ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。   作:ハニボン

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ボムのサイズについてですが、運動会の大玉くらいと描写しましたが大きさのイメージは公式アートブックでシロが乗っているボムくらいの大きさです。

運動会の大玉そういやどのくらいだろ? って調べたら意外と大きかったので……。

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青の野望と白の願い

 マスターのユキトは何か悩みを抱えているように見えた。

 

 様子を見てあげてほしい、とセピアが相談を持ち込んだのは、アクアがシャワーを終えて髪を乾かしている時だ。

 

 最初話しかけられた時は反射的に震えあがってしまったが、下僕であるユキトの名前と次に悩みと聞いて、本能的恐怖で乱れた心は瞬時に落ち着き、冷静にどういうことかと詳しい話を聞いた。

 

 セピアは前にユキトがボンバースカウトで教会に来た時の事を話し、パプルがユキトの公式戦のバトルを見てみたいと話した時だ。シスターという職業上感情の機微に聡いセピアは、才能がないと卑下するユキトの様子から何か悩みを抱えているように見えて気になっていたことをアクアに相談したのだ。

 

 最後まで聞き終えた時、アクアは苛立ちに似た怒りのようなものを感じていた。それはユキトの実力を身に染みて知っているからである。だからアクア城に連れて来てすぐにバトルを申し込んだのは、ユキトに自分自身の力量を再認識させ(わからせ)るためであった。

 

 旧ボンバーバトルは基本、自分なりのバリエーションボムを使って戦うのが主流である。大会出場こそ一度だけであるが、時間がある時はフリーバトルやバトル動画などで、様々なボムのバリエーションを見てきている。

 

 バリエーション力が無くても、アクアのように魔法やスキルで戦う腕自慢もいる。アクア自身がそうであり、そういう意味ならユキトもスキル中心のボンバーマンと言える。

 

 しかしだ。スキル中心と言えども、ユキトのような通常ボムそのものに焦点を当て、命中させることに特化しているスキル構成は、アクアも初めて見る戦闘スタイルである。

 

 ただそれだけの構成ならば珍しい、くらいで終わるのだが……真にアクアを魅了したのはそのバトルセンスに他ならない。

 

 それは何かと問われたら、ユキトが得意とするボムの連鎖だと答えられる。ここぞというタイミングを的確に狙うことができるユキトとボムを飛ばすスキルの噛み合いは凄まじいもので、バトルにおいて最大の効果を発揮しているのだ。

 

 シロがユキトのバトルを見てて楽しいと評するのなら、対戦しているアクアはそれ以上の享楽を感じさせる良きバトルであり、心を熱くさせてくれる素晴らしい時間を過ごせたと誇張なしに好評できた。

 

 今はまだ圧倒的強者というわけではないが、将来性的にそれだけのポテンシャルをユキトは秘めている。

 

 初めて会った最初のバトルでアクアはそれを見極め、自分が求めるものを持っていると期待してユキトを下僕様として認めたというのに……自分自身の力に自信がないという、最初の話に戻る。アクアからして見れば少しの怒りも抱くし、何よりこのまま燻らせるのはあまりにも勿体無いと感じていた。

 

 とりあえずユキトとバトルしてスッキリしたので怒りの方は収まったが……まだ肝心な話が終わっていない。

 

「下僕様。貴方……公式のバトルには参加しないとシスター達の話で耳にしましたが、本気かしら?」

 

「……今は指導に集中したいのが本心だけど……大会が終わった後のことを言っているのなら、今のところその予定は無いね」

 

 やるともやらないとも捉えられる曖昧な答えだが、ユキトのやる気はあまりないように感じられた。というか様子からして見て、バトル参加に意欲的ではないのが伺える。

 

 セピア達から事前に悩みがあるかもしれないと聞いていたが、これは確実だとアクアは確信する。

 

「……理由をお聞きしても?」

 

 悩み云々よりもまず先に、アクアは公式バトル不参加の訳をユキトに聞いてみることから始めた。

 

 問われたユキトは少し、いやかなり困ったような反応をした。視線そこアクアから逸らしていないが、すぐには答えず眉を下げて真剣に何かを考え込んでいた。

 

 1分以上の数分が経ってから、ユキトはぽつりぽつりと呟くように、言葉を選んでアクアの問いに答えた。

 

「俺が大会で結果を残せなかったって話は……もう聞いてる?」

 

「ええ、まあ……少し信じ難いですが……」

 

「え? マスター、優勝しか知らない無敗の最強ボンバーマンじゃなかったのー!?」

 

「いやいや、さっきのバトルで最初に負けてるからね?」

 

 あんなに強いのに~と驚くシロに、それは流石にとやんわり否定するユキト。それについてはアクアもシロと同じ気持ちであり、むしろなぜもっと名前が売れていないのかと不思議なくらいであった。

 

 ボンバーバトルを嗜む程度には参加しているアクアだが、その程度であって当時の情報を積極的に集めていたわけではない。しかしユキトの名で調べてみても終ぞ出てこなかったということが、つまりはそういうことであることの証明でもあった。

 

「あの頃は修行とバトルの両立で活動してたんだ。今思えば、かなり中途半端な行いだったと思う。そりゃあ、ちゃんとバトルに挑んでいる人に勝てるわけないよね。でも……あの頃は色んな惑星に行って、色んな選手と戦うのが楽しかったなぁ」

 

 ふつふつとユキトは当時を思い出して懐かしんだ。修業期間は本当に冒険の連続で、前世では見られない景色がたくさん見て、何度も感動した。

 

 そんなユキトの表情は、アクアがよく知るものだった。正に自分が初めて家を飛び出して、サターンファイトで優勝して帰ってきた時に鏡で見た自分の顔である。

 

 冒険の感動を知った顔を見て、思わず口角が上がり微笑みの表情でユキトを見てしまう。しかし同時に、その顔ができるならなおさら公式バトルの参加を遠慮するのかがわからなかった。

 

 今までを見てもボンバーバトルを嫌いになったわけでもない。一体何があったのか? そう思っていると、ユキトがそれに答えるように続きを話した。

 

「でもいつ頃だったかな……急にバトルの調子が悪くなったんだ」

 

 本当に突然のことで、当時そこまで勝率は悪くなかったユキトは急にバトルで勝てなくった。本人の体調が悪いわけでもなく、精神も平常であり特にこれといった問題は見受けられなかった。

 

 単純なスランプだと、当時はすぐに抜け出せるだろうと気にしていなかったが……その時にユキトの師匠であるシンから、突き放すように告げられた。

 

『お前には才能がない。ボンバーバトルから離れろ』

 

 最初は何を言っているかわからず、説明を求めたがシンはそれの一点張りで何も話さず……言うまでなく、喧嘩になった。それからシンの元から去って、ユキトはシンの言葉を否定するためにとある辺境の惑星で行われるボンバーバトルの大会に出場した。

 

 そこは賞金が出るわけでもない小さな大会であり、辺境ということもあって参加者自体も少なく、どちらかと言えばフリーバトル寄りの小規模大会であった。

 

 とりあえず……勝つ。優勝して、自分に自信を持ちたかった。

 

 だが結果は準優勝。決勝まで進出できたが、辺境にいる選手とは思えない実力者と対戦し、敗北。ユキトは優勝できなかった。

 

 そこでユキトの心は――――折れてしまった。

 

 表彰台に上がらず、ユキトはそのままボム地球行きの宇宙船の乗り込んで帰郷し、元より夢だった指導役の職に専念することになったのだ。

 

 よくある挫折だよ、と最後にユキトは締めた。

 

「えっと……」

 

「…………」

 

 話を最後まで聞いていた2人の反応は異なり、シロは悲しい顔をしてどう声を掛けていいかわからずにいて、アクアは黙ったままじっとユキトのことを見つめていた。

 

 今の話を聞いて哀れみこそ感じたが……酷い人と思われるかもしれないが、正直に言えばアクアはユキトの気持ちがあまりわからなかった。

 

 だって、挫折などしたことないから。そうじゃなければ敗北を求めて家を飛び出たりはしない。やれば何でもやってみせる完全無欠の吸血鬼であるアクアだからこその無理解であるからだ。とりあえずユキトの師匠には一度お話をする必要があると怒りの決意をしたが……。

 

 シロと同様掛ける言葉が見つからないが、しかしだからと言ってわからないで黙っているつもりはない。ユキトの過去を聞いたからこそ、このままではいけないし放ってはおけない。

 

 今の自分では慰めの言葉も、ユキトのトラウマを克服させるような明確な方法も思いつきはしない。

 

 だからアクアは――自分のエゴを貫き通すことにした。

 

「下僕様……いいえ、ユキト様。貴方様の話を聞いた後でこの話は不躾で浅慮なことですが……私の野望についてのお話をさせて頂いても、よろしくて?」

 

「ああ、うん。構わないよ。むしろこんな辛気臭い話しちゃって、申し訳ない」

 

「いえ、そんなことは……むしろ話していただいて感謝しかありませんわ。それに今から話すのは、ユキト様に関係する話ですわ」

 

 違う話をすると申し訳なさそうな顔をするアクア。ユキトは話を変えた方が良いと思っていたため、特に気にしていない様子で逆に謝罪を口にしていた。

 

 しかし自分に関係があると言われ、「俺に?」とユキトは疑問を浮かべた。そんなユキトに対してこれからアクアが話すことは、酷な選択を突きつけるものであった。

 

「私……『旧』と『新』という名でルール違いのボンバーバトルが別れているこの界隈の現状を、良しとしていませんの」

 

 それはボンバーバトルの新ルールが銀河中に知れ渡った時。いつものバトルロワイヤルルールのバトルのことを、自然と旧ルールだとみんな呼ぶようになった。

 

 その呼び方をアクアは好まなかった。元祖至上主義というわけではないし、新ルールも嫌っているわけでもない。どちらのルールもアクアは好みであるし、積極的にバトルに参戦したいと思っている。

 

 気に食わないのは、呼び方だけ。旧いと言われたら、まるでもう必要とされていないみたいではないか。

 

「私の目標はBBCで優勝した暁に……旧と新のルールを別の名に変えること。システムを多少改善し、改名されたバトルルールをもう一度銀河中に広め、両方とも負けず劣らずの人気興行にするのが今の私の野望になりますわ」

 

 ボンバーバトルのルールそのものに干渉する。その大望を吐いたのがアクアでなければ、大言壮語であると決めつけ、まともに話を聞くことも信じることさえなかっただろう。

 

 いや……アクアだとしても、予想を大きく超えたスケールの話だった。個人が競技のルールに対して口を出すなど、そんなことが可能なのか? この場に居るユキトとシロの2人は思った。

 

「あら? そう不可能な話ではないですわよ?」とアクアは2人のポカンとする顔を見て答えた。

 

 まずは自分達のチームが優勝して、選手として有名になることだと。

 

「例えばシロ様が凄腕のボンバーガールとして名を轟かせれば、シロ様に大勢のファンが付くことでしょう。そんなシロ様が今のチーム形式だけでなく、バトルロワイヤル形式にも参戦すると告知すれば……」

 

「……なるほど。新ルールで獲得したファンを、そのまま旧ルールの観客として引っ張ることができる」

 

「その通り。さらにこれはハニーに聞いた話ですが……バトル協会の方々は今回のBBCで行われるバトルの状況や結果を分析した後、特殊ボムやスキルなどのシステムの細かな調整をするつもりだと聞いていますわ」

 

「有名選手が参戦するバトルのルールが旧ルールなんて名前じゃ締まらない。BBC終了後のシステム改善のタイミングが、ルール改名に物申せる最高のタイミングとなる」

 

「ええ――この話は、すでにハニーと話し合っていますわ。改名とバトロワ形式のリニューアルによって発生する利益や集客効果など、協会への説得資料は水面下で準備していますわ。足りないピースは唯一つ――――凄腕のボンバー選手(プレイヤー)ですわ」

 

 そう言ってアクアはユキトに近づき、両手でユキトの右手を取ってぎゅっと握った。

 

「ユキト様。貴方が必要ですわ。私は貴方と共に改名後のボンバーバトルをしたいし、見せつけたい。貴方のバトルにはそれだけの魅力と可能性がある。ボンバーガール(アクア)だけではダメ。ボンバーマン(ユキト)も一緒だからこそ、盛り上げることができる。だから――――お願いします。野望のために、私と共に歩んでください」

 

 先のユキトの過去を聞いて次にする願いとしては、残酷な切望をユキトにぶつけているとアクアは自覚していた。

 

 今まで見てきたユキトという人物と性格を把握しておそらく、いや確実に――ユキトは私達の願いを断らないとアクアは知っていた。ずるいことをしていると言われれば、否定することなどできないだろう。

 

 だが、ガール達の頼まれごとに迷うことがないユキトでも二つ返事とは行かなかった。今のユキトの表情は今まで見たことも無い困惑の表情をしており、同時にわかりやすかった。

 

 ――――アクアの野望に協力したい献身。

 

 ――――今の自分では到底期待に応えられない不安。

 

「あっ…………」

 

 それら二つの感情が入り混じったもので、ユキトはうまく口を動かせずに、アクアに答えることができなかった。

 

 心苦しい。今のユキトを見ていられなくて、目を逸らしたかった。しかしアクアは目を逸らさずじっと見つめ、ユキトの返答を待っていた。

 

 ユキトに対して迫るには酷な選択。アクアは罪悪感を抱きながらも、選択の撤回はしない。この選択を今求めるのは正しいとは言えないが……たとえ時間が必要になったとしても、このままにして置くのだけは間違っていると思ったから。

 

「その…………」

 

 ユキトは答えられない。握られた手を握り返してあげられない。何かを発しようとその先が出てこなくて、手に力が全く入らなかった。

 

 時間にして1分にも満たない沈黙が、数時間経過したかのような錯覚にユキトは陥った。

 

 思考をどれだけ回してもうまくまとまらない。薄く開いた口内がただ渇いていく。

 

 何か、何か言わなければ――――。

 

「――――大丈夫だよ、マスター」

 

 そっと、アクアに握られたユキトの手の上に第三者の手が置かれる。その手の正体はシロであり、優しく包み込んでくれた。

 

「マスターが鍛えてくれた私達が優勝すれば、私達と一緒にマスターもすごいんだってわかって、きっとうまくいくよ。だから……」

 

 シロがしっかりとユキトの顔を、目を見ながら安心させるように微笑んだ。

 

「心配するない。なんとかなるなる♪」

 

 その笑顔が眩しくて。

 

 ユキトは空いていた手で、シロの手を握っていた。




アクアの野望回だけど半分くらい主人公の過去回みたいになりました。心理描写難しい…。

・ユキトの戦闘スタイルについて。
攻撃的なバリエーションボムがうまく作れないので、通常ボムを主軸にすることに決めたスキル構成。

カードゲームで例えるとサポート豊富なバニラデッキ、金色のガッシュで例えるとザケルガ、ザグルゼム、ウィビラルのみのスキルツリーで完結してしまった男。なお本人は強い効果のカード使いたいし、素直にギガノ級撃ちたいと思っている。
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