相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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人の上に立ちたくないのでベルさんお願いしますね

 レインと叛逆者である三人との戦闘が始まって間も無く、アドミニストレータはその様子を俯瞰しながら思った。

 

(え、弱っ)

 

 強者の余裕、そして王の風格。ラスボスに相応しい人物像を演じ、笑いながらアドミニストレータは目の前の戦闘の内容にただただ落胆した。

 

【ソードアート・オンライン】において整合騎士達をくだし、ユージオとカーディナルを犠牲にしながらもアドミニストレータを打倒してみせた者たちとは思えないほどに、それは蹂躙だった。

 

(これに負けた私って……)

 

 アリスは強い。間違いなく、レインの影響を受けているだろう。三人の中で唯一レインの心意の太刀や抜刀に反応が出来るのだから、脅威では無いとはいえアドミニストレータは正しくそう評価する。

 

 問題は残りの二人だ。

 ユージオは特に言うことなし。シンセサイズを施していないことにより原作のように力の向上は無いとはいえ、まあ、うん。

 

 そして、原作主人公(キリト)

 

 なんだあいつ? やる気ある? いつでも殺せるけど? は? 腹たって来た。殺そうかな? 

 

 そんなことを思ってしまうほどに、キリトの動きは遅く無駄で期待とはかけ離れたものだったから。

 

「どういう、ことじゃ……!?」

 

 原作主人公であり、いずれ星王へと至る男。

 そして、全ての道で絶望することが半ば確定している男の実力がこれでは、やはりその結末に帰着するのも避けられないかと、期待はしていなかったがそれでも想像以下の現状に落胆していたところで自身の遥か下にいる幼子の姿をした同種を見下ろす。

 

「あら。どうしたのリセリスちゃん? 信じられないような顔して」

 

「その名で呼ぶなとッ……いや、違う。これは、どういうことじゃアドミニストレータ!!」

 

「なあに?」

 

 怒りと殺意を向けてくる幼子の姿をしたもう一人の最高司祭と呼べる者、カーディナルは歯を噛み締めてアドミニストレータから視線を外す。

 それに倣い、アドミニストレータも視線を辿るように顔を動かし、その先にいる存在を瞳に収める。

 

 それは予想通り、彼女の剣。

 

「二十番目の整合騎士は、二十年前に死んだはずじゃろうが!? なぜあやつが生きて……あの力はなんじゃ!?」

 

「────くっ、あはははははははははっ」

 

「ッ……」

 

 かつての私の過ちであり失敗。この世界で唯一私に手が届く術を有する同格の存在の歪んだ顔を見て、愉悦が込み上げてくる。

 尤も、それは原作のアドミニストレータの話であるが。しかし面白いことに変わりは無いために彼女は嗤う。

 

 全て、掌の上で踊らされていると知らなかったカーディナルの滑稽な姿に。

 

「そう、そうねぇ。そうだもの。あなた、自前の蜘蛛に任せて自分は外に出て来ずにその情報だけでこの世界の現状把握を行っていたでしょう?」

 

「いいや、違う! わしの拠点はセントラル・カセドラル内部に亜空間を創り出すことで設置してあった。窓から様子をわし自ら観察することも何度もあった……」

 

「知ってるわよ、そんなこと。私が言ってるのは、実際に外に出るようなことはなかったでしょってこと」

 

「────まさか。いや、有り得ん!!」

 

 カーディナルの至った真実。それはとても信じられるものではなく、それが成立していたのならば矛盾点が多すぎるために有り得ないものだと切り捨てることの出来るものだった。

 

 カーディナルが生存していることが、その仮定が間違っているという何よりの証拠になるのだから。

 

「あなたの眷属と、あなたの居る書斎……ああ、大図書館だったかしら。あなたが収集する情報をハッキングして、仮想の……『有り得たかもしれない道筋』の映像を流していたのよ」

 

「……ば、かな……なぜ……」

 

 それは、アドミニストレータが行った高度な技術についての言及では無い。

 

 カーディナルがその可能性を思いつき、そして捨てた理由。

 

「わしの拠点に干渉出来たにもかかわらず、なぜ……わしを殺さなかった!?」

 

「気まぐれよ」

 

「なっ……」

 

 アドミニストレータにとって、カーディナルは殺すべき対象である。

 自分を脅かす数少ない存在。この世界の絶対支配者に君臨し続けるために排除しなければならない相手。

 カーディナルはアドミニストレータからの評価をそう定義していたからこそ有り得ない選択をした彼女に息を呑む。

 言葉だけでは掴めないようななにかがあるという悪寒。

 

「まあそうね。強いて理由を挙げるなら……まだ貴女を殺す場面ではなかったから、かしら」

 

「わしを生かすメリットが貴様にあるとでも言うのか!」

 

「殺そうと思えばいつでも殺せたのよ? あなたをここへ転移させたことだけでも証拠になると思うけど」

 

「……ッ」

 

「それに、あなたはこうしてキリトとユージオに整合騎士達と戦える術を授け、ここまで押し上げた。ありがとね、カーディナルちゃん?」

 

「それのどこがメリットになると言うんじゃ。貴様への叛逆者を育てて貴様にメリットなど」

 

「私にメリットは無いわ。ただ、この流れは変えてはいけないものなのよ。世界の理、修正力。それに引っかかっても面倒でしょう?」

 

「何を言って────」

 

「ユージオをシンセサイズする流れは無くなったけれど、『親友が整合騎士として立ち塞がる』という展開に支障は無いもの」

 

「貴様は、なにを……いや……貴様は……」

 

 アドミニストレータの打倒を掲げてから何年経過したか。

 途方もない時間を一人で過ごし、しかし一度たりとも諦めず投げ出さず、宿敵に対する怒りを募らせてカーディナルは生きてきた。

 

 彼女は初めてその感情を発露する。

 

「貴様は……なんなんじゃ……」

 

 理解不能の存在、理解したくない存在を前にした恐怖を。

 

 震えながらの言葉に、アドミニストレータはただ微笑むだけ。

 確かに感じてしまう王の風格、格が違う上位者の覇気。

 

 そして、三人を相手取り一方的な蹂躙劇を繰り広げる二十番目の整合騎士。

 

(なんなんじゃこいつらは……)

 

 活路は見えず、勝機は生まれず。

 走馬灯のように脳裏を駆け巡る今までの日々。辛く、しかし目的の為に図書館で入念に準備し、アドミニストレータを倒すシステムを構築し、協力者がようやく生まれ、遂に報われると思っていたから。

 

「────終わりね。呆気なかったわ。あの子、この道でも失敗するつもり? 残機なんてもう残っているか怪しいのに」

 

 つまらなさそうに目を細めて息を吐くその女が恐ろしく感じてしまって、カーディナルは目を見張ることしか出来ず。

 

 それでも、問わなければならない。戦っている彼らを他所に自分だけ見るだけなんてことは許されないのだから。

 

 意味の無い質問だろうとも、カーディナルは行動を続けなければならない。

 

「あの男は、なんじゃ」

 

「何が聞きたいの?」

 

「あの強さ……常軌を逸しておるっ。整合騎士という肩書きだけでは説明が付かん! システムのオーバーアシスト……いや、違う。そんなものじゃないっ。なんじゃあの男は!? 答えろ!!」

 

 もう既に終局へと向かいつつある戦場を眺めながら、アドミニストレータは息を吸う。

 

(必死な顔……)

 

 もう既に脅威から外して何年経ったか。

 真理に到達し、調停者の役割を果たさなければならなくなったために今まで手を出すことは無かったが、ここまで弱々しい存在だったのかと笑ってしまう。

 

「あの子は、『外』から来た子よ」

 

 だからという訳では無いが、アドミニストレータは端的に答える。

 

「『外』……キリトと同じ世界から来たというのか!? 数十年も前に!?」

 

「────ふふっ」

 

「なにを、笑って……」

 

 カーディナルは噛み付けない。

 抗うための牙は既に喪失しているから。

 ただ、震えながら上位者の言葉を待つだけなのだから。

 

「可笑しいに決まってるでしょ? この世界という例があるのに、お前はその可能性すら考慮に入れていないんだから」

 

「どういう……こと、じゃ」

 

「分からないの? この世界を創ったキリトの世界────どうしてそこが最上位の世界だと思ってるの?」

 

「────有り得ん」

 

「事実よ」

 

「そんな馬鹿な話が……ッ」

 

「外にもうひとつ世界があっただけでしょう────取り乱すことなんてないでしょう?」

 

「────」

 

 格の差を見せつけられた。

 

 存在としての、格を。

 

 同格とは思っていなかった。

 けれど、同じ最高司祭と言える立場で、権限の差はあれどかなり近しい立場だと思っていたカーディナルは、ここに来て認識を改めなければならなかった。

 

 ────この女は、神だ。

 

 地に足付ける『人』と、全知全能たる『神』。

 

 それほどまでの差が、その二人にはあったから。

 

「あっちも終わったようね」

 

 キリト、ユージオ、アリスが沈んだ。

 

 ここから覆す術を、カーディナルは持っていない。その気力さえ、何も。

 

 抗う意思を捨てたカーディナルを見下ろして、アドミニストレータはまた溜息を吐く。

 予想はしていたが、この結末か。戦局を覆す、システムを超越した力を見ることが叶わなかったからこそ、つまらない。

 

 期待は何も叶わなかった。アドミニストレータはただただ落胆した。

 

(────いや)

 

 違う、何かがおかしい。このまま進むはずがない。

 

 ここは必ず正しい形で通過しなければならない場面だから。

 

 アドミニストレータは備える。

 来訪者を知覚するよりも前に。

 

 この場面で、必ず来るという確信があったからこそ。

 

「────アドッ!!」

 

「分かってるっ、行きなさい!!!」

 

 到来の気配を感じる直前には、アドミニストレータはこの部屋の壁を破壊していた。

 

(数が多い!)

 

 転移が機能しないほどの遠方からの襲来。

 飛竜では飛行制限により届かないその場所は、宇宙。

 

 他の整合騎士は向かわせられない。

 射程距離に入った時には、街の被害が大きくなっているだろうから。

 

(さすがにここからは届かないわね)

 

『俺が行く』

『任せたわ』

 

 風素を数十個生成。

 キリト達を放棄して破壊された壁から外へ出るためにレインが走る。心意と風素を用いた跳躍、そこに合わせるようにアドミニストレータが生成した風素の全てをレインの身体を包むように飛ばす。

 

 アドミニストレータの心意により強化された風素。

 レインの心意との相乗効果によりその速度は音速を越え、この世界で観測された速度を超越した。

 

 発生したソニックウェーブによりさらに外壁が破壊される。

 

「いったい、何が……」

 

(────なるほど、こうなるのね)

 

 絶体絶命と言っていい状況からの、突然のレインの奇行。

 その真意を理解できるはずもない4人とは対照的に、アドミニストレータは作り出されたこの状況の全てを把握し、これからの立ち回りを決めた。

 

(全員が満身創痍、チュデルキンは既に死亡。そして何より、キリトの精神状態は最悪(良好)……あと一押しで、壊れる)

 

 ニヤリと嗤う。

 

(来訪者の数は……10そこらね。レインが戻るまで5分ってところかしら)

 

「意図は測りかねますが……彼が居なくなった今が好機です」

 

「分かってる、アリス。キリト……キリト?」

 

(私の想定通り動いてくれているのなら、パスは用意されている……なら)

 

「ユージオ……俺は……」

 

「キリト……立って、キリト。僕達の旅路は、目的地は、すぐそこまで来てるんだから」

 

「────ユージオ」

 

 アドミニストレータは考える。

 絶望を効率的に与える方法を。

 

 絶望しているものに絶望を与えたところで、その効果は薄い。

 故にこそ、適度に希望を与えてから絶望を与える狂気的殺人犯が多いのだと。

 

 レインと過ごし、影響を受けた彼女はレインと同じ結論に至った。

 

「────────────ぁ」

 

 こんなことに罪悪感は感じない。アドミニストレータという女の性根は変わっていないのだから。

 ただ、その女の『大切』にひとつ、誰かが加わっただけ。

 

 ユージオからの励ましを、激励を、意志を受けて。

 僅かに、ほんの僅かに瞳に光が宿ったキリト。

 

 かつての親友は記憶を失い、敵として立ち塞がった。

 言葉は届かず、本当に初対面の他人のように対応されて、身体を痛め付けられて、心身共に傷付けられた彼は新しく出来た二人目の親友の言葉に立ち上がろうとしていた。

 

 だからこそ、ここなのだ。

 

「……き、りと…………」

 

 カーディナルとユージオの身体を、心意の太刀で両断する。

 躊躇うことなく、今までの闘いなんて無視してあっさりと。

 

 ユージオの手を取り、立ち上がろうとしたキリトは、ユージオの胴体から吹き出した鮮血で顔を赤く染める。

 

「あ、どみ、に…………き、さま……」

 

「貴女とユージオに生きててもらうと困るの」

 

「ぁ…………が…………」

 

 降ってくるユージオの身体を受け止める。重い重い身体。けれど、何かが足りないと感じてしまう。

 

 ユージオの身体は、こんなにも短かっただろうか、と。

 

「────ユージオ?」

 

「っ……最高司祭様っ!!!」

 

「アリスちゃん」

 

「なっ────」

 

「『アドミニストレータは、チュデルキンの炎に焼かれて死亡した』」

 

「────」

 

「……おやすみなさい、アリスちゃん」

 

 倒れかかってきた親友へと声を掛ける。返事は無い。

 もう一度繰り返す。背中を生暖かい何かが伝ってきた。返事は無い。

 

 ふと、キリトは前を見上げた。

 

 この部屋に似合わない、赤い赤い絨毯。

 何故だが、それは広がっていっているようにも見えて。

 

「────ぁぁ」

 

 その絨毯の中心にあったものが。

 

「────ぁぁああぁ……」

 

 赤く染まりつつも、見えてしまう水色の何かが。その形が。

 

「────ァァァァァァああああああああぁぁぁあぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁああぁああああああああああああああぁぁぁあぁああああああああああああああぁぁぁッッ!?」

 

 重なる。この世界に来る前の記憶。

 

 濃密な死の匂いが。

 

 物言わぬ人形となった、親友の姿が、重なる。

 

 叫ぶ、叫ぶ。キリトはただ、叫ぶばかり。

 

 ユージオの鼓動は聞こえず、アリスは気絶して、カーディナルは絶命した。

 

 だからこそ、キリトは叫ぶ。

 全てを否定したくて。否定出来なくて。だから、現実を見たくないからと叫び続けた。

 

「『ワールドエンド・オールター』……果ての祭壇にアリスを連れて行きなさい。東の大門の先よ?」

 

 女の声が響く。キリトの叫び声に掻き消されるほどの小さな呟きが。

 

 その呟きに合わせるかのように、透明な柱が天より降り注ぎ、キリトを貫いた。

 

「次は間違えちゃダメよ……キリト?」

 

 宙へと浮き、沈んだキリトを見届けて、アドミニストレータは天へと浮かぶ。

 

 いつの間にか現れていた光の玉を握る仕草を行って。

 

 あとに残るのは、二人の死体と、虚ろな目で倒れるキリトに駆けつけるアリスだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光の柱……いや、外からの干渉か」

 

 このタイミングでの介入、足止めと言わんばかりの数と質。

 宇宙での戦闘はやった事がなかったために少し時間を取られてしまった。

 

 個体ではなく集合体のような相手で、斬ってもそれらが別々に行動するだけであり分裂して逃げる性質もある面倒な相手だった。

 だから、エレメントと武装完全支配術でゴリ押したが。

 

 それはさておき。

 目視ができるが光とは言い難い透明な柱が天から降りたのを確認する。恐らくキリト案件だろう。

 

 高速飛行は重力も加味されてかかなり早い。

 その間に、カセドラルの状況を把握する。

 

「ッ、アド……?」

 

 アドの気配が消えた。それに気付いたのと同時にアドの私室……つまり、キリト達と戦っていた場所へと辿り着いた。

 

「ぁ……レイ、ン」

 

 チュデルキンの遺体……これはどうでもいい。

 

 カーディナルの身体が両断されている。ユージオもか。完全に死んでる。

 

 そして、唯一意識があるアリスと、アリスが抱える軟体動物みたいなキリト。

 

「アドミニストレータは?」

 

「……あの御方は、チュデルキンの炎に焼かれて消滅しました」

 

「────なるほどね」

 

 記憶を弄られてるな。ということは、アドは外に出たのか? 死を偽装した理由は分からないが、そうする理由があったんだろう。ならそっちは置いておこう。

 

「安心しろ。もう戦う気はない」

 

「……そう、ですか」

 

「そいつは?」

 

「分かりません……妙な光に包まれたと思えば、倒れていたので」

 

 よく見れば気絶している。どうせ起きても植物人間か。

 結局、ユージオは死んだんだな。また別に問題がある訳では無いが。

 

 問題はこの後だな。アドが居なくなった事実は整合騎士内では隠すことは出来ない。というか、多分俺がそのポストに立っている。

 直感的に分かる。最高司祭としての立場がアドから俺に引き継がれている。

 

 特別、能力だったりが与えられる訳では無いが、それ相応の権力を受け継いでいるのだ。クソめんどくさい。ベルさんあたりに引き継がせようかな。

 

 あ、シリアス挟んだから遅くなりました。レイン・シンセシス・トゥエニだよ。

 

「カセドラルに居る整合騎士を集める。そいつは医務室にでも運んでやれ」

 

「よろしいのですか……?」

 

「ああ。もう俺にそいつを害する理由は無いからな……アドミニストレータが居なくなった穴が大きすぎる。早急に手を打つ」

 

「……分かり、ました」

 

 ユージオとカーディナルの遺体? なんか光の玉になってどっかに消えていきましたよ。処理せずにすんで助かるね。

 

 それにしても。

 アドが消えた穴が大きすぎるのは事実。アドの存在がダークテリトリーへの抑止力になっていたのは明白。アドが消えた事実が伝わればあいつらが攻めてくるのは分かりきっている。

 

 俺の仕事増えるじゃん。クソめんどくせぇ。

 

 何してくれてんだよ原作主人公。大人しくボコられとけやクソがっ。まあアドが自分で選んだ道なんですけどね。

 

「レイン」

 

 この先の展開を考えていた時、キリトを抱えたアリスがこちらへと近付いてきていた。

 

 その目は何処か心配そうに。不安げに震えていて。

 

「私は、もう、あなたと敵対しなくても、良いんですよね……?」

 

「ああ」

 

 どういう質問? と思ったけどそうだったわ、俺アリスと戦ってたじゃん。明白な敵として。キリトのことボコりすぎて忘れてたわ。

 まあ敵じゃないね。これからは仲間なんでよろしくおねしゃす! という意味を込めて返事をすると、アリスはほっとしたのか笑った後に力が抜けたかのように崩れ落ちてきた。前のめりに倒れてきたアリスを受け止め、アリスの手から零れ落ちたキリトを避ける。

 

 俺からの敵意は相当に堪えたのかもしれない。

 気絶したように眠るアリスは、しかしその表情は険しく、苦しそうで、俺の腕を強く掴み離してはくれない。

 

 今日中の会議は難しいか。自動修復が完了しつつある外壁を一瞥してから、俺はアリスを抱き上げ、キリトの首根っこを掴み下へと降りる。

 

 あとに残るのは、既に消えてしまった二人の血の跡だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ茅場晶彦。あなたもっと上手く立ち回れなかったわけ?」

 

「私の思い描く最善の道を通ったつもりだがね。最適では無いのは同意だが」

 

「まあそうね。私もあなたと同じ考えよ。【娘】と【剣姫】、そして【撃鉄】。このカードを揃えたのは褒めてあげます……想定外がひとつ紛れ込んでいるけれど」

 

「キミの回収のためにラースへと接続した際に流れ込んできたようでね。これには私も驚かされた」

 

「さ、最高司祭、様……?」

 

「そうよ。そんな顔で見つめてきて何かしら」

 

「あ、えっと……『え、あ……その歳になっても、そんな格好なんですね……あ、えと……良いと思いますよ!!』」

 

「あの馬鹿次会ったら殺す」

 

 

「………………なんか増えてるし……」

 

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