ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。 作:ハニボン
「いらっしゃいま……!!? 店長! アカデミアのアヌビスです!」
「……!? これから来る夜勤と今日休みの奴に連絡を! 俺は他の店舗にも応援要請してくる!」
「はい!!」
シロ、クロ、俺の三名がファミレスに入店すると、店員さんがその姿を見るやいなや血相を変えて店の奥へと行き、慌ただしい雰囲気になっていた。
おそらくはクロ……というか店員さんクロを見て驚いていたから確実にクロが原因だろう。
ボンバーアカデミアきっての天才。クールビューティーでトップエリート。しかしてその中身はシロ大好きの大食い少女で抜けている子というのがクロの公式設定である。
すべてが設定通りと思うのは早計であるが、会って数分だが今のところ原作とそう変わらない印象である。しかしなぜにアヌビス? ハロウィン衣装でクロのことだとはわかったが……ハロウィンの日にここで大食いでもしたのか?
そんなこんなで店の奥から戻ってきた店員さんに席に案内してもらうと、席に着いたタイミングで新たな来客が入店した。
「い、いらっしゃいませ……!?」
次に来たのはなんと、俺達を尾行していた二つの内の一つの知らない方のグループだ。グループの数は11人。クロというレイドボスがいるのにさらに団体の客が現れたのを見て、店員さんは一瞬顔を引きつらせながらも俺達の隣の席に案内していた。
「ひっ……」
11人グループが席に着くと同時、またしても続くように入店してきた来客グループを見て、店員さんは短い悲鳴を上げていた。
来客は尾行グループのもう一つの知っている方で、クロファンクラブのヒケヒケ団である。
アカデミア初等部のガールで、小柄でプリティーな女の子達……しかし、店員さんが卒倒したのはその数である。
ざっと見た感じだが……約30人ほどいるんじゃないだろうか? てか尾行中はこんなに多く無かった筈だが……どこかで増えた?
「…………こちらの席になりまーす」
最早店員さんは虚無を通り越して宇宙を背負う顔でヒケヒケ団を席へ案内していた。夕食時前の時間帯であったためほぼ空席だったのが、一瞬で店の中は満席状態になっていた。
クロは食べるのが好きだろうと安易に飲食店を選んだが、まさかこんな事態になるとは思いもしなかった。ファミレスの人達なんかすみません……。
「うん? 今日は随分混んでいるな?」
「言われてみればそうだね〜。新作のメニューでもあるのかな?」
シロとクロの二人も周りが騒々しくなってきたのに気付いたが、不思議に思っているだけで特には気にしていないようであった。むしろ新作!? と目を輝かせているクロとニコニコしてるシロの仲睦まじい姿がある。
でもどうしよう。流石にこんなに聞き耳立ててる人が事務所契約うんぬんの話なんてできるわけがない。
仕方ない、今回は契約関連の話は一切なしで、事務所やチームのPRと交流会話に務めよう。大事な話はまた後日に回すしかない。
とりあえず注文が終わってから、今この店にいる他の客はほとんどが我々を尾行してきた者たちであることを二人に伝えた。
「尾行? たまに生徒会の子達が付いてきたりするが……たしかに見慣れない子もいるな……? いや、どこかで……」
「あれ? あの子達こないだクロちゃんとお話してなかったっけ? たしか、えーっと……忘れちゃった!」
「一応面識はある子達なのかな? まあでも今回は流石に部外者だし、コンプライアンス的に契約とかの機密な話はできないから、今回はお互いを知るための会話交流をしようと思っているんだけど……どうかな?」
「ああ、それで構わない。人となり、お互いを知ることは大切だ。むしろ私は今回それを一番に望んでいたことだ」
本題と言わんばかりに、クロは気合いを入れてそう言った。なんかこう、迫力があるというか……凄味があると言うべきか。そのくらいの気迫を感じて、俺も自然と気を引き締めていた。
とはいえ話す事はお互いの好きなもの、嫌いなもの、趣味や特技などの特に変わりのない自己紹介。そこから普段どう過ごしているのか、アカデミアの授業はどのようなものなのかなどの世間話なので、内容自体は重要度はあまり高くない話である。
しかし俺の仕事の話で……というよりボンバーバトルの話でクロが話を切り出してきた。
「ユキト。貴方はなぜ今の仕事を……ボンバーバトルに挑んでいるんだ?」
クロの質問の意味が一瞬わからなかったが、少し考えてその意味を咀嚼する。俺はバトル選手ではないが、チームを勝利に導くためのバトル指導役だ。だからクロが俺に問うているのは――。
「それは……俺がなんのためにバトルに関わっているのか。俺個人の目標のことを聞いているのかな?」
質問の意図を聞くと、クロは「そうだ」と答えた。
「私の目標はボンバーマスターになることだ。バトルは新しい姿に変わったが、私の目標が変わったわけではない。勝利は当然、敗北は恥が私の信条だ。だからユキトに聞きたい。貴方がなんのためにバトルに挑んでいるのか。私達と共に歩み、共に栄光を分かち合えると思える関係になれるのか……見極めたいんだ」
「……」
クロが今話した野望は偉大で、情熱があり、諦めることを知らない強い信念を感じられた。そして隣で聞いていたシロはじっと俺の方を見ていた。
そこにいつものおちゃらけた雰囲気は無い。そういえば、ゲームのキャラ紹介でシロはボンバーマスターを目指すガールだと書かれた一文があったのを思い出した。
ボンバーマスター。たしかこれはボンバーバトルで最も優秀な活躍をした者達のことで、ボンバーバトル協会がその中から選び抜いて与えられる名誉ある称号である。
今ここにいる二人はそれを目指している。だからシロも知りたいのだろう、俺がどういった姿勢で挑んでいるのかを。
「俺は……」
俺の人生の目標は、ボンバーバトルに関われる職に就くことであった。しかしもうその夢は叶っているし、何よりも原作のボンバーガール達にも会えた。これ以上を求めるのは罰が当たるというものだろう。
だけど……もしこれ以上を望むというのなら。
「俺は……君達に勝って欲しい」
悩むと思っていた言葉は、すんなりと出てきた。その先も。
「俺は……君達のことが好きだ。だから俺は君達が真剣に挑んで、楽しんで、最後には勝っている姿が見たい。絶対に勝て、なんてバトルの舞台に上がらない俺からは口が裂けても言えないけど……それでも勝つための努力の方法を教えてあげられる。俺はそれを全力で支えてあげたい」
そう考えていたわけではない。しかし次々と出てきたこの言葉は、俺の本心なんだとすぐに気付けた。
前世での俺のボンバーガールは、お世辞にもプレイヤースキルがうまいとは言えなかった。良くて平凡くらいで、MVPを取れるほどの活躍はできなかったし、なんなら負けこんでいたまであった。
サービス開始の時は負けてもガールの服が破けた姿が見れてイライラしないのはよくできている、なんて言われていたりした。でもやっぱり俺はうまくできなくて悔しい気持ちはあったし、活躍させてあげられなくて申し訳ない気持ちになったりした。
だから――できれば勝って欲しい。負けるのは駄目、許さない。なんてのは思わない。敗因を特定して次に生かすなど、負けて得られるものは絶対あるのだから。その指導をするのが、俺の役目だろう。
「――――そうか。それが貴方の目標か、ユキト」
俺の告白を聞いたクロはうんうんと納得するように頷いており、シロも先ほどの真顔からにんまりと満面の笑みを浮かべていた。雰囲気から見て、どうやらお眼鏡に適ったらしい。
割とマジで今自分の本心に気づいたことだったから、ちゃんと気持ちを伝えられて良かったと思う。しかしなんか、二人とも顔が赤いような……?
「しかしだな、ユキト……いや、マスター。流石に会ったばかりなのに、告白するのは早過ぎないか?」
「……え?」
「急に私達のことが好きなんて言われてびっくりしたけど……あはは、なんか恥ずかしいなー!」
「……あ」
クロが「まったく……」と呆れ、シロは誤魔化すように笑っていた。いや待てたしかに言ったけど、そういう意味じゃなくて……!
「恥ずかしがることじゃない。とても立派だぞ、マスター」
「そうだよー! マスターにならこのシロちゃん、どこまでも付いてっちゃうよ!」
誤解を解こうとしたが、二人とも満更でもない様子で言っていた。そう言われたら何も言い返せない。だ、大丈夫かな? 信頼を勝ち取れたのは嬉しいけど、後々で新たな誤解を生みだしそうなんだが……。
俺が悩んでいるのもどこ吹く風で、クロは最初のチーム入りの話をした。
「マスター。書類とか契約の話は後日に回すと言ったな? 私も前向きにそちらのチームに入隊したい。予定を合わせたいから、私とマスターの連絡先の交換を――――」
「――――ちょおぉっと待ったあぁぁ!」
クロが携帯を取り出そうとしたタイミングで、大声で待ったの叫びが店中に響き渡った。廊下側を見れば、そこには見知らぬ方のグループの学生ガール達11人が勢揃いしていた。
クロは「おー?」と、シロは「わあ!」とそれぞれ独自の驚き方をしている。俺もまさかこの会話に介入してくるとはと驚きつつ、恐る恐る何者なのか聞いてみた。
「えっと……どちら様で……?」
「私達はボンバーアカデミアサッカー部! 私達サッカー部がクロ先輩を最初にスカウトしていた! だから今のボンバーバトルの話、待ってもらおうか!」
サッカー部あたりはオリキャラです。