シャチとホロメンのお世話係 巫女のツヅラさん   作:ゆっくりいんⅡ

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シャチのお世話をする、そんな一日(沙花叉クロヱ)

『それじゃあ今日はここまで、ごちそうさまでしたー!』

 

 バイバーイ、と別れの言葉と共に、EDの配信画面が流れる。仮にもアイドルを謳っててスロットの画面はどうなのだろうと何度も疑問に思うけど、運営とリスナーが許してるからいいのだろう。

 そんな、いつもの疑問を浮かべてから立ちあがろうとすると、

 

『さーて、今日のご飯はなんだろなー? リクエスト出し……あれ、出したっけ?』

 

 ……終了したはずの画面から、弾んだ声が聞こえてくる。どうやらマイクを切り忘れているようだ。

『かわいい』、『るんるん沙花叉かわいい』、『忘れてるやんw』とコメントが流れてる状況に溜息をついてからスマホを取り出し、メッセージを一言。

 

『クロヱ、まだ声が入ってますよ』

 送信したら珍しくすぐに気付いたのか、

 

『え、ヤバ、切れてなかった!? じゃ、じゃあねー!!』

 

 と、慌てた様子を最後に声が聞こえなくなった。今度は大丈夫だったようだ。

 

「さて、ご飯の用意をしますか」

 誰に言うでもなくつぶやいてノートPCの電源を落とし、完成直前で置いてあったものの調理を始める。

 

「つ、ツヅラちゃーん……」

「はい?」

 

 配信部屋から出てきた同居人が、か細い声で私ーー浅神ツヅラの名前を呼ぶので振り返る。

 黒混じりの綺麗な灰色の髪に、吸い込まれそうな赤い瞳。衣装は最近配信で着ることの多い地雷系のファッションに身を包んだ彼女は、気まずそうに私を見上げてくる。

 

「お疲れ様です、クロヱ。どうしました?」

「あー、その……沙花叉、配信終わりで変なこと言ってなかった?」

 上目遣いで尋ねてきたため、火の様子を見ながら私は先程配信で漏れた内容を思い出し、

「大丈夫だったと思いますよ。お腹減ったーって言って、コメントが湧いてたくらいですし」

「良かったー! エグい下ネタくらいなら別にいいんだけど、身バレしてないかって冷や冷やしちゃった・・・・・・」

「エグいのはあんまり良くないのでは・・・・・・?」

「BANにならないならいいんじゃない?」

 

 首を傾げる彼女、ホロライブの一面である沙花叉クロヱのある意味心理かもしれない言葉に、私は苦笑するしか無かった。まあ、クロヱですしね。

 

 

 

「あ、今日はクラムチャウダーにしましたよ。Poppy 〇laytimeで怖かったでしょうから、温かいものがいいかと急遽変更したんですが・・・・・・」

「ツヅラちゃんの気遣いが身に染みる・・・・・・結婚しよ?」

「ふふふ。喜んでくれるのは嬉しいですけど、女の子同士ですから」

「最近は同性で事実婚するのも珍しくないよ?」

「・・・・・・日本、進んでますね。ところでクロヱ、私で求婚したの何人目ですか?」

「ぽえ?」

 

 それ、普段は言わないって配信で言ってなかったですっけ。

 

 

 

「ごちそうさまでした~。今日も美味しかった~」

「はい、お粗末様です。食器は下げちゃいますから、渡してもらっていいですか?」

「はーい。いやあ、至れり尽くせりで幸せな気分・・・・・・」

「配信してたんですから、これくらいはお安い御用ですよ」

 

 満足気に椅子へもたれかかるクロヱに微笑みながら、二人分の食器を流しへ持っていく。毎回ちゃんと感謝してくれるのは、作る側としては嬉しい限りだ。

 それから食器を洗っていると、ふと背後から視線を感じて顔だけ後ろに向けると、エゴサをやめたクロヱがこちらを注視していた。

 

「クロヱ? どうしました?」

「いや、やっぱり黒髪大和撫子系のツヅラちゃんが、割烹着姿で洗い物に」

「もう居候してしばらく経つんですから、見慣れてるでしょうに」

 

 あとただの和服にエプロンなんですが、と苦笑する。『割烹着の悪魔』と呼ばれるキャラを知ったから、誤解するようになっちゃいましたね。

 結局飽きることのないクロヱの視線を感じながら皿洗いを終え、テーブルに座り直す。

 

「さて、クロヱ」

「ん? 何、ツヅラちゃん?」

「そろそろお風呂、入りましょうか?」

「ーーえ、何? ごめん、聞こえなかった」

 

 携帯から顔を上げ、鈍感系主人公みたいなとぼけ方をするクロヱ。そこから色々言って逃れようとするのは分かっているので、私ジッと、クロヱと目を合わせて口を閉じる。

 青と赤。対照的な瞳の色が見つめ合うこと数十秒。先に目を逸らし、折れたのはクロヱだった。

 

「・・・・・・・・・・・・臭う?」

「いいえ? 寧ろいい匂いがしますけど、そろそろ髪も痛む頃でしょうし」

「う~~~~・・・・・・・・・・・・」

 

 心底嫌そうに、唸り声を上げるクロヱ。ホラーゲームで心身をすり減らした後なのは間が悪いが、流石にこれ以上間を開けるのはよろしくない以上、覚悟してもらう必要があるだろう。

 お風呂入るのに覚悟が必要なの、クロヱくらいでしょうけど。

 

「・・・・・・一緒に入ってくれる?」

「もちろん」

「身体とか、洗ってくれる?」

「デリケートな場所は自分で洗ってくださいね」

「・・・・・・・・・・・・何か怖いことあったら、守ってくれる?」

「そのために私がいますから」

 

 涙声+涙目の上目遣いという、男女問わず大半の相手を堕とせそうな懇願に私はしっかりと頷く。

 一緒に暮らし始めてから毎度似たようなやり取りをしているが、それだけお風呂での恐怖体験がトラウマになっているのだろう。

 だから、これは必要なことであり、クロヱが安心できるなら一緒に入ってあげるべき。上げるべきなのだが。

 

(これ、私が居なくなったらクロヱ一人でお風呂入れますかね・・・・・・?)

 

 ちょっと本気で心配になってしまう私であった。

 ちなみに後日聞いてみたら、私が居ない時人に会ったり外に出ない限り、一人で風呂に入らなくなったらしい。

 

「これはツヅラちゃん、責任取ってもらわないとだよねー?」

 

 とニヤニヤ笑っていたが、女子同士でそれは合っているのだろうか。いや取りますけどね、責任。

 

 

 

「あ、ツヅラちゃん一個言っておきたいんだけど。居候じゃなくて同棲だからね?」

「まあ、家事も金銭も依存してるわけではありませんが。何か問題があるんですか?」

「沙花叉的にそっちの方が嬉しいシチュだから!」

「せめて響きがいいとか言いません・・・・・・?」

 

 

「つ、ツヅラちゃん、入るよー・・・・・・?」

「はい、どうぞ。もう準備は出来てますよ」

「お、お邪魔しまーす・・・・・・」

 

 シャンプー等の準備を終え、黒の襦袢(和服の肌着)に着替えた私が待っていると、恐る恐る扉を開け、浴室に足を踏み入れるクロヱ。風呂を嫌がる猫みたいですね。

 ちなみに服やタオルを纏っているのは、

 

「全裸だと何か、恥ずかしいじゃん・・・・・・」

 

 という、クロヱからのリクエストに応えたためである。性癖と下ネタはかなりオープンなのに、身体を晒すのには抵抗があるらしい。

 

「それじゃあいつも通り、髪から洗いましょうか。何か辛かったら言ってくださいね?」

 

 椅子に座ったクロヱが目を瞑り、こくりと頷く。過保護に聞こえるだろうが、低血圧が原因で目眩を起こしたり倒れる可能性がある以上、確認は大事なことだ。

 髪を洗い、次いで隠れていない部分の身体を洗っていく。特に前者は洗うだけでなく、手入れも丁寧にしていくため思ったより時間がかかるのだ。

 

「はい、終わりです。じゃあ後の部分は、クロヱがーー」

 

 やってください。そう言おうとしたら、私の手を取って自分の方へ引き寄せ、

 

「ツヅラちゃん……」

 

 ツヅラちゃんなら、いいよ?

 胸元、彼女のタオルに手が掛かるかどうかのギリギリ、蠱惑的な声音で囁いてきたクロヱに対し、

 

「そうですか? では、遠慮なく」

「ーーぴゃあ!?」

 

 躊躇わず手を伸ばしたら、可愛い悲鳴を上げてその場から飛び退いた。

 

「えぇー、なんでー……!? いつもならツヅラちゃん、「そういうところは自分でしてくださいね」ってちょっと恥ずかしそうに言うところじゃん!」

「毎度同じ反応なのもどうかと思ったので。ビックリしました?」

「純情可憐で弄りがいのあるツヅラちゃんはどっか行っちゃったんだ……」

 

 そんな切なそうに言われても。あと純情可憐は無理があると思います。

 動いた拍子に外れたタオルを胸元に抱きしめ、へたり込んでいる姿は非常に魅力的というか扇状的だが、敢えて指摘はせずスポンジを手渡すに留める。

 

「はい、ちゃんと自分で洗ってくださいね?」

「は~い。・・・・・・あれ。ツヅラちゃん、顔赤くない?」

「・・・・・・・・・・・・お風呂入ってるから、じゃないですかね?」

「え~? 沙花叉からかったのが真っ赤になるくらい恥ずかしかったの~? か~わ~い~い~」

 

 私の状態を見て一転、攻勢に出てくるクロヱ。ニヤニヤしながらしなだれかからないでください、当たってますから。何で裸はダメなのにボディタッチは大丈夫なんですか。

 

 

 

「ところでさ、ツヅラちゃん。……いないよね?」

「いませんよ。入る前にちゃんと見てますし、いたら祓ってますから」

 

 本業としてもここにいる役割としても、そっちの方が大きいですし。

 

 

 

 風呂から出て身体を拭いてあげて、髪を乾かし終わる頃には結構な時間が経っていた。

 

「クロヱ、そろそろ寝た方がいいんじゃないですか?」

「えー? 沙花叉まだまだ起きてたいんだけどな~」

「明日はHolox皆さんでの仕事があるんでしょう?」

「あ~、そっか~・・・・・・でも、もうちょっと遊びたい気持ちってあるじゃん?」

「気持ちは分かりますけど、それで辛くなるのはクロヱですよ。いっぱい寝ないといけないんですし」

 

 その後、渋るクロヱを何とか説得し、寝間着に着替えさせてから自室に連れて行き、

 

「はい、それじゃあお休みなさーークロヱ?」

 

 部屋から出ようとしたら、ベッドに座っているクロヱに服の袖を掴まれた。

 

「ツヅラちゃん・・・・・・一緒に寝てくれない?

 その……今日のホラー怖かったから、夢に出そうな気がして・・・・・・」

「・・・・・・ふむ」

 

 だから寝るの嫌がっていたんですね。潤んだ上目遣いで縋りついてくるクロヱに、同性でも少し跳ねさせてきた鼓動を落ち着かせ、

 

「・・・・・・先に起きた時、起こしちゃったとしても文句言わないでくださいよ?」

「! うん、分かった。さ、寝るよ寝るよー」

「急に元気になりましたね・・・・・・」

「だってツヅラちゃん居れば、怖いのも大丈夫だし。

 あ、エッチなのは・・・・・・しちゃうの?」

「寧ろするのはクロヱでは?」

「えー? 沙花叉にそんなことして欲しいのー? ツヅラちゃんたらエッチだな~」

「いえ、普通に寝かせてください」

 

 何でだよー! と叫ぶクロヱの声をBGMに、私はベッドに入り込む。元々一人用だから手狭だが、クロヱが小柄なので何とか収まった。

 

「じゃあクロヱ、お休みなさい」

「うん、お休みー・・・・・・ツヅラちゃん、ありがと」

 

 どういたしまして。口には出さず微笑んでから、クロヱの抱き枕になりながら眠りについた。

 

 

『大体、仕事のない時はこんな感じですね』

『いや至れり尽くせりすぎじゃない?』

 

 そうだろうか、私としては普通のつもりだが。

 後に仲良くなった、ホロメンとのあるやり取りである。なおそれを聞いた他の子の何人かが、お世話希望の発言をしていたらしい。

 




キャラ紹介
浅神ツヅラ
 ド田舎から上京してきた沙花叉のお世話係。クロヱが幽霊に悩まされていた時、お祓いを担当したことで知り合った本職の『お祓い師』兼『巫女』。
 YAMA育ちで、お酒は呑める年齢。別に何か歪げたりはしない。

沙花叉クロヱ
 お世話される側のホロメン。身バレ関係を気を付けながら配信でツヅラのことを話すことあるが、『もうそれ介護やん』とツッコまれることが最近の日課になっている。



あとがき
 最推しを書く時、これでキャラが合っているのか常に疑問に思わないといけない。例えキャラ崩壊の危機に陥ろうとも・・・・・・
 という訳で、こんな感じのほのぼのホロライブをお送りする予定です。ホロライブの(長編)投稿は初めてなので色々おかしいところはあるかもしれませんが、生暖かい目で見守ってくださると幸いです。
 それでは読んでくださり、ありがとうございました。次回の予定ホロメンは・・・・・・未定です!(オイ)
 
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