ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。 作:ハニボン
ボンガも魔法少女イベントでシロが来たので、忙しいけど嬉しいですね。……ほんとに遅れてすみません。できるだけ週一ペースに戻せるよう頑張ります。
「下僕様、私とボンバーバトルしましょう。練習を始める前に、シロ様に下僕様のバトルを見せた方が飲み込みが早くなるでしょう」
アクア城に着いてすぐのこと、開口一番にアクアはユキトにバトルを申し込んでいた。
ユキトがバトルする訳を聞くと、どうやらアクアはユキトがシロにさせる練習法を察していて、それならばユキト自身のバトルスタイルを一度見せるべきだと主張したからだ。
それを言われるとユキトも少し考えたが、一理あると判断してアクアの申し込みを受け、シロに見学させるためのボンバーバトルをすることとなったのだ。
大丈夫かな? とシロはあまり良いとは言えない自分の頭脳で学びを得ることができるか不安に思っていた。そんな心情を見抜いたユキトは、ただ気軽に見てるだけでいいと伝えた。
「こういう感じ、ってのをなんとなくわかってくれたら、それで充分だよ。あくまで方向性が似てるってだけで、練習したらシロちゃん独自のスタイルを手に入れられていると思うよ」
練習中やなんでもない会話の時に見せる優しい笑みで、シロに安心させる言葉を掛ける。ワープポイントに向かうユキトの背中を見送りながら、シロはふと自分の手のひらを見つめてみた。
『――――任せて。必ずシロちゃんを強くしてみせるよ』
握った手の温もりが、今も残っている。
焦っていた。良いとこなしで、バトルについていけないのではと思った。
グリアロが一枚上手であったのはシロでもわかっている。しかしクロやグレイは攻略のためにスキルをうまく駆使し、ボムの壁を作って近づけないようにするなどのテクニックで善戦していた。普段あんまり気にしないシロでも、常にグリアロに翻弄されっぱなしで攻めきれない自分を他の2人と比べてしまう。
このまま自分だけ置いて行かれるのではと思って、気が付いた時には直情のままにユキトの元へと泣きついていた。
らしくない態度でユキトを心配させてしまったが、シロの気持ちを知ったユキトはすぐにシロ専用の特訓を提案してくれた。
自分が強くなれることを、ユキトは確信していた。疑うことなく信じて差し伸べられた手を取った時に感じた安心感は、マスターのすべてが愛おしくただ純粋にシロは嬉しかった。
シロは手を繋いだ温もりを忘れないように優しく握り、片方の手で包むように握って胸に置く。目を瞑れば祈りを捧げるような姿に見えるだろうが、シロは目をしっかりと開いて目の前で始まるボンバーバトルを一時も見逃さないようにする。
ボム宇宙人なら誰でも知ってる、バトルロワイヤル形式の旧バトル。シロもテレビで何度も見たことがあるし、公式戦に参加したことがなくともアカデミアの授業で旧バトルの経験はもちろんあった。
ベース破壊が勝敗を決める新バトルとは近いようで別モノであるが、それでもユキトのバトルを見るのは初めてなので、シロは期待で胸が高鳴っていた。そしてバトルが始まると――――シロはすぐにそのバトルに夢中になることになる。
ボムを置く、投げる、蹴るだけではない。スキルを駆使して相手を仕留めるがための駆け引きが繰り広げられている。
ユキトはブーメランボムや射出ステッキでアクアを狙い撃ちに掛かり、アクアはサーヴァントとブルームーンを使って挟み込もうとユキトを追い詰める。
さながら詰将棋を連想させるバトルの運び。複数回行われた中でどのバトルでも互いに残機を残り一つというところまで追い込み、追い込まれる状況となる白熱したボンバーバトルとなっていた。
見学のシロは参考になる動きや戦術を盗むなど、残念ながらそれらを学習して自分の中に取り込むことはできなかったが……ただそのバトルを、シロは目を輝かせて見ていた。
何より目を奪われたのは、マスターであるユキトの戦い方である。
ひたすらボムを飛ばしているように見えるが、それは考えなしではなくユキトが置いたボムで連鎖して爆風をアクアに届かせたり、時にはアクアが置いたボムの爆風を繋げてサーヴァント達を殲滅したりと多彩な攻撃方法を見せつけた。
見てて楽しい。シロが抱いた気持ちを表す言葉は、一言の感想であった。
綺麗に繋げる連鎖の続きが見たくて、貪欲に勝利を追いかけるその先を見届けたい……見学なのを忘れて、最後のバトルまで夢中になる
心に火がそっと灯る。胸に暖かさを感じながら、シロはユキトのバトルから目を離ず、静かに見守っていた
●~*
バトルは5回行われ、3勝2敗でアクアが勝ち越す結果となった。
最初にアクアが3勝し、最後に俺が2勝する形だ。バトルマップから城内に戻ると、シロが目を輝かせて俺達を迎えてくれた。
「マスター! アクアちゃーん! 2人ともすごかったよー!」
満面の笑みで俺とアクアを絶賛してくれた。アクア城に来る前と比べて、元気になっているのがわかった。
何かしらの気づきを得たのだろうか? そう思ったが得られた者の顔つきという感じではなく、テーマパークを楽しんできた後のような笑顔、か……? それだけではない感情の色が見えた気がするが、それ以上はわからなかった。
ともあれ、元気になって良かった。やっぱり元気なシロが一番である。
「ありがとう、シロちゃん。まぁバトルは負けちゃったけどね」
「1勝差なら実質引き分けみたいなもんや! シロちゃん、マスターに感動したでー!」
「おお……シロちゃんの関西弁だ……!」
エセだけど。でもいつも元気なシロでもかなりテンションが上がっている時にしかエセ関西弁は使わないので、そこそこ使うボンバーマンガと違って実は結構レアなのである。それほど俺達のバトルに興奮してくれたようだ。
エセ関西弁のシロは可愛いな~とクロみたいなことを思いながら、そろそろアクアの方を向いても大丈夫かなとアクアに視線を……いや、あともうちょいシロちゃんと話して時間を……。
「マスター。アクアちゃんの顔がすんごく大変なことになってるよー?」
「ああ、うん……」
お気づきになられましたか…………。
先ほどから反応の無いアクアの様子を見て、シロは俺に大丈夫かな〜? と尋ねてきた。
シロの心配はわかっている。俺も自分が後半のバトル2戦を2勝した時に、アクアの表情を見ていたのだから知っている。俺は前世知識で知っているから多少は動揺せずに済んだが、高貴で優雅な態度で接するいつものアクアを知っている者からすれば驚くのも無理はないだろう。
本当は落ち着くまでシロと話していたかったが……シロが気にする中で放っておくわけにいかないし、俺は覚悟を決めてアクアに話しかけた。
「あの、アクアちゃん……?」
「あふふ……」
頬を赤く染めて蕩けきった笑みを浮かべ、上気した顔になっているアクアがそこにはいた。
バトルの興奮が収まらないのか息が荒く、開いたままの口からはアクアの舌が覗いていた。額から頬へ流れ顎から落ちる汗はどこか情欲を誘うような艶やかしさを感じさせる。妖しく光る瞳は、バトルが終わってからずっと俺にだけ視線を注いでいた。
あんまり言いたくはないのだが、こう……
「体調が悪いとかおかしくなったわけじゃないんだけど、バトルで負けた時はこの状態になりやすいというか……とにかくどこか悪くしたわけじゃないから大丈夫だよ。バトル後の余韻に浸っているみたいな感じだから」
アクアの名誉のためにもフォローを入れ、シロもそうなんか〜となんとなくといった様子で納得してくれた。
元より暇つぶしの冒険と敗北を知るためにボンバーバトルへと参戦したボンバーガール・アクア。それを聞いて今の状態を見ればマゾ気質と思ってしまうのは仕方がないかもしれないが、それはあくまで自分と同等かそれ以上の高レベルのバトルを求めているがゆえの探究心である。
最初で最後の一度だけの大会出場であるが、それでも優勝経験者ならではの欲望であり、敗北を想起させるほどの刺激あるバトルをアクアは求めているのである。
でもほんと、なんでこの状態に……? 引き分けの時はここまでじゃなかった筈。たしかに最後の方は俺が勝ったけど、先にアクアが3勝してるから結果的に俺が負けてるからこの状態にはならないはずなのだが……。
「アクアちゃんがこんなになるほど、俺は強くないんだけどな……」
「それは違いますわね」
「うわぁ!?」
急に復活したアクアが真面目な顔で俺の呟きに反応してきたので、俺は驚いて声を上げてしまった。しかしアクアは気にせず、先ほどの醜態も元々無かったかのような態度で話を続けていた。
「まずは私からの話より先に、シロ様の話から始めましょう。下僕様、お願いいたしますわ」
完璧に切り替えたアクアが司会となって話を進めて、俺にバトンを渡した。ハキハキと物事を進行させる様は流石のカリスマ性を感じさせた。……さっきの発情状態が無ければ素直に称賛できたのが……とにかく気を取り直して、俺は改めてシロに向き直った。
「事前にアクアちゃんから俺の戦い方を見てもらうためにバトルを見学してもらったけど、どうだったかな? シロちゃんが見て思ったままの感想を教えて欲しいな」
「んっとね、んっとね。あんまりよくはわかってないんだけど……マスターがよく教えてくれるボムの連鎖? がすっごく上手なんだって思ったよ! それとマスターが使うスキルが面白いなって! 1人であんなにいっぱいボムを飛んでかせてるの初めて見たし、とっても綺麗で見てて楽しいから、シロちゃんはマスターのバトル大好きだよ!」
「――エレガント。シロ様は見る目がありますわ」
大絶賛するシロにアクアがその素直すぎる感想に、優しい目をしてシロを褒めていた。ちょっと俺も顔が熱くなってきた気がする……シロの感想は直球過ぎるから、素直に嬉しいと思えるから照れてしまう。修業時代でいろんな大会に参加してた時、それだけは得意で他の参加者からも好評だったので、連鎖に関しては自信があると胸を張って言える。それしか取り柄がないとも言えるが……。
俺の話はともかく、シロの話に戻そう。改めてありがとうと感謝を伝えてから、俺はシロが強くなれると思った長所を口にした。
「今までの練習やボンバーバトルで、シロちゃんの戦い方や動きを見てて思ったんだけど……シロちゃんって、ボムを投げた時のコントロールがすごく良いんだよね」
「コントロール……?」
俺の指摘にシロはオウム返しで疑問を浮かべていた。この様子を見るに、やはり意識せずにボムを投げてきたのだろう。見ていてそれには気づいてはいたが、逆に言えばシロは己のセンスのみで的確に投げたい場所にボムを投げ入れていたのだ。
そこに俺はシロの可能性を感じたのだ。
「シロちゃんには、ボム投げの才能がある。今はまだ直感で投げているだけだけど……ちゃんと意識して使いこなせるようになれば、間違いなくシロちゃんの最大の武器になると思ってるよ。だからシロちゃんには、どんな状況でも正確に投げられるようにするためのボム投げの練習を中心に特訓してもらうことになる」
ボム投げ、ボムキックといった投げる蹴るの行為は傍から見たら簡単そうに見えるかもしれないが、これが意外と難しいのだ。
前に少しだけボムのサイズを言及したが、ボンバーバトルで使用できる通常のバトルボムの大きさは小学校の運動会で使われる大玉くらいの大きさである。
そのサイズのボムを自分が飛ばしたい場所に投げる又は蹴り飛ばせるかと言われたら、まず無理である。明後日の方向に飛ばしてしまうか、動かすのに失敗して爆発させてしまう者が大半である。なんとなくでやってみてうまくできなくて、それからボム投げボムキックの練習を始めたという者も珍しくない。
練習をしてもボム投げは壁の向こう側に、ボムキックは直線の通路にまっ直ぐに飛ばすのが一般的だ。投げもキックもうまくできない人は俺みたいにボムを飛ばすためのスキルデータを使う……奴は今まで見たことないけど。大体が特殊ボムのバリエーションで独自の戦闘スタイルを築いているのがほとんどだ。
シロはただ投げているだけかもしれないが、実は凄いことをしているのである。だからこそシロはボム投げを完璧に自分のものできれば、ボマーとして今まで以上の強さに進化できると確信している。
わかりやすいのが正にクロだ。ボムキックを使いこなして習得したのがクロキックという、途中のブロックを突き破って進むボムを繰り出す強力な蹴り技である。クロキックとは同じ方向性にはならないだろうが……きっとシロも自分の強みを手に入れられるだろう。
「さっきの……」
ボム投げの才能を伸ばすこととその利点。基礎は最大の奥義、必殺技はそのあとに付いてくるもの。様々な可能性をシロに説明し終えると、シロは俺をまっすぐ見たままぽつりと呟いた。
「さっきのバトルみたいに……マスターみたいに、私もできるかな?」
呟きは質問で、普段のシロからは想像しにくい平坦な声色であった。しかしシロの目を見てみれば、その瞳は爛々としていて、今まで見たことがないほどに輝いていた。
見ればわかる。彼女のボンバーガール魂は今――――燃え上がっている。
「――――シロちゃんならできるよ、絶対。というか、俺なんかすぐに飛び越えていっちゃうよ」
「うん……うん! マスター! シロちゃんのこと、ビシバシ鍛えて! 私、頑張っちゃうから!!!」
俺が背中を押して、シロが元気に答えた。俺の提案したボム投げ強化特訓を理解し、受け入れてくれた。シロのやる気を見て安心して、必ずシロの力になろうと決意しながら、次に俺は話があると静かに待っていたアクアの方へと意識を向けるのだった。
今回ボム投げ強化特訓決定回でしたが、この作品ではシロの飛んでけボムやクロのクロキックはスキルではなく投法や蹴り技などのフィジカルになるので、特に飛んでけボムは独自解釈マシマシになる予定です。
次回はアクアの野望回になります。ほんとは今回でシロの心理描写ガッツリ描きたかったけど、あんまり描きすぎるとなんかシロっぽくなくなるので、これから書いていく先でゆっくりちょくちょく描写していこうと思います。