相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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誰だよこいつにトラウマ植え付けたやつ

「再戦と行こうじゃないか」

 

 異形の背に乗り、怪奇的な笑みを浮かべるその男はライフルを手にし敵を見据える。

 

「キミの魂はどんな味なのか……貪り尽くさせてくれ!」

 

「……敵キャラってだいたい初めは圧倒してくる展開がテンプレだろ?」

 

 その男の前に、浮かぶ玉座に座る男は足を組み頬杖をついて面白くなさそうに狂人を見下ろす。

 

「何十年、命のやり取りをしてきたと思ってんだよ……ガキ」

 

 開戦の合図は、不可視の刃に軍人の右脚が斬り飛ばされるものだった。

 

「────頭が高い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈◈

 

「知り合い……なの?」

 

「いや全然知らない人」

 

「怖……」

 

 キリコ? 誰それ知らない人ですね。どうもレインです。

 

 感動の再会。涙を流し俺にしがみつく長髪の男。はいはい知らない人ですねと、涙回は終了ということでキリトの手をゆっくりと剥がしていったらシノンが間に割り込んできて俺の体を引き寄せてきた。彼女かな?? 

 

「その冷たい感じも……なんか安心するなぁ」

 

「「うっわぁ……」」

 

 なんか笑ってるんだけどコイツ。いよいよヤバいやつか? 

 冷たくあしらわれて喜ぶ変態になってしまったキリトはやはりキリコなのかもしれない。巫山戯るな……ッ、誰がキリトをこんな風にさせたんだ!!! 

 

「着いてこないで」

 

 俺の腕を組んでスタスタと歩いていくシノンと俺にキリトが着いてくる。というか俺に、か。シノンは割とマジで冷ややかな視線をキリトに向けてガチトーンで突き放す。

 

「そうだそうだ。来るな変態」

 

「お前はどういう立場なんだよっ……」

 

 ん〜、ツッコミのキレがイマイチだなぁ。この一年ちょっとで鈍ったか? 悲しいぜ……。

 

「本当に男……? あのアバターで??」

 

「世の中には女の子になって女子を騙すために大金はたいてアバターのリセマラするやつもいるんだよ……」

 

「死ねばいいのに」

 

 シノンさんからの死ねばいいのに、頂きました。それを受けたキリトは耳に届いていない模様。やっぱあいつ重症だわ。病院連れてってやれ。

 

「レイン……レイン……」

 

「呼ばれてるぞシノン」

 

「文字数しかあってないでしょ」

 

「『ン』も同じだろ?」

 

「だから何???」

 

 第三者から見たら完全に修羅場とかそういうのなのかね。俺の腕組んで歩く女性と涙がまだ残るストーカーのような女性(男)。うんうん、ニュースになりそうだね。

 

「で? 本当に知り合いじゃないの?」

 

「いや、めっちゃ知り合いだけど」

 

「先に言いなさいよそれ……まあなんか怖いから逃げるけど」

 

 こいつ気づいてるのかな? さっきから腕にぺぇが当たってんだわ。こういう時だけは五感が冴えている状況に感謝せざるを得ない。おや? 何やら悪寒が。

 

「もしかしてアイツ、シノンに女のフリしてた?」

 

「あざとい方向のね。男って知ってから思い返したら本当に気持ち悪いわ」

 

「だってさ。どんまいキリト。彼女候補一人減ったな」

 

「もう泣くのやめようかな?」

 

「元から止まってたでしょ。なんなのアイツ」

 

 歩いて歩いて、また歩く。更衣室のような場所に二人で入るとなんか普通にキリトも入ってきてシノンの絶対零度の瞳がさらに凍りついた。あれ人殺せるな。

 

「ねぇ。本当に気持ち悪いから出ていってくれない? 今から着替えるの」

 

「えっ、ここ更衣室……ご、ごめんっ!! すぐ出てい……なんでレインもそこに居る?」

 

「レインは良いのよ。部外者はさっさと出ていって、通報するわよ」

 

「良くねぇよ!? おいレイン、お前も出るぞ!! 話は山積みなんだ!!」

 

「俺シノンの下着見るのに忙しいから後にしてくれ」

 

「お前ほんとお前ッ……」

 

 とまあ、冗談はさておき。流石に俺もシノンの下着を見るような真似はしない。後でチラッと覗き見するだけだ。だから俺はシノンに声をかけてキリトと二人で部屋から出る。

 

「見ないの?」

 

「見ます」

 

「出るぞっ!!」

 

 ちっ。本人公認だったのに邪魔しやがって。許さねぇぞキリト。絶対目の前で死んでやる。今度は死体を残してなぁ!! 

 

「さあ、説明してもらうぞレイン。今まで何してたのか」

 

「高校通ってた」

 

「はぁ……?」

 

 詰め寄ってきたキリト。美少女に壁ドンされる男の構図だけど一ミリもドキドキしない。なんだこれ、まじで見た目だけはいいのに付いてるもんなぁ。眼力怖い。

 

「その辺は聞き出そうとしても無駄だぞ。説明することはこれ以上無いし理解できるとも思えない」

 

 死んだと思ったら授業中で、高校に通ってることになってたとか言っても理解できないだろ。それ説明するならこの世界が創作物だという必要があるかもしれないし。無理無理。説明おーわり。

 

「じゃあそれはまた今度聞く」

 

「だから意味ないっての」

 

「なんで俺たちに会いに来なかったんだよ。生きてる事だけでも伝えてくれたら……ッ」

 

「お前の住んでるところとか知らないから行けるわけねぇだろ」

 

「アスナのは知ってるだろ?」

 

 痛いところを突いてくるな。

 

「だから会っただろ」

 

「一回だけだろ────なんでだ」

 

「告られて気まずかったから」

 

 キリトの瞳が僅かに揺れる。思ってたよりもしょうもない理由だったからだろうか。アスナが俺に告白したことについては知っている様子。というかもういいかな? シノンが戻ってきそうだし。

 

「こういう人間だぞ俺は。もうシノンが戻ってくる、他に聞きたいことはあるか?」

 

「……ッ、ああっ、クソ……まだまだ聞きたいことはあるんだ。今度時間作れよ」

 

「生きてたらな」

 

 息が詰まる。さっきよりも激しい動悸、明らかな動揺。まだ俺の死がトラウマなのかこいつ? ますますもう一回死んで慣れさせる必要があるなぁ。

 

「死銃に撃たれに来たんだろ?」

 

「なんでそれを────」

 

「俺も大会参加することなったんだから、撃たれたらもしかしたら死ぬかもな」

 

「……やめろッ!!!」

 

 息が荒ぶる。

 俺を見てくるその瞳は微細な揺れが起こっていて、上下に動く肩は止まらない。

 

 それを何処か他人事のように見つめている俺がいる。

 

「……エントリーを取り消せ」

 

 じゃああの時に言っとけ? 

 

「もう受付は終了したぞ」

 

「じゃあ棄権しろッ」

 

「俺は出るよ」

 

「っ」

 

 だって詩乃の目がキラッキラしてたし。ここでやめますなんか言ったら落ち込むでしょあの子。俺も死にたくないけどね。止めれるならやめたいけどね。

 

 と、俺の頭をコツンと硬いもので軽く小突かれた感覚を受けたために振り返る。

 

「着替えた……けど。どうしたの?」

 

「服えっろ」

 

「下半身撃ち飛ばすわよ」

 

 なんで女の子って露出多いんだろうね? 態々胸元を開けてくださる奉仕精神には涙を禁じ得ない。てかほんとに可愛いなこいつ女神ですか? というシノンがそこに居た。

 

 様子が変わったキリトを見て、流石に困惑しているようだ。

 

「本当にどうしたわけ……?」

 

「色々とね。まあ大丈夫だよ」

 

「そうは見えないけど……」

 

 多分、この会話も聞こえていないのかもしれない。それほどまでにあの時のトラウマはキリトの中で大きく強く根付いたものなのだろう。

 

 だから俺は先人達が残した素晴らしいお言葉を思い出し、行動する。

 そう。「飴と鞭」である。

 

「俺は死なないぞ────キリト」

 

「────」

 

「?」

 

 親友の死という「鞭」を受けて傷付いたキリトに対する「飴」とは、死なないという安心感である。確かにそこに存在する俺が安全であるという保証が何よりの飴になり得ると俺が判断しました。ソースは知らん。全部俺。

 

 まあ鞭⇒飴と来たら次は鞭なのでもう一回キリトの前で死ぬのは確定事項になっちゃった訳だけど。この塩梅が難しいのだろう。偉大な言葉だぜ。

 

 ピクっと身体を震わせたきり、落ち着きを取り戻してきたように見えるキリトと、何を言ってるのか分からないというシノンの対比。今は分からなくていいよ詩乃。その内俺死ぬからその時に理解してくれい。

 

「で。悪いけど俺も装備整えてくるから、その間キリトにルールとか教えといてくんない?」

 

「私が教えるの? あんまり気乗りしないんだけど」

 

「まあまあ。こいつ変態だけど良い奴だから。シノンも会話ぐらいはしてやってよ」

 

「……レインが言うなら……まぁ……。ところで、レインはどこのブロック?」

 

「Aブロックだな」

 

「そっか。じゃあ戦うとしたら本戦だね。頑張りましょ?」

 

「おう」

 

 俺の基本装備は銃二本。シノンが選んでくれたけど特徴とか分からないから種類も知らんし銃としか呼称できない。へカートぐらい分かりやすいものならまだしも、ただの拳銃にしか見えないからなこれ。

 

 装備を整える、と言いつつもそれ自体は直ぐに終わって、二人から離れて軽く見回り。主要人物を何人か確認した後、最警戒人物を発見出来なかったためやはり警戒を高める。

 

 天井に張られたライトが光り、アナウンスが始まる。二人と合流する前に試合が開始するようだ。

 

 さて。そうこうしているうちに待機場所のような謎空間に飛ばされた訳だが。

 目の前にはスクリーンのようなものに対戦相手の名前と開始までの時間約一分が表示され秒毎のカウントダウンが始まる。相手の名前何これ? 読み方分からんいちいち厨二病出してくるなや。

 

 ここでひとつおさらいというか、初公開情報でも言っておきますか。

 数多のミニゲームを行ってきた俺が分かったこと。GGO内において最も重要かつ、駆け引きとしても使われるアシスト。

 

 俺には弾道予測線が見えない。

 

 そう、見えないのである。詰みです。史上最年少棋士が一手目で詰むぐらい詰んでる(?)。

 死角からの一撃目は見えず、二撃目も見えず三回目も……。何が楽しいこのゲーム? もうちょい優しくしろや俺に。

 

 寂れた石版。半ばから折れていつ崩れるかも分からない石柱。周りを木々が生い茂り隠れるには絶好のスポットが至る所に出来上がり、俺は1人ポツンと中央に立つ。

 

 俺から見て右斜め後ろ、僅かに右寄りの方角に二発弾丸を撃ち込み、思考を再開。

 

【Congratulations!!! Rain Win!!!】

 

 弾道予測線が見えないというのはかなりのハンデだ。現実と同じ感覚なんだからそんなもん見えるわけねぇだろ精神での設定なのだとしたらマジでやめて頂きたい。匙加減が分からんなどういう基準で俺はゲームに立たされているのだろうか。

 

 景色が変わり、さっきまでいた控え室へと戻る。扉から出て周りを見れば参加者では無い観客達がモニターを見上げていて、俺の他にはまだ帰ってきていないようだ。

 

 話を戻すが、弾道予測線が無いというのは紛れもないハンデ。では、俺に対してはハンデしか無いのか、と言われれば否と答える。

 

 恐らく生身でのログインに限りなく近いことをしている俺だけに許されたこと。それはアンダーワールドでの技術の先取りを除いた中では一番に挙げられるもの。

 

 レベルアップによる身体能力向上は他のプレイヤーと同じもの。成長幅が大きいとか早いとか、そんなものは無いけれど、違う点がひとつ。

 

 ゲーム内において、俺の感覚はレベルに引っ張られるように向上しているということ。

 

 人間の反応速度は0.1秒が限界だとか言われているらしいが、ゲーム内における俺の反応速度はそれを遥かに上回っている。間違いなく二刀流に選ばれる素質を持っているのだ。まああの世界では俺は完全な異物だったためにユニークスキルなんてものを与えられなかった訳だが。

 

 まあそんなことで、ハンデに見合うかは知らんがギフトも贈られているのでギリギリ耐えているだろう。本戦での立ち回りはどうするか未定ではあるが。一つだけは決まっているが、フィニッシュはどうしようか。

 俺が死ぬことなくB.o.Bから生存する為には、途中棄権か優勝しか無い。途中棄権をするならば人数が減る前に行わないといけないし、優勝は普通に難そうだからなんとも言えない。

 

 まあなるようになるだろう。無事、あの二人が本戦出場を決めることを祈るばかりだ。

 あとは俺のやることも済ませておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは妖精の世界にある酒場のような空間。

 

 バーカウンター、ソファ、リビングデスクと一通りが揃い広さも上々。複数人で騒ぐにはもってこいの空間。

 

 植物も育ち、綺麗な花々が咲いた花壇のそばにあるソファに腰かけ、プロジェクターを見上げる存在が四人。バーカウンターに腰掛ける男が一人いた。

 

「もう、後四人だけ────」

 

「キリトさんは大丈夫でしょうか……」

 

 一様に漏れる言葉は心配の色が濃いもの。

 それらは画面に映る存在へと向けられていた。

 

 そこに映るは異なる世界、ALOとは違う銃の世界であるGGOの大会映像。

 右上にはLIVEの文字。中継として今リアルタイムでそれが行われていることが分かる。

 

 今、カメラに大々的に映し出されているのは黒髪長髪の男、キリト。光の剣を携え奇襲を待ち構える佇まいは、画面を見るもの達にとっては見慣れた剣士の作法。

 

 もう一つのカメラに映されるは水色の髪をした少女。

 シノンと表記されたプレイヤーは先の中継を見る限り、キリトと共に行動していることは明らかで、味方だという安心が浮かび上がる。

 スナイパーライフルを構え、地面に這い待機する姿勢は正しくガンナー。経験したことの無い世界の映像の緊張が伝わるように、息が詰まる空気が漂う。

 

「キリトくんと、あの女の子と、例の死銃らしきプレイヤー……あと一人が分からないけど」

 

 中継画面の横に浮かぶ文字列。そこに書かれるのは参加プレイヤーの名前計30と、名前の横に浮かぶdeadとaliveの文字。aliveの数が既に四つのみ。見慣れたキリト、そして他二つのプレイヤーは特定ができていたが、もう一人のプレイヤーの名前欄が文字化けした様に表示され解読が出来ずにいた。

 

 死銃の存在。それは異変に気づき呼び出した菊岡から聞き出したキリトへの依頼内容。GGOですらただのゲームでなくなってしまったことと、それに巻き込まれているキリトの存在。

 SAOを共にし、ALOでも過ごしてきた仲間が集まり、ただの大会では無い殺伐とした試合を固唾を飲み見守る。

 

『さぁ! 残るプレイヤーは四名!! 奇しくも二人組が二つ、二対二の構図になったようだァ!!』

 

 中継に付随しての実況の言葉に熱が篭もる。実況を切れるのならば今すぐにでも切りたいと思ってはいるが、それありきの動画なためにそこには目を瞑る他ない。

 

 が、時として重要な情報を流すのも実況。

 

「二人……? 死銃と組んでいる人が居るの?」

 

 小さなナビゲーションピクシーを肩に乗せたアスナが呟く。その視線は文字化けした四人目の名前へと向けられる。

 

『ここまで残った四人中三人が初参戦という大番狂わせぇ!! これを予想出来た奴がいるのか!!』

 

 文字化けしていた欄に動きが生じる。

 

『氷結のスナイパー、シノンと組むのはGGO内で銃を使わない剣士、キリト!!』

 

 カタカタと、理解不能の文字列たちが動き始めて新たな文字を形成する。

 

「何あれ……?」

 

「文字が、動いて……」

 

『対するのは!! ごめん! 読み方分からん!! すてぃるべん? 見たいな人ぉ!! 見た目が怖いぞぉ!! そしてそして〜────』

 

 画面に映るキリトが目を見開く。同時に引き抜かれた光剣、流れる動きで振り抜かれた剣は火花を散らし、弾丸を消し飛ばす。

 同時、シノンと呼ばれたスナイパーが放つ轟音の弾丸。真っ直ぐに進んだ超速の一撃は寸分違わずキリトを狙撃した存在へと飛んでいき……一刀両断された。

 

「────ぇ」

 

 その声を漏らしたのは誰か。アスナか、ユイか、シリカか、クラインか、はたまたリーファか。

 リズベットだけは、画面に映し出された新顔が今まで出会ってきた誰とも一致しなかったために特にリアクションをすることはなく見守っていたが、周りの反応が異なっていたために見渡す。

 

 それは弾丸を両断されたからか……否。

 

『ちょぉぉい!? 今何したこいつ!? 予選全てを最速で突破したこの男!!!』

 

 そこに映し出された文字、読み上げられたプレイヤーネーム、映し出される姿。

 

 全てが記憶と同じ男がそこに居て。

 

「パ、パ……?」

 

 ユイの呟きを耳にしたアスナは、極々自然に涙を流す。

 

 目覚めた瞬間の淡い記憶、写真でだけ見た彼の生存確認。

 そしてそれらが間違いではなかったのだと、今回のことではっきりと理解出来たからこそ、アスナはただただ涙した。

 

『────レインだぁああああ!!! バレット・オブ・バレッツ、優勝は誰の手にッ!!!』

 

 キリトとレインの対立。

 

 戦況は、最終局面へ。

 

 

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