ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。   作:ハニボン

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スカウトされました

 スタジアムから移動して適当な喫茶店に入って今、カウガールのスタッフさんと改めて話の続きをしていた。

 

「まず最初に……私は有識者ではありませんよ」

 

 開口一番に俺はスタッフさんがしているであろう勘違いを正す所から始めた。

 

 実際嘘を言っているわけではない。知識自体は前世のゲームでの話で、今世の現実的競技となれば正真正銘未経験なのは間違いなかった。

 

 案の定スタッフさんが「では先ほどのは?」と聞いてきた。隠す必要もないので今思ったことをそのまま答えることにした

 

「ゲームの話ですよ。俺の大好きなゲームで、新ルールのバトルと似たゲームシステムなんですよ。さっきはそれを見立てて想像してたから、それで勘違いさせてしまったんだと思います」

 

「ほうほう、ゲームですか。気になりますねえ~どんなゲームか教えてもらっても?」

 

 ……あ。しまった。普通に考えればそりゃ聞いてくるよね。だって新ルールと似たシステムのゲームなんてバトル黎明期の今を考えれば参考にはもってこいである。やばいななんて答えよう。

 

 実は転生者でボンバーガールにドハマりしていたからですとは流石に言えない。正気を疑われるだろう。

 

 どうしようか。昔の話なので憶えてない、と言い訳しても大好きなんじゃないの? ってなる。流石に苦しいだろ。

 

 とはいえそれ以外の理由も思いつく筈もなく、馬鹿正直に「昔のゲームなのであんまり憶えてなくて……」と苦し紛れに言うと、スタッフさんは「そうですか〜」と特に疑問が無いように返した。

 

 あ、あれ? あんまり興味無かったのかな?

 

「そんなことより、実は貴方に話があるのです」

 

 そう言うと、スタッフさんは名刺を一枚の取り出して、こちらに渡してきた。

 

 そこにはボンバー事務所の名前とスタッフさんの名前が記されていた。

 

「そこに記されているように、私は現在立ち上げているボンバーバトルの事務所を持っています。結論から言いますと、先ほどの貴方を見込んで私の事務所専属のコーチとして働いてもらいたいと思っているんです」

 

 なんと直球でスカウトの話をスタッフさんは持ってきたのだ。

 

 最初に驚いて、次にやったー! ヤッタゾオオオオオ!! と歓喜に満ち溢れたが、流石に都合が良すぎるなと思って少し冷静になった。

 

 渡りに船なのだが、上手い話には裏があるのはボム古事記にも書かれているほど有名だ。原作キャラの頼みは極力断りたく無いけども。

 

 それに見込みがあるなどと言われてるけど、あんな独り言ブツブツ言ってるだけなのに才能を見出されても……という話だ。なら今しているのはビジネスの話だろう。

 

 おそらくだが俺は今、試されているのだろう……疑う警戒心、政あるいは商い的舌戦能力、コミュニケーション能力! ならばこそ、この場で自分がただのイエスマンではないと証明しなければならない――――!

 

「ありがとうございます! ぜひ働かせてください!」

 

 く、口が勝手に……!

 

          ●~*

 

(……大丈夫でしょうか)

 

 入社手続きなどの話が済んで、喫茶店で別れた彼――――砂色ユキトの背を見送りながら、スタッフさんは思う。

 

 スタジアムで出会った彼を思いの外簡単にスカウトできてしまったことに、スタッフさんは一抹の不安を抱えながらもしかし自分の直感を信じていた。

 

 事務所を立ち上げ、これからのボンバーバトルに参入していくことになるカウガールのスタッフさん。

 

 あの時、目ぼしいガールがいないか見て回っていた時に、彼を見つけた。たしか別会社の知り合いが面接に唯一の男性が来ていたとかなんとか……そんなことを思っていた折に、彼の独り言を聞いてしまったのだ。

 

 各ポジションの配置、攻め方や守り方、何を優先するかの判断。少なくともそれらを聞き取ることができた。

 

 スタッフさんは彼の独り言が正しいとは判断できない。何せ新ルールは始まったばかり。大きな大会はまず無くて、小さな大会がこれからだ。誰もが右往左往し手探りの状態なのだ。

 

 まだまだスタジアムに残っていそうな雰囲気だったので、彼を面接していた知り合いに脅はk……お願いをして、コピーされた履歴書を送ってもらった。

 

 旧ルールの指導テストが優秀という以外は特に気になるものは見受けられなかった。優秀、とは言っても他の優秀な生徒たちの中で平均的なくらいなものだった。常識内の存在であり、言い過ぎるならば凡夫と言えるくらいには一般的な人に見えた。

 

 しかしバトルを観戦している今の彼は、何か強い存在感があった。

 

 異彩を放つ、というわけではない。いわばこれは熱であり、その熱量から感じられるものはおそらく情熱であるものだとスタッフさんにはすぐにわかった。

 

 だから――――だからこそ、逃してはいけないと思った。

 

 スタッフさんがボンバーバトル事業に手を出したのは、お金のためだ。貧乏が嫌、お金持ちになりたい。そういった生活的な願望はあれどたかが一部でしかない。それは彼女の趣味であり、彼女はお金を使って使ったお金で世界を回すのが大好きといったものだった。

 

 新ボンバーバトルはまさに彼女の趣味を満足させつつ仕事をこなせる天職だろう。

 

 だから彼、砂色ユキトはストレートに言えば金のなる匂いがするからという下心はもちろんある。そしてそれ以上にボンバーバトルを盛り上げていってくれるだろう可能性に、ほんの少しの期待をしていた。

 

「まあ、少し単純過ぎるところがありますけどね~」

 

 まさか二つ返事でスカウト成功とは。会って数分だが、彼は少し信じやすいのかもしれない。

 

 自分がスカウトし、事務所所属となった何倍も癖の強いガール達。彼女達とどう接していくのか。愉悦が8不安が2の気持ちで、顔合わせの日が待ち遠しくなった。




次は水曜日に更新します。
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