相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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ALO編、突入〜。

……え?女神?誰のこと?
前話……?ん〜…………ちょっとよく分かんないっすねぇ

ということで今回はクソ短いです。今年はこれで最後かも。ちょっと忙しいンデスヨネ


ALO編
最初期のラスボスっていうのは物語が進む事に『あいつが一番ヤバイのでは?』となっていくのである


 そこは正しく異世界。

 

 中世ヨーロッパ風の街並み、目を見張る大自然、前人未踏の迷宮。

 

 到底、現代技術で建築不可能な物理法則を無視した形の建造物やギミック。

 そして、見たこともない生物、ゴーレムなどなど。

 

 世界は大勢の人間を招待した。無差別に、しかし運命的に。

 

 少年少女から老人まで、老若男女がその世界に足を踏み入れ、一様に目を見開き、感動し、楽しみ、そして絶望した。

 決して脱出することが叶わぬ世界。空中に浮び上がる城塞は誰の侵入も脱出も拒むロストテクノロジー。

 

 涙を流した少女が居た。

 部屋に引きこもり身体を震わせる男が居た。

 路頭に迷い、蛮勇に走りあっさりと命を散らした馬鹿もいた。

 

 楽しむという気持ちはとうに消え去り、ただ生き延びることだけを考えたその住人達。

 その中に一人、黒く輝く希望がいた。

 

 彼は挑んだ。見上げることすら億劫な、高き城塞を登り遂げることを決意した。決して楽な道では無い。全員が協力的な訳でもない。

 彼は最初に、味方を失った。濡れ衣を着せられ、それを良しとし、自ら悪役を買って出た。悪評は広がり、彼の肩身はその世界でさらに狭くなるが、それでも彼は進み続けた。

 

 そうして進んだ先、彼は一人の親友と出会う。

 イケメンで、優しくて、理想の紳士像を体現しているカリスマ性すらピカイチなその男……え、違う? は? 黙れよ。

 

 さてさて。ひょんなことから二人は出会い、お互いにお互いを親友と見なした。約二年、共に過ごした二人の絆はそれはもうすんごいことに。

 

 黒き輝きを放つ男は思った。俺はもう孤独では無い。親友となら何処までも行けるのだと。

 その他にも深い仲間を得たキリ……男は、それでもその親友が一番の宝物。全幅の信頼を寄せ、如何なる時も行動を共にした。

 

 しかし、親友は知っていた。近い将来、その男が別の親友と呼べる存在を作り、そして失ってしまうことを。さらに、失った悲しみに心を失い、生への執着を失ってしまうことを。

 

 親友は密かに嘆いた。こんなことがあっていいのかと。いやいや、お前が起きてたらもっとこの戦い早く終わってたでしょうが、と何度も思ったのだろう。あ、俺じゃなくて他人の話ね? 

 あの後すぐに果の祭壇に向かえばあんな事起きなかったのになにやってんのこいつ? とか思ったりもしたらしい。

 

 そして、その親友は、こう考えた。

 そうだ。親友を失っても、何が起きても揺れぬ心をその男に身につけさせようと。

 

 そして、その手段を親友の男は思い至った。そう────

 

 

「────俺がそいつの親友になって、目の前で死んだらいいんじゃね? ……と」

 

「ゴミね」

 

 人間からゴミにジョブチェンジ。どうもレインで……ん? 現実だからリアルネームの方がいいのかね? まあ俺の本名は後ほど出るでしょう、多分。

 

「いやいや、は? 完璧な作戦だろコレ」

 

「7徹目の馬鹿が5秒で考えたくらいガバガバで倫理観終わってるわよ」

 

「友達から聞いた他人の話です」

 

 俺のパーフェクトで完璧な作戦がボッコボコに全否定されました。

 おいおいおい。俺の2年間を否定したのかこの子? 違う、違うんだ……これが未来のキリトにとって大きなアドバンテージになってくれるんだ!! そう信じてる!! 

 

 さて。何故か生きてて、しかも肉体まで得ちゃったワタクシでございますが、意味わかんないっすねぇ。肉体はまあ、うん。考えることは諦めたよね。なんのこっちゃ。え? 女神が作ってた? なんですかそれ知らない話ですね、はい。

 

 まあそういう可能性もあるんでしょう。それは置いといて。

 目が覚めたらベッドっていうのが定番では? なんで普通に高校の教室で座ってるの俺? しかも隣の席が朝田詩乃で? なんか既に友達で? なんのこっちゃ。

 

「俺詩乃たそとの馴れ初めとか覚えてないんよね」

 

「また記憶喪失? 何回目よ。あと次その呼び方したらスネ蹴るわよ」

 

「俺の名前は────!!」

 

「はいはい。それも毎回聞いてるわよ」

 

 しかもこの世界の俺は記憶喪失複数回とかいう激ヤバ仕様。NASA行きだろこれ。それに慣れてる彼女もやべぇよ。

 

 にしても、生きてるのか俺。しかもキリトとアスナの居住地に近いとかイジメか? 会うのクソ気まずいんだが。あんな最期見せといてどの面下げて会えと? 

 

「いや……もう一回目の前で死ぬのもアリか……?」

 

「馬鹿じゃないの」

 

 どんぶらこ、どんぶらこ。俺と詩乃(呼んだら変な顔されたが否定は無かった)の家が方向が同じかつ割と近いということで一緒に帰っている。

 今日一日しか見ていないが、詩乃は教室の他の人達には割と丁寧に接しているが俺に関しては完全な素で毒舌がスターバーストストリームしてる。茅場もビックリの性能である。そういうキャラだと知ってるから俺からしては好感高いが。

 

「あんた顔は良いんだから黙ってたら良いのに。だから彼女出来ないのよ」

 

「え、付き合ってくれるの?」

 

「どこをどう解釈したのよ」

 

「『私以外には、ね』っていう流れじゃないのか……!?」

 

「そういう所を言ってるのよ」

 

 この言葉の暴力がSAOに実装されていたら俺はもうこの世に居ないだろう。どんなプレイヤーも一撃必殺。絶対防御の神聖剣を貫通するこの威力。これがインフレと言うやつか。

 

 なんだかんだ、まだ現実に来たという実感が湧いていない。SAOの中でも俺だけ感覚が現実と遜色無かったのだから、なんだろう。急に文明が進歩したのと、身体能力が激減しただけ。そんな感じだな。

 

 現在、現実世界は一月に突入している。まさかの最終学期で期末テスト対策が始まりつつあるというクソ仕様。まあ前世の知識で一年の範囲は片手間に出来るがね!! あ、社会系と国語系は別ね? あれはもう暗記の領域だから無理無理。詰め込みます。

 

 詩乃と話しながらスマホをタップ。何故かパスワードが分かるし顔認証も登録されてるしで普通に恐怖だが気にせずに使う。

 まだSAO被害者で目覚めていない人達が居るようだ。ALO編真っ只中だろう。アスナの画像あるんじゃねと思って探してみたが今のところは見つかっていない。

 

 これに対して正直俺に出来ることは無いに等しい。SAOに居た時に茅場さんと話している時にチョロっと須郷伸之とかいうゴミカスの話を俺がしていたが、茅場さんはもう居ないし。俺がALOに行ったところで戦力になるかと言われれば首をかしげるところだ。というか知らん人多すぎ。話せん話せん。

 

 ん〜、誰か須郷の汚職とかデータ集めてくれないかねぇ。あわよくば俺にそのデータ渡してくんないかな。

 

「SAO事件?」

 

「そうそう。俺も巻き込まれたんだよね」

 

「一年間同じ教室で過ごしたアンタはどこの誰よ……」

 

 バカを見る目で見られた。失敬な。ちゃんと巻き込まれたわい。ナーヴギア使ってないけど。

 

「詩乃」

 

「なによ?」

 

「ストーカーには気をつけな?」

 

「?」

 

 眉をひそめて俺の顔を覗いてくる。なんでこう、キリトのヒロイン達はクソ可愛いんだろうね。顔面偏差値ハーバード。キリト友達を顔で選んでる説が出るくらいの美人揃い。ちょっとくらい分けてくれてもいいんですよ? 無理? 無理か。

 

 というわけで、詩乃の家と俺の家とで別れ道。ここを切り取ればただの彼氏彼女の下校風景だから今世の俺アオハルし過ぎでは? 

 

 手を振ってお別れ。さて俺の家へ、というところで詩乃に声を掛けられる。なんぞ? 

 

「今度バイクに乗せてよね」

 

「……ん?」

 

「? 最近免許取って単車も買ったって言ってたじゃない?」

 

「あー、はいはい。記憶喪失記憶喪失」

 

「便利な言葉……期待してるからね」

 

 振り返ることなく歩いていく詩乃。小さくなり、そして曲がり角を最後に見えなくなった彼女を見届けた後、俺はカバンの中に入っていた財布を確認。

 

「WOW……」

 

 免許証入ってますやん。しかも中型。学生の身で単車買ってる俺の財力相当では? 免許取った記憶ないから乗れるのか俺。まあ乗ってみたら体が覚えてるとかいうご都合主義が働くだろう。だよね? 

 

 そして、見たこともない俺の家へと何故か道が分かるために迷うことなく歩くこと10分ほど。見えてきました俺の家。

 

「デッッッカッ」

 

 一軒家庭付き。よく見たらバイクが置いてある。家は二階建てで周りの家よりも一回りほど大きい。俺以外の住人はいないであろうこの家でこの広さは無駄すぎて税務署飛んでくるレベル。

 庭も広め。キャッチボールくらいなら余裕でできるし、なんか野菜育ててるし。あ、このきゅうり食べれそう。きゅうりって冬だっけ? まあいいか。

 

 内装は……うん、やばいね。調理器具揃いすぎだしクソ綺麗だし、テレビでかいしソファでかいし机でかいしキッチン広いし浴槽バグってる。三人入れるぞこれ。逆に虚しいわ。

 

 散策すること30分。わかったことといえばこの家がクソ広いことと、ナーヴギアの類が無いこと。なんかパソコンは一台だけあったけど、ゲームは何も無かった。何を生きがいにしてたんだこの世界の俺は。

 

「どうしようかなぁ」

 

 時計の針がチクタクと響く。テレビを見てもニュース番組ぐらいしかやっておらず、いちばん暇な時間帯。すぐにテレビを消してソファにもたれる。そうして考えるのは今後の立ち振る舞いだ。

 

 生きていた。完全に予想外。

 あの世界で終わりだと思っていたからこそ、何も考えていなかった。

 直近の問題と言えばアスナ救出だろう。ALOには既にキリトがログインしてくれていることを祈るばかりだが、先程も言ったようにALO内で俺ができることは無いだろう。というか会いたくない。気まずい。

 

 となれば現実で動くしかないか。アスナ救出の手伝いぐらいはしたいと思ってはいる。けど、なんの力もない俺に何が出来るというのか。

 

 口座見たらウン億円入ってましたけどね? 金だけはあります、はい。

 なんだよ、俺の境遇。天涯孤独で一人暮らし一軒家で高校通うとか聞いた事ないわ。よく許したな警察。保証人誰もいないっす。

 

 この金使って探偵雇って……ん〜、無理か。時間ないし、そんなんで見つかる情報でもないし。どうすっかなぁ……と考えながら、俺はこの家に一台だけ置いていたパソコンの存在を思い出し、立ち上がるとパソコンがある場所まで歩き、前に置かれている椅子に腰掛ける。

 何か都合よく情報が入ってたりしないかな〜、などと楽観的に考えながらパソコンを開き、電源を入れて立ち上げる。

 ローディングがやけに長く感じる。期待はしていないが、まあ無くてもとりあえず調べるだけ調べてみるか、という気概で待ち、ようやく立ち上がったパソコンのブラウザを開こうとカーソルを動かす。

 

【プレゼントさ】

 

「……ん?」

 

 瞬間、どこか聞いたことのある男の声が脳内に流れる。そしてピロン、という通知音がパソコンから放たれ、いつの間にやらデスクトップに表示されていたひとつのフォルダー。【㊙︎】とだけ書かれた、如何にもなフォルダーを怪しみながらダブルクリック。そして表示された複数のファイル名に俺は思わず失笑が漏れた。

 

「……なーんで、俺のパソコン知ってるんだよ……怖っ」

 

 内蔵されたファイルを開き、内容を確認。その内容の情報量の多さと、須郷の気持ち悪さ、そしてこの情報の発信者である、SAO内での俺の唯一の共犯者と言えるラスボス様の姿を脳内に浮かばせながら、今後の予定を組み立てていく。

 

 雪はまだ降らない。

 

 

 

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