ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。 作:ハニボン
流石に詰め込み過ぎて長くなってしまったと反省はしますが後悔はしてません。……すみません。ゆっくりで良いんで、良かったらお付き合いください。
本日よりボンバーバトルの練習は本格的に開始される。
前回プリボムはローテーションでメンバーを回していく話だったが、初回ということでモモコとパイン共に両方揃ったままのフルメンバーが、パインとミンボー達によって完成されたボンバー事務所専用のバトルマップに集結していた。
いや、正確にはフルメンバーではない。今日は一人新顔がここに来ていた。
「初めまして、ボンバーアカデミア中等部所属のグレイです。今回からシロ先輩とクロ先輩の紹介で、ボンバー実習生としてバトル練習に参加することになりました。先生、みなさん。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
小柄で灰色の髪をしたボンバーガール・グレイが、俺の横でみんなに向けてクールに自己紹介を行っていた。
先日の歓迎会でのことだ。シロとクロがグレイという後輩ガールが我々の練習に参加したいと相談を受けたらしく、参加させてもらえないだろうかと俺とスタッフさんに話を持ってきたのだ。どうやらサッカー部とのバトルを見ていたらしくて、そこで興味を持ったとのことだ。
俺は断る理由が全くないのでグレイの練習参加を承諾した。前世で知っているガールだし、新たなる仲間はなんぼいたっていいもんですからね!
「実習生? チームに正式加入したわけじゃないの?」
と1つ気になったワードがあったモモコがどういうことだと聞いていた。その質問にはグレイではなく俺が答えた。
「そうだね。グレイちゃんはあくまで実習生として練習に参加することになる。彼女きっての希望で、まずどんなチームなのかを知っていきたいそうだ」
「はい。そういうことになります」
練習が始まる前に俺とスタッフさんでグレイに軽く話を聞いてみると、チーム加入に対して何か考えがある……というより、悩んでいるように見受けられた。本人も何に対して迷っているのかわからず、ただあの時のバトルを見て居ても立っても居られなくなってシロとクロに相談しに行ったとのこと。
このチームと練習したい。でも、加入は保留にしてほしい。グレイは最後に我が儘を言ってごめんなさいと頭を下げて謝っていた。
これに対してスタッフさんは、何とも言えない渋い表情をしていたのを覚えている。彼女の性格からしても、正直ではあれど中途半端な意気込みは好ましくはないだろう。そこで俺はそれなら実習生としてならどうだろうと助け船を出した。
うちのボンバーチームがどんなところなのか知って、それから正式加入するかどうかを決めたらどうだろうと提案した。グレイが何に対して悩んでいるのかはわからないが、何も今すぐ決める必要はない。理由としてもおかしくないないし、何よりグレイの事情と同義である。
実際うちのメンバーでいうと、ウルシがそうだ。グレイのような理由ではないがウルシは怪盗という職業上、いつでも事務所から抜けられるように仮の加入として事務所と契約している。
グレイには考える時間が必要だ、と最後にスタッフさんを説得してみる。スタッフさんはうーんと腕を組んで、1分ほど考えてから「しょうがないですね~」と最終的にはグレイの実習生参加を了承してくれた。
「ふーん。ま、考えなしで適当に入るよりはいいんじゃない? ウチってちゃらんぽらんが多いから、グレイみたいにちゃんと考えてる子なら個人的には好感持てるわ」
「グレイちゃんはすごい出来る子だよー! 私が悪のデーモン軍団に攫われそうになった時も助けてくれたんだよ!」
「グレイは私達の中でボムのバリエーション力が高くてな。得意の雷属性のボムでの撃退は見事だったぞグレイ!」
「シロ先輩は気を抜きすぎです。もっとしっかりして下さい」
モモコが思慮深さを褒め、シロとクロが過去にあった出来事やその実力を評価して自慢するように褒めたたえた。そんな賛辞を受けたグレイは特に喜びと言った感情を浮かべず、「まったく、やれやれです」とクールな態度を崩さずに真面目に振舞っていた。
しかし、俺は知っている。真面目系クールを装っているグレイは、シロと同じくらいの純真さでホットな心を持っていることに。そしてそれは今、グレイ特有の体質によってここにいるメンバー全員が知ることになる。
《うわああああシロ先輩とクロ先輩に褒められたああああ!! しかもモモコさんからもおおおおお!! うれしいいいいいいい!》
「……?」
グレイの頭上に何かが浮かんでおり、全員が視線を向けていた。そこには吹き出しのような文字が浮かんでいた。
「クロ先輩もそうです。アカデミアの生徒として2人とも普段からもっと緊張感をですね…」
《ぎぃやああぁ! ち、ちち違うんです先輩方‼︎ これはつい調子に乗っちゃって口がすべってあぁあたしのレジェンドバカぁああ!》
グレイはくどくどと説教をしていて、しかし頭上では新たな文字がどんどん現れては消えていく。そこでようやく全員、これはグレイの心の声が具象化したものだと気づいた。
これについて少し説明させてもらおう。結論から言えば、この世界には超能力が存在する。
大体が生まれつきで超能力を持つケースが多くあり、サイコキネシスだったりテレポートなどが確認されている。
超能力を使ってボンバーバトルに挑む者や犯罪などに活用する悪党が存在する……が、それらの行為を行う超能力者はかなりの確率で稀である。
聞いた話によると超能力の使用はかなり燃費が悪いらしく、一回の使用で大幅に体力を消耗するとのことだ。例えるならフルマラソンを全力疾走で走り切るくらいの体力消費だと聞いたことがある。
おそらくグレイは読心能力であるサトリの逆で、思考伝播と似た類いのサトラレというものなのだろう。
ただ先ほどの体力消費の説明とは違い、グレイは能力を使用しているにも関わらず疲労している様子は見受けられない。無意識に発動しているように見えるので、おそらくほとんど消費がない能力であるのが推察される。燃費の良い超能力もちゃんとあるのも確認されているからね……実用的じゃない能力ばかりだけど。
改めて何でもありだなとボンバーな世界に思う。……今からでも転生特典貰えないかな? バーニングでファイヤーなボムをボンバーシュートできるだけでいいからさぁ……!
「……あの子、本心隠すのヘタすぎない? 心の声が具象化して見えてんだけど」
「いやぁ〜それだけ良い子なんだよぉ〜」
「であるからしてですね……って、みなさん。なんでそんな暖かい目で私のこと見てるんですか……?」
モモコとシロが呟き、説教を続けていたグレイがようやくみんなから微笑ましい表情で見られていることに気づいてたじろいでいた。
切りの良いタイミングだったので、俺は「そろそろ練習始めよっかー」と声をかけて、ようやくみんな動き始めたのだった。
●~*
しっかり準備運動をしてから、まずは走り込みからスタートする。
バトルマップ内のブロック配置機能を使ってランニングコースを作り、ウォーミングアップのジョギングを5分、通常のランニングを10分をガール達に走らせる。この走り込みは必ず練習メニューに入れるようにしていた。
旧ルールだろうと新ルールだろうと、ボンバーバトルは最終的に走るのが仕事みたいなものだ。どのポジションでもそれだけは変わらない。だからこのメニューには体力と持久力をつけてもらうのはもちろん、走り慣れてもらうのを目的とした運動である。
それが終われば、いよいよ練習バトルである。
まずはチームに分かれてメンバーを変えながら何回かバトルをしてもらい、俺がそれを見て長所や短所の指摘、攻め方や守り方、乱戦時などの対応などを指導していく。
具体的に全体の流れで、まずはボマーからだ。わかってはいたことだが、やはりブロックを掘り進む関係上敵陣に突っ込んでいきやすく、すぐに相手のアタッカーやシューターに撃破されリスポーンする姿が多く見られた。
シロやクロはもちろん、2人に憧れているグレイも真似して突撃していくので、俺はまず3人に落ち着いて一旦止まる必要があることを教えた。
「序盤のブロック掘りは早ければ早いほど勝利に繋がるのはたしかだ。でも敵チームと必ず相対する合流地点に到達したら、一旦そこで止まって様子見するんだ。乱戦になった時にボマーが突撃したら間違いなく撃破されるからね。
敵ベース破壊が勝利条件のボンバーバトルでは、ボマーが最も施設にダメージを与えられる火力担当だ。いち早く攻撃しにいきたいのはわかるけど、それで撃破されてリスポーンの時間は有利不利がはっきりする。ボマーの序盤のブロック掘りは敵チームとの相対時まででいい。ただ、だからって何もするなって言いたいわけじゃないんだ」
俺はマップ内に持ち込んだホワイトボードに合流地点が描かれた図をマジックで付け足しながら、説明を続ける。
「シロちゃんはボム投げが得意だし、貫通力のあるグレイちゃんのライトニングボムを駆使すれば突っ込んできた敵チームにうまくダメージを与えられる。クロちゃんもボムキックで相手にボムを送りつけても良いし、逆に相手のボムも蹴り飛ばして味方ゲートから遠ざけるプチ防衛もできなくもない。味方の巻き込みボムの怯みで隙を作りやすいから、そこらへんは一番槍を担当するアタッカーと支援射撃がメインのシューターとの連携の相談になるかな」
シロ、クロ、グレイの3人のボマーが真剣に俺の話を聞いているのを見ながら、俺は次にアタッカーとシューターのガール達に話を振った。
「乱戦時はまずシューターの射撃で1人か2人を撃破できるのが理想かな。もし仕留めそこなっても、牽制になる。そこでアタッカーの追撃だ。オレンちゃんなら身体能力でゲートを飛び越えていって敵の後衛のヘイトを向けさせることができるし、ウルシちゃんは花火隠れが強力だからゲート破壊しに行ってもいいだろう。そうしてアタッカーとシューターが作ってくれた隙をついてボマーが進撃するのが、理想的な動き方だね」
切り込み隊長のアタッカー、支援射撃のシューター、援護射撃かつ第二陣のボマーと説明していくが、あくまで理想だ。万事その通りに事が運ぶことはないだろうが、それでもその状況に狙って持っていくことはそう難しくはないだろう。
今の話でオレンとウルシも難しくはないことを察して、得心を得た表情をしている。エメラとパプルは合流地点の狙撃ポイントを一緒に相談しながら探し始め、クロとグレイはなるほどと俺の話を理解してくれて、シロはまだ完全には理解できていないようで少し不安そうにしていた。
あとでもっとわかりやすく教えるよとシロに一言伝えてから、最後にブロッカーの方へと話を向けた。
「ブロッカーは言わずもがな、序盤はベースやタワーの築城だね。築城のやり方はマップによって千差万別で変わっていくからこれはあとで教えるとして、築城が終わって乱戦に間に合ったらゲート前の防衛だ。シューターがダメージを与えた敵ガールを倒せればよし。アタッカーとボマーが攻めあぐねていたらモモコちゃんとパインちゃんは回復ボイスで味方の回復と速度バフを、アクアちゃんならサーヴァントやブルームーンで後方から支援すれば前線はより安定して攻略できるだろう」
築城はとりあえずコの字築城は教えとかないとなあ。あれあるとないとじゃ全然違うしね。
とにかくできるだけ被弾を抑える立ち回りを意識するように伝えて、再度バトルを繰り返していく。
こうして指導していると、やっぱりゲームと現実は全然違うのだと再認識する。チームとして事前の打ち合わせで連携や作戦を組めるけど、ゲームはMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)でチームはランダムマッチで決まる。コナミ公式の大会なら知人同士でチームを組めるのだが……普段の野良で遊ぶなら、まあ打ち合わせも作戦もない。敵も味方もお互いの動きを察して最適な動きをする頭脳戦だからね。…頭脳戦という点は今世のバトルも同じか?
実際ゲームの知識よりも教えるべきことが多い印象だ。決してゲームの知識が使えないとかじゃないよ? それ以前の問題でボンバーバトルは身体を動かすスポーツ競技だから、運動指導が先に来るからなぁ。そこな知識は旧仕様から通っていたボンバー指導学校に感謝である。
基本と基礎を中心に練習バトルを繰り返していく。シロの横でボム投げや進撃のタイミングを教えていたのだが、練習中に気になったことがある。クロを相手取った時のシューターブロッカー勢が、やはりと言うべきかクロを集中的に撃破しようと掛かりきりになってる時が多いのだ。
クロの脅威を知っている者からすると、優先的に撃破を狙うのは必然。1人狙いするのは決して間違いではないし、クロも活躍していけば優先的に狙われやすくなるのはこの先ずっと付き纏ってくる問題なのでこの課題を乗り越えて行かなければならないのだが……ちょっと考えが凝り固まってるのはよろしくない。なのでアタッカーの脅威度を正しく認知してもらうため、ここでわからせます。(指導役特有の使命感)
前衛にクロとオレンを指名して、相手後衛にはパインとエメラでいいかな? クロとオレンに動きの指示をして……さあ、クロさん! オレンさん! わからせておやりなさい!(他力本願)
とまあ始めたバトルだが……終始オレン無双であった。
クロがタワーを攻め込むとパインとエメラが対処に向かうのだが、その隙をついてオレンがゲートを飛び越えてベース内への侵入に成功した。
ベースが攻撃されているのを流石に無視できないのでクロはエメラに任せてパインがベースの守りに入るのだが、そこからが凄かった。パインが何度もボムで追い詰めても、オレンはベース内を飛び交ってすべてのボムを回避していた。
もはやオレンの独壇場とでも言うかのように、面白いくらいに捕まえることができない。
「ぎぃにゃあぁー!?」と悲鳴を上げるパインに、流石に加勢すべきと判断したエメラはクロを放置してベースへと戻り――バトルの結果は、言うまでもないだろう。
というわけでわからせ完了! と言いたいところだが、みんなオレンやべえな感想しか思い浮かんでいなさそうな顔をしていて、オレンも「少しうまくいっただけだって~」と謙遜するがまさかこんなにハマるとは思っていなかったようで、困ったように微笑を浮かべていた。
かく言う俺も前世で上手いオレン使いに今のようにボコボコにされたトラウマが蘇る。それはそれとして改めて他の前衛のガール達の強みを補足し、今回のオレンのような止められない相手は一番撃破効率が良いシューターに攻撃指示を仰ぐべきことを教える。先のバトルもパインではなくエメラならもう少し被害を抑えられたはずだ。
一つの判断や選択でボンバーバトルの結果は大きく変わってくる。練習バトルの中でそれらを見極められるようにしていこう、と最後に締めくくった。
前半の練習はそういった基礎を中心に練習バトルを繰り返していく。30分の休憩を挟んだ後、後半は応用を中心とした練習となる。
内容はボムの連鎖である。
休憩が終わったガール達を集めて、ホワイトボードに書きながら青空教室でボムの連鎖の説明をする。
ボムの連鎖はボムが爆発した際に発生する爆風を使い、他の位置に置かれたボムを誘爆して相手に当てる小技である。ボムで怯んでいる時や不意打ち、相手の置いたボムの爆風を利用してダメージを与えるもので、使う場面はシビアでタイミングは限られたものだが知っておいて損はないだろう。
まずバトルボムのおさらいをしよう。バトルボムは基本誘爆以外で外部からの干渉で爆発しない時限式である。旧ルールではボムを出してから1秒後の起爆であるが、新ルールではなんとボムを出してからの起爆時間は2.3秒である。倍以上も伸びている時間を利用すれば、様々な戦略が生まれてくる。
かなり限定的であるため例えが難しいが、片側がハードブロックやソフトブロックなどの壁際の場所で敵のボマーが味方や自分のボムで怯んだ時のシチュエーション。味方ブロッカーがボムで前と後ろを挟み、空いている片側をブロック生成で埋めることで逃げ場を無くす疑似ボム挟み込みが完成し、至近距離のボム2発のダメージで敵ガールを撃破することができる。
あとは前衛が敵ベースに攻め込んでいる時に、敵防衛がスキルのチャージタイム中でブロックや射撃などではなくボムで進路妨害をしている時などだ。ハードブロックにボムを先出しで隠して置いて、相手が進路にボムを置く少し早いタイミングでまたボムを置いて避ければボムの誘爆が相手へと繋がって自爆させて、怯んだ隙に抜けて行くことができるネック抜けの芸当が思いつくだろう。
……ここまで言っておいてなんだが、うまく説明できているだろうか? 自分で言っててなんか小難しいことを並べている気がして、途中からどんどん自信が無くなっていた。
だが意外にもこのボムの連鎖はガール達に好評であった。特にブロッカーのガール達からそういうの知りたかったんだよ! と称賛のお言葉を頂いた。
前者はただでさえ攻撃手段が少ないブロッカーにとって、ボムの連鎖は攻撃手段を増やすあるいは補うことができる。そして後者は前衛が相手の守りを抜ける手段は、防衛ポジションにとってもされる可能性として課題になる。思っていたより深く理解してくれていた。
ただ考え過ぎというわけではないが、少し意識し過ぎているように感じたので俺はあまり積極的に狙わないようにと忠告する。そればかりを狙い過ぎると不必要なミスが生まれるので、今回は頭の中で意識するだけに留めて、実行できるタイミングの見極めを体感して知るのを目的にしようと伝えて練習バトルに挑ませた。
バトルを始めるとやはりボムの連鎖を意識して動きがぎこちなくなったり、凡ミスによる撃破が少し目立っていた。しかし何回かバトルをしていく中で……グレイが化けてきた。
ここでボンバーガール・グレイがどのようなボマーなのかを説明すると、スペックだけで言うならシロとクロの中間のような性能をしたガールである。
範囲の広いボムを得意とするシロ、火力の高いボムを得意とするクロとするなら、グレイは特殊ボムを主体に戦い抜くボンバーガールだ。グレイは練習前にクロが言っていた雷属性のバリエーションボムが得意で、その中でもライトニングボムは破壊不可のハードブロックを貫通して爆風を通すことができるボマーの中でも唯一性のある特殊ボムとなっている。
シロのボム投げやクロのボムキックなどボムを移動させる手段を持っていないが、先ほどのライトニングボムの他に、ラインボムという目の前から一列に今置けるだけのバトルボムを0.5秒で即置きする特技があり、それらを用いてブロッカーの妨害を完全無視することができるボマーである。
そんなグレイが化けたというのは、オレンやウルシなどのアタッカーとの連携をし始めたのである。
それはオレンやウルシが敵ガールの背後に回り、タイミングを合わせてグレイがライトニングボムを使ってアタッカーが敵背後に置いたボムを誘爆してダメージを与えるという、外から見てもお見事過ぎる連携を成功させていたからだ。
《ボムの連鎖、うまくいくと気持ちよくてたのしいいいい!!!》
俺を含め他のガール達も皆すごいやんかぁ! と褒める中、グレイは無言でクールに実行しながらも頭上では常に歓喜の感情が浮かんでいるのであった。
こうして応用を中心とした後半はグレイが生き生きと連携を成功させて、他のガール達もボムの連鎖の有用性を認識してその日の練習は終えたのであった。
●~*
「先生、少しよろしいでしょうか?」
本日の練習が終わり、みんな解散して俺は一人事務所で今後の練習の課題や資料などをまとめていた。するとひょっこりと入り口ドアから顔を出したグレイが声を掛けてきた。
「……ん? グレイちゃん? お疲れ様、なにか忘れ物でもした?」
「お疲れ様です。忘れ物とかじゃなくて……少し先生とお話したかったのですが、お時間よろしいでしょうか?」
「大丈夫だよー今やってるのはそんなに急ぎじゃないから。どうしたんだい?」
「それは、その……」とグレイは少し言いにくそうに顔を伏せていた。ここで頭上を見てみるが、何も吹き出しは浮かんでいない。そういえばスタッフさんと面談していた時も吹き出しは浮かんでなかったから、もしかしたら真剣に物事を考えている時はサトラレの体質は発動しないのかもしれない。
そんなことを考えていると、意を決したグレイが顔を上げて話の続きをした。
「まずは、ありがとうございます。私の我が儘を受け入れて、練習の参加をさせていただいて。今日の練習、すごく楽しかったです。乱戦時の対応やボムの連鎖……どれも値千金で、参加できて本当に良かったです!」
そこにはクールな態度のグレイではなく、シロとは違った純真さを持った少女の姿がそこにあった。本心からの感謝を伝える姿からはやはり良い子なんだなという印象を持つが、それゆえにその表情が申し訳なさそうに変わるのもまたわかりやすかった。
「ですが……先生はどうして私を助けてくれたんですか? 先生のおかげで参加できたので感謝しかないのは本当です。でも……私が言うのはおかしいですが、やっぱり参加理由が不明だというのは不誠実であると自分でも思っています。当たり前ですが、スタッフさんも良い顔をしていませんでした。
でも、先生は受け入れてくれた。……失礼を承知で、改めて聞かせていただいでもよろしいでしょうか……?」
少し不安そうな表情を浮かべながら、しかししっかりと俺の目を見てグレイは聞いてきた。なんでって聞かれると、原作から知っているガールだし助けがいるなら助けてあげたいというだけであるのだが……無論、それだけが理由というわけではない。
「面談の時に言ったけど、考える時間をあげたいというのは駄目?」
「駄目じゃありません。ですが今日の練習で他のみなさんが本気でボンバーバトルに挑んでいるのは、流石にわかります。……私みたいな半端者の面倒を、見る必要ありませんから……」
「グレイちゃんが真面目で良い子なのはみんな知っているから、てか流石にそこまで考えてないと思うよ。絶対に」
なんか悲観的だなぁ。…どこかで熱意の温度差を感じちゃったのかな?
グレイの気が沈んでいる姿は、他のガールでもそうだがあまり見たくない。なんとか元気づけてやりたいが、どうしたものかと俺は考える。
理由、理由かぁ……。
「俺がみんなの夢を応援したいからかな」
理由はなんだろうと考えてみると、やはりと言うべきか自分の願望が最初に出てきた。
「夢、ですか?」
「うん。みんなそれぞれ目標を持ってバトルに挑んでいるんだ。ボンバーアイドルだったり、ただバトルがしたかったり。シロちゃんとクロちゃんは、ボンバーマスターになるのが目標って聞いている」
ボンバーマスター。そう聞いて不安そうにしていたグレイは、目を鋭くして真剣な目つきへと変わるのを俺は見逃さない。公式サイトのキャラ紹介で、グレイもまたボンバーマスターを目指していることを俺は知っている。俺ができるのは、発破をかけてやることくらいしかない。
「俺はみんなの夢の手伝いをしたいんだ。だからグレイちゃんに助け船を出したのも、それこそ俺の我が儘だよ。グレイちゃんが何に悩んでいるかわからない。目標もまだ決まってない。なら俺は目標が決まるまで手助けするし、それこそなんだってするつもりだ。君が拒絶しない限り、俺は君達の味方で在り続ける。それが助けた理由……というか、俺がグレイちゃんの我が儘に便乗したって感じかな?」
それじゃ駄目かな? と最後に付け足した。正直これがすべてである。俺はすべてのボンバーガールのために尽くしたいのだ。比喩ではなく推し活である。キモ、って思われそうだけど割とマジで今世の趣味となりつつある。
「それが助けてくれた理由……いえ、先生の我が儘、ってことですね」
俺の話を聞いたグレイは納得した表情をしてから、ほんのり頬を染めた微笑みを俺に向けてくれた。
「それなら私、先生にたくさん我が儘言って、たくさん甘えてしまおうと思います。先生はそれでも、私を受け入れてくれますか?」
「もちろん。拒む理由が無いよ」
「それなら、その……指切りげんまんしてもらっても……って、先生! 笑わないでください!」
あ”あ”あ”あ”あ”あ”ク”ッ”ソ”可”愛”い”!!!!(心の中のクソデカボイス)
俺はただの指導役じゃないスーパー指導役なので声には出していないが、ちょっとにやっとしちゃったのが顔に出てしまったのだろう。グレイが恥ずかしそうにして怒っていた。いかんいかん、怒らせるつもりはなかったんや! グレイの出している小指に、俺も小指を出してグレイと指切りげんまんした。
「これからよろしくお願いします、先生。私との約束と……ちゃんと付き合ってくださいね?」
次回は愛がヒントになります。