相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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もうちょいで完結できる……はじめて作品を完結できる!

完結したらどうしようかな。キリトくんが泣き叫ぶようなゲーム版ストーリーでも書こうかな。


往け(と言ってる気がしなくもない)

 この世界……アンダーワールドにおける強さとは、つまるところの『心意』の強さである。

 

 技術、力、経験。それらは全て自身の能力が高いという自己暗示のための要素に過ぎず、全ては心意の強化に帰着する。

 

 心意とは、自己暗示。

 神聖語を使うことにより、神聖術を行使出来るという常識は、そうすることによって術式が起動するという自己暗示によって可能な現象。

 

 整合騎士が、生まれた段階からある程度の力を保有しているのは、天界から遣わされた使者であるという背景を与えることにより自分は特別な存在なのだという思考へと誘導することによる自己暗示が為す結果。

 

 拳闘士イスカーンは、ほとんどの時間を鍛錬に費やし、格上を倒し続け自分は最強であるという矜恃を得ることによって鋼鉄を弾く拳を手に入れた。

 

 心意と心意の衝突。

 その間に生まれる勝敗とは、筋力や技術ではなく純然な心意の差で決する。

 

 世界の常識を跳ね除けた者こそが、強者と呼ばれるに足るステージへと進むことが出来るのだろう。

 故に、この世界の存在では無いレイン・シンセシス・トゥエニはアンダーワールドの頂点に位置する実力を保有し。

 アドミニストレータは、世界の真理に到達することによって、それを凌ぐ力を手にした。

 

「システムコール────」

 

 世界の常識に囚われたもの……『神聖術は神聖語を介して使われるものであり、指の本数を超えるエレメントを一度に発動することは出来ない』、『神器の能力は最初に発動した現象からの拡張は不可能である』といったものに疑問を抱く人間は、本来生まれるはずがなかった。

 

 例外として、常識に囚われない外の存在による介入の影響を受けた存在は、一部、その才能を開花させる可能性があるのだろう。

 

 つまるところ。

 

「エンハンス・アーマメント」

 

 ファナティオ・シンセシス・ツーの神器は、中長距離戦において他の追随を許さない能力を開花した。

 

 ファナティオの持つ神器、天穿剣。

 大量の鏡を使用し、アドミニストレータが作りあげた剣。

 

 かつての能力は、簡潔にいえば光のマシンガン。

 ファナティオ自身制御の利かない、自動連射の機関銃のような能力だった。

 

 速度は光速には遥かに劣り、貫通力に振り切った性能。連射性は高いが、決して避けられないものではなかった。

 

 その能力を、ファナティオはレインとの邂逅により昇華させる。

 

 ファナティオの言葉に従うように、天穿剣が眩く輝く。

 そして、剣先から薄く放出される、光の柱。

 

 そこに質量はなく、ファナティオは軽々と剣を構えると、なんの躊躇いもなく横凪に一閃。

 

 剣が空気を裂く音が高く聞こえ、ファナティオは発動した武装完全支配術を解除し、剣を鞘へと納めた。

 

 背後で構える剣士達が息を呑む。

 彼らの目の前で引き起こされた異常。

 

 ファナティオ率いる部隊の前に襲いかかっていたジャイアント族の上半身が、ズレた。

 

 ピタリと動きを止めたダークテリトリー第一部隊、ジャイアント族。その族長を含め、彼らは他の種族をはるかに凌ぐ巨体を誇り、その肉体は鋼のように勇ましい。

 

 その彼らが、例外なく、生き残りがなく、一様に胴が落ちた。

 

 ドッ、という鈍い音。

 彼らの死体から血液が流れることは無い。傷口は全て、光の熱量により焼き塞がれている。

 

「総員────待機」

 

 癖毛の含んだ長い髪を揺らす女騎士は一人、味方に背を向けて凛とした声を出す。

 

 障害にすらならなかった敵の残骸の先を見据えて。

 

 外からの来訪者を警戒しつつ、ひとつの戦局が静かに終わりを告げた。

 

「────今、すっごく光らなかった!? ピカ〜ッて! ピカ〜〜って!!」

 

「……ファナティオの神器だろうな。あいつの使う技はだいたいが出鱈目なものだから……グッ……」

 

「あわわっ。ごめんね、シャスター。ボク、魔法の詠唱はからっきしで……ユイちゃんもダメ、なんだよね?」

 

「……はい。ALOなどのVRMMOであればシステムに直接干渉することで私でも魔法、またはそれに準ずるものの行使が可能です。しかし、この世界で私に与えられている権限は皆さんと変わらないものです。おそらく、『心意』というものが作用して魔法……神聖術の行使に至るのでしょうが、私にはシステムとの干渉が遮断されたこの世界でそれらの現象を引き起こすだけのイメージが出来ないので……すみません」

 

「いいや、構わない。止血自体は出来てるんだ。あの局面から生き延びれただけでも、御の字だろう。むしろ、巻き込んですまなかった」

 

 戦場からは遠く離れた岩陰で休息をする影が三つ。

 

 息は荒く、満身創痍。しかし、明るさを損なわないように努める少女は身に纏う純白のドレスを靡かせながら清流の如き声で鼓舞をする。

 

「謝らないで。ボク達の方こそ、シャスターを連れ回しちゃってるんだからさ。それに……リピアは」

 

「それこそ気にするな。アレには俺達じゃ勝てん。強さ云々もあるが、相性が悪すぎる。ベルクーリならば、勝ちの目はあるだろうが」

 

「…………うん。そうだね、ごめん……よしっ。その、べるくーり? っていう人と合流しよう。シャスターの腕も治してくれるかも」

 

「レインなら可能だろうな。あいつは人の域を超えている。人界側に入れても安心はするな。俺はあくまでも暗黒騎士の装いをしてる。お前達も向こうと顔馴染みじゃないだろう。整合騎士以外と出会ってしまえば戦闘になると思っておけ」

 

「うん」

「はい!」

 

「よし────行こう」

 

 影は動く。

 薄暗いダークテリトリーの陰を歩いて。

 

 小さく響く金属音や爆発音に眉をひそめながら、白い影は歩いていく。

 

「パパ……」

 

「にいちゃん……」

 

 少女達は願う。

 身内との再会を。それが劇的なものになると信じて。

 

「なっ────あれは……ッ」

 

 影が濃くなる。それは詰まるところの、照らす光が強大になったということにほかならず。

 

 三者三様、しかし共通するのは同じ方向へと顔を向け、一様に驚愕に目を見開いているということ。

 

 虹色の太陽の降臨。

 

 ────別れの時は、近い。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

「私が────ッ!!!」

 

『下がれ、エルドリエ』

 

「────レイン殿ッ!?」

 

 ディー・アイ・エルを筆頭とした、暗黒界軍暗黒術師による大規模神聖術の行使。

 

 オークの命を代償として、生命エネルギーによる爆発的な出力を秘めた、おぞましく残酷な大砲。

 

 蛇のように、ミミズのように、あるいはムカデのような、砒素蟲が絡み合う歪な砲弾。

 

 内包された破壊力は、一本道の先にいる人界軍を一掃する程の火力を秘めた、オーク達の命の結晶。

 

 既に放たれてしまった凶弾。それに対して、エルドリエは滝刳と共に戦場を駆け、神器の性質による自爆を試みた。

 

「────避けろォ!!!」

 

 そんなエルドリエに待ったをかけたのは、最後方に控え、誰からもその姿を捉えられることがなかったレイン・シンセシス・トゥエニ。

 

 念話を利用しての通信。

 エルドリエへの命令が下された瞬間、戦場は瞬く間に明るく照らされた。

 

 それは、真夏の太陽。

 それは、空をかける虹の架け橋。

 それは、全てを焼き尽くす灼熱の炎。

 

 ただただ、巨大だった。

 

 球体であることを理解できないほどに、それは巨大だった。

 

 光の集合体、幾何学的な虹模様、メラメラと燃える炎。

 視界全域が虹に染まり、瞳から得られる情報がひとつに絞られ機能しない。

 

 故にこそ、強化された聴覚はベルクーリからの叫びを正しく聞き取り、谷底から飛翔し、あるいは端へと走り回避の姿勢を見せた。

 

「なんだ、アレはッ!?」

 

 暗黒術師達の困惑の叫び。

 

 あまりにも静かな世界に女性達の悲鳴が響き渡る。

 

 瞬間、太陽は一気に収束。山を覆うほどのそれは、成人男性程の直径にまで縮まる。

 

「流石にこれが限界か……まあいい、死ね」

 

 ソレは動いた。

 ディー・アイ・エルが放ったものと比べ物にならないほどに遅い射出速度。

 

 飛竜の飛翔に劣るそれは真っ直ぐに、闇の蟲へと接近する。

 

 裂けるように、包み込むように展開された蟲。

 全方位から、既に虹色とも区別できなくなったナニカを包み込み……蒸発。

 

「は?」

 

 僅かな発光。異変とすれば、それだけだろうか。

 空間が歪むほどの熱量を秘めたソレは闇の蟲を呑み込み、変わらず真っ直ぐに前へと飛んでいく。

 

 僅かに高度が下がる。

 

 そして、球体が僅かな膨張。輪郭が曖昧になり、波打つ波紋のように虹が動いていく。

 

 ────あれは、ダメだ。

 

 ディー・アイ・エルがそれを正しく分析し、叩き出した対処法は迎撃ではなく逃走だった。

 

 生に対しての執着。富を、権力を求めた女はただ生きる為だけに全てを擲つ。

 味方であるはずの暗黒術師達を盾として、生命力として、ただ一人生き延びる為だけに逃走した。

 

 唾を撒き散らし、鼻水は啜らず、醜く、腕を振って不細工に走った。

 

 自身の影が濃くなっていく。背後から響く断末魔。振り向く余裕なんてあるはずも無く、何をするべきか考える思考力は失っていたためにただがむしゃらに走った。

 

「……()()()

 

 ────裏斬り!!! 

 

 圧倒的な熱は大地を溶かし、まだまだ足りないとばかりに突き進む。

 

 じんわりと、そしてヒリヒリと背中に熱を感じ始めたディー・アイ・エルの背後を捉えた虹は、意志を持ったかのように真上へと吹き飛んでいった。

 

「ぐ、お……重、てぇ……ッ」

 

『何やってんのベルさん。あいつらは殺してもいい区分でしょ?』

 

「バカヤロウ。殺すにしろ殺さないにしろ、問題はアレの威力だ。俺達の勝利条件を忘れたのか」

 

『………………わお』

 

「一分間アリスから抱き着かれるの刑だ」

 

『ご褒美じゃねぇか。今からします?』

 

「隣にシノン嬢を置くがな」

 

『遠回しに死ねって言ってる?』

 

 上昇し、止まることなく宙へと進んでいく太陽は、どこまで進んでもその光だけは肉眼でも捉えることが出来て。

 数分後、その光の大きさが変わらなくなった程に離れた虹の太陽は、その身を天の川へと変貌させる。

 

 星の爆発。生命の灯火が消える瞬間。

 

 美しいという思いが湧く。誰も彼もが天を見上げ、その光景に惚けていた。

 

 無数の星々のような輝きが。流れる清流のように美しい光の集合が。

 

(アレは……神の、御業だ)

 

 芸術の域に到達しようとする夜景を前にして、ディー・アイ・エルが抱いたのは畏れだった。

 

 自然災害。人間が決して避けることが出来ず、防ぐことの出来ないスケールでの話。

 地震を防ぐ術が無いように、不可避の太陽を分析してしまった彼女はその発生源が確かに人界側であったことを理解していた。

 

 抗おうとすることがどれだけ無駄なことなのかを理解してしまったから。

 

 どれだけの犠牲を払ってあの太陽を顕現させたのか。オークの群を犠牲にして生み出した闇蟲を一瞬で蒸発させるほどの出力、想像を絶するほどの人界の兵士が消費されたのだろうか。

 

 しかし、ディー・アイ・エルは、先程の光景を全て覚えていた。

 

 自身が生み出し、放った闇蟲に対して、放出後にあの太陽は顕現されたことを。

 

 アレはカウンター。即席で作り上げられたもの。人界の兵士に損失は見られない……故に。

 

 アレは、個人が作り上げた太陽なのだと。

 

(────降伏を)

 

「何処へ行く?」

 

「ぅ、ぁ……ッ」

 

 闇の形をした声が聞こえた。

 あまりにも歪、不気味。鼓膜ではなく、心臓に響いてくるような声が聞こえたからこそ、彼女は目を見開き唇を震わせながら顔を上げる。

 

「皇帝……陛下……」

 

 ダークテリトリーの誰とも違う。一線を画すその存在感。

 下界に降臨してから数日と経たずに頂点に君臨した暗黒神ベクタ。

 

 人の形をした怪物がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈

 

 

「準備は……いいえ。覚悟は良い、明日奈さん?」

 

「はい────■■■(キリト)くんを、助けられるのなら」

 

「……………………」

 

 

 ◈◈◈◈

 

 

(流石に、過程を飛ばし過ぎたか)

 

 親愛なるボッチ達よ。どうもレイン・シンセシス・トゥエニです。

 

 戦争初日が佳境に入ってきた。俺が介入したのはエルドリエが突貫しようとしてたからそれを防いだことくらいか。こんな展開があったようななかったような曖昧な記憶だが、エルドリエが死ななかったのは良しとしよう。

 

 敵の大砲……おそらく、ディー・アイ・エル率いる暗黒術師ギルドによるもの。禍々しく、生命力を感じた死の大砲はオークあたりを犠牲にしての一撃なのだろう。かなりの出力を秘めていたために、即席で作り上げたオールエレメント砲(仮)で打ち消したが、少し無理をし過ぎた。

 

 流石にあの量を一つにまとめて飛ばすのはもう少し時間がかかるはずだったけれど、それだと誰かが死んでいたからな。ベルさんの神器を解放しても、全ては相殺できなかっただろう。

 

 色々と制約を掛けてゴリ押した。結構しんどい。今アドクラスに来られたら普通に瞬殺される。まあそんなやつ居ないけど。

 

『報告。やっぱり、リピアはあっちの皇帝にやられたらしいわ。シャスターは存命で、二人の女の子と逃亡しているらしいけど』

 

 少し前にイーディスから受けた報告内容を思い出した。

 やはりというか、リピアさんは死んだらしい。イーディスが遭遇した暗黒騎士が笑いながらそう言っていたようだ。

 報告の際、イーディスはかなり苛立っていた。気持ちは分からんでもない。あいつはリピアさんのことを結構気に入ってたからな。

 

 そして、もうひとつ。シャスターさんは生存しているという情報。これは予想外。しかし逃亡か。二人の少女というのが誰を指しているのかは分からないが、少なくともあの人はロリコンじゃ無かったはず。ロリキャラがダークテリトリーにいたか? 

 

 戦場を探っても、シャスターさんらしき人は居ない。かなり慎重に動いているようだ。こちらへの接触を図っているのだろう。俺かベルさん、最低でも整合騎士の誰かと会えれば保護はできるが。

 

(俺軍師じゃないんだけどな)

 

 戦略とか練れるはずもなく。とりあえず危なそうなところを支援するだけ。

 

 アリスとシノンにはまだ大人しくしてもらっているけれど、そろそろ二人を投入しなければならないかもしれない。次に外から誰かが来た時がそのタイミングだろう。

 

 ……と。

 

「思ってたよりも早かったな」

 

 世界の輪郭に波紋が生じる。0から1が作り出されたかのような強烈な違和感。

 

 空が輝きを見せる。赤黒い雲は光り輝き、光の柱が地上を照らした。

 

 天女の歌。

 世界に轟くコーラス。幾千幾万もの天の使いが歌を奏でているかのような音とともに、大地が揺れた。

 

 敵の斥候がロニエ達がいるところへ奇襲をしかけたタイミング。一際強い気配、恐らくヴァサゴがいるのだろうと、転移をして助けようかと思っていた時の来訪。

 

 演出豪華すぎるだろ。

 

 地割れの揺れに酔いそうになったので少し身体を浮かし、空から降ってくる女神の姿を捉える。

 

『天変地異!? なになになになに!? ついにこの世の終わりなのかしらっ!?』

 

「うっさい」

 

 繋いだ念話で叫ぶな。耳塞いでも脳に響いてくるから音量下げられないんだよ。

 

 イーディスの騒がしい声、そして悟ったようなベルさんやファナティオさんからの質問を受けて、俺はついにボッチタイムを終わらせる。

 

『ちょっ!? 説明は!? 私を安心させてよ!!』

 

 天からふわりふわりと降りてくる姿は正しく女神のようで。

 髪の長さや服の感じが少しアドを思い出させた。

 

 見た目は完全にシャイニー・イーディスなんだよなぁ。色違いの方が鮮やかという珍しいケース。8192引けたね、いいこと起きそう。

 

「ロニエ、大丈夫か?」

 

『ひょわっ!? れ、レインさんっ!? どこから!?』

 

 ああ、この子に念話の存在言ってなかったっけ。

 

 イーディスよりも瞬間的な火力が高いびっくり声を出したロニエちゃん。イーディスとは違い不可抗力だったために怒るに怒れない。むしろごめんねと言わなければ。脳が痛いです。

 

『ね、念話、ですか……すごい、騎士様達はこんな凄いことが出来るんですね』

 

 ごめん、これ俺だけ。

 

 ステイシアの降臨……つまるところ、アスナ襲来である。

 今日の戦争はとりあえず区切りかな。

 

 おそらく今日の報告とアスナの件で会議が開かれるだろう。俺はロニエやキリトが居る所へと転移した。そこから少し離れた位置にアリスとシノンも居る。こちらへと向かってきているようだ。

 

「あの────貴女は、女神様なのでしょうか?」

 

「……ごめんなさい。私は女神じゃないの────ところで、キリトくんは、ここに居ますか?」

 

 顔ちっさ。

 上から見下ろした時の感想がそれに尽きる。あの子が彼女とかキリトまじで死ねよ。俺の彼女はいつ現れるんですか? 

 

 ロニエ、ティーゼの二人がアスナをキリトが居る荷車へと連れていく。その間に俺は地上へと降り、いくつかぽっかりと空いた地面の穴埋めを施した。

 

『もう少しで着く』

『私も!』

 

 防衛に携わる騎士以外からの連絡を受け、アスナの対応をまず俺がしないといけないのかと人見知りモードを発動しながら三人が出てくるのを待つ。

 

 ギィっ、という音が鳴り、木の板を叩く足音が聞こえたために俺はそちらへ振り向き対応を始めた。

 

 可愛い。何だこの子、ヒロインランキング一位かよ。キリト死ね。

 

 ぱあっ、と花が咲いたようなロニエの表情。敬礼をするかしないか迷ったような仕草をするティーゼ。敬礼要らないって言ったから逆に居心地悪そう。ごめんね? 

 

 そしてその前に立つ、目を見開いて俺を見つめる────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイン・シンセシス・トゥエニは、基本的にオート迎撃のシステムを使用している。

 戦場ではマニュアルで動くこともあるものの、たいていの場合、自身で考案し、作成した自動迎撃システムを発動していた。

 

 これはレインに対しての悪意、敵意、害意、攻撃判定となる事象全てにオートで作用し、レインの身体をそれらに応じて動かし、対処する。

 

 それがレインの考案したシステムの概略。日常生活中には無意識的に起動していた。

 

 だからこその油断。

 

 戦闘になった時と日常でのオンオフが激しい彼はなんの構えも取っていなかった。

 

「────」

 

 彼の視界が真っ黒に染まる。僅かに肌色を含んだものは、人の眉間が目の前に迫っていたから。

 

 唇が温度を感じ取る。柔らかい感触、肌をくすぐる吐息。

 

 背中に回された腕は彼の体を離さないという意思表示。

 それを行った少女……アスナは、自動迎撃システムの対象から掻い潜り、レインに飛び出して唇を交わした。

 

(────────ぁ)

 

 甘く、柔らかい唇。

 少しかさついたレインの唇から流れてくる痺れ。無意識的に飛び出し、わけも分からずキスをしていたアスナの全身に何かが駆け巡る。

 

 それは、見たことの無い……知らないことにされた、かつての記憶。

 

「…………ぁぁ……………………」

 

 今まで、違和感を感じては消えていった、誰かを。

 

 強烈に、鮮烈に。

 偽りの記憶を上書きする、数年の記憶。

 

「ぅ……ぁぁあああ……」

 

 離れた唇から鳴るリップ音。

 湿った唇を拭うことなく、アスナは抱き締める相手の顔を見上げた。

 

 それは、待ち望んだ邂逅。

 

「あなたは……あなたは……ッ」

 

 名前だけが出てこなかった。けれど、それ以外のことが、全て。

 

 言葉を捻り出そうとするアスナは彼の名前をおもいだそうと頭を回す。

 それ以上に零れてくるのは涙。溢れる思い出の代わりに、雫がこぼれ落ちていく。

 

 幸せそうに、苦しそうにはにかむ少女。

 

 想い人との再会を果たしたアスナが目にした、彼の表情は。

 

「「ッ……」」

 

「ぇ────」

 

 あまりにも、冷たくて。

 

 背後からの引力と浮遊感を感じたアスナの鼓膜を、剣戟の音が震わせる。

 

 そこに居たのは、貫禄のある青い着物を着た騎士と金の騎士が、レインの振るった刃を受け止めている光景だった。

 

 ────別れの時まで、あと…………

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