相棒枠に収まろうと思う   作:ラトソル

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日間二位〜。やったぜ。
過去に何処までランキング伸ばせたかとか見る機能ないんかね?
感想、評価ありがとござます!励みになるっす!


イベントに全参加は流石にしんどいよね

 きっと、俺は目を逸らしていたんだ。

 

 違和感は散りばめられていた。確かに感じていた違和感。

 けれど俺は、その違和感を見て見ぬふりをしていただけだった。結果を遠くへと置き去りにしたくて、いずれ訪れるその時を迎えたくなくて。

 

『長く行動を共にしていたキミが彼の違和感に気づかなかったはずが無いだろう……キリト君』

 

 その事実に気付きたくなくて。それ以上に幸せな日々が恋しくて。生涯最高の親友と紡いでいく剣の世界での物語を綴る手を止めたくなかったから。

 

 あいつは分かってたんだ。自分で分かっていながら、それでも攻略組に加わって最前線で手を貸してくれた。俺はその手を、頼もしいと握ってしまって、引っ張って、共に走って。

 

 黙れと叫んだ。そんなはずが無いと。何かの間違いだと、あいつに何をしたんだと、目の前の男に糾弾して。

 

『────惨めだな、キリト君』

 

 管理者権限を使用しての暴行なのだと。そう言ってくれた方がどれだけ救われたか。自分を正当化して、目に見える悪を責めるだけで自己の正義感を満たすことが出来るのだから。

 

『目の前で起こった事象。キミの目に映ったもの。全てが事実だ』

 

 その結末を認めたくない。こんな未来を辿りたくなかったと、過去の自分を責めていく。

 隣りで倒れているアスナは壊れた。叫んで、叫び続けて。俺と同じように現実を否定しようとして、その果てに今や虚ろな瞳で倒れるだけ。その痛々しく消え入りそうな彼女の姿が、まるで自分自身のもののように感じて。

 

 告げられる。事実を、あの男の口から。聞いてしまえばもう終わり。どれだけ言葉を並べても、受け止めてしまった事実を覆すことなんてできるはずがないんだから。

 

 耳を抑えて、外界から自分を遮断して。丸く屈んだ自分の姿は酷く滑稽なものだと俯瞰して感じてしまう。

 

『────彼は、消滅した』

 

 その事実だけが、俺の中に残り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈

 

 はいどうもレインです。

 

 アスナに一週間程度拘束されてましたが、アスナの作る料理が美味すぎて驚き桃の木ガチャガチャの森です。

 いや〜、美味いねあれ。何なのあいつ? 料理人? フルコース食べさせられたんだけど、大満足です! 

 

 醤油の試作品みたいなのも貰った。彼女曰く、まだまだ本物とは程遠いとの事だったが、俺からすれば正真正銘の醤油だった。前にヒースクリフと食べたラーメンといい、今回の醤油モドキといい。俺の味覚の判定がやはり他とは異なるようだ。これはただの仮説だが、ハンバーガーとして作ったものはハンバーガーとして感じる、みたいな感じで、素材の完成度関係なくその味を俺の味覚は感じているのではないだろうか。

 

 彼等はナーヴギアを介し、脳波の送信を受けて味覚を脳内で処理しているのだ。しかし俺は実際に食べ、舌先から味の信号が脳に送られるという違いがある。だからこそ原作で散々な言われようだったラーメンを俺は美味しい現実と遜色ない味だと感じたのだろうか。予想でしかないためにこの仮説の是非は分かりかねるが。俺の味覚がシンプルに終わってる可能性も捨てきれない。

 

 まあそんなことはどうでもいい。七日間のうち、その全てで泊まっていけとアスナに言われ6回断り最後の一日は根負けしてアスナの家に泊まった。何故か命の危険を感じたが問題なく楽しい日々ではあった。

 

 ピナの蘇生に成功したシリカからの報告を聞き、嬉しそうに俺に話してくる彼女の姿がとても眩しく可愛らしかったために尊さというものを知った。推しにお金を投げるのはこういう感覚なんですね先達!! 普通に断られたが。

 

 そんなこんなで数ヶ月が更に経過した。

 

 その間、色々とあった。ボス攻略でヒースクリフに招集を受け、そこでギルドメンバーと初顔合わせ。「誰?」という顔を一身に受止めた俺だが、俺の近くを離れずに歩くアスナの姿を見て男性プレイヤーからの殺意の籠った目はさすがに堪えた。

 

「は? ちょっと待って……カッコよすぎない?」

 

「顔とセリフが合ってないぞ」

 

 血盟騎士団の団服がいつの間にか用意されていたようで。自由行動が認められているとはいえギルドメンバー。流石にボス攻略などでは着る必要があり、その時に着用して姿を現した俺を見たアスナにそんなことを言われた。謎にキレているような真顔で睨まれたが言葉が意味不明すぎて軽く流したが。

 

 あれからヒースクリフとは一対一で会うような場面にはなっていない。しかしたまに視線を感じるような、ソフトタッチされているようなゾワゾワする感覚を感じることがあるために俺の観察は継続しているのだろう。茅場という監視の目がある以上、アレを使う練習は出来そうにない。ぶっつけ本番になりそうだがなんとかなるだろうか。キリトが一人でヒースクリフに勝てるのがベストではあるが、なにがおきるかわからないために手札は多い方がいいだろう。

 

 キリトと別行動をとることも多々あった。

 月夜の黒猫団というトラウマをなんとか乗り越えたキリトはなんとか独り立ち出来るようになっていた。俺は嬉しいぜ……。

 まあ大体は変わらず俺はキリトと行動はしていたが、この前起きた圏内事件やキリトが向かってるリズベットとの雪山デート〜ドラゴンの糞を添えて〜には俺はついて行っていない。俺は俺で確認しないといけない事項が多いためだ。この前は始まりの街を調べるために二週間ほど別行動を取っていた。

 

 まあその辺の話は割愛しよう。精々がPohと殺しあった位のもので、突出して話すような内容は無い。

 

 その他で言えば、キリトに二刀流のユニークスキルが発現していたことだろうか。

 キリトは首を傾げて俺に報告していたが、俺からすれば遂に、と言ったところだ。

 

 魔王たる茅場晶彦を倒す資格を有する勇者の称号。それこそが二刀流。反応速度が全プレイヤーで一番とか、どういう裁定基準なのかはさっぱりではあるが以前ヒースクリフと会話した時の内容からしてかなり序盤からキリトには目をつけていたのだろう。

 

 俺? ユニークスキルなんて無いですけど? 二つ名なんて無いですけど? 知名度ないですけど? なんか文句あるのか、おい。キリトよりレベル2つ上だし!! 舐めんな!! 

 

「スイッチ!!」

 

「はぁぁあああ!!」

 

 現在、俺がいるのは74層迷宮区。もうこんなところまで来てしまった。

 パーティは俺、キリト、そしてアスナの三人である。俺いる? 

 

「レイン!!」

 

「ほい」

 

 前で暴れ散らかしている二人を見る。戦闘狂が揃えば蹂躙劇の始まりだ。システムアシストがあるとは言え二人とも剣の扱い上手すぎでは? 

 二人の連携はとてもいい。やはり未来の夫婦は伊達では無いな、うん。と考えながら二人の戦闘を見守るとこちらを振り向いたキリトから鋭い声掛けが。その前に俺は既に背後に向けて刀を一閃。迫っていたモンスターを一刀両断しポリゴン化して消滅させる。

 

「いや〜、二人共バケモンか?」

 

「お前が言うな」

 

 74層にもなればただのモブモンスターの行動パターンも細かく振り分けられているように思える。テンプレのようなものがなくなり、一体の攻撃力やHPも大きい。俺に対してだけ動きがヌルヌルなのはカーディナルがなんかしてんのか? という陰謀を感じざるを得ないが。

 5体ほどいたモンスターを軽くあしらう二人に向けて賞賛を送るとキリトからのツッコミが入る。いつもの風景だ。それを微笑ましそうに眺めるアスナさん。

 

「二人の連携力高ぇな。そのまま結婚したら?」

 

「は?」

 

「バカお前俺を殺す気かッ!?」

 

 冗談のように冗談を言ってみる。赤面すれば面白いな〜と思った展開は俺の期待とは異なり、一瞬で真顔になったアスナと真っ青にして詰め寄ってくるキリトというよく分からない反応を受けた。

 

 訂正しろと詰め寄るキリト。お願いしますとガチで懇願されては困惑が大きいが致し方あるまい、と俺は道化るように大袈裟に仄めかす。

 

「ああ。キリトは俺と結婚するんだっけか?」

 

「ちょ待っあっぶなッ!?」

 

 アスナのもつレイピアが光り輝く。ソードスキル発動の契機。恐らくリニアーであろうそのモーションは、飛び退くように回避したキリトの居た場所の地面を大きく抉りとる威力を内包したものだった。やっぱバケモンですやん。

 

「違う違う違う違う!! レインの冗談ッ、冗談だからッ!!?」

 

「やっぱり、最大の障壁はキリト君……」

 

「何言ってるんだ!?」

 

「ふふふっ。大丈夫、安心してキリト君。出来るだけ痛いように斬るから」

 

「何処で道を踏み間違えたんだアスナッ!!」

 

「お「黙れ元凶!!」まだなんも言ってないが?」

 

 全速力で逃げるキリトをソードスキルをフル動員して追いかけるアスナ。割と見る光景だ。原作でこんな場面書かれてたっけ? とは思っていたがかなりの頻度でこうなっているからまああるのだろう。今のアスナはツンデレ期なのである。仕方が無いだろう。

 

「掠った……!! ヤバイヤバイまじやばい!!」

 

 何やってんだあいつら。

 既に姿が見えなくなりつつある二人の背中を俺はゆっくりと歩きながら追っていく。

 

「はァ……ボス部屋、まで……走り続けるとは思わなかった……」

 

「ほんと何やってんの君たち?」

 

「お前本当に後で覚えてろよ」

 

 ボス部屋があるだろう扉に手を付きゼェゼェと息をするキリトに何故か睨まれた。対するアスナはいつも通り。遅かったね、と俺に向けて告げてくる。君らが速いだけだからね? 

 

「閃光様と比べたら俺なんてナメクジもいいとこよ」

 

「むぅ。その二つ名、恥ずかしいからあんまり呼ばれたくないんだけど」

 

「あとなんかあったっけ……良妻?」

 

「式はいつ挙げる?」

 

「急にどうした?」

 

 俺の手を両手で包み込むように握るアスナ。ていうか今どうやって移動した? 瞬間移動? 閃光ってそういうことなの? 茅場さん、ここにシステムを超越した力の持ち主が居ますよ。

 

 俺たちのやり取りを見守るキリトは溜め息を吐きながら呆れたように俺を見る。なんで俺やねん、アスナやろうがい。

 

 当のアスナと言えば、身長的に俺の方が高いために見上げる形になっており、俺の視線に気づいたアスナは至近距離で俺を見上げながらニッコリと微笑んでくる。は? 尊すぎんか? キレそう。

 

「お前今の顔他の奴らに見せるなよ……」

 

 勘違いした野郎どもがアスナに求婚しかねん。いやするだろ。多分。

 

「? うん」

 

 自分の顔の破壊力を知らないアスナは不思議そうに首を傾げつつも頷く。それでいいのです、と手を解きボス部屋の扉へと近づく。そして添えるようにして扉に触れた。

 

 ひんやりとした扉。金属なのか、石造なのか、はたまた別の物質なのか。この世界の物質は未知のものが多い。こんな色の鉱石なんてあるんだろうか。なまじ質感などを現実と遜色無く感じてしまうからこそ知的好奇心が促進されてしまう。

 

 そして、74層のボス部屋。つまりはあの人型羊が居るということ。グリムアイズ、だったっけ。74層のボスをほぼ単独で倒すキリトってなんなの? と思うが、やはり可笑しいとは感じる。描写的に、スターバースト・ストリーム一発でほぼ全てのHPを削る。そんなこと、ボス相手に出来るわけない。HPゲージ一本削れるかすら怪しいのだ。

 

 やはり主人公補正か。となると世界の意思が宿っているのか、それともここでは違うのか。そういうところも観察しつつ、介入していこうと決める。

 

「これ、ボス部屋……だよね?」

 

「だろうな。ていうことは、ここが迷宮の最深部」

 

「俺らが一番乗りだろうな。マッピングも出来たし、今日のやることは終わりか」

 

 そうは言いつつ、興味ありげにチラチラとボス部屋を見るキリト。アスナは呆れたように、まさか、とキリトの思惑を推測する。

 

「キリト君。ボス部屋に入ろうとしてる? 三人だけなんだよ?」

 

「いやいや。戦おうとは思ってないさ。ちょっと覗くだけなら良いだろ?」

 

「ちょっとだけってクソ男の口説き文句みたいに言われてもな」

 

「お前マジで黙ってろ?」

 

 ご丁寧に転移結晶を三人分取りだして俺とアスナに渡してくる太っ腹ぶり。まあ意味ないんですけどね、ここ使えないし。

 

 そうして、仕方なくと言うふうに俺達はボス部屋を覗いてみる。覗くと言っても少し入らなければならない訳ではあるが。

 

「────あ?」

 

 それは確かに感じた違和感。俺だけが感じ取れた、世界の意志。

 誰にも聞こえることの無い疑惑の声。俺の前を歩く二人はボスが何処にいるのかと注意深く観察しているからこそ、後ろにいる俺の異変に気づくことはない。

 

(────ヤバっ……)

 

「キャっ……!?」

「うおっ!?」

 

 アスナとキリトが弾かれたように後方へと飛ばされる。突風が訪れたように、はたまた繋がれた糸で思い切り引っ張られたように高速でボス部屋からその身を投げ出され二人が出た瞬間に扉が勢い良く閉められる。

 

 途端、妖しげに光る青い炎。

 闘技場を囲むように灯った炎は俺を逃がすことのないよう四方を取り囲む。そして、いつの間にやら佇んでいた一体の獣。

 

 正しく青眼の悪魔。ボスとしては小さい部類とはいえ、俺からすれば十分すぎるほどの巨体と、それに見合うだけの刃渡りを要する大剣。

 その鋭い眼光は俺だけに向けられる。当然か、俺以外の存在をこの部屋は拒絶したのだから。

 

『────グォオオオアアアアア!!!』

 

 ピリピリと突き刺さる殺意。不要な転移結晶をポイと捨てる。コロコロと転がる結晶はボスの咆哮の余波だけで吹き飛ばされ、壁に激突すると同時に耐久力の限界からか消滅する。

 

 ────ザ・グリムアイズ。

 

「……ハードモード、突入〜ってか」

 

 唯一の扉が開く気配は感じられない。時間経過で開くようになるかは希望的観測だろうか。

 

 例外無く、この部屋もシステムに監視されているのなら、茅場の目に留まるはず。となれば、下手な行動はその時が来るまでの足枷となる。だから、奥の手は使えない。

 

「あ〜……アスナのサンドイッチ食べたかったなあ」

 

 今日のご飯は期待して欲しいと、満面の笑みで伝えてくれた少女の姿を思い出す。きっと醤油が完成したのだろう。俺的には前のやつでも十分醤油だったが、それはそうとサンドイッチの口になってしまっているから。

 

 ここで死ねない。死ぬならキリトの目の前だ。死んだという結果だけを見せるな。過程を見せないと。

 

「時間稼ぎ……始めますかぁ」

 

 一人でボスに勝てるはずもない。そんなことが許されるのは主人公だけだ。俺にその資格はもちろん無い。

 ソードスキルを使わなかったからこそ熟練度は全て初期レベル。継続して使わないのはもちろんのこと、奥の手無しでこの状況を打破するのは正直思いつかない。

 

 一手だけ。

 奥の手ではあるが、しかし認識不可能という点において一つだけ使えるものがある。これを駆使して時間を稼いでいけば、主人公様が何とかしてくれるだろう。結局は他人任せになってしまうが。

 

 唾を撒き散らしながら飛び出してくる怪物を冷静に見極め、俺は抜刀し迎え撃った。

 

 

 

 

 

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