ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。 作:ハニボン
プリボムが順当にくじをやっているということは、次はメロンが来ると期待して良いのかな? すごく楽しみです。
公式ボンバーマンガも可愛いナスビが見れるので、まだ見てない人は今すぐ見よう!(ダイマ)
何度か編成を変えてみたりアタッカーを入れ替えてみたりとバトルしてみたが、573ファクトリーとの対戦成績は総合的に見て五分といったところであった。
前半の交流バトルが終わり後半は合同練習なのだが……なんというか、573はどのガールもレベルが高い実力者であることを肌で感じた。
まずボマーの藤崎詩織は生き残り最優先のアタッカーサポートが基本の戦法である。状況の判断や予測など藤崎詩織本人のプレイヤースキルが問われるのだが……はっきり言おう。立ち回りがすごく上手なのである。
具体的に言うと、避けるのがうまい。シューターやアタッカーの攻撃はよく見て回避してるし、突出した行動で攻撃を誘発させるフェイントや引くべきところはしっかり引いたりと、見た目に似合わず駆け引きが上手なガールという印象をこの短時間で持たせていた。
次にシューターの2人の内ツガルはシューターの基本に忠実で、バトル中の動きも積極的に動いていたので悪くない印象だ。ただウルシやセピアなどのアタッカーの奇襲に驚いてテンパりやすかったり、射撃が素直過ぎてわかりやすいとオレンが指摘していたのでそこが課題となるだろう。
もう一人のシューター・パステルだが、一言で評価するなら忍耐力が強いシューターである。ためショットやウインビーによる攻撃スキルであるため戦術的にそうなるのは必然なのだが、しっかりと相手を引き付けて確実に攻撃を当てる活躍が見れた。やはりパイロットとしての戦闘経験のおかげか動きに迷いがなく、藤崎詩織とはまた違った駆け引きの上手さを見せつけている。
最後にグリムアロエ。彼女は自分の性能とブロッカーとしての仕事を完璧に理解した動きをしており、すべてのバトルでその妨害と防衛力を遺憾なく発揮していた。頭の回転が早く、向かってくるガール達の攻めにほとんど対応して勢いを止めることに成功している。
ギガンティックボム即爆を覚えたクロに最初こそやられて顔を青くしていたが、ボトルネック防衛でクロの進撃を封殺するなど機転の良さは流石の一言に尽きた。
そんな彼女達の指導は藤崎詩織にはボムの連鎖を教え、ツガルにはアップルスタンサイダーや死角からの狙撃の練習をさせ、パステルは相手の動きの予測やスキルのチャージタイムの把握などを中心に指導し、グリアロはボムをブロックに変換させるスキル特性を活かした築城やトラップスキルなど効果的な場所を教えたりなどした。
……ちょくちょくグリアロが「よわよわなおにいちゃんだけど、ちゃんと指導うまいんだ〜♡ もっとあたしに教えて〜?♡」と耳元で生ASMRを囁いてきたりするのは、勘弁してほしかった。耳が幸せ過ぎて変な声出そうになるのを必死に抑えたよ……一部のガール達にはジト目で見られた気がするが、多分気のせい。気のせいであってくれ。
そんなハプニングがあったが、無事に練習を終えて時刻は夕方を迎えていた。
現在ガール達はバトルマップ内に設置されているシャワールームで汗を流しているところである。そんなもんあったんかと驚いたが、モモコとパインが絶対必要ということでパインが設置したとのこと。天才じゃったか……。
汗を流し終えたら、そのあとはせっかくだしここにいるみんなで夕食を一緒に食べようという話になった。なんだかんだ一日の交流で573ガールズとはみんな仲良くなったので、バトルだけじゃなくもっと色々話がしたいのだろう。ライバルチームとはいえ親睦を深めるのに断る理由がない。
そんなわけでシャワータイムなわけだが、俺は一番早くシャワーを終えたので外に出るためのワープポイント前でガール達を待っていた。
少し冷たいくらいの夕方の風が吹いて、肌を撫でる。ただ待っているだけなのは落ち着かないので、俺はガール達が来る間に今日のバトルデータや練習で気になったところなど、とにかくタブレットに殴り書きされたものを整理していた。
データを読み返しながら今日を振り返って、573ファクトリーは一筋縄ではいかない手強い相手だと再認識する。他のボンバーチームの強豪を見たわけではないので、暫定ではあるが今後のBBCで脅威となるのは間違いなく573ファクトリーになるだろう。
「ここに最愛さんが合流するわけだからな……」
ロールが揃って本領発揮する573ファクトリーを想像して、かなりシビアなバトルになるだろうと予想する。同時にまだまだ強くなる自分達のチームとぶつかった時、どのようなバトルを繰り広げるのか……考えてみただけでも、今から楽しみにしている自分がいた。
「マスター……」
タブレットを睨みながらBBCでの573とのバトルを想像して思いを馳せていると、自分を呼ぶ声が聞こえた。顔を上げると、そこには元気の無さそうなシロが立っていた。
「シロちゃん……?」
いつもの元気な姿とは打って変わって見たこともない様子に、俺は思わず心配な声でシロの名を呼んだ。
シロからの返事はない。視線を下に落としたままで、明らかな元気の無さに不安を覚えてしまう。何かあったのは明白だが、どう声を掛けていいのか言葉選びに悩んだ。
会話デッキ最強初動にして伝家の宝刀『どしたん話聞こか?』で切り出してみるか……? そう考えていると、シロの方から動きがあった。
「う……」
「う?」
「うわああぁんマスター!!」
慟哭を上げ、シロは小走りで近づいて俺に抱き着いてきた。
ふわりとシャンプーの匂いが香る。胸板に押し付けられた豊満な感触は否応にも意識してしまい、手に持っていたタブレットを落としそうになる。
シロに抱き着かれている。その現実を認識するのに数秒の時間が必要で、俺はされるがままの無防備な状態になっていた。
「し、シロちゃん……!?」
白髪美少女JKのシロがなぜか俺に抱き着いているという状況をまだ完全に受け止め切れていないが、なんとか名前だけでもと呼んでみることができた。
しかし俺の精神状態を知らないシロは無意識に抱きしめる力を強くするので、密着により存在感がさらに増してどうにかなりそうだった。自分が変な気を起こさないよう、俺は必死に平常心を保つことに意識を集中させることしかできない。
へ、平常心平常心……すんげえ良い匂いだし身体柔らか……いかんいかん……ちょっとくらい堪能しても……だからあかんて。平常心や……!
心が全く落ち着かない。それほどまでの威力を誇る美少女テロであったのだ。
何としてでも気を静めなけれ……俺が自分の心と戦っていると、シロが口を開いた。
「マスター! 私、全然ダメなボマーかもしれないけど……クビにしないで〜! シロちゃんもっと頑張るから〜!」
シロのその言葉に、俺はすぐに冷静になった。えっ、なんでクビ……?
突然のことに気が動転しかけてシロをちゃんと見れていなかったが、只事ではない様子に俺はシロの顔をしっかりと見る。彼女は今にも泣きそうに目を潤ませているのを見て、俺はシロの肩を優しく叩いて少し離れるようにお願いしてからシロに問うた。
「シロちゃん、とりあえず落ち着いて。クビになんてするわけないから。……どうしてそう思ったのかだけ、教えてくれる?」
ゆっくりでいいからとシロに伝えると、シロは少しずつ言葉を選んで、自分の気持ちを吐露してくれた。
「えっと、えっとね……シロちゃん、今日のバトル全然良いところ見せられなかったから……」
今日一日の交流バトルを振り返って、シロはそのほとんどのバトルが敗戦であり、前衛としての活躍が全くできていなかったこと。単体で見てシロは散々なバトル結果に自信を失くし、戦力外通告されると思い今のように泣きついてきたとのことである。
俺は今日一日のシロのバトルを思い出してみる。シロが対戦したチームの編成のほとんどにグリアロは参戦していて、グリアロに立ち向かうシロの姿をよく見た記憶があった。
たしかにバトルの内容も戦績もあまり良かったとは言えないものであったかもしれないが、それは別にシロが下手や弱いからではない。俺の指示や作戦をちゃんと聞いて実行し、成功させているのでむしろ才能があると言っていい。
ならなぜ今日のバトルがうまくいかなかったのかと言われれば、それはグリアロにあるだろう。
実際グリアロはかなり機転が良く、こちらの前衛に対して最適解に近い対応を行っていた。元々頭が良くなければ使いづらいブロックスキルを、タイミング良く相手のボムも利用したりそのスキルでしかできない築城を完成させたりと、グリアロ独自のセンスを光らせて使いこなしていた。ブロッカーのみんなも自分達とは違うスキル構成であるのに、その妨害と連携に舌を巻いてしまうほどである。
だが……だから仕方ない、とか。シロもすごいけどグリアロはもっとすごい、とか。そういうことではない。それはただの言い訳だ。シロが今抱えている悩みは、それらを超えた先にある。
「……シロちゃんは、グリアロちゃんにリベンジしたい?」
「……うん、リベンジしたい。でもそれはグリアロちゃんに負けて悔しいとか嫌いとかじゃなくて……私が弱いままでいるのが嫌なんだ。クロちゃんやグレイちゃんはグリアロちゃんとバトルしてる時、すごいうまいんだよ。クロちゃんは一度勝ってるし、グレイちゃんももう少しで勝てそうになってたし……でも私は全然ダメダメで、頭も良くないから一度もグリアロちゃんを出し抜くことができなくて……」
うぅ、とシロが今日を思い返しながら自分のバトルの拙さに落ち込んでいた。他と比べるといったこととは無縁で、シロらしくない思考であるが……それほどまでにはっきりとわかりやすかったために、堪えたのだろう。
状況が違うが……俺も師匠に才能なしと言われた時やボンバーバトルの大会で結果を残せなかった時はショックだったので、シロの今の気持ちは痛いほどわかった。
……助けてあげたい。元気じゃない悲しいシロは見たくないし、ここで助けにならなければ指導役をやっている意味なんてない。それとこれは俺個人の話になるが……シロは、俺にとって恩人である。
今世ではなく、前世。俺がボンバーガールを始めた切っ掛けはシロだ。彼女に一目惚れして、俺はボンガプレイヤーとなって幸せなボンガライフを送れたのだ。恩返しになるかはわからないが……ここで動かなければ、俺の推しへの愛は嘘になってしまう。
それは気持ちだけの話ではなく、ちゃんと方法がある。シロは自信を失くしているようだが、今までのバトルを見ていた俺はシロに一つの可能性を見出していた。それは前世のボンガオタクとしての知識ではなく、この世界に生まれてボンバーバトルを経験してきた俺の人生の先見である。
「シロちゃんは……これからうんと強くなれるよ」
俯いていた顔をゆっくりと上げ、シロはこちらを見た。どこか縋るような不安な視線を、俺は安心させるように言葉を続ける。
「今日のバトルはうまくいかなかったかもしれない。シロちゃんは自分が弱いと思い込んでいるけど、俺は逆だよ。シロちゃんはまだまだ強くなれるって、今までのバトルを見て確信してる。だからシロちゃんが強くなれる練習法を思いついてるし、それを俺は教えられる」
俺はシロに手を差し伸べる。
「いつもやってる練習とは違うメニューになるから、少し大変かもしれないけど……俺特製のシロちゃん専用練習メニュー、やってみない? 信じてくれるなら、絶対に後悔させないって誓うよ。……どうかな?」
シロはじっと、俺が差し出した手を見た。その瞳には先ほどの不安な色は見られず、小さな光が灯るような一瞬の輝きが見えた。
自分の胸に手を当てて、目を瞑る。深く深呼吸をして落ち込んでいた気持ちを落ち着かせて、それからゆっくりと目を開いてシロはもう一度俺を見た。
いつもの天真爛漫で笑顔が似合うシロではなく、真剣な眼差しで覚悟を決めたボンバーガール・シロがそこにいた。
「お願い、マスター! シロちゃんのこと、強くして!!」
「――――任せて。必ずシロちゃんを強くしてみせるよ」
そう言ってシロは俺の手を取って、強く握手を交わした。次にチーム573と戦うのはBBCになるだろう。それまでにシロを強化して、リベンジを果たさせる。
俺達の戦いは、これからだ――――!
「――――おほん。そろそろ、いいかしら?」
俺とシロが覚悟を決め熱い握手を交わしていると、横から声を掛けてきた人物がいた。いつの間にと驚いて振り向くと、そこには青髪ツインドリルの吸血鬼少女・アクアが腕を組んで佇んでいた。
「あ、アクアちゃん聞いてー! マスターが私のために特別メニュー作ってくれるんだー! シロちゃん強くなって、グリアロちゃん達にリベンジするよ!」
「ええ、聞いておりましたわ。ここに来た時に重要な話をしておりましたので、水を差してはいけないと思い静観してました。……結果盗み聞きの形になってしまったこと、謝罪しますわ」
頭を下げず目礼で謝罪を口にするアクア。俺とシロは全然気にしてないので、大丈夫だと答えて謝罪を受け入れた。それを聞いてアクアは「ありがとうですわ」と微笑んでから、真剣な表情に変えて俺を見た。
……なんか、少し怒っている……?
「さて。下僕様、私は貴方に話があって、皆様方より早く此方に来ました。シロ様の方が先に参上していたのは、少し意外でしたが……シロ様の決意と向上心は素晴らしいもので、良いものが聞けましたしたわ」
アクアの賞賛にシロは「えへへー!」と隠すことなく喜んでいた。アクアもシロに対する視線は優しいものだが……俺に対する視線は、やはり少し厳しく感じた。何だ……? マジで無意識に「俺、なんかやっちゃいました?」なことをしでかしてしまっていたのか……!?
「えっと、アクアちゃん。話というのは……?」
俺が恐る恐る聞くと、アクアは表情を変えずに内容を話し始めた。
「シスター達から相談を受けましたの。下僕様が教会にスカウトしに行った時の会話で、下僕様の身のうち話をしたらしいですわね? その会話の中で下僕様は御自分を卑下したと。その様子をシスター達は心配だったと私に話してくれましたわ」
「あーあの時は思ってたより心配されて驚いたけど……てか、え? 今も心配されている感じなの……?」
最終的にグリアロ登場からの合流バトルの件になって話は流れていたが、まさかあれから今も気にされているとは思わなかった。今度しっかり大丈夫なことを伝えなければ……そう思っていると、アクアは目つきをさらに鋭くして続きを話した。
「酷い物言いかもしれませんが、その話を聞いて私は下僕様の心配はしておりませんでした。ええ、心配はしておりません。ただ――――少しばかり、怒りを感じました」
ほんの一瞬に感じたアクアの感情に、背中から冷や汗が流れるを感じた。
「下僕様。貴方は私達の、私の指導役。そうですわね??」
「う、うん。それは間違いないけど……」
「ならば胸を張って、自信を持ちなさい。貴方は強く優秀なのだから。山ほど言いたいことはありますが……ここではなんですし、場所を変えてお説教の続きといたしましょう」
そう言い終わると、アクアは自分の足元を起点に巨大な魔法陣を俺達を巻き込む形で展開した。これは……アクアブルームーン……!?
「お、お説教って……てか、ベース内で発動してもベースに戻るだけじゃ……」
「ご安心を。これはスキルデータではなく、私個人の魔法。行き先は我がアクア城となっている――――帰宅用アクアブルームーンですわ」
「帰宅用アクアブルームーン!?!?」
なんだそのパワーワード!? とツッコミを入れる間もなく足が地面から離れ、魔法陣の中にいる3人は上空へと浮かび上がる。
当事者のアクアは慣れた様子であったが、俺とシロの2人は「うーわー!」と負けて吹き飛ぶ格ゲーキャラの如く叫び、着の身着のままなすがままに空へ飛んでいき、アクア城へと連れて行かれるのであった。
今日のドルウェブ2.5周年、明日のシノマス最終章、来週のメガニケ2.5周年……すみません、もしかしたら次回更新遅くなるかもしれません(小声)