相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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ざぁこ、ざぁこ♡

 何が間違っていたのだろうか。

 

 今更その問いの答えを考えても意味なんて無い。そう分かってる。

 

 けれど。それでも。

 

 過去は変えられない。この世界は、もうダメだ。

 

 なら、俺に出来ることはなんだ? 

 

 もう何もかもを失った俺が望むことを叶えるためにするべき事はなんだ? 

 

 後悔はある。いや、後悔しかない。

 

 あの時、あの瞬間、あの場所にいれば。

 些細な変化で、あいつを救えたはずなのに。

 

 分かってる。これは自己満足だ。こんなことをしたところであいつが戻ってくることなんて、奇跡が起きなければ有り得るはずもないことだ。

 持ち得る全てを賭して、あらゆる偶然と必然が噛み合って見えた光の先で、もう一度奇跡が起きなければ有り得るはずのない希望だ。

 

 もう一度言う。これは自己満足だ。

 

 成功する見込みはほとんどない……そんな、僅かにはあるかのような言い方をしてしまう自分が愚かで口元が歪むけれど。それでも。

 

『パパッ、ママッ────』

 

 ────手本は、見た。

 

「手を貸せ────茅場」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈

 

 

「シノンの射撃は全部俺が落とす。キリトとのタイマンを楽しめよザザ」

 

 どもども、レインです。

 色々あって高校入学からの記憶を入手した訳ですが、いや〜中々動いてるのね俺。まあそれでも詩乃があそこまで俺に心を許してるのは疑問でしかないが。

 

 自慢するようなことは何もしてないし。ちょっとしたお話しくらいだろうか。まあ語るほどのことでは無いけれど。

 その記憶が結合したけれど、それ以前の記憶は一切無いし。どういう存在なのかね俺は。

 

「■■」

 

 もう既に相手方は準備万端。開戦の合図はわざわざ行ってくれるサービスなんか無いし、けれど先手を打ったのはザザ。

 サプレッサーだかスプレッサーだか知らないけど、ほとんど発砲音が聞こえないライフルいいなそれ俺も欲しい。それを当然のようにビームサーベルで弾くキリトは人間辞めてるねあいつ。

 

 空を握る。名前を呟く。顕現するのは俺の愛刀。装備枠に含まれない三つ目の武器。俺の持っている銃ではシノンのへカートIIに歯が立たないために仕方なしに使用を決める。

 

「もっと撃て撃て〜」

 

 へカートIIはその性質上、マシンガンのような連射は出来ない。それでも等間隔に襲ってくる弾丸の頻度は相当なもので、毎回ほぼドンピシャなのはシステム補正なのかシノンの技量が高すぎるからなのか。

 

 正面から見てみると弾丸の回転って綺麗だな、と思いながら、撫でるように真っ二つ。じっと目を凝らしてみれば、ザザの弾丸は全てキリトに防がれているようだ。

 

「何しとんねん」

 

「無茶ヲイウナ」

 

 このままでは膠着状態が続くばかり。俺が突っ込んでもいいが、その間にシノンに狙撃されてもザザを守れないし面倒だ。俺が出るのはキリトに一発当ててからだが……。

 

「しゃーねぇか」

 

 シノンが俺に与えた武器。そのサブウェポンである、俺からしてみれば何の変哲もない拳銃。連射性能とか口径がとかあるのかもしれないが俺にはさっぱり分からん一丁。

 

「大サービス」

 

 それを俺は腰から抜き取り、適当にキリト辺りに発砲する。何もつけてないからか火薬の音が強く一瞬ビクッとしたが、直ぐに戻って意識を切替える。

 

「ズドーン」

 

 百メートルも飛ばないだろう弾丸。小さくも俺にははっきり見えるその軌道。そこに俺は、さらなる加速を加えるように指を弾き不可視の弾丸を撃ち込んだ。

 空気砲のようで、しかし実体がある世界の意思であり心の具現化。それは俺の狙い通りに俺が放ち落ち始めた弾丸に当たり再加速。初速よりも遥かに速い一打がキリトの肩を撃ち抜いた。

 

「キッショ」

 

「お前そんな感じで喋れるんだ」

 

 銃から真っ直ぐのものでは無いために弾道予測線も無意味。弾丸を見て斬るのではなく銃口と超感覚を使っての対処をするキリトにも防げなかった。けど何となく二撃目は防がれそうだなと銃を仕舞うと隣からのザザのドン引きの声。いやカタカナだけども。

 

 困惑するキリトの表情。あいつから俺のことは見えていないだろうし何が起きたか分かってないのか。シノンは冷静に俺とザザを狙って発砲。キリトざまぁと、キリトの顔を見て笑いながら迫り来る弾丸を切り伏せる。

 

「んじゃ、そろそろ行くか」

 

「マダ、アテテナイ」

 

「子供か」

 

 こいつあれか。自分で当てたいのか。しょうもないことで駄々こねる子供かこいつ。ザザじゃなくてダダにしろや名前。

 

「んじゃ、俺が先行して射線隠すから。俺にあたる寸前で避けるから弾道予測線無しにキリト撃てるだろ」

 

「キッショ」

 

「お前疲れてんだろ?」

 

 キャラも忘れたのかこいつは、と思いつつ、高台から身を傾けて外へと乗り出し、足裏に風を集めて一気に踏み出す。

 

「チーターかよ」

 

 自分で自分をそう評価する。この世界では有り得ない力の行使。一番近い表現はチートを使っているという言葉。全くもってその通りと俺も認めたいけど、俺の事をいくら調べあげようともツールの使用なんてやってないから事実無根で言い逃れできるし。勝ったね。

 

 この世界では前例のない跳躍。それは飛翔、レーザーが如く。

 そういう割に速度は出ていない。滑空だ。曲線を描かず直線にキリト目掛けて飛んでいく。

 

 はぁ!? と素で驚くキリトが遠目ながらにはっきりと見える。口を大きく開けて、子供みたいに糾弾するように口を尖らせて。器用なやつだな。

 

 次いで、俺の背後から感じた弾丸の気配。音もなく、俺よりも遥かに速く迫り来る閃光をギリギリまで堪え、当たる寸前に首を傾げ回避。俺の耳の真横を空気を切り裂く音を奏でながら小さな弾丸は飛んでいく。

 それはキリトの頬を掠め、赤い傷跡が頬に作られる。目を見張ったキリトは続け様に撃ち込まれてくる弾丸を感覚と視力で対処。それでも、弾道予測線が見えていないであろうキリトは完璧に捌けず小さくないダメージを受ける。

 

「あらよっと!」

 

「ちぃっ!!」

 

 ザザも、射線的には俺の頭を狙って結果的にキリトに着弾しているからこそ精度は低い。数打ちゃ当たる精神のそれは間違いなく効果を発揮していて。

 そうして数十秒ほど、真っ直ぐにキリトの元へと辿り着いた俺は銃の銃口を握ってグリップ部分でキリトへと叩きつける。大して早くもない攻撃、リーチも短い。キリトは当然のように光剣で対処。

 

「お前チート使ってるんじゃないだろうな……ッ」

 

「お前もそのうち使えるようになる、れっきとした技術だよ」

 

 刀は既に虚空へと消し、銃をキリトに弾かせると空いた胴体に発勁の要領で拳を叩き込み僅かにキリトを吹き飛ばす。

 

「おごっ……!?」

 

「ハンデ。武器は使わないでやるよ」

 

 そもそもこの世界においてグラフィックの差が俺とキリトでは歴然だし、身体能力はともかく感覚の強化という面で俺はアドバンテージを取りすぎている。誇張なしに、この世界で俺がキリトに負けるはずがないのだ。

 

 アンダーワールドならその差も無くなっていくかも知れないが、現状の仮想空間で俺が負ける世界は無い。それに。

 

SAO時代(あのとき)に比べたら笑えるぐらいお前弱いぞ」

 

「ぐっ……」

 

 一年以上のブランクも加味したとして、だ。

 あの世界は文字通りのデスゲーム。死ねば死ぬという当たり前とも言える環境で、最前線で戦っていたこいつはもっと執着が強かった。

 生きて帰るという目標。SAOをひとつの世界とみなし、世界に抗う強い意志をもってして、異形のモンスターとの殺し合いの日々。

 

 要は、気持ちの差ではある。まあ俺にとってはこの世界もデスゲームなんですけどね。

 

「ッ、はァ!!!」

 

 あとはまあ、単純に武器の性能か。

 キリトの言葉を借りるなら……その武器は軽すぎる。

 

「なんで空いた左手を使わない?」

 

「ッ!」

 

「相手に選択肢として考えさせないことでここぞと言う時に相手の意表を突くためとか考えてんのか? 意味ねぇよ馬鹿が」

 

 この世界で光剣……近接武器は主武器なり得ない。遠距離武器が主流の中、近接戦闘は意味をなさないから。

 だが、近接戦闘の距離にまで持って行ければ、光剣ほど強い武器はない。今がその状況、ならばキリトが行うべきなのは空いた左手でサブウェポンである拳銃を使い俺に牽制の弾丸を撃ち込むこと。

 

「この世界に入って即日にB.o.Bにエントリーして、そのまま予選突破」

 

 キリトの右手を掴み動きを封じて鳩尾を蹴り飛ばす。

 

「本戦出場、最後の四人まで生き残ったと。俺強ぇとか思ったのかよ」

 

 無手の攻撃とは見た目や衝撃の割にダメージが入りにくい。だから何度も撃ち込んだ俺の打撃は然程キリトに響いてはいないけれど、衝撃は弾丸とはまた違う鈍く重いものとして伝わる。実際、俺に殴り、蹴られしているキリトはその度に苦渋の声を漏らすほど。

 

「甘いんだよ。お前は。何も分かってない」

 

 その慢心がいつかお前を滅ぼすぞ。親友となったユージオを目の前で失うぞ。もう一回死なねぇと分からないのかお前は。

 

「半端に銃なんか選んだのも馬鹿だよ」

 

 そうだ。光剣を選んだというのなら、こいつが選ぶべきサブウェポンは決まりきっていたんだ。

 金が無かったから? 課金しろや馬鹿が。俺はしたことないけどお前はどうせ課金厨だろうがよ。金なんか菊岡やら国が出してくれんだから絞れるだけ搾り取れや。

 

「なんで二刀流にならなかった」

 

「っ……」

 

「振り切るならとことん剣士になれよ半端者が」

 

 鈍く、重く響いた銃声。シノンが放った強烈な一撃。

 それは俺たちの方ではなくて、ザザがいる方へ放たれていた。恐らくザザの銃は使い物にならなくなっているだろう。となれば、キリトとの相手はザザに渡さなければ。

 

「ぁぁあああっ!!!」

 

「ほいほい」

 

 雄叫びにしては弱々しい確かな叫び。俺の言葉に触発されたのか、左手で銃を抜き俺に数発発砲してくるがその軌道をゆっくりと見定めてから全て避ける。流れるように迫る光剣を避けるには場所が無かったため、少しのダメージは覚悟して白刃取りのように右手を差し出し掴み、

 

「────────」

 

 確かに感じた痛みに、思わず大きく後退した。

 肩で息をして見つめてくるキリトを無視して、自分の右手をじっと見る。

 

 見た目的には少し赤くなった程度か。皮が破けたわけでも出血をした訳でもない。しかし、仮想空間において、SAOでは感じることのなかった被ダメによる痛覚。現実のものに比べればお粗末なレベルだけれど、確かな痛みに驚きを隠せない。

 

 GGO本来の仕様か? いや有り得ない。現実とは異なるとはいえ、この痛覚レベルが通常だとするならば銃弾飛び交うこの世界を生きていこうとするユーザーは居ない。ならば恐らく俺仕様。俺に対してのペインアブソーバーが解除されつつある。

 

 面倒だ。それが率直な感想。

 もっとも、セーフティから一歩も出ることなく、実証しようとしなかった俺の失態だが、まさか痛覚レベルが上がっているとは思わなかった。

 

 まあいいか。

 

「じゃ、あとは頑張れよ」

 

「な……」

 

「お前の相手は俺じゃないって言ってんだよ……乗り越えろ」

 

 何処から来たのやら。結構離れてたのに全力ダッシュしてたのかと想像したらちょっと面白いが、無骨な剣を携えたザザがスタンバってたので交代する。

 

 その際、ザザを狙ったシノンの援護射撃を顕現させた刀で切り伏せながら。痛覚あることが分かった以上、シノンの弾丸受けたくないし。絶対痛い。

 

「楽しめよ」

 

「ダマッテイロ」

 

 ザザって冷静に考えてメンヘラだよね。というかめんどくさい系彼女。

 自己紹介したことないのに相手に名前忘れられてて根に持ってたり悲しんでたり。そのくせ気づいて欲しいからってラフコフのマークわざわざ腕に刻んで、トレードマークである赤目も継承させてる。こいつめんどくせぇ。誰が気付くんだよ。あれか? 爪切ったり色変えたりしたら口では言わないけど気づいてくれなかったら不機嫌になるダルい彼女か? めんどいめんどい。興味ないってそんなの。ばかばか、お前は弟を殴ってくれればそれでいいんだよ。

 

 今頃、というかもっと前かな。シノン大好きストーカーもギミックにハマってくれているかな。捕まりはしないだろうけど、自尊心ぐらいは抉りたいじゃん? 茅場さん有能すぎて一家に一台だわ。

 

「────てわけで」

 

 俺の右肩へと飛んできた弾丸を身を捩り避ける。吹っ切れたのかどうかはまだ不明。けれど、引き金を引けるほどには回復しているらしい。

 

「ゲームならむしろ殺意迸ってるのもよく分からんが」

 

「……ッ!!」

 

 あー、でも。全部急所は狙ってこないんだよなぁ。それは作戦なのか、究極のところセーブがかかってるのか。

 

 シノンと俺とでは相性がね。シノンはめちゃくちゃ強いよ。でも俺が相手なら封殺出来る。こればっかりは相性の問題。

 俺の天敵は今のところヒースクリフか。硬いし攻めるしでクソめんどいからな神聖剣。

 

「ほら、チェック」

 

 俺の真上に浮かぶドローン。中継用のカメラ。今考えたら俺の姿配信されてるのか。そういえばこの映像ってアスナ達も見てるんじゃね? やだ、恥ずかしいわ。というか気まず。

 

 スナイパーライフルは遠距離用。中距離でもまあ行けるけど、近づかれるごとに不利になるのは必然。刀使ってるのはご愛嬌。だってそれ以外に対抗武器無いし。ここまでの距離まで来たら避けるのもしんどいのよ? 確実な手段使わせてくれよ、死んだら死ぬんだから。

 

 距離的不利を悟ったのか、へカートを背に担いでサブウェポンである銃……やっぱり何度見ても違いが分からない。なんて言うんだろうねあれ。まあ拳銃を取り出して打ち込みながら下がっていくけど、速度が足らない。一歩で詰められる。

 

「うきゃっ」

 

 態々拳1つぐらいまで接近して、銃を握る手を取り、攻撃手段を失わせてから鋒を首筋へと突きつける。急に近づいてきた俺を見て小動物みたいな悲鳴をあげてシノンは身長差もあってか下から俺を見上げる。

 

「チェックメイト」

 

 最後の抵抗か、振りほどこうとしたりジタバタ動いてみたり。それら全てが意味を成さなくて、数秒すればシノンは脱力して息を吐いた。

 

 ジトっ、と。恨めしげに俺を見てくる。

 

「……チート?」

 

「半分そんなもん」

 

「通報するよ」

 

「それは勘弁」

 

 銃を落とし、抵抗の意志を捨てたシノンの様子を見てから手を離す。俺から解放されたのに一歩も下がらないシノンはコツンと俺の胸に頭を預けてきた。

 

 数秒の沈黙。遠くから剣戟が聞こえてくるけれど、戦場と言えないほどに静かな空間。

 

「乗り越えられそうか?」

 

 少しして、俺から切り出す。

 

「……どうだろうね」

 

「銃は握れてたけどな」

 

「雨宮くんだから……ていうのもあるのかも」

 

 俺なら殺してもいいってか? 

 

「ごめんね」

 

 何に対する謝罪なのか。シノンが小さく声を出す。

 

「自立するまで……もうちょっとだけ掛かるかも」

 

 不要になった刀はもう消していて。手持ち無沙汰になった手をシノンの頭に乗せる。

 

 ……どこかから、ビキッ、という音が聞こえた気がするけど気にしないでおこう。

 

「頼り切りになっちゃう」

 

「ほどほどにな」

 

 キリトの猛る声が響く。過去の清算、向き合い、立ち向かうための叫び。

 益々激しくなる剣戟は、多分シノンにも聞こえてるほどに大きい。

 

「貴方が生きてる間は、私は死ねないんでしょ?」

 

「俺が死んだら死ぬみたいな言い方はやめろよ」

 

「どうだろうね……分かんないや」

 

「俺が死んでも死ぬなよ、まじで」

 

「じゃあ、雨宮くんも死んでも死なないでね」

 

「無茶言うなぁ、この子」

 

 俺の服を摘むように握る少女は、はたして自立ができるのやら。

 きっと、現実に戻ったらキリトが場を整えるはずで。そこでは嫌でも過去と向き合わなければならないだろう。

 

 俺の知っていたシノンと、今俺と過ごしている詩乃はもはや別人。どちらの方がメンタルが強いのかは分からないけど、宿り木を早々に見つけてしまっていたぶん自立には時間がかかるのかも知れない。

 もうちょいしたら死ぬであろう俺は面倒が見れないかも知れないけど。けど、俺が原因なのだとしたら、詩乃が独り立ちするまでは一緒に過ごしてやりたいと思いつつある。

 

 まあ、メタ読みするならどうせもう一回死んでもどっかでリポップするだろ。平気平気。

 

「じゃあ約束な。俺が誰かに殺されてもそいつのことは殺さないこと」

 

「なにそれ?」

 

「俺のせいで詩乃が犯罪者になったら罪悪感で死んじゃう」

 

「そうなったらもう雨宮くん、死んでるじゃん……考えとくね」

 

 ……へぇ。キリト勝ったのか。意外だな、俺的にはザザが優勢だと思ってたのに。やっぱり主人公補正入ってるだろアイツ。

 

 じゃあ、俺もここらで退散しますか。

 

「優勝おめでとう、シノン」

 

「え?」

 

「先戻っとくわ」

 

 ポカンと、埋めていた顔を上げて見上げてきた詩乃に笑いが込み上げてきたがそのまま詩乃を抱き寄せて耳を塞ぐ。

 

「ちょっ……!!」

 

「ID ヒースクリフ」

 

 脳内でサムズアップしてきたおっさんは今度ボコそうと心に決め、俺は現実へと帰還するための宣言をする。

 

「リザイン」

 

 接続エラーという判定になるのだろうか。ルール的に退場は出来ないが強引に帰還させてもらった。あざっす茅場さん、やっぱ頼りになるのは初期のボスキャラだよね。

 

「近っ」

 

 目を開ければ目と鼻の先にアミュスフィアを被った詩乃の顔が。もうちょいで当たってたぞ、意識ないところでそれは流石にやべぇ。

 

 どうせ、優勝インタビューやら何やらで一時間は帰ってこないだろうし。俺のやることやっときますかね。

 

 軽く詩乃の髪を撫でて頬に触れる。柔らかく温度のある触り心地、妙に安心した。

 

「どうでした?」

 

『君の言う通り、厄介なストーカーが彼女の部屋へ侵入していた』

 

「どんな感じでした?」

 

『標的だった彼女がいないことに焦っていた様だったからね。彼女の部屋にある電子機器にアクセスして、「ざぁこ、ざぁこ♡お前なんかお呼びじゃないんだよモブキャラぁ♡」と罵っておいてやったさ』

 

「うわきっしょ」

 

『全て君に言われたままの音声を流しただけだがね。発狂しながら帰って行ったよ』

 

「それは上々」

 

 念の為、彰三さんにも警察を手配してもらっていたが、やっぱ捕まんねぇか。てことは、だろうな。

 

「いつ俺の事殺すのやら」

 

 

 

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