相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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なんかクソ伸びてて草。
投稿初日のお気に入りとUA分単位で超えていくのやめろ?
てなわけで投稿です。
それはそうとめっちゃ好きだったSAOの二次創作消えてて泣いた。最終的にユウキと結ばれたあの作品どこいった??


違います、ロリコンじゃありません。そ、そんな顔で見るな!!

 傷心フルMAXのキリトをあちこちに連れ回し、時にはボコボコにして、一瞬でボコボコにし返されての繰り返し。

 毎日俺はキリトと一緒に行動し、普段通りとは言えないが心の内側に踏み込むように過ごしてきた結果、平常運転とはいかないがかなり持ち直しているように見える。

 

 見せかけなのか、本心なのかは分からないけれど。それでも、キリトが笑うようになったからあとはキリト自身の問題と言えるだろう。

 

「行くのか?」

 

 12月24日。世間一般で言うクリスマスイブ。25日よりも特別感があるのは何故だろう。

 そんな今日、キリトは装備を固め、出立の準備を執り行っていた。目指すのはもちろん、今日限定のボス討伐。

 

 化け物サンタである。

 

「ああ」

 

 短く宣言したキリトの声は小さくもハキハキとしていて、確かな意志がそこには感じられた。

 決して投げやりじゃなくて、義務感でもなくて、行きたいという願望がそこには詰められていて。

 

「仮に蘇生アイテムが実在するとして、お前はどうしたいんだよ?」

 

「分かってる。どうせ時間制限付きのアイテムだ。少し夢を見ているのは否定できないけど、ちゃんと理解してるさ」

 

 ゲームで死ねば、現実でも死ぬ。その現実で死ぬ仕組みというのがナーヴギアからの高圧力電流による脳破壊。月夜の黒猫団が壊滅してから約半年。その期間彼女らの現実の身体が安全だと言うのはまず有り得ないだろう。なんせ、チュートリアル時点で死人が出ているのだから。

 

 そのことを、キリトは理解出来ている。サチのメッセージを既に聞いているのもあるのだろうか。

 

「失いたくないんだ……誰も。特に……」

 

 その先の言葉をキリトは紡がない。俺自身、追求するような内容じゃないから詮索するようなことはしないが。

 

 キリトの瞳には光が灯っている。それだけで、嬉しく思う自分がいる。それでいいんだ、主人公。お前が涙を流すのは今じゃない。絶望を感じるのは今じゃない。

 

 さて、今のキリトに俺がついて行かないはずもなく、装備を整えてレッツゴーという訳だが、ここで問題が生じる。

 

 35階層、ひだまりの森到着。

 

「寒い寒い寒い寒い寒い寒い!!!!!」

 

「ガチャガチャの玩具みたいな動きしてるぞ」

 

 呆れたようなキリトの視線に構っている暇もないくらいに寒いのである。おいおいおい、ペインアブソーバーどこいった? 寒すぎて痛いんだが? 

 防寒具着てる人見かけないから全然いけると思ってたのに、既に瀕死寸前なんですが。待て待て、ここまでリアルを再現しなくてもいいだろ馬鹿か。

 

「なんで……おま……平気そうな顔してんの……!!」

 

「寒いとは言っても……言うほどの寒さ感覚は伝わってきてないだろ」

 

 温室育ちのプレイヤーどもが!! こちとら感覚リアルマシマシなんだわ!! 剣で切られても痛くなかったから痛覚は安心してたのに寒さがこの世界来てからの最大の激痛ってなんなん? おい責任者呼んでこい!! 返品じゃこんなもん! 

 

「寒い……助けてぇぇ……」

 

「えぇ……」

 

 キリトの背中に抱きつき風避けに。ついでにコートに潜り込み暖を取る。ふわぁ、あったか……くないな。むしろコートキンキンに冷えてやがる。

 とりあえず、ガチで死の危険を感じたからフレンド画面を開き、アスナに「今までありがとう」とメッセージを送る。そんな意味不明な行動を取るぐらいには頭がおかしくなっていたようだ。

 

 鬼の着信に気づくことなく、俺はキリトに抱きつきながら歩いていく。腕を擦って温めてくれたキリトほんと好き。こいつが女だったら惚れてる自信があるね。

 

 そうしてトコトコ歩いて三千里(そんな歩いてない)。相変わらずキリトを風よけにしていたために前なんて何も見えず全部キリトに任せていたが、キリトが急に立ち止まったことで俺の顔面がキリトの背中にゴールインした。

 

「ぐびゅっ!? はっ、鼻ぐぁああああ!?」

 

「着いたぞレイン」

 

「無視ですかこの野郎?」

 

 こいつは俺の扱いが雑になってきてない? と思いながらも着いたというのなら、とキリトのコートの中からいそいそと顔を出す。瞬間、突風が俺の顔面へと襲いかかり、ぶつけて痛い鼻や耳などに極寒の冷風が雪とともに襲いかかる。ん〜、ここで死ぬ俺? 

 

「尾けられてたっぽいぞ」

 

「よォ」

 

 俺が懸命に鼻を擦り、耳を塞ぎ、あまりにも不名誉すぎる死に方から何とか逃れようと必死になっている時に第三者からの呼び声が訪れた。

 

 こ、この声は!? 

 

「最初期から登場してたのに劇場版であんまりな立ち位置にされたクラインでは……!?」

 

「お、おう……何言ってるかよく分かんねぇが俺の事知ってんだな」

 

 バンダナを頭に巻いて髭を生やした侍のような立ち振る舞いの俺と同じ刀使いでもあるクラインさんである。後ろにはギルドメンバーであろう風林火山のみなさんも勢揃い。おー、誰一人名前分からん。

 

 少し引いた様子を見せるクライン。そしてキリトは少し驚いたように目を丸くして俺を見てくる。なんぞや。

 

「……お前、クラインのこと知ってたんだな?」

 

「会ったことは無いけど。風林火山って結構有名よ?」

 

 っぶねぇ。普通に反応してたから何も考えてなかった。そうじゃんキリトからクラインの話聞いたことねぇじゃん。まあ、風林火山は攻略組に加わるほどには強いギルドだし、有名ってことでいいよね、うん。

 ボス攻略に何度か参加してる俺に知名度ないのはなんでなん? 

 

「キリト一人だと思ってたんだけどよぉ……なんだ、連れが居たのか」

 

 存在感が希薄ってことですかい? 戦争か? 刀使いでキャラ被ってんだよ!! 

 まあ俺が二番煎じみたいなとこはありますけどね? 

 

「ああ。俺の……………………相棒だよ」

 

 ために溜めたな。何も言わなすぎて突っ込むところだった。ん、キリトも耳赤いな。やっぱお前も寒さ我慢してんじゃねぇかと、寒さによる被害を受けた同胞を発見して愉悦に浸る。

 キリトの言葉を受け、クラインはぽかんと目を見開き俺とキリトとを交互に見ていた。

 

「お……ぉおお、おおおおおお!!!」

 

「怖い怖い怖い」

 

 かと思えばこちらに全力ダッシュからの俺の肩を握りしめ前後にブンブンと振り回す。顔はめちゃくちゃ嬉しそうにやってるがブンブンされる度に風が強まるから寒い。やめて欲しい。あと怖い。髭が目の前である。

 

「キリト! 俺はてっきり、お前は一生ぼっちなんじゃねぇかって思ってたんだよ!!」

 

「結構言うなこの人?」

 

「けど……けどよぉ。くっ、俺は嬉しいぞ!! キリト!! なぁ、あんた名前は!?」

 

「レインですうぎゃァ!?」

 

「すまねぇ! レイン、お前に感謝してもしきれねぇ!! 俺じゃあその立場になることは出来なかった!! だから、ありがとう……!!」

 

 感極まったのか、思い切り抱きしめられ感謝を伝えてくるクライン。それはいいんだが、この人装備が甲冑みたいなやつでクソ冷たいのとクソ硬いため接触してる顔面がクソヒリヒリする。くそっ、冷たいから離せなんて言える空気じゃねぇ!! 同調整社会の悪い所が出てしまった。

 

「お前ら、蘇生アイテム狙ってんのか? 二人じゃちと厳しいだろう。俺らも参加するぞ」

 

 俺のことを抱きしめて数十秒。何も無かったかのように俺を離し、胸を張るクラインには驚きの言葉しか出ない。俺はもう顔面が使い物にならないくらいには凍えてるよ。俺は暖を取るためにキリトの真正面からコートへと潜り込んだ。頭撫でるなよォ。

 

「……いいのか?」

 

「おうよ! いつまでもシケたツラ見せてたんなら喝入れてやろうと思ってたんだけどよぉ……そんな心配も無さそうだ。だから今回は、純粋な共闘と行こうぜ」

 

 キリトに顔を埋めてるからなんも見えないが、多分ニカッとしか笑顔を浮かべているであろうクラインの人柄の良さが見て取れる。いい人だなあこの人。酒飲める歳になったら一緒に飲みてぇなぁ。そこまで生きてるのか知らんけど。

 

 ────と、来たか。

 

「キリト」

 

「分かってる」

 

 白い息を一度吐き、懐に刺している刀を抜き去る。そして第三者。位置的にクライン達に向けて戦闘態勢になったからか向こうのメンバーは動揺しながらも防衛へと移行しようとするが自分たちの背後から転移の光が生じたことで転身して構える。

 

「────いや多いな」

 

 同じ鎧を身にまとったシミラールックが勢揃い。顔を出してるあいつの顔が腹立たしいぐらいウザイが、まあ置いておこう。なんだっけあいつら、整合騎士だっけ? みんなシンセシスだったりするの? ディープフリーズする? まあ俺が凍えすぎてディープフリーズみたいなところはあるけどね。

 

「げっ!? 聖龍連合かよ!?」

 

 ああ、そんな名前だったそんな名前だった。

 数は圧倒的にこちらが不利。顔立ちは俺たちの方が勝ってるな、よし。

 

 というか、SAOのアバターはチュートリアルを経て現実の顔とそっくりなはずである。ここに来た聖龍連合なるメンバー達はビビるくらいに全員おっさん……まあ、ゲーマーに歳なんか関係ないからね。いいと思いますよ、子供心は大切だからさ。

 まあ、だからといってこの狼藉が認められるかと言えば、否と唱える他はない。

 

 というか、やっと体を動かせる。殺しはなしだから正確な動きが求められる。故に動くことが多くなるのは好都合というものだ。

 

「お前らはボスの所へ行け!!」

 

 抜刀しようとしたところでクラインから声がかかる。キリトも俺も、目を丸くしてクラインへと視線を向けた。

 

「こいつらは俺たちが食い止めるからよ!」

 

「クライン……」

 

「行くんだ! レイン! キリトを任せたぜ!!」

 

「アニキ!!」

 

「あ、アニキ? ま、まあいい! 行け!」

 

 かっこいいぜアニキ!! 俺が劇場版の不遇枠から救ってやるぞと一欠片だけの心がけをし、キリトと視線を交わすとボスがいるであろう地点へ走り出す。

 ボス攻略なぁ……対人と違って、ボス戦はソードスキルが有効なのちょっとどうにかせん? 俺ソードスキル封印してるからレベルにものを言わせた数の暴力になっちゃうからなあ。

 ソードスキルは使わない。来るヒースクリフ戦のために、俺は素の技術を磨きあげるために。

 

『ギュルルヒルルル!!』

 

「目がイッてる」

 

「こういうところは茅場のセンスを疑うな」

 

「俺はいいと思うけどな」

 

「突然の裏切りやめろ?」

 

 トナカイに見放されたサンタ、ニコラス。遥上空からトナカイに突き落とされ頑張って着地したんだろうなと思うと涙が止まらない。

 着地の衝撃で地面に積もった雪が爆散。何故か俺に向かって雪の塊が飛び散ってきて体全体で受け止める。

 

「────絶殺」

 

 この時、間違えてアスナのフレンド登録を削除してしまったことを、俺は知らなかった。

 

 悪寒。それは体全体にまとわりついた雪のせいなのだと、この時の俺はそう思っていたんだ。

 

 

 

 ニコラスの討伐は無事完了した。ドロップアイテムも、蘇生アイテムというこの世界では規格外のもので、しかしその効果の制約はやはり制限時間が死後10秒という短いものだった。

 

 キリトの落胆はもちろんあった。僅かにでもサチ達を救えるのではないかという期待があったのだからしょうがないのだろうけど、それでも絶望というには程遠い感情だった。

 

「なあレイン。これ、俺が持っててもいいか?」

 

「ん? ああ、いいぞ」

 

 ラストアタックはキリトだったし、ドロップアイテムの所有権はキリトの物だが、律儀に聞いてくるあたり性格の良さが湧き出ているなと感心する。

 シンシンと降り積もる雪。一面が銀世界で、夜空は狂おしいくらいに美しく星々がきらめている。ここまでの景色、現実でも見たことは無かったのではないだろうか。覚えてないだけかもしれないが。

 

「レイン」

 

「どした?」

 

「……いや。そろそろ帰ろう」

 

 クライン達は無事に防衛に成功していたようで。疲弊していても、俺達の帰還を見るやいなや笑顔を浮かべてくれるのだから本当にいい人達。彼等ともフレンド登録をさせて貰った。「何かあったら呼んでくれよ!」なんて、本当にいい人だ。爪の垢を煎じて飲ませたいな、主に俺に。

 

 そして、数ヶ月が経過した時。

 

「────シリカ?」

 

「レイン、さん……?」

 

 幼き少女と再会を果たす。けれどそれは、劇的なものとは言えないものだったけれど。

 ピナが死んだのかもしれない。

 

「レイン、その子は……? ビーストテイマーか?」

 

「ああ。前にちょっと……とりあえず、街に行こうか」

 

「は、い……ピナ……ッ」

 

 涙を流すシリカはピナのことを家族だと思っていたのだろう。これ程の愛情を注ぐビーストテイマーがほかに居るだろうか。とても眩しく、危うくも感じてしまう。

 

「大丈夫。ピナはまだ消えてない、蘇生できる」

 

「ぇ……ほ、本当に!? 本当にピナはまだ……!!」

 

 驚き、詰め寄ってくる彼女の頭を優しく撫でる。感情の起伏が凄まじい。興奮してしまっているのだろうと、落ち着かせるために柄にもなくそんなことをしてしまう。

 ぁ、と小さな声を漏らし、されるがままに頭を撫でられ続けてくれたシリカは気持ちよさそうに身を委ねてくれた。もういいだろう。

 

「よし。その話もしようか。キリト、一旦俺たちの宿に……なんだその顔?」

 

「いや……いつか刺されそうだな、と」

 

 それはお前だよ。ないよ! 剣ないよ! に刺されるから気をつけろ? あと自称神。

 

 うっわぁ、という顔で見てくるキリトの脛を蹴り飛ばし、シリカの歩幅に合わせて歩いていく。

 

「レインさん……その、お久しぶりです! さっきはその、取り乱してごめんなさい」

 

「いいよいいよ。てか俺のこと覚えてくれてたのが驚きだけど」

 

「わっ、忘れませんよ!! レインさんのことは!!」

 

 現在、部屋の中には俺とシリカだけ。キリトは少し買い物に出ると言って今は居ない。自己紹介だけは済ませてあるから律儀な奴である。

 ていうか、なんで俺が残ってんの? キリトの役目じゃね? 俺そこまで詳しくないのよ? ハーレム系主人公のくせに女の子誑かしてるとこあんま見てないんだが。俺と行動しすぎか? 

 

 というわけで、シリカである。ん〜、目の保養。純粋無垢な感じがとても可愛らしい。ロリコンじゃないよ? そういう意味で言ってないからね? 

 

 とまあ、世間話もおいおい、本題へと差し掛かる。内容はピナを生き返す手段について。うろ覚えではあるが、この世界に来てからも聞いた話なのでまじで大まかな説明になるがシリカへと伝わりやすいように心がけて話していく。

 最初はピナが死んだ事実を再認識して泣きそうになっていたが、蘇生のチャンスがあるという流れになったところでパッと花が咲いたように笑顔になった。本当にこの世界は感情の機微が分かりやすい。それにしても顕著な子ではあるが。

 

「ぁ……でも私、レベルが足りてないから行けない、です……」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。俺とキリトは適正レベル越えてるから任せな?」

 

「え!? いや、でもそこまでしてもらうのは」

 

「いいよ。乗りかかった船だし。大した用事とかもないし、女の子にいい顔できるってなったらアイツも喜んで協力してくれるよ」

 

 脳内キリトに突っ込まれた気がしたが、とりあえず無視しとく。

 シリカはどこか申し訳なさそうに、けれど縋るように俺を見上げてくる。不安な様子なのは分かるから、安心させるような笑顔を向ける。

 

「ひゃっ!? ぁ、ぁりがとぅ、ございますぅ……」

 

 挙動不審フルMAX。どしたどした、というツッコミはあえてせず、夜も遅いため向かうのは明日とし、キリトも交えて話をしたいがまだ帰ってこないため、一応メッセを送り空いた時間はシリカと雑談をする。いやいや、本当にいい子だなこの子。うちの子になりません? 

 

『ちょっ!! おま、落ち着けって!!?』

 

『どいて!! 居るんでしょここに!?』

 

『待て待て待て!! 話を……ひぃ!? 剣を抜くなバカ!!』

 

「……なんだか、外が騒がしいですね?」

 

「痴話喧嘩か何かじゃない? ほんと、他所でやって欲しいよなぁ」

 

「あ、あはは。ですねぇ」

 

 ここは宿であるため、当然他の客もいる訳で。

 基本外の音は聞こえない仕組みではあるが、余程の大きな音であればウチから外なら聞くことが出来る。外から聞くには相応のスキルレベルが求められるが。

 ドタドタと階段を上がる音。なにやら喧嘩をしている男女の、特に男の焦ったような声が耳に残る。はー、何やっちゃったんだ彼氏さん? 浮気か? 浮気なのか? 剣を抜くとか相当だぞ? とりあえず近所迷惑だからやめな? 

 

『待て待て! 今は待て!! 話し合いの最中だかグボェ!?』

 

 あ、彼氏死んだ。南無三。

 

 あるぇ? おかしいな。なんで俺らの部屋の扉がどんどんと叩かれてるのかな? 部屋間違ってますよ。シリカは突然のノックに少し怯えた様子。しょうがない、とシリカには離れているように言いつけ、俺が来客ならぬ迷惑客の対応へと出る。さっさと部屋の間違いを正してあげなければ。穏便に済ませたいもんね。

 

 ガチャりとドアを少し空け、顔を覗かせる。

 

「あの、部屋間違ってるぅぇ!?」

 

「レインさん!?」

 

 僅かに顔を出した俺の襟元を鷲掴みにし、外にいた人物に引き出される。後ろからシリカの焦った呼び声、外にいた男からは「馬鹿っ!!」と何故か俺を糾弾する声とが混ざりあっていた。俺は突然の視界の高速移動により現在地が分からなくなったが床へと寝転んだことで天井を見上げる形になり現状確認。

 

「────見つけた」

 

 引き出された時に下手人とすれ違い、その時に鼻腔をくすぐる女性特有のシャンプーの香り。長い栗毛の髪が美しく、その美貌は何人であろうと魅了してしまいかねない威力を発揮。

 顔が真顔であろうと、虚無っててもその美少女っぷりは減らないが、とても怖いので是非ともやめて欲しいと考えた。

 

「ねぇ、今まで何してたの? あのメッセージなに?」

 

 記憶に無い。身に覚えがない。ただただ俺の首根っこを掴みあげて顔の近くまで引き寄せられた相手の顔が近すぎて可愛い通り越して怖い。35層よりも寒くないここ? 暖房どこ〜? 

 

「なんでフレンド登録解除したの……? ねぇ、ねえ」

 

「怖い怖い怖い怖い」

 

 瞳孔ってこんなに開くんだ〜、という新たな発見。こんな形で知見を広げたくなかったな、と少し動揺。もう唇が触れてもおかしくないぐらいに距離が近く、吐息が俺の肌を撫でるがびっくりするくらい嬉しくないのはなんでだろうか。

 

「説明────ね?」

 

「は、はひ……」

 

 ニッコリと笑った彼女……アスナの瞳に光はなく。

 

 俺はただただ恐怖に身体をかため、頷くことしか出来なかった。

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