モフモフ事変   作:かりん2022

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落ちこぼれの私が、大逆転する話

白椿 白兎。かの晴明の子孫と言われている、最強の陰陽師である。

こいつに勝つのが、私の夢、いや、目標だった。

母は言った。我らは黒狐九尾の末裔。白狐九尾、葛の葉の末裔に決して劣る家柄ではないのだと。

故にこの檜扇 黒刃、闇の刃でもってかの兎を狩ってくれようと。

 

「やってみろよ」

「ぐぬぬぬぬ、うおりゃー!」

 

 奴の式神に組み伏せられた私は、全身に力を込めて式神から抜け出した。

 やたっ

 

「はいおかわりね」

 

 べちょっ

 

 式神に新たなのし掛かられた私はぐぬぬした。

 

「ほんっと黒刃って懲りねーなー。大体、黒狐九尾の伝説なんて聞いたことねーよ。むしろ孤児のくせに呪力が使える事にびっくりするわ。両親の片方でも呪術に通じていればお前は捨てんだろ」

「ふんぬぅー! ちょっとぐらい伝統があってイケメンで実力があってモテるからって言い気になりおって! 月のない夜は気をつけろよ!」

「一番モテてー奴にモテねーしな……」

「ザマァ! ゲフッ」

 

 式神に一撃入れられて、私はぐぬぬする。

 

「まーいいや。今日も一緒に術の勉強するか?」

「望む所だ! あっ 加茂家の月夜様だ!」

 

 イケメンで憧れの月夜様が、歩いてくる。

 

「白兎、またやっているのか。少し話があるのだが……」

 

 月夜様は私には一瞥もせずに白兎と何やら話をする。依頼だろうか?

 ふおおおお。いつか私も、格好よく妖魔退治をするのだ!

 今はちょっと……泥臭い戦い方だけど……。

 

 私は心に誓い、その日も研鑽に励むのだった。

 その晩。気がつけば暗くなっていて、白兎は私を夕食に誘った。

 

「ムゥぅー勝てない!」

「あのさ。研鑽した時間が違うんだから、俺が負けたら俺がなんだよって話になるじゃないか。才能がいくらあっても、知識と鍛錬がなければ花開かないんだぜ?」

「そっか。じゃあ、花開くまでどれくらい?」

「お前が頑張る間、俺だってどんどん頑張って花開くからなぁ」

「じゃあ、ずっと追いつけないって事か? 偉大なる黒狐の末裔の私が才能で勝ってても?」

「それが、妖狐の必修科目にはセンスが重要な科目がもう一つあってさ」

「なんだ?」

「狐の子孫だっていうならさ。色仕掛け勝負しない?」

「はぁー?」

「強い妖狐は色仕掛けも完璧なんだ。妲己とか有名だろ」

 

 カッチーン! 妲己何するものか。私は黒狐九尾の子孫だぞ!

 

「楽勝ですが? 私ほど色仕掛けが上手い者もいませんが?」

「じゃ、じゃあやってみようぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の負けだ。可愛いよ、黒刃」

 

 フハハ、白兎など楽勝よ!!

 

 

「フハハ、まいったか、白椿 白兎!」

「ああ、俺の負けだ……。結婚してくれ」

 

 こうして、なんか白兎は私にひれ伏した。

 なんか違う気がするし昨晩負けたような気もするが、とにかく、勝った!!!

 

「ふふん。私にメロメロのようだな。だがしかし、私を妻にする条件は大変なんだぞ。肉だ。肉を用意するのだ。あと、舞を踊るのだ」

「ここにお前が食べたがっていた最高級の肉がある。二人で食べよう」

「にゃ、にゃに!? 違、自分で狩りをして得た獲物のプレゼントがだな。でも和牛……ハワワ……こ、これでもいいぞ!」

「で、舞は? なんでも舞ってやるぞ」

 

 は、白兎め本気だな!? 私のお色気術はなんて恐ろしいんだ!

 

「安倍と葛の葉は互いに追いかけっこするように舞ったというぞ。布がひらひらとして、美しかったそうだ」

 

 白兎は手を差し出した。

 

「じゃあ、舞おうぜ」

 

 私は、その時初めて、胸がとくんとするのを感じた。

 

 そして、二人で舞った。

 私と白椿は番になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白兎様にお前のような雑種が見合うはずがない! ただの遊びに決まっているだろう! 出ていけ!」

「キィー! おめおめと騙されおって! 葛の葉の子孫の子を身籠るなど! 面汚しめ!!」

 

 よくわからないが追い出されて、母様に勝った事を自慢しに行ったら拒絶された。

 

 腹が立った私は、北海道へと向かった。

 ここで新たな一族を作るのだ。私の腹にはやや子がいるしな!

 

 

 

 

 北海道行きの船に乗ると、白兎が飛び乗ってきた。

 私を抱きしめた白兎は言った。

 

「俺は君が好きだ。駆け落ちしよう!」

 

 私の色仕掛けすごすぎだろ。私は恐れ慄いた。

 そして3ヶ月後。私は怯えた。やや子がいつまで立っても生まれない。

 子供が私の腹を突き破る夢を見て、私は泣いた。

 

「白兎。白兎。やや子に殺される! やや子が私の腹を突き破るんだ!」

「は? 子供?」

「やや子が、やや子が!」

「妊娠、してるのか? そうか、すぐに病院に行こう!」

 

 病院に行くと、医者が度肝を抜かれた。

 

「奇形児ですね。こんな胎児は見た事がない。ありえない」

「そんな……」

「三人います。一人は普通の子のように見えますが……あとの二人は想像もつきません。まるで人間ではないかのような尾骶骨の長さです。どうされますか? 生みますか?」

「そう、ですか……。それでも、俺は世界を見せてやりたい。黒刃」

 

 私はポカンとしてレントゲンとやらを見た。

 

「うむ。うむぞ」

「黒刃……」

 

 そうして、子供の為だからと、白兎は私を連れて家に戻った。

 自信満々だった白兎は、私の為に周囲に頭を下げた。

 

「この子は凄い子だぞ。白兎は胸を張れ」

「黒刃……」

「奇形児を孕んで置きながら、なんという言い草よ。これだから出自の知れぬ孤児は」

「私は九尾の黒狐の末裔だぞ!」

「その上、虚言癖があって愚かしい」

「母上、私をいくら責めても構わない。でも、黒刃は……!」

 

 そうして、何やら文句を言われて、部屋に籠城して、産気づいて、部屋から引きづりだされ、出産となった。

 

「ひゃあああああああ!?」

「こ、これは!?」

 

 我が子の素晴らしさに、医師達が腰を抜かす。

 雪のように真っ白な髪に白い狐耳、白の九尾の尻尾を持つ女の子。

 鴉のように真っ黒な髪に黒い狐耳、黒の九尾の尻尾を持つ女の子。

 そして、黒髪の尻尾もない、耳も人間の男の子。

 

「そ、そんなバカな! これではまるで、これではまるで……!」

「白兎、凄い? 凄い? 私、やったよ……。ポメラニアンのババ様と、闇玉犬のジジ様の血を引いてても、とっても凄いんだよ。尻尾が2本しかなくても、ちゃんと、黒狐の九尾の母様の子だって証明したよ……」

 

 私が出来損ないなんて嘘だ。嘘なんだ。

 私は、涙を流しながら、意識を落とした。変化の術が、解けていった。

 




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