった。
「ッ……!」
痛い……痛すぎて意識が遠くなりそうだ。
震える右腕を抑えながらも、なんとか立ち上がった。
……そうだ。
「俺は…」
揺れることも、
「俺は……!」
迷うことも、
「レイブラッドの野郎をブチのめして……」
考えることも辞めだ!
「この宇宙に…。平和を取り戻す!!」
「フン。下らん理想だな。勝手にやってろ。」
襟を握りこんだ拳は一気に力が抜けて突き放された。
服に取り付いた黒い部分を払い落としてから、流れるように両手を頬に思いっきり叩きつけた。
痛みで手と頬の皮膚がビリビリと痺れる感覚がある。
しかし、それだけで『俺は生きて立っている』と思えた。
深く息を吸い込んで吐き出す。
「だが…。」「それでも…。」
互いに認めた好敵手。だとしても、これだけは譲れない。
そのエゴが2人の"身体"を"鼓動"を奮起させる。
「レイブラッドを倒すのは───────」
『『俺だ!!』』
二人の視線が一本となって繋がり、ニヤリと微笑んだ。
「戦いの続きだ…ハル!」
「いくぞ!ケレス!!」
『バトルナイザー・モンスロード!!』
互いのバトルナイザーが煌々と光を放ち、主人たちの闘争本能を具現化させるかの如く大空へと舞い上がる!
To be continued……