ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。 作:ハニボン
もしかしたら次にバトル回する時は前後編で分けるかも知れません。ちょっと考えます。
仲間集め、連携中心の練習などで一週間はあっという間で、本日は約束のサッカー部とのボンバーバトルである。
会場はいつものボンバースタジアムなのだが、ボンバーアカデミアでも有名人であるクロの今後を決める大切なボンバーバトルであるためか、今日はいつもより一段とバトルを見に来た観客が多かった。
半分ほどはクロの応援に来ていたヒケヒケ団の面々であるが、もう半分もまた制服を着た学生ガール達で会場はアカデミア一色に埋められているので、何も知らない人から見たらアカデミアのイベントか貸し切りだと勘違いしてしまうだろう。
両チームの挨拶で顔合わせした時にサッカー部の宣戦布告にヒケヒケ団が反応したり、顧問が実は小学時代にボムリフティングパスで遊んでいた友人であることが判明したりとバトル前から波乱が巻き起こっていたが……ようやくバトル開始の時が訪れていた。
選手入場のワープポイント前。今回出場するクロ、ウルシ、パプル、アクアの四人のガール達がボムスーツに着替えて勢揃いしている。少し下がった場所に俺が居て、そのさらに後方には他のガール達が俺達を見守っていた。
「よし、それじゃあブリーフィングを始めようか」
俺は四人に向かって話しかける。
「今回はサッカー部とのボンバーバトルだ。どのような戦い方をするのか未知数な相手だけど、それはあちらも同じでこちらのことを知らない。だからこのバトルの肝はどれだけ自分のポジションの仕事を全うできるかと、前衛と後衛同士の連携に掛かっている。
難しく考えなくていい。ここ数日の練習バトルを思い出してみて。その中で成功した瞬間を、正解だと理解した動きを思い出せば、最高のパフォーマンスを発揮できるはずだ。焦らず冷静に、自信を持ってバトルに挑んでみよう」
四人は『はい!』と力強く答え、ワープポイントへと入っていくガール達の背中に他のガール達が「頑張れー!」「気張ってけよ〜!」と応援と共に見届けた。
姿が完全に見えなくなったのを確認して、俺達は関係者指定の観戦席へと移動を始めた。
●~*
『ゴー……ボンバー!』
遂にサッカー部とのボンバーバトルが開始された。
開始早々お互いのチームのボマーとアタッカーがボムでブロックを爆破していくのだが……。
「はあぁぁ!」
その中で一際目立つのが、黒髪のボンバーガール・クロである。クロはブロック前にボムを置くとそのまま前方へと蹴り飛ばし、縦に並んだブロック4個を貫いて破壊していった。
これこそがサッカー部が求めていたであろうクロが持つスキルの一つ、クロキックである。内容は今見た通りの旧仕様からお馴染みのボムキックであるのだが、特筆すべきはその破壊力である。あくまで俺が見たり聞いたりした中でも、ブロックを破壊できるほどのボムキックを繰り出せる者はいなかった。
そしてこれはアタッカーにも言えることなのが……クロのキックはあくまで自前の特技で、シューターのようにエネルギー弾補充やブロッカーのソフトブロック生成に必要なボムエネルギーは必要としないものだ。本人本来の体力こそ使うが、連続して使用することができるのだ。
まあ原作のゲームの方でもチャージタイム10秒くらいなのでそんなに変わらないとは思うが……この世界のボマーは特殊ボムを使える数が決まっているので、ブロック掘りにリソースを割かなくて済むのは大きいだろう。前世でも言われていたが、一番ボンバーマンができるキャラなのがクロというボンバーガールである。
「ねずみ小僧、いざ参るよ!」
凄まじい勢いでブロックを掘り進めるクロに並走するのは、アタッカーのウルシである。サッカー部はクロほど掘り進めていないため、接敵する前にクロが敵タワーへと向かいウルシはクロと別れ敵ベース方面へと進撃した。
丁度サッカー部チームもブロック掘りを終えて、ウルシと接敵した。ボマー、アタッカー、シューターで並んでいたがその内敵ボマーとアタッカーはウルシを無視して味方ベースへと向かう。ウルシの疾走を阻むはシューターのガールである。
「相手はゴール相手はゴール相手はゴール相手はゴール……」
「な、中々個性的な娘だね……」
敵シューターはぶつぶつと呪文のように呟きながらウルシをロックオンし、ウルシはそんな相手に少し気圧されながらも相手の出方を見ながら足を止めず進んだ。
敵シューターはどうやらサッカーボールを生成して相手に蹴り飛ばすスキルのようで、ボール生成が完了してすぐにウルシへと攻撃を仕掛けた。ウルシは当たる直前に横に避けるように進行方向を変えて回避する。
ウルシを追うようにシューターはボールを放つが、ウルシは自慢の素早さで駆け抜けて、回り込むようにボールを回避してシューターの横を通り過ぎた。
「むむっ…」
そのまま敵ベースに乗り込もうとしたところで、築城が終わった敵ブロッカーが出てきてウルシの前に立ちはだかる。そして後ろから追いかけてきたシューターが到着し、ウルシはシューターとブロッカーに挟み込まれる形となった。
「ゴール破壊ゴール破壊ゴール破壊……」「挟み撃ちっすー!」とシューターとブロッカーはウルシを逃がさぬようボムを置いていく。このままでは撃破されてしまうが、ウルシは冷静であった。
「ちょいと騒がすよ?」
ウルシは懐から打ち上げ花火バクダンを取り出す。そしてボムが爆発すると同時にウルシは跳び上がり、花火バクダンを下へと投げ飛ばした。
「忍法……花火隠れ!」
ボムと同時に花火バクダンも爆破し、派手な火花が舞う。シューターとブロッカーは今の跳躍で攻撃を回避したのを確認したので、追撃のためのボムを置こうとしたのだが……。
「……えっ!? いないっす!?」
「ゴールが……消えた……?」
煙が上がると、元から存在しなかったかのように居る筈のウルシの姿が消えていた。
忍法花火隠れ。その効果は自分を中心に周囲へとダメージを与え、同時に自分の姿を消すことができる強力なアタッカースキルである。
ボムや攻撃スキルなどのアクションや12秒の時間経過で透明状態は解除されてしまうが、相手や味方からも完全に姿が見えなくなるので奇襲や敵ベース侵入はお手の物。打ち上げ花火バクダンも110と威力が高めで750の耐久力をもつゲートなら多段ヒットで脅威の330ダメージを叩き出すことができる。
ただこれバクダンとは言っているがコスト2を消費する立派な特殊ボムなので、使える回数はボマーと同様で限られている仕様となっている。この世界で特殊ボムが残弾の設定になっていると知った時は、やはり驚いた。前世の仕様と一番違いのあるところだからなあ。
一応透明状態での移動中は足跡というか走っているエフェクトが風で表現されていたが、こうして見てもどこを移動しているのかわからない。やはり素早い忍者の動きで相手を撹乱するのが、忍者アタッカー・ウルシの真骨頂であるだろう。
姿を消したウルシに敵のシューターとブロッカーが混乱していると、タワーを破壊し終えたクロが今度は迫ってきた。とりあえず迎え撃とうと切り替える二人であったが、今度は後方の自分ベースの方へと爆発音が鳴った。
「嘘っいつの間に……!?」
振り向けば、先ほど消えたウルシが敵ゲートへと攻撃を仕掛けていた。すぐさまシューターはウルシの対処に、ブロッカーはクロの足止めのために別れて行動を開始した。
クロとウルシがそれぞれ攻め込んでいる間に、場面を味方ベースを守っているパプルとアクアに視点を移す。
味方タワーこそ破壊されてしまっているが、味方ベース前のゲートで防衛している二人は比較的安定していた。
「放ちます!」
弓を構え矢を放つパプルのシュータースキル、ジャッジメント。威力は65と高く、何より当てると相手の足を遅くする鈍足のデバフを数秒付与することができるのだ。鈍足な状態ならば一番速度の低いシューターでも追いつくことができるので、これをうまく当てられるかによって勝敗が変わってくるほどの重要度がパプルに求められていると言っても過言ではない。
ジャッジメントをアタッカーに当て、体力こそ残っているが鈍足の状態となっていた。そこにアクアが召喚したサーヴァントナイトが襲いかかり、見事アタッカーを撃破させることに成功した。
「エレガント。パプル様、今の感じが素晴らしいですわ。焦らず、一人ずつ対処して行きましょう」
「は、はい! ありがとうございます、アクアさん!」
アクアが褒め、パプルがそれに応える。アクアがパプルに合わせているおかげか、心が優しく少し気が弱いパプルは落ち着いて射撃を行い、打ち漏らしをアクアのサーヴァントが仕留めにいく形が完成し、理想的とも言える綺麗な連携ができていた。
敵ボマーとアタッカーもこれには攻めあぐねているようで、これならばすぐには落とされないだろう。
隣で座っているモモコも「あのバカ吸血鬼、築城はそんなだけど動きは良いのよね…」と真剣な眼差しで観察しながら呟いていた。そこは流石旧仕様からの経験者といったところだろう。動きに迷いがなく、臨機応変に対応している。
ファーストコンタクトこそ喧嘩一歩手前であまり良いとは言えなかったが、ここ数日間共に練習バトルをしたことでアクアの実力を知り、無意識ではあるがライバル意識をモモコは持ち始めているように見えた。
モモコとアクア。守りと迎撃ではっきりタイプが別れるブロッカーであるが、それでも得られるものは可能な限り吸収するという気迫をモモコから感じられた。普段はおちゃらけているガールが多いため必然的に皆のお母さんみたいなカリスマ性が付いてしまいがちだが、彼女本来の気質は上昇志向であると俺は思っている。今でこそデビュー前ではあるが、一癖も二癖もあるアイドルユニット『プリティーボンバーズ』を引っ張る未来のリーダーである。
負けず嫌いであるし、何事も意気込みは人一倍であるだろう。
話が逸れてしまったので試合に思考を戻すが、この守りならすぐには突破されないだろう。そう思い俺は再びクロとウルシの前衛に視点を戻すと、どうやら進展があったようだ。
敵ブロッカーが固有スキルを発動し、ベース内中心部を網目状のバリアで覆っていた。いや、完全に覆っているわけではない。一か所だけ大きく開いている箇所があり、その場所に仁王立ちする敵ブロッカーの姿はまさしく……。
「ゴールキーパー……?」
ゴールポストに見立てたバリアで、唯一空いてる場所で構える姿はゴールキーパーそのものであった。サッカー部だからそういったスキルになるのはわかるのだが……どういったスキルデータなんだろう? 耐久値は? ダメージカットはどのくらいのものなのか? 駄目だ知らないオリジナルスキルがゆえに気になってしまう。
クロとウルシはお互い丁度ベースの反対側に居るようで、クロがブロッカーと対峙しウルシがシューターを引きつけている構図となっている。よくよく見ればウルシが巨大手裏剣を回してシューターの射撃を捌きながらボムでベースバリアを攻撃していて、バリアにヒビが入っているので耐久値はあまりないのではと推測できる。
「クロ先輩! いざ尋常に勝負っす!」
「うむ。望むところだ!」
敵ブロッカーが構え、クロがそれに応える。一騎打ちということで会場は盛り上がり、主にヒケヒケ団の黄色い歓声が飛び交っていた。
クロと敵ブロッカーは、その場を動かずに相手の出方を見ている。お互い無言で、さながら西洋のガンマンの決闘が如く相手を見据えていた。
「……行くぞ! 必殺クロキック!」
「甘いっすよ〜!」
クロはボムを目の前に置いて、思いっきり蹴飛ばした。しかし綺麗なまでの直線のシュートであるため、ブロッカーは余裕でボムを掴んで別方向へと投げ飛ばしていた。
だが、それで終わるクロではない。クロは蹴飛ばしたと同時にすでに駆け出しており、ボムをキャッチ&リリースしているブロッカーの脇を通り抜けて――――。
「ギガンティックボム!」
「あぁ――――!」
――――大型の特殊ボムの発動に成功していた。
ギガンティックボム。クロ最大の特殊ボムであり、前世のゲーム内ボマーの中でも随一の瞬間火力を誇るクロの最強スキルである。
その威力は驚異の500。シロが持つ大型ボムが威力200と知れば倍以上の火力の高さだとわかるだろう。タワーなら一撃で沈められ、ベースなら2割分のダメージを入れられることができる。ダメージレースでの逆転はもちろん、なんならそのままゲームエンドまで持っていけるほどの強力なスキルである。
それを許してしまった敵ブロッカーであるが、悔しがる姿を隠すことなく、しかしまだその顔は諦めてはいなかった。
「くぅ〜……やるっすね! でもまだ負けてないっす! クロ先輩、もう一度勝負を」
「クロさん! こっち側のバリア破壊したよ!」
「了解! ギガンティックボム!」
「ぎゃあぁー!」
ウルシの報告にクロは立て続けにギガンティックボムを発動し、敵ベースは最早壊滅寸前の状態となっていた。それを観客席で見届けていた俺、モモコ、エメラの3人は「うっ」と顔を顰めてしまう。
今世には存在しない前世のラッシュタイムからの2連続ギガンティックを決められ敗北した俺のトラウマと、今見たのと同じ連続使用で秒殺されたモモコとエメラのトラウマである。
「火力特化ってのはわかるけど、威力がデタラメ過ぎだっつの…」
「名探偵メイドエメラはクロ様が味方で良かったと心から思っております」
「ほんとにね」
ギガンティックボムのコストは3。バトル中に使用できる回数は最大で2発までと厳しい残弾数……なわけがない。前世ではチャージタイム48秒というクッソ重いスキルで1発しか打てなかったなんてのはザラである。今世の残弾仕様では強すぎではないかと心配してしまう。……ほんとに大丈夫かな? 特殊ボムに対しての仕様変更されたりしないかな? たかが一人のために変更するはないと思うけど……まあ、使えるものは使わせていただきますわ(開き直り)
3人の気持ちが一つとなり、他メンバーのシロとオレン、スタッフさんは「クロちゃん流石や〜!」「やっぱあのボムとんでもねえな!」「すごいですね〜人気の理由がわかった気がします。……彼女のグッズ作れば売れる……?」とそれぞれの反応をしていた。
十人十色様々な感情の温度差が交差する間もバトルは続き、やがてクロとウルシの猛攻に耐えきれず敵ベースはとうとう爆発四散し、バトル終了のアナウンスが我々の勝利を称えるように響かせていた。
『フィニッシュ!! ボンバー事務所チーム、ウィン!』
チーム名がダサいって? 作中のキャラ全員そう思っているのでそのうちチーム名考える回やる予定なので安心してください(震え声)
今年の投稿はこれで最後になります。次回の投稿は来年1月10日以降になると思います。
自分が思ってたより読んでくれる方が多くいらっしゃって、皆様には本当に感謝でございます。完結まではなんとしても書きたいので、また来年からもよろしくお願いします。
良いお年を!