相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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太陽神が仲間に加わった!!!!

「き、キクさんっ!!」

 

「どうした比嘉くん」

 

 武装勢力による銃撃を受けたオーシャンタートルはその内部の半分を敵に占拠される形となってはいたがメインルーム自体の死守は完遂出来たために菊岡や明日奈達は一同にそのエリアに留まっていた。

 

 プロジェクト・アリシゼーション達成に向けたチームメンバーの一人である比嘉は忙しなく動かしていた手を止めると焦ったかのように声を弾ませて菊岡へと報告をした。

 

「す、SA(スーパーアカウント)02……【太陽神ソルス】が、何者かに使用されてます!」

 

「なんだと!? 場所は!」

 

「待ってくださいっ……これは……オーシャンタートルじゃない。というか、地上にある支部からでもないっ、完全に外部からのハッキングだ!!」

 

「何が起きてる……ッ、ステイシアとテラリアは死守しろ! 誰の仕業か不明な以上、敵勢力の手に渡ったと考える。これ以上の戦力の漏出は許されない!」

 

 何が起きているのか分からず、その空気に、結城明日奈は呑まれていく。

 

「……キリトくん」

 

 顔も見えず、巨大な装置に横たわる彼の手に自身の手を添えて。

 

 その行為に、なんの感情も抱かない自身の心から目を背けて。

 

「なっ……逆探知、成功しました……」

 

「何処だ!」

 

「これ、は…………」

 

 愛しているはずの男の手を握って。

 この心配は、愛ゆえのものなのだと思い込むように努めて。

 

「ヒース……クリフ」

 

「────茅場晶彦!?」

 

 彼の手は、こんな感触だったのだろうか。

 こんなにも彼の体は小さかったのだろうか。

 

「ぅ、ぁ……ッ」

 

 理解を拒む脳は痛みを生じさせて明日奈の思考を止める。

 

「だけじゃ、無いっす……」

 

「なにが────」

 

「【剣神グラディア】……? そんなスーパーアカウント、どこにも……いや、けど現に使用履歴が……」

 

「今は事実だけを伝えてくれ、比嘉くん!!」

 

 されど、その痛みは明日奈の思考を加速させる要因へと変わり。

 

「剣神グラディアという不明のスーパーアカウントが外部からのアクセスにより使用されてます……これは……【Administrator】……?」

 

「アドミニストレータ? なんだそれは……組織の総称? 個人名なのか?」

 

「わ、分かりません……ただ、現時点でこのふたつのスーパーアカウントがどちら側に与しているのか不明な以上、こちら側とあちら側のスーパーアカウントの数が等しく拮抗してるっす」

 

 一瞬。ほんの一瞬。

 本人ですら知覚したかどうか分からないほどに一瞬、脳裏に浮かび上がった男の姿。

 

 頭を押さえ、ふらつきながら和人が居る機器を支えにして立つ明日奈は頬を伝う水滴に気付かないままに瞳を揺らして虚を見つめる。

 

「……だ、れ……」

 

 銃撃の音に代わり鳴り響くキーボードのタイピング音。

 

 その音に掻き消えるほどの声で、明日奈は届かぬ問いを投げ掛けた。

 

「誰……なの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈

 

 目を覚ますと目の前にはシノンが居た! 

 

 彼女の口から告げられた衝撃の事実!!! 

 

 なんと、俺はシノンと同じ高校に通い、GGOを共にプレイし、そして何故かキリトの親友ポジだったのだ!!!! 

 

 それを聞いて、俺は心の中で一言呟く!!!! 

 

(嘘乙)

 

 そんなの記憶にございませんもの。どうもレイン・シンセシス・トゥエニです! 

 

「『嘘乙』って表現古いわね」

 

「ナチュラルに思考読まないでね」

 

 ん〜、この子距離感が近すぎるなぁ。さては陽キャか? それか男の子を勘違いさせておきながら好意を向けられたら困った顔をする小悪魔か。いやそれ小悪魔じゃなくてただの害悪だな。

 

「んで? なんでアドミニストレータのこと知ってんの、お前?」

 

「ッ……キッつい敵意向けないでくれる? 私が敵じゃないことぐらいは分かってるでしょ?」

 

「悪いけど、俺の知識にあるシノンとお前が全く合致しないんでね。何よりお前は知りすぎてる。そこに納得のいく理由が無ければ俺はお前をすぐにでも殺さないといけないんだわ」

 

 そもそも、降りてくる時期が違うのだ。正確な日時は分からなくても、大戦中だったはず。あと数ヶ月で始まるであろうそれとのタイムラグがあまりにも大きすぎる。

 

 俺がこの世界に来た影響な訳が無い。だって俺は外への干渉を行っていないのだから。あくまでも俺の影響はこの世界だけに留まるはず。

 

 久しぶりに真面目に物事を考えなきゃならんのだから頭が痛いんだわ。さっさと証拠なり嘘デェすって言ってくれるなりしてくれや。

 

「茅場晶彦とアドミニストレータから聞いたのよ」

 

「かや……え、だれ?」

 

「SAOの開発者」

 

 あー、いたなそんな人。カバオくんか。

 

 え、なんでそんな人の名前が今出てくんの? てかアドは何してんの? 

 

「あとちっちゃいアリス」

 

「何してんねん」

 

 まさかのロリス再登場。まあね、チュデルキンのシンセサイズを受けた時に発動するかもしれないフラクトライト隔離の術式を組み込んだ御守りは持たせてたけどね? まさか成功してるとは思わなかったし、成功したところでフラクトライトだけじゃ何も出来ないからなんの意味もない行動だったのに、外に出ちゃったのかよ。まじか。

 

「私がログインしてるのはラースからじゃないわ。雨宮くんの家から茅場晶彦がなんか色々して今ここにいるの」

 

「その色々を教えて欲しいんだけど」

 

「知らないわよ。光ったりワイワイしてるなぁと思ったらこの世界に来てたんだもの」

 

「んなアホな」

 

 ラースってなんだっけ……ん〜……忘れた。でも話的にあれか。キリトがログインしてる場所か。

 

「ああ、それと」

 

「ん?」

 

「『アリスちゃんに余計なこと吹き込んだ件、忘れるんじゃないわよ』だって」

 

「歓迎します、シノンさん」

 

 ロリスお前、あれ言ったんかいぃぃ。

 

 いやいや冗談ですやんかぁ。そんなまじにならんといてぇな? その反応がますますオバサンだってこと露呈しちゃうやつだから。

 

 それはさておき。

 シノンが本物であることはとりあえず納得する他ない。俺の前世か記憶を失っている場所かは知らんけどシノンやらキリトやらと接点があったことにはまだ実感もないし別人説を提唱したいが。

 

 なんにせよ。

 

「太陽神ソルス様でぇす! ドンドンパフパフゥ〜」

 

「シノンです。よろしくお願いします」

 

「……レインお前、その感じ疲れねぇのか?」

 

「もう二度としない」

 

 人界側に来たのならば紹介しなければならない。

 

 急遽集まれた人。

 ベルさん、エルドリエ、イーディス。少なっ。

 

「妹!?」

 

「黙れ」

 

 ていうかシノンのアカウント装飾付けすぎだろ。神様感演出してんのか知らないけど背中のやつとか絶対要らないだろ。

 

「太陽神……ソルス……!?」

 

 エルドリエだけは大真面目に驚いてくれてた。お前そんなリアクション出来たんだ。嘘つけって突っ込む側だと思ってたわ。

 

「なるほどな。そのお嬢ちゃんも外の人間ってわけか」

 

 驚くエルドリエ、目を輝かせる阿呆。この二人を他所に、ベルさんだけは一人思案顔でシノンを見つめ、俺を一瞥すると納得の表情で息を漏らす。

 

「ベルさん正解。だいぶ痛い格好してるけど、外の感性が終わってる訳じゃないからそこは勘違いしないでね」

 

「脳天かち割るわよ」

 

 流れるように毒を吐いたシノンは、ふんっ、と息を吐くと瞬時に衣装が変化する。

 

 へそ出し、胸ちら、大腿丸見え。

 

「えっっっっっっろ」

 

「舌巻きすぎ」

 

「レイン殿、流石にそれは」

 

「気持ち悪いな」

 

 全員から集中砲火を受けた。けれど俺はめげません。だってよく見て? この世界には存在しなかったパッツパツよ短パンとピッチピチのみじっっっかい服。決して大きくない胸が逆に良すぎてまじスタンダップヴァンガードだわ。

 

「てかなんか見た事ある気が」

 

「…………GGOの姿よ。これは私の愛銃」

 

「バカでかいライフルの銃口を俺のデコに当てないでくれる??」

 

 完全に冷えきった鋭い目つきと銃口のダブル攻撃。普通に死ぬ。ライフルって遠距離射撃用じゃないの? この至近距離で銃口突きつけられるとかどんな間抜けだよ。ああ俺でした。

 

「自動換装付きかよ。チーターですか?」

 

「雨宮くんも似たようなこと出来るでしょ。それと一緒よ」

 

「雨宮くんって呼ぶのやめてくんね?」

 

 かれこれ三十年以上。

 この世界で『レイン・シンセシス・トゥエニ』として生きてきた期間。

 

『アマミヤレイ』として生きてきた十余年。それを上回る期間生きてきて共にしてきた名前はそれが本名のようにも思えるものだから。

 

 というか、知らない相手から一方的に知ってる感じで接してこられるのが普通に気持ち悪い。

 

「やだ」

 

「は? 可愛い」

 

 そんな俺の言葉を受けて、シノンからの返答は不貞腐れたような一言だった。

 

 おいおいおいおいおい。は? 可愛すぎる。は? 

 

 クールな感じで、淡々とした口調で、目元も鋭くて、声も抑揚が無いような女性だったのに。急に頬を膨らませて、下から見上げるように、端的に一言だけ跳ねるように告げてきた「やだ」の二文字。

 

 俺は、「ギャップ萌え」という言葉を世界に広めるためにこの世界に生まれたのかもしれない。生きるという意義を知った瞬間だった。

 

 もうキリトとか戦争とかどうでもいいや。二人でランデブーしない? 

 

「戻ってこいバカ」

 

「痛ァッ!?」

 

 神を崇めるように手を合わせた俺を見兼ねてベルさんが俺の頭を叩きに来たためにべルさんの腕の振りの力の流れを逸らして隣にいるイーディスの顔面へと当てさせる。

 

 ベチンッ、を超えてもはやボコッという鈍い音がイーディスの顔面から響いた。痛そう。

 

「き〜し〜だ〜ん〜ちょ〜お〜ッ!?」

 

「わ、悪ぃなイーディス」

 

「叩かれるお前が悪い」

 

「叩くように仕向けたアンタが言わないで!!」

 

 いつものノリ。

 見慣れた光景、エルドリエも苦笑いしながらも大して反応を示さずに一人、シノンについて考えているようだ。

 そして当のシノンといえば、俺達のテンションについていけていないのか黙って俺をじっと見つめている。

 

「どした?」

 

「……楽しそうだね」

 

 彼女が俺に向けてきた表情は、飾り気なんてどこにもない、ただただ安心したかのような顔で。

 

「────女神」

 

「「「お前が言うんかい」」」

 

 自然な微笑みから来る慈愛の眼差しを見て、反応を示したのはエルドリエでした。

 

 お前……アリスしゅきしゅきだいしゅきマンじゃなかったのか。お前にとっての女神はテラリアでもステイシアでもアドでもなくアリスだったじゃん。

 

 ほんとに女神と思い始めたのか、キラキラと目を輝かせて上位存在を前にして平伏するような心構えを見せたエルドリエに俺とベルさん、イーディスがドン引きしている中で、シノンが俺の隣へと歩み寄ってきて肩を触れ合わせる。

 

(え、恋人?)

 

 そんな勘違いをするほどの距離感だった。

 

「────無事で良かった。本当に」

 

 やばい。感動タイムに入ってきた。

 思い当たる節が全くないからめちゃくちゃ気まずい。帰っていいかな。

 

 もうやめてくれという心の叫びが聞こえるはずもなく、シノンは続ける。

 

「けど、やっぱり私じゃ雨宮くんの記憶の統合までは辿り着けないや」

 

 誰か翻訳してくれ。何言ってるのか全然分からん。日本語なのに中身が全く分からない。

 

「ねぇ、あの子は何を言ってるの?」

 

「知らん」

 

 ちょっと黙ってて。笑かせに来てるでしょ。

 

 それにしても、何だこの空気? え? 恋する乙女か何かですか? 俺もしかしてこの子と付き合ってるの? そうなの? いやきっとそうだ、そうに違いない。なんか俺もこの子好きな気がしてきたわ。だって純粋無垢な感じするもんね。シノンって強気だけど恋愛は初心な感じがしてピュアピュアな心向けてくれそう。

 

「次は……私が雨宮くんの代わりに死ぬから」

 

「ドロッドロやんけ」

 

 離れたい。怖い。え、怖い。今なんて言った?? 激メンヘラ発言しなかった?? 

 あれ? 聞き間違い? そう思って隣のスナイパーへと顔を向ければ、そこにあった瞳に恐怖する。

 

 黒い、深い深い瞳。水色の瞳はどこへやら。ただただ暗く、暗すぎてもはや黒の瞳孔ガン開きの瞳がそこにあり。

 いつの間にか俺の腕はがっちりホールド。慎ましくも確かにある胸がムギュっと当たっているがその興奮の全てが掻き消えるほどの生存本能の警告。

 

「きッ……キリトを助けるために来たんじゃないの……ですか」

 

 痙攣した喉を震わせて声を捻り出す。イーディスとベルさんはエルドリエの背中に隠れていた。おい。

 

「あんなやつどうでもいい」

 

 その一言だけでシノンの中でのキリトの立ち位置を理解してしまった。名前ぐらいは呼んであげてね? 

 だって、シノンの顔見てみ? これでもかと顔が歪んで顰めっ面してるもん。どれだけ嫌いなんだよキリトのこと。

 

「あなたが居れば────それだけでいいから」

 

 …………ん〜…………。

 

「ひえっ」

 

 無言でエルドリエと位置替えし、静かに部屋を出ようとしたらその瞬間に手を掴まれる。

 振り返れば、そこにはニコニコと笑っているシノンの姿が。お前この技初見だろなんで一発で対応してるんだよ。

 

「あ〜……諦めとけ、レイン」

 

「そうよそうよ。多分その子、地の果てまで着いてくるわよ」

 

 ガチそうなのが怖い。

 

 さてさて、今日の成果。

 

 太陽神 が 仲間に 加わった !!! 

 

「寝よ?」

 

「部屋に戻れ」

 

 私生活 が 侵された !!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈

 

「ッ……使うよっ、にいちゃん!!」

 

 それは全てを照らす暗闇。

 

 舞い散る桜の花々の輝きが収束する。命を代償として受け継がれた生命の輝き。

 

「逃がさん」

 

 女騎士を抹殺した皇帝は玉座から動くことなくただの気迫のみで妖精を圧倒する。片腕を失った暗黒騎士団長を背に庇う少女と小さき妖精は眼前の敵から逃れる為だけに全てを注ぐ。

 

「リリース・リコレクション!!!」

 

 それは、人界に響くことなく静かに行われた敗戦。

 

 大抗争の前に行われた小さな催しに過ぎなかった。

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