ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。   作:ハニボン

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感想でファミコンや64の頃のボンバーマンはまだハドソンだとシンプルなガバが発覚したので、25話の最初の方少し訂正しました。

今回すごく長くなってます。ゆっくり読んで頂ければ幸いです。


vs573ファクトリー

「パステルさんかツガルさん。シューターの2人の内どちらかが疑似アタッカーとして攻めてくるね」

 

 バトル前に行ういつものブリーフィング。開口一番に俺は573ファクトリーが取るであろう動きを予測してみんなに伝えていた。

 

 おさらいになるが、ボンバーチームはそれぞれボマーとアタッカーの前衛、シューターとブロッカーの後衛でバランス良く編制するのが基本だ。前世でもプレイヤーランクが低い初心者じゃない限りは、暗黙の了解でポジションが被らないように空いたロールを埋めるようにキャラを選ぶのが鉄則である。

 

 だから本来ならダブルシューターなどありえないのだが……それはゲームでの話。現実のバトルでは、違った可能性が生まれてくる。

 

「まずダブルシューターで怖いのは弾幕だね。序盤の敵チームとの合流地点はかなり激しくなると思う。それにパステルさんがいるならもう一つ警戒しなきゃいけないことがある。それは……」

 

「空。だよな?」

 

 俺より先に正解を答えたのは、魂斗羅として戦場の経験のあるオレンであった。

 

 原作ゲームの方ではウインビーに搭乗こそ可能だが、ブロックや建物などを飛び越えるほどの飛行能力はなく、常に低空飛行での移動で射撃を行う行動しかできなかった。これはこの世界でも同じで、それについてはバトルマップのシステムとして空中への上昇行為が制限されているからだ。

 

 より具体的に言うと、一定の高さまで上昇しようとすると重力負荷が発生して、思うように空を飛べなくなるのだ。

 

 この仕様については、ボンバーバトルの競技性を守るために設定されたものだ。思い出して欲しいが、ボンバーバトルは元々戦士の修行の謎を解明をするために生まれたのが起源である。

 

 この宇宙で空を飛べる種族は多様に存在するが、飛べない種族だっている。それらの有利不利を無くすためのもので、旧ルールからこの仕様は変わらず遵守されているのだ。

 

 しかしだ。これには少し抜け道がある。本人自体の飛行は制限されるが、持ち込んだ武器などにはそれが適用されないのだ。

 

 どういう仕様なのかバトル協会に問い合わせしてみたところ、ウインビーはどうやら武器判定らしく、バトル中はバトルマップ上空に無人のウインビー(ウインビー自体に意思はある)を飛ばすことが可能であることがわかった。パステルのスキルにはウインビーによる援護射撃のスキルが存在するので、この世界ではそういう仕組みでウインビーを運用することができるのだ。

 

 ツガルによる横からの攻撃、パステルの上からの攻撃を警戒しようと助言をして、次は出場するメンバー決めである。

 

 メンバーはシロ、セピア、エメラ、パインに決定した。

 

 バトル初心者のセピアを出すのか? と思うかもしれないが、これは本人からの参戦志望である。もちろん最初は俺を含め他ガールのみんなも大丈夫なのかと心配したが、意外にもアクアが助け船を出したのだ。

 

「……アタッカーという役割だけでしたら……そこなシスターができないわけないですわ……」

 

「アクアさん! 私にそんなに強い愛の信頼を……!」

 

「ええい! 一々大袈裟な反応をしないでくださいまし……!」

 

 感動するセピアに相変わらずアクアは俺の後ろから威嚇していた。しかしバトルで一番の経験者であるアクアのお墨付きで、実力も見れるということでアタッカーの出場はセピアに決定。オレンとウルシがアタッカーの基本的な動きをセピアに教えていた。

 

 エメラについてだが、ツガルが出るなら同じメカである究極メイドが出るのが王道という、独特な理由で参戦を希望したのとことだ。パプルはセピアが出るなら代わりにブラスに付いてあげたいということで、初回はエメラに譲っていた。

 

 残るボマーとブロッカーだが、まずグレイは実習生として初回は遠慮して見送り、アクアはセピアに慣れるまではもう少し俺を盾にしていたいとのことで控えている。

 

 そうなると自然とシロとクロ、モモコとパインになりじゃんけんで決めることになった。俺が決めても良いのだが、BBCのような大切なバトルならともかく交流バトルは結局全員バトルするので、メンバー決めくらいは自由でいいだろうという判断である。

 

 そうして見事じゃんけんを制したのがシロとパインの2人である。

 

「メンバーも決まったところで、ブリーフィングの続きだ。最初に言ったように敵チームとの合流地点はかなり激しくなると思うけど、しっかりと相手の動きを見て対応しよう。セピアさんも初めてのバトルでうまく動けないと思うけど、交流といっても練習バトルと変わらないのでそう気負わないでください。どう動いていいかわからなくなっても、他のみんなが指示を出して助けてくれます。みんなもそういうわけで、セピアさんのフォロー頼むよ?」

 

『任せろー!』とシロ、エメラ、パインが元気に返事をし、セピアは嬉しそうに「はい。みなさん、よろしくお願いしますね♡」と答えていた。

 

「あとは……」

 

 伝えるべきことは他に何かあるか、と考えてみる。いや……伝えたいことならかなりある。前世の知識で573ファクトリー全員のスキルを知っているのだ。今ここですべて教えるべきだと思うのだが……できればそれはしたくない。

 

 ズルやネタバレをしたくない、とかではない。そもそもスキルという手の内がわかったとして対策されようとも、己の工夫や技術、あるいは仲間との連携でいくらでもカバーできるし乗り越えられるものだ。

 

 俺が伝えたくない理由は前知識で知ってほしいのではなく、体感して知ってほしいからだ。ボンバーバトルは頭こそ使うが、結局最後に物を言うのは身体である。

 

 何も頭脳派を否定するわけではない。百聞は一見に如かずで、一見したことでできた骨に百聞で得た肉を付けていくことで自然と対応するための動きができあがっていくのだ。俺はできればそういう風に彼女達を成長させたいと考えている。伝えたくないのはそれが理由だ。

 

 だが……573ファクトリーには、少し厄介なブロッカーがいる。

 

「……藤崎さんとグリアロちゃんはどんな動きをするかわからないけど、そこはポジションから予想するしかないね。だからこの初戦はみんなの観察眼を鍛えるためのものだと思って、バトルに挑もう」

 

『はい!』と4人が返事をしてワープポイントに移動する中で、俺はシロに声を掛けて少しの間だけ呼び戻した。

 

 グリアロのスキルを教えはしないが……()()()()()()()()()()()()()()()なので俺は完全な対応策ではないが、ちょっとした小技だけシロに教えることにした。

 

 ……百聞と一見はどうしたって? 全部教えてないからセーフ! 小技も近いうちにボマー全員に教える予定だったのでセーフです!

 

          ●~*

 

『ゴー……ボンバー!』

 

 バトルが開始され、序盤のブロック掘りはどちらも変わった動きは見られなかった。あえて言わせてもらうと少し贔屓目になってしまうが……味方チームのシロが、573よりも早く掘り進んでいた。

 

「スクリュー!」

 

 序盤の乱戦場となる合流地点。シロのスクリューボムが直線の爆風でブロックを貫通し、道を作り上げた。シロは勢いのままその道を駆け抜ける――――ことはなく。少し進んでからすぐに下がってブロックの影に身を隠した。

 

「ターゲットロック、シュート!」

 

 その背中を狙い撃とうとツガルのホーンスナイパーライフルが2射、火を噴いた。シロは既に射線から外れた位置に移動したので、当たることはなかった。シューターを警戒したシロのフェイントがうまくいっていたのだ。

 

 しかし、シューターはもう一人いる。

 

「――――ウインビー!」

 

 シロがいると思われている地点に指で座標を示し、パステルが声を上げて上空のウインビーに指示を出した。命令を受けたウインビーはすぐさま座標の上空へと飛行し、地上ボムを投下した。

 

 シロが爆撃される――直前に、修道服を改造したような見た目のヴァンパイアハンターの正装を着こなすガール・セピアがシロの元へと行き、

 

「えい♡」

 

 可愛らしい掛け声と共に、顔の高さほどある長く巨大な愛用のチェーンソー・ネクロメーカーを()()()()()()()()()()()()横に殴り飛ばして爆撃を防いでいた。

 

「あーん! 惜しい!」

 

「すみません、パステル先輩! 初撃を外してしまいました!」

 

「だーいじょーぶ! まだ始まったばかりだし、きばってこー!」

 

「セピアさんありがとー!」

 

「いえいえ。エメラさんの指示のおかげですし、シロさんもとても良い動きでしたよ♡」

 

 両チームの攻防は瞬きすら許さぬ一瞬で、ガール達はそれぞれ言葉を掛けてお互いを奮起させていた。

 

 573の2人のシューターであるツガルとパステル。彼女達のシューターとしてのスタイルをざっくりいうと、アウトファイターとインファイターである。

 

 シューターなのにファイターとはと混乱させてしまうが、まずツガルから説明させてもらうと彼女はシューターの中でも一撃の火力が高く、射撃の射程が最も長いガールなのである。

 

 先ほどのホーンスナイパーライフルは一発40ダメージの弾を二発発射するスキルで、合計80のダメージを与えることができる。射撃スキルは他にもあり、妨害スキルなども持っているキャラなので、シューターらしいシューターというのがツガルの印象である。

 

 次にパステルは基本的な射撃スキルが先ほどやったウインビー援護射撃と、ためショットというスキル発動から時間を掛けることで威力を増す射撃スキルが存在する。

 

 ウインビー援護射撃は時限式のボムではなく衝撃で爆破する特殊ボムを使用するもので、その威力は60。バトル中のウインビーはあくまで武器扱いなので初手から敵陣地に奇襲などはできず、あくまでパステルが視認した座標に向かってボム攻撃するようになっている。

 

 そしてためショットはレベル3が最大であり、ダメージはレベル1が30、レベル2は70、レベル3は100となっている。ために掛かる時間は1から2までは8秒、2から3までは18秒となっている。

 

 レベル1だけで撃つだけならスキルの回転率は悪くないのだが、それだと威力が弱すぎる。だが最大火力を狙うとすると発動から24秒は掛かるので、他のシューター以上にタイミングが大事となるキャラである。なればこそタイミングのチャンスを掴める近い距離を維持する位置取りが基本の動きとなるので、パステルはインファイター寄りのシューターなのである。

 

「ラブ注入!」

 

「ひゃあっ!?」

 

 ダブルシューターの射撃が止んだタイミングでセピアが攻めに入り、刃の方を持ったネクロメーカーの柄の部分で視界に入ったツガルへと殴り掛かる。振りかぶった巨大な武器は迫力があり、顔を青くさせながらも紙一重で避けていた。

 

 セピアは他のアタッカーと比べてもその一撃の火力は重く、今のクロスクラッシュという攻撃も100ダメージの威力があり、ウルシの忍法花火隠れと同様にゲートへの攻撃に対して300ダメージの多段攻撃となる強力なものである。

 

 その他にもアタッカーの中で唯一ボマー並みの体力最大値を誇っており、シューターの攻撃にもある程度耐えて進軍できる特徴があるが……同時にボマーと同じ速度というアタッカーで一番の鈍足という欠点があった。

 

 火力と速度を上げるバフスキルもセピアは自前で持っているので、一応欠点は補ってはいる。……ベルモンド家の走法はどうしたって? ヴァンパイアハンター活動時限定なんでしょ。(思考放棄)

 

 そんなことを考えている間にバトルは進んでいき、最初のタワーに到達にした……否。されたのは敵ボマーの藤崎詩織であった。

 

「あなたの評価は……こんなものよね」

 

 藤崎詩織はスマイルマークの付いた特殊ボム……好感度ボムを使用してタワーを攻撃した。

 

 好感度ボムは爆発した際の効果として通常のバトルボムとなんら変わらないのだが、特殊ボムの能力としてはその威力にある。その内容は置いていけばいくほどにボムに『好感度』というパステルのためショットとはまた別で独自のパラメータが存在し、最大で4段階でその威力は増していくという面白い特殊ボムとなっている。

 

 スタート時は2段階の『普通』でバトルボムと同じ100ダメージ、3段階は『良好』の150ダメージ、4段階は『最高』の200ダメージで2倍の威力を発揮する。コスト1とコスパが良く火力が出せるものなのだが、それ相応に欠点が存在する。それは撃破されてしまうと1段階の『最低』の100ダメージに戻ってしまうのだ。

 

 2段階と威力が変わらないと思われるが、『最低』の段階だと爆風が著しく低下してしまうし、何よりこの世界ではボムのコストに応じて残弾が決まっているのだ。藤崎詩織は一度でも撃破されると厳しいボマーであり、リスクリターンがはっきりしている。

 

 その他のスキルに一時的にダメージを受けない強力なスキルがあるが、それも他のガールが必要で、味方との協力が鍵となるロマンを感じさせる可能性を持つボンバーガール。それが藤崎詩織である。

 

「シューターモード、オン。――――シュート」

 

 味方タワーを攻撃する藤崎詩織に、緑のメイド・エメラは△スレッドの三つの火球を放つ。気付いた藤崎詩織は攻撃を中断して後退するように火球を避けてタワーから離れた。

 

 エメラは∑スレッドを展開して追撃をしようとしたところで――何か来ると直感したように咄嗟に身体を下げた。すると、すぐ目の前を2発の弾丸が風を切って飛び交った。

 

  間一髪の回避。エメラはすぐさま狙撃してきた方向に視線を向けると、そこにはライフルを構えているツガルの姿があった。

 

「エメラさん……勝負です!」

 

「その挑戦、お受けいたします。ツガル様」

 

 同じメカ同士のガールが相対する。

 

 エメラは頭上の大火球を浮遊させたままαブラストの銃を構え、ツガルはライフルを強く握りなおす。さながら西洋のガンマンの早撃ち勝負のような佇まい。しかし、早撃ちという行為は過程でしかなく――。

 

「――――ファイア」

 

「――――ホーリィナイト・ミサ!」

 

 エメラの大火球がツガルへと放たれ、ツガルの2丁ライフルによる乱射がエメラを襲う。2人は回避のため同時に横に走り出し、ハードブロックを間にお互いを見据えたまま駆け抜ける。

 

 現在まだ発射していないエメラのαブラストと、チャージタイムが完了したツガルのホーンスナイパーライフルの1発が残っている状況。お互いが射撃のチャンスを模索する中、先に動いたのはツガルであった。

 

「アップルスタンサイダー!」

 

 ライフルを持っている手とは反対のもう片方の手にバトルボムと同じ大きさの赤いりんご型の特殊ボムを生成し、それをエメラの進行方向へと投げつけた。

 

 当たれば2.5秒のスタン状態にする効果を持つ特殊ボム。だがエメラは投射地点を予測してすぐさま引き返してボムの範囲から逃れた。だがツガルが狙っていたのはスタンではなく、エメラが回避行動を取る瞬間である。

 

「今です……!?」

 

 横に飛び込んでエメラの背後へライフルと構えると、そこにはこちらに振り向いて銃口を向けているエメラの姿があった。

 

 止まることなく引き金は同時に引かれ、エメラの光線とツガルの弾丸はすれ違い相手へと命中した。

 

「うぐぅ…! 流石エメラさんです……!」

 

「ツガル様も。アグレッシブな行動力にエメラ脱帽です」

 

 2人ともこれが初ダメージであったために撃破までには至らず、お互いを褒めて認め合いながらもツガルはアップルスタンサイダーを、エメラは△スレッドを起動して頭上に三つの火球を浮かび上がらせていた。

 

 ――――バトルはまだ、これからである。

 

 シューターのミラーマッチは熱く、息をつかせぬ攻防であった。しかし……。

 

「まさかツガルさんが攻めシューターで来るとは……」

 

「その様子だと、下僕様はパステル様が前衛を担当すると思っていましたの?」

 

 エメラvsツガルを見ながら俺が呟くと、隣にいるアクアが俺の呟きを拾った。先ほどまでは震えてばかりであったが、バトルを関心するように見ていて、雰囲気も落ち着いていつもの調子を取り戻していた。

 

「うん。ツガルさんの弾幕を見た感じ防衛の方が向いていると思うし、射撃のスタイル的にも前衛はパステルさんかと思ってはいたんだけど……いや、この射撃性能だから逆にアリか……?」

 

 興味深いなと思いながら、少しの動きも見逃さないようバトルを眺めていく。

 

 シューター同士が戦っているのをを見て、今がチャンスと藤崎詩織は再度攻撃をしようとタワーへと迫る。だがその進軍を、もう一人の後衛が許さない。

 

「ウォール・パイン!」

 

「……!」

 

 タワー敷地内に入ろうとした瞬間、入口にソフトブロックが生成され藤崎詩織の足が止まる。タワーの反対側を見れば、そこには黄色いブロッカーのボンバーガール・パインが不敵な笑みを浮かべていた。

 

「くふふ♪ 偉大な藤崎大先輩相手とはいえ、これはボンバーバトル……しっかりとわからせちゃいますぅ♪」

 

「ええ、パインちゃん。遠慮はいらないわ。私も全力で挑んで――――悪い噂、流しちゃうね?」

 

「……にゃ?」

 

 対戦の掛け合いにしては場違いなワードにパインは一瞬目を丸くしてしまうが、すぐに発生した異変に気付く。タワー敷地内に複数のボムが突如置かれていたのだ。

 

 藤崎詩織のスキルの一つ、『悪い噂』である。自分を中心として周囲に12個のボムをランダムに生成し配置するというもので、その効果によって敷地内に3個のボムを置くことに成功していたのだ。

 

 さらに運が良いことに(こちらには悪い)、いつの間にかパインのすぐ隣にもボムが置かれていた。

 

「にゃ、にゃにぃ――――!?」

 

 突然のことにパインはテンパりながらも急いで回避のために移動しようとしたが……天才的頭脳が冷静さを瞬時に取り戻し、今必要な行動の最適解を導く。その答えを導き出して、パインはあえてボムのあるタワー敷地内に足を踏み入れた。

 

「にゃっ……!」

 

 黒い噂のボムが爆破してダメージを負う。しかしそれでも足を止めずに反対側の入り口……藤崎詩織が入ってきたタイミングで、もう一つのスキルを発動した。

 

「極上ウォール・パイン!」

 

 藤崎詩織目掛けて手を翳すと、地面から氷柱が発生して藤崎詩織を襲った。氷柱は藤崎詩織の足を捉えてダメージを与え、「きゃっ!」と短い悲鳴を上げている。さらに発生した氷柱は瞬時に割れて、そこからソフトブロックが生成され藤崎詩織の行く手を阻んでいた。

 

 基本的にプリボムの面々は一人を除き、モモコと似たスキル構成となっている。そして極上シリーズも例に漏れず同じで、敵ガールにダメージを与える数少ない手段である。モモコの場合威力は20と低いが当てた時に一定時間速度を遅くさせる移動デバフが付与することができる。パインには速度デバフは付いていないのだが、代わりに威力が40とモモコの倍のダメージを与えられるスキルとなっているのだ。

 

 撃破されないために被弾を抑えたい藤崎詩織にとってこのダメージは、無視できないものだろう。

 

「……やるわね、パインちゃん」

 

「モモさん直伝のアイドル根性……! まだまだこれからぁー!」

 

「いいぞー! やったれパイン! ええとこ見せたれー!」

 

 パインの雄姿にモモコが熱い応援を投げていた。アクアの次によく喧嘩する2人だが、こうしてみるとやはりプリボムリーダーとしてパインのことをよく見ているのだと、集中して観戦しているモモコを見て思う。その姿を見習いながら、俺は次に味方の前衛へと目を向けた。

 

 そこは……後衛とはまた別の、激しい戦場となっていた。

 

「――――ウインビー、スクランブル!」

 

「――――これが愛の最終兵器!」

 

 パステルがウインビーに乗り込み、ウインビーの手に握られた武装でもってセピアに総攻撃を仕掛け、セピアはネクロメーカーのチェーンソーを起動させて迫りくる弾幕をすべて切り伏せていた。

 

 ただがむしゃらにパステルは撃ち込んでいるように見えるが、それはセピアというアタッカーとしての実力者を抑えつけるための弾幕である。攻撃は最大の防御という言葉の再現をしているように、ウインビー搭乗限界時間いっぱいまでセピアを弾幕攻撃で動きを止める作戦だろう。

 

 本当なら一度撃破しておきたいだろうが……結果はこの通りで、セピアはすべての砲撃を物ともせずに対応していた。たしかに捌くことに集中して動けなくなってはいるのだが……1歩、2歩と捌きながら少しずつ前進しているのがわかった。

 

 迫力のある戦闘を目の当たりにして、思わず息を吞んだ。……そういえばブラスはどう感じているんだろう? そう思ってそちらを見てみると、

 

「セピアママ、かっこいいです……!」

 

「そうだね、セピアさんかっこいいね!」

 

「お、おう……」

 

「…………」

 

 ブラスは目を輝かせてセピアの雄姿を見届け、パプルが笑顔で同意する。セイジャは共感しずらいのか少し困った風にしていて、アクアはこの娘マジか、な視線をブラスに送っていた。教会組いかついな……でもかっこいいのはわかる。男の感性になるけど、剣技や乱舞で銃弾の嵐を薙ぎ払う系は男の子は大好きなんだよ。(厨二病とも言う)

 

 激しい戦闘を繰り広げているセピアとパステルから、俺はそういえばシロはどうなっているんだと探してみる。どうやら敵タワーは既に破壊完了して、敵ベースに侵入するまで進んでいた。

 

 しかしベース内で対峙しているグリアロを相手に……シロは大苦戦していた。

 

          ●~*

 

「あれれ~? シロちゃんどうしたの~? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……親切だね♪」

 

「うわーん! あっち行ってよー!」

 

 573ベース内にはいくつかのソフトブロックが不規則に配置されており、シロはブロックを爆破とベースにダメージが通るようにボムを置いていくのだが……。

 

「ウォール・マジック」

 

 シロのすぐ後ろを付きまとうグリアロがシロが置いたボムに近づいて片手を真上に上げると、ボムはソフトブロックへと変化していた。

 

 ブロッカー・グリムアロエの最大の特徴とも言えるブロック生成スキル『ウォール・マジック』は今見た通り、ボムをブロックに変更させるとりわけ変わったスキルである。

 

 ブロッカーの中でもグリアロはかなりテクニカルなキャラで、迎撃型のアクアとはまた違った攻撃寄りの妨害スキルが豊富なブロッカーだ。ボマーが彼女と一対一を挑むのはできれば避けたいところだが……今はシロ一人である。この状況を打開するにはセピアが来るまで撃破されずに持ち堪えなければならない。苦しい展開と言えた。

 

「……よーし! それじゃあ、おっきいのいくよー!」

 

 しかしそんな苦しさなどなんのその、名案とばかりにシロはブロックが多くある場所へと走る。到着すると、シロは片手を上げて巨大な特殊ボムを生成した。

 

「スーパーウルトラボム!!」

 

 シロの切り札となる大型ボムであり、その特徴はボマーの中でも随一の爆発の範囲の広さを持つデンジャラスボムである。これを用いてグリアロの築城と距離をリセットしようというのがシロの狙いである。

 

 スーパーウルトラボム……略してSUBを設置後シロは自爆によるスタンを回避するためにベース反対側の範囲外にすぐに移動しようとしたのだが……ずっと付き纏っていた筈のグリアロはシロに付いていかず、設置されたSUBへと近づいていた。

 

 逃げないの!? とシロが驚きながら後ろを見ていたが、グリアロは逃げる必要がない。大型の特殊ボムであろうとも……ボムはボムである。

 

「――――ウォール・マジック♡」

 

 たった一言。先ほどのバトルボムと変わらずに、シロのSUBをソフトブロックへと変換させていた。

 

「ええぇー!?」

 

 これにはシロも驚かずにはいられない。自分の切り札が簡単に無効化されてしまったのだ。その衝撃は計り知れないものだろう。

 

「あは♡ シロちゃん自慢の切り札、あたしにダメダメにされちゃったね~♡ 悔しいでちゅね~♡ ……これで終わりじゃないよね? もっともーっとシロちゃんの本気、まだまだ見てみたいな~?♡」

 

 ショックを受けているであろうことも察して、グリアロは追撃の煽りも蠱惑的な笑みも忘れなかった。メスガキキャラとして接しているとはいえ、シロのような天真爛漫そうな娘に対しては少し心が痛むが……練習だろうとこれはボンバーバトル。精神的に削るのも立派な戦略であるし、それも込みで全力で挑まねば無作法というものである。

 

「…………」

 

 だがシロは顔を伏せたまま、無言であった。その様子にグリアロは流石に言い過ぎたかなと肝を冷やし、フォローの言葉を掛けようとしたところで……突然シロはベース内部に向かって走り出した。

 

 突然動いたシロにグリアロは一瞬思考が空白になってすぐには動けなかったが、はっとなってすぐにシロを追いかける。少しでもベースにダメージを与えようという魂胆か? グリアロがそう予想していると、シロがさっきと同じように片手を真上に上げた。

 

「――――スーパーウルトラボム!!!」

 

 またしてもシロは同じ大型ボムを生成した。自分が変換して無力化できることを知っているはずなのに、だ。

 

 コスト的にもこれが最後の特殊ボムの筈だ。自棄でも起こしてしまったのだろうか? シロの行動に、グリアロはそう思わずにはいられなかった。しかしボムを出したということはバトル継続の意思はあるということで、グリアロはすぐにブロックに変換させようと近づき――そこで気付いた。

 

 シロのすぐ隣にある、シロが置いたと思われるバトルボムの存在に。

 

「……!? しまっ……!」

 

「ボンバー!!!」

 

 SUB設置と同時にバトルボムは爆発し、ボムの連鎖によってSUBも爆破してグリアロ諸共爆発に巻き込んでベースにダメージを与えていた。

 

 これぞユキトがバトル前にシロに教えていた小技『スーパーウルトラボム即爆』である。

 

 内容はさっきやった通りのもので、大型ボムを設置する前に予めバトルボムを置いておき、大型ボムの生成と設置の時間差で丁度バトルボムが起爆するので、ボムの連鎖で大型ボムをすぐに起爆させるという小技である。

 

 初めての試みであったが、うまくいった! シロは喜びながらもまだグリアロは完全には撃破されていないのを確認しているので、自爆スタンから回復したらすぐにベースの反対側に回らなきゃと考えていると……不意に空から影が差しこんだ。

 

 反射的に上を見上げてみると、そこには両手で巨大なエネルギーの球体を掲げたグリアロが浮遊していた。

 

「――――チャイルドプレイ!」

 

 グリアロはエネルギーの球体をそのまま、自爆スタンで無防備な状態のシロへ向けて放つ。これを避ける手段はシロにはあらず、まともに食らってしまい――――シロの姿は愛らしい白いミンボーへと姿を変えていた。

 

「……!」

 

 敵ガールをミンボーへと変身させるスキル『チャイルドプレイ』。変身したミンボーは触れればダメージこそ入るものの一撃で撃破されてしまう紙耐久となり、移動速度も激しく遅くなってしまうので、食らってしまえばほぼ確実に撃破されてしまう恐ろしく強力なスキルである。

 

 初見であるために変身させられたスキルだと気付くことができず、シロは自分が今どういう状態なのか理解できずにひたすら混乱することしかできなかった。そしてその状態のシロを、グリアロは見逃す程の愚か者ではない。

 

「――――うふふ♡」

 

 グリアロはすぐさまシロミンボーの元へと駆け寄って――――クロキックさながらの蹴りをシロミンボーへと炸裂させた。

 

          ●~*

 

「あちゃぁ、撃破されちゃったか……でも、SUB即爆うまくできて良かったよーシロちゃん!」

 

「なるほど……下僕様が彼女達を欲しがる気持ち。なんとなくわかりましたわ」

 

 俺は即爆を決めたシロを褒め、バトル全体を見てアクアがそう感想を口にしていた。

 

「ツガル様はまだ少し未熟なところが見えますがシューターとして優秀な性能をお持ちになっておりますし、藤崎様は底の知れない雰囲気を感じますわね。特にパステル様とグリムアロエ様。やはり本職が戦闘または競うものであるためか、かなり動き慣れているように見えます。迷いがありませんわ」

 

 流石アクアブルーきっての才女というべきか、所々の所作や癖などを観察してアクアは分析していた。俺みたいなボンバト的思考ではなく性格から情報を得ようとするあたり、流石一企業を経営する令嬢の風格である。

 

 俺はアクア以外の他のガール達の様子を見てみると、白熱した接戦にみんな大興奮で応援している姿が確認できる。やはり見ている側も楽しめるのが良いよね、ボンバーバトルは。

 

 573とのバトルは熾烈を増していく。終盤はお互いのベースを攻撃し合うが、どちらのチームの後衛もうまくベースを防衛して中々ダメージを与えられない状況が続き――――『タイムアップ!』と時間切れによるバトル終了のアナウンスが響いた。

 

 時間切れの場合はベースのダメージ状態をバトルマップが自動で解析して、ベースのダメージが最も受けていると診断されたチームが敗北となるシステムである。

 

 バトルマップ上空にホログラムの画面が表示される。画面には様々なダメージ情報が表示され、それらが計算されて両チームのゲージが削られていって――――ほぼ僅差で、味方チームのゲージが573チームのゲージを下回った。

 

 今回のバトルを制したのは、チーム573ファクトリーであった。

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