次かその次辺りからは皆さんお待ちかねレインくんフルボッコのお時間です。
そしてキリトは発狂死。素晴らしい計画惚れ惚れするね
人界とかダークテリトリーとかは究極のところどうでもいい。
近しい人達が無事ならそれでいいのだ。
彼らが苦しまない環境作りのためにダークテリトリーと人界の和睦が必要だと感じたから俺は人界とダークテリトリーの和睦を実現するために動いた。
俺の知る原作……正史において、キリトが王になったことでダークテリトリーと人界の共存は実現されたのだろう。
だからあいつが使えるのであれば使うし、使えないのであれば斬り捨てるのを躊躇うことは無い。
キリトが起きて重要な立ち位置になるのであれば俺はあいつを生かすし王に推薦してもいい。
起きないのであれば大戦終了と共に殺すだけ。アスナだけが居ても意味が無いだろうからついでに殺すし、外の力に魅力を感じてはいない。
繋がりは作っていて損は無いだろう。けれどそれだけだ。
この世界の重鎮に、外にも同じ人間がいるってことだけ知ってもらえれば十分。
まあ、自分でも何言ってるのか分からなくなってきてはいるが。とどのつまり。
「ダメだレインさんっ!!」
俺はキリト側のプレイヤーでも、殺すことに躊躇いは無いということ。
「待って、雨宮くんっ!」
遅れてどうも、レイン・シンセシス・トゥエニです、はい。
バンダナつけた侍を筆頭に敵意を向けてくる味方様達。
剣を抜いた俺の前に立ち塞がるシノンは手を広げて俺と向こうにいる奴らとを隔てる。
アスナは頭を押さえて動かない。
「理由は知らんけど、俺を敵と認識してるんだろアイツらは」
「待って、お願い。私が誤解を解くから……だから、あなたがあの人たちを斬るのだけはやめてよ」
お願いというか懇願か。
俺にあいつらを殺して欲しくない、と。
説得なんて意味なさそうだがね。敵意というか恨み籠ってる目してるし。はじめましてだろお前ら。
それに、この戦争での俺の目標はほぼ達成されている。
用済みだ。
「シノンはともかくとして。俺はあいつらに魅力を感じない。俺に敵対するっていうならただの障害だろ。取り払うだけだ」
自意識過剰という訳では無いが。
俺やベルさん達が戦線に出た時点でこちらの勝ちは確定している。
ダークテリトリーはもはや敵ではなく、赤い鎧を纏ったプレイヤー達を共通の敵とする味方だ。
そして唯一の懸念点だったベクタの実力はもう量った。相手にならん。
だからもう、この程度の助太刀は必要ないし、邪魔なことをするのなら早々に退場して貰うのが良いだろう。
「そいつから離れろシノン!」
「クライン待って! 彼は違うの!」
ほら。交渉の余地は無いだろう。
あいつらの中で俺のそっくりさんが何をしたのかは知らないが、俺を味方と捉えることは不可能な程に、アイツらは俺に敵意を向けてきているから。
というか、もう……面倒だな。
「最高司祭の権限を俺は引き継いだ。この世界の管理者が世界をリセットすることを弾くことぐらいはもう出来る」
「っ」
「必要ねぇよ。お前ら」
元々、想定していたのは敵に外からの来訪者がいることだけ。
味方として降りてくる奴らは勘定に入れていない。
唯一の懸念点といえば、この世界の発展を諦めた外の管理者による世界の削除だ。外の二勢力は互いにアリスが目的だったはず。今のところアリスを外に逃がす必要性は感じられないために出さないとして、キリト達を消せば恐らく奴らはアンダーワールドを見限るだろう。
だが、俺は今アドの立場を継承している。
本来の立場の人間では無いために劣化版の権限しか無い。だからこそ、外からのプレイヤー達のログインを許容し、世界の削除という選択肢のみを弾くことに尽力した。
結果、今は外の奴らはこの世界を消すことが出来ない。この世界を構成する機材全てを破壊すればその限りでは無いかもしれないが、そんなことをするリスクヘッジ位は出来てるだろう。その選択肢は限りなくゼロに近い。
故に、用済み。
剣を構え警戒しているが、攻め込んでくる様子は無い。
あいつらの中で、俺は強者の部類に入っていると記憶しているのだろう。
もうじきベクタの中身がログインしてくる。それまでにこいつらを殺す。
簡単なことだ。
「みんな待ってよ! なんでみんなレインに剣を向けてるの!?」
一思いに全員を切断しようとしたところで、聞いた事のない少女の声が聞こえた。
確かに俺の名前を呼び、俺に敵意を向ける集団の中から走り出てきた彼女は俺に背を向けて彼らに向き合い抗議を始めた。誰だあの子?
「ユナ! 戻れ!」
「エイジっ、なんでレインにそんな顔を向けてるの!?」
「アイツはレインとかいう男じゃない! 君はあの集団を知らないだろうけど、アイツらは人殺しを快楽的に行う殺人集団なんだぞ!!」
痴話喧嘩が始まった。
喧嘩別れをしかけているカップルみたいな感じだなぁ、と。
少し落ち着き始めた脳でそんなことを考え、少し様子見することを決める。
「ユナ……!? それに、エイジも居んのかよ……」
(誰)
何やら向こう側で盛り上がっている。
あの男と女は重要な立場にいるキャラなのだろうか。普通に記憶に無い。ごめんね。オリキャラですか?
「どうして? レインのこと忘れたの? あの人は私の歌を好きだって言ってくれた二番目の人なのに!?」
「そんな人、僕は知らない! レインなんてやつは……知らない!! いいからこっちに来いユナ!!」
「あのデスゲームの中で、あんなに良くしてもらったのに! どうして忘れちゃってるの!? みんなもそうだよ!?」
もはや俺の戦意まで削がれてきた。
あっちの男……クラインたちも戸惑っているのか、剣先が下がり始めている。
「ユナ……そうか、記憶改竄はオーグマー装着者にだけ作用したものだから……!!」
何かを理解したシノンが一人で目を開き痴話喧嘩を見つめる。
おいてけぼりにされている俺にも少しは教えて頂きたいものである。
仲間内……もちろん敵の中で、の話だが。
どうやら俺と争うことをやめるように動いた少女とその他とで口論になっているようだ。マジで誰だあの子。原作キャラの顔とかマジで覚えてねぇやつが多いんだよな……。
ふと、辺りを見渡してみる。
俺の前に立つ集団。老若男女……年齢でいえば四十超えてそうなやつはいないだろうけど、色々といる。
先頭に立つクラインと、エイジと呼ばれていた少年。
その後ろで棍棒や斧や短刀を構えるカラフルなヤツら。
その中に小さく佇む、一人の少女を見た時。
『相変わらず硬いわね……理論で詰めても意味が無いのかしら、この防御式は』
身に覚えの無い、あの女の声が聞こえてきて。
『誓約……縛りね。ある程度のデメリットを請け負うことで、イタズラ程度の精神干渉は可能かもしれないか』
なんの光景も思い浮かばない。ただ声だけが再生され始めた。
ノイズの走ったアドの声。それは今俺に向けられたものではない。おそらく、過去に聞いたはずの、覚えのない一方的な独白。
「────シリカ?」
「え────あれ?」
その少女と目が合った俺の脳裏に湧き出してきたのは……
◇◇◇◇
「わたし……あの人のこと、知ってる……?」
「は……何言ってんのよシリカ?」
決して開くことの無い記憶の封印。
「なんでみんなレインを悪者扱いするのよ〜!!」
「ユナ!!!」
小さな論争。
斬り合いに発展しない、幼稚な言葉の応酬にしかならない時間は静かにすぎていく。
決して警戒を解かない者。
歌姫の慟哭に戸惑いを見せる者。
記憶の混濁に涙を流す者。
僅かに蓋が剥がれた者。
見守ることしか出来ない者。
そして、一人の男は頭を手で押さえる。
『代償だけではなく、解除の条件も現実的なものにしないとダメなのね。厄介な壁ね……』
それは、男が忘れていた記憶。
20年前の一夜に起きた、女王の所業。
『そうね……
眠っていた自分に、意識のない自分に施された、精神汚染。
リアルワールドの人間に対するマイナス評価の増幅。
結城明日奈への嫌悪。
『普通に会うのはつまらないでしょ』
「……あんの……くそ女……ッ」
怒りは沸かない。憎悪なんて以ての外。
ただ、男に湧き上がる感情は、アドミニストレータに出し抜かれてしまったという悔しさだけ。
知らぬ間に手のひらの上で踊らされていた辱め。
口調とは真逆に、彼の口角は上がっていた。
性根の変わらない女神の悪巧みに懐かしさを覚えたからこそ。
「ヒューっ。やっぱてめぇも居るよなぁ……
一部とはいえ、二十年前の記憶を思い出すということは、つまるところ、二十年前の知識を今の記憶に上書きすることと同義。
(てことは、あの女の子……映画のユナか。あいつがエイジで、見下ろしてきてる野郎がPoh……ヴァサゴ)
「あのデスゲームに居た頃にゃ、殺し損ねたからなぁ……メインディッシュの前の腹拵えにはちょうどいい前菜だなぁ!!」
空から降り注ぐ無数の赤い光の柱。
それは今まで確認されてきたプレイヤーの総数をはるかに上回るものになっていた。
元ラフコフのリーダーの再来。
クラインは一度そちらに目を向けると、最悪と言っていい現状に歯噛みする。
ラフコフのツートップが揃ってしまった、と。
ユナにより中断されてしまった、【Zero】との一触即発。
あの世界で、キリトですら苦戦した相手が二人もいるという事実に、彼等の顔が歪む。
「シノン」
そして、その場のほぼ全てから敵意を受ける男は、隣に控える女神へと声を掛けた。
呼び掛けられたシノンは状況の変化に戸惑いながらレインの声に耳を傾ける。
「心意の波が強まってきてる。多分キリトが起きる頃合いだ。お前は雑魚狩りに専念してくれ。アレの処理はキリトがする」
「……雨宮くん?」
「俺はあっちの相手をしてくる」
「待っ……て……っ」
シリカはじっとレインを見つめる。
記憶に居ないはずの男の姿を焼き付けるように。
アスナは痛む頭を押さえながら手を伸ばす。
既に姿を消した男へと。
「あぁん? 逃げやがったのか────」
「エンハンス・アーマメント」
誰よりも早く、空へと矢を放ったシノンの一撃が無数に分裂し、小さくも無限の軍勢に見える敵プレイヤー達へと着弾していく。
爆発音、絶叫。
痛覚が正常に機能してしまっているからこその叫びを背景に、残酷な世界に氷の華が咲き誇った。
それはきっと、望まれた復活ではない。
完全な復活ではない。
しかし、多くの者から強要されたからこそ、黒の剣士は立ち上がった。
「……疲れたよ。本当に」
ひとつの剣から広がった氷は仲間を避け、敵だけを包み込み氷の彫像へと早変わり。
暑くも寒くもなかった死んだ大地に咲いた氷の花畑によって、体感温度が十度以上下がるように感じてしまった。
「なんで立ってんだろうな、俺」
漆黒のロングコート。
荷車に載せていた二つの鞘が意思を持っているかのように宙を舞い、男の背中へと交差して装着された。
ただ一人、氷に包まれながらも内側から破壊し生還した殺人鬼は追い求めたものに辿り着いた喜びに打ちひしがれ、歪に口を歪ませた。
「キ、リト……くん……」
「やめろ。その感情を俺に向けるな」
「ぅ、ん……分かってる────分かってる」
その男の心は治ってなどいない。傷ついたままに、彼は立ち上がる。
それこそが、キリトに求められた役割なのだから。
「行こう────
後に、星の王と呼ばれる男……その片鱗。
「さぁ、再戦と行こうじゃないか!!!」
「どうせ、俺はお前を殺せないんだろうな────だからお前は俺に勝てねぇよ」
二つの戦場で火花が散る。
過去との因縁。
一方的な時間稼ぎ。
「っ……シャスター!」
「ベルクーリ、か……」
「べるくーり、さん? だよね。お願いっ、シャスターの治療をしてあげて!」
全く別の戦場でも動きはある。
この戦争の終局へと、確実に進んでいる。
「お兄ちゃんが頑張ってる……きっと、戦ってるからっ、だから、私は……戦うの!!」
孤軍奮闘。
オークをはじめとした勢力を拡大していき、一柱の女神は剣を掲げる。
兄の目覚めを感知したからこそ、彼女は足を止めることは無い。
どれだけ傷を負おうとも、どれだけ息を切らしても、どれだけ精神をすり減らされても。
無制限回復を有する呪われた肉体をもって、彼女は世界を救うために動いているからこそ。
「────────は?」
その出会いは必然だったのだ。
「テラリア……か」
「なん、で……?」
その邂逅は、誰に語られることもないもの。
なんの前触れもなく、気配もなく、ソレは彼女の前へと現れた。
ブチブチ、と。
目を見開きソレを見つめていた女神は携える剣ごとその身体を潰されていく。
骨が、筋肉が、装備が潰れ、捻れ、ちぎれていく音が響く。
権能による回復の光。
それは直径10cmの球体となるまで続き、血の一滴すら零れずに圧縮され続け、遂には光を失ったそれは霧となって世界から消えた。
「────始めよう」
ソレは告げる。
世界と世界を繋げた張本人は容易く女神の肉体を得た少女を殺し、宣言する。
世界に対する意思表明。
もう止まらなくなった自分自身への戒め。
全てを失い、全てに裏切られ、全てに絶望した男の慟哭なのだから。