ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。   作:ハニボン

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格闘キャラって戦闘描写色々盛るペコしやすいからつい長く書いちゃいますよね。

何が言いたいかというとごめんなさい遅くなりました……今回はタイトル通りの回になります。


vsテッカ

 ボンバーガール・テッカ。

 

 父であり、ダダンダーンの先代でもある小鉄から教わった中国拳法をベースとした暗殺拳の使い手。得意技の鉄拳制裁拳は相手を吹っ飛ばして一瞬のスタン状態にするなど、他のアタッカーにはない唯一性を持っている格闘アタッカーのボンバーガールである。

 

 ならば今回のバトルの鍵となるのは……テッカは独壇場である近接戦に持ち込めるか、俺はテッカをどれだけ近づかせないで撃破するか……必然的にこのバトルは追う逃げるの形となり、自分のバトルスタイルを押し通した方が勝ちという基本を、これから体現することになるだろう。

 

 どれだけ拳法の達人だろうと、所詮は拳。近づかせないように立ち回るなど造作もない……なんて思わないし、楽観視もできない。その理由はストリートのバトルマップにあるからだ。

 

 バトルマップ自体は旧ルールと同じで、格子状に柱が並んでいるいつものボンバーマンと変わらないマップステージだ。ここ特有の特殊なギミックがあるわけではないが、ただ一つ違うのはソフトブロックの配置にある。

 

 ボンバーマンのステージもボンガのバトルマップも、どちらも共通してソフトブロックでほとんど埋め尽くされているのだが……ストリートのマップは公式と比べてソフトブロックの配置が少ないのだ。

 

 どのくらい少ないのか具体的な数はわからないが……ストリートバトルの場合は、斜めまたは縦横一列に並んでいるだけである。これにはとっとときったはったのバトルがしたい住民たちの意向でソフトブロックの配置を少数にしたという、実に脳筋な理由があるのだが……とにかく通常のボンバトよりも対戦相手との接敵がかなり早い。序盤から激しいバトルになるだろう。

 

 こちらが有利などとは微塵も思わない。油断せずに行こう。

 

『レディー……ゴー!』

 

 色々考えているとバトル開始のアナウンスが響いていた。さて、まずはどうするか……俺は早速射出(インパクト)ステッキにボムをセットしながらどう動くか考える。

 

 とりあえず戦いやすくするために左からボム置いていってブロック爆破していこうかな。

 

 おっ今回は斜めに並んでなぁ、なんて思いながら俺は動き出そうとしたその時、前方向からガンッ、と鈍い音が聞こえ――――俺のすぐ横を、何かが通り過ぎだ。

 

「……え?」

 

 それが何かを認識する前に後方から石と鉄がぶつかるような鈍い音が大きく響き、その何かは壁に激突したのを俺はその音で理解した。

 

 壁を震わせ、床にまで微かな振動が伝わるほどの重い衝撃。今、何が飛んできた? 俺は恐る恐る柱から顔を覗かせて、飛んでいった何かを見るとそこには……。

 

「ブロック……?」

 

 斜めに並んで配置されていた内の一つのソフトブロックが、壁に突き刺さっていた。

 

 ……なんでブロックが……? いや待て……まさか……!!

 

「……いた。そこだね」

 

 再度同じ音が鳴り、影が視界を覆う。背筋を走る寒気に突き動かされ、俺は空を見上げた。

 

 空を裂くように、こちらへと迫るそれは――――壁に突き刺さっていたのと同じ、ソフトブロック。

 

「――――!」

 

 弾かれるように俺は全力でその場から離れた。

 

 ドゴォッ! とすぐ後ろでブロックと柱の激突音と衝撃が響く。すぐ近くで起きたそれを振り向かずに肌で感じながら、走りながら俺は回避の成功を喜ぶよりもまず今の攻撃を考察した。

 

 まさか……()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 たしかに原作だとテッカの攻撃スキルは命中した相手を3マス先にノックバックさせるという、テッカ固有の特殊ギミックがあるのだが……ノックバックが適用されるのはプレイキャラのガールのみで、ソフトブロックなどを攻撃スキルで動かすことはできなかった。

 

 だが現実は違い、テッカはソフトブロックを殴り飛ばせていた。実行しているところは見れてないが、今の攻撃で俺は間違いないと確信した。やってることポストチアモじゃん!?

 

 あと3マスって厳密にどのくらいかわからないけど……おそらく数メートルくらい、だよな? どう見てもそれ以上ぶっ飛ばせてないか!?

 

 攻撃方法自体は変わらないのに、開けてみればその中身は俺の知っている原作知識以上のスペックで戦慄する。しかしその感情も一瞬で、一時も足を止めることができず、俺は走り続けるしかなかった。

 

 なぜならば今……俺から見て左側の、柱一つ挟んだ先でテッカが俺を追って並走しているからだ。

 

 ……まだバトル始まったばかりだよね? 展開早過ぎない!?

 

「飛ばし過ぎじゃないかな! あと女の子が男性に不用意に近づいちゃぁいけないよ!?」

 

「焦り過ぎじゃない? それに近づかなきゃ君をブチのめせないじゃん」

 

 お互いそんな軽口を叩き合うが、余裕があるわけではない。この距離はまずいし、足の速さもテッカは余裕で俺に追いついてきている。なんとかして距離を取らなければ……!

 

 俺はテッカとは反対の右に進路を変更する。ボムを置いて進路を一時的に封鎖し、少しでも距離を取るためにさらに間隔を空けてボムを並べるように置いていった。

 

 この置き方なら迂回してきても爆風を警戒させられるから、距離を取れる筈……俺は最大数の5個までボムを置きってから柱に隠れて、次のテッカの動きに注視した。

 

 ボムを回避するため迂回してくるのを予想していたが、テッカはその場から一歩も動いていなかった。俺が置いたボムに対してテッカは構えを取っており――ボムが起爆すると同時にテッカは爆風の中へと飛び込んだ。

 

「――――()()()()

 

 爆風の中を――暴風が突き進む。

 

 下半身から上ってくるように青いオーラがテッカの全身を包み込み、回転しながら突進することで爆風を完璧に受け流していたのだ。

 

 無理矢理突破してきたテッカは勢いのままこちらへと――――俺のすぐ横に着地し、即座に重心を入れ替えて、思考を動かす間もなくテッカの拳が俺を捉えていた。

 

「正拳突きッ!」

 

 乾いた衝撃が、俺の胸を突き抜けた。

 

 ボムスーツのおかげでダメージはすべて吸収されるので、痛みを感じることはない。だが衝撃も吸収するわけではない。

 

 拳が胸板を貫いた瞬間、骨まで震えるような重圧が背中へ抜けていく感覚がして……気づけば足は地を離れ、背中は空を泳いでいた。

 

「がっ……!」

 

 まっすぐ横に飛んでいって、マップ奥の壁に激突することでようやく止まる。壁に叩きつけられ、反動で弾かれた体が床へと転がって……息がひしゃげた音だけを、俺は喉からこぼしていた。

 

 一瞬の攻防。達人級の技で爆風を突破し攻撃まで成功したテッカの一部始終を見ていた観客たちは一瞬静まり……撃破時のブザーが鳴ったことで、歓声が爆発して盛大な盛り上がりを見せていた。

 

 歓声は大体がストリートクイーン……テッカを称賛するもので、やはり凄まじい人気があるなと思い――――バトルに関係のない情報をシャットアウトし、今のテッカのバトルスタイルを考察するため、俺は数秒思考の海へと潜った。

 

 まず驚いたのは、知らない技(実装されていないスキル)を使ってきたこと。

 

 テッカの攻撃スキルは俺が記憶している限りは三つなのだが、少なくとも舜動脚という名のスキルは無かった。元ネタの究極戦隊ダダンダーンの方にある技だろうか?

 

 見た感じオレンのリヴォルスラッシュや、アサギの御用改め式牙狼のような突破スキルのように感じた。プラスしてノックバック弱スタンがあるものだと確定していいだろう。

 

 もしかしたら他にもまだ俺が知らない技を、テッカはこれから使ってくるかもしれない。今までで一番原作知識に全幅の信頼を置けなくなった場面だというのに……俺の心は昂っていた。

 

 全身を巡った一瞬の痺れが収まり、弱スタン状態が解除されたのを感じ取りながら俺は立ち上がる。そしてテッカを見据え――――俺はテッカとは別の明後日の方向にインパクトボムを射出し、着弾した爆風ラインにあったソフトブロックを爆破した。

 

「……?」

 

 攻撃ではなくブロック破壊にインパクトボムを使用たことに、テッカは何の意味がと一瞬考えるも……やはり攻撃に使うべきだと思ったのか、意味のない行動に首を傾げていた。

 

 それは間違っていない。実際、今のボムは攻撃に使うべきだ。だがブーメランボムとインパクトボムの連鎖コンボではテッカのスピードには勝てない。だからここで、俺は新たな特殊ボムの使用を決断する。

 

 まだ開発途中のスキルで、試し撃ちすらしていない正真正銘のぶっつけ本番。テッカを相手にそれを繰り出すなんて愚勇そのものだ。だが――ハイリスク上等! ここで挑戦しないなどありえないと、俺の燃えるボンバー魂が叫んでいる!

 

 心に命じられるがまま俺は左手にボムを生成し、そのままインパクトステッキへと装填した。

 

「セット――――バウンドボム」

 

          ●~*

 

 あっけなく、一発決まってしまった。

 

 一連の攻防で見事初撃を成功させたテッカが抱いた感想がそれだった。

 

 別に実力差で見下してなどいないが、期待し過ぎていたのはたしか。口が裂けても言えないが……こんなもんか、と失礼だが一瞬思ってしまったのが本音である。

 

 そしてユキトが明後日の方向にボムを飛ばしたのを見て、自棄になったのではないかとテッカは心配したのだが……。

 

「……良かった。大丈夫そうだね」

 

 ユキトは微笑むように好戦的な笑みを浮かべ、その瞳からは強い闘志を感じられた。

 

 不必要なボムの射出をなぜしたかはわらかないが、新たにボムをステッキにセットしてこちらを見据えているユキトの顔つきを見れば、戦意が失われていないのがわかる。

 

 勝負を諦めていない。むしろ勝つ気でいるのがわかる。

 

 心は折れていないようで、テッカは少しだけ安心の笑みを浮かべる。口角をほんの少し上げただけの、よく見なければならない微細な変化だが……すぐに真顔となりバトルに集中した。

 

 仕掛けてくる。テッカが予測したと同時に、ユキトは動いた。

 

 まずユキトはブーメランボムを放ちつつ、ボムが装填済みのインパクトステッキを手にこちらへと駆け出したのだ。

 

 空いた距離を保ちながらボムを飛ばしてくるのを予想していたが、ユキトはまっすぐこちらに向かってきていた。接近戦を得意とする相手にわざわざ近づくなど愚策であるのだが……何をするつもりかはわからないが、来るのならば迎え打つとテッカはユキトを見据えた。

 

 そして数メートルの距離にまで近づいたタイミングで、ユキトはステッキを右に向けて射出して、すぐに反対の左へと方向転換していた。

 

 先ほどと同じようにまたしても明後日の方向にボムを飛ばしたのを見て、テッカは「どこに飛ばしてんの?」と疑問を口にしようとした時――――。

 

 ダンッ、という音が右側から響いた。

 

「……」

 

 テッカは反射的に音が鳴った方に意識を向けた。

 

 方向からして音の正体は先ほどユキトが飛ばしたボムのはずだが……着弾した音にしてはなんだが、ボールが跳ねたような音に聞こえたのだ。

 

 ダンッ。

 

 2回目が鳴って、テッカはそこでユキトだけでなく、謎の音にも今度は警戒を向けた。戦士としての本能が放っておいてはいけないと警鐘を鳴らしたのだ。

 

 ユキトと音の存在。右側と左側、斜め前から後ろ斜めまでの両側の気配を、テッカは余さず探った。

 

 左側にいるはずのユキトが動いている気配はなく、逆側は何かが動いてるのだけは察知し――――そこで3回目の音が鳴った。

 

 同時に、テッカの背後を爆風が襲った。

 

「うぐっ……!?」

 

 不意の爆風に短い悲鳴を上げつつも、テッカはすぐにはその場を動かずに全神経を集中させて周りの気配や動くものを探った。

 

 そしてまた、先ほど同じ音が鳴る。テッカはすぐさま音の方へと駆けつけ……そこで見つけたものは、空に浮かんだボムであった。

 

 頂点を超えた先でボムはゆっくりと落ちていき、地面へと落下する。ダンッ、と乾いた音を立ててボムは弾み、もう一度空へと舞い上がった。

 

 そしてボムにホログラムで表示された『1』の数字を確認して――テッカは大地を踏みしめ、腰をひねった。

 

 息をひとつに整え、全身の力を一点へと集中させる。

 

 丹田に込めた力が一気に駆け上がる――発勁。腹から背へ、腕へと一気に奔る衝撃が音とともに、掌の上から眩い気弾となって空中のボムへと放たれた。

 

「衝天砲ッ!」

 

 気弾は一直線に走り、命中するとボムは最奥の壁へと飛ぶように弾かれていた。そして壁に着弾したと同時に表示されていた『1』は『0』となり、爆発した。

 

(――――3カウントだね。今のボム)

 

 テッカは静かに考察する。

 

 物体に着弾することで表示されている数字が減り、『0』になることで爆発するバウンドする特性を持つボム。音の鳴る回数を聞いた限り、3回目の着弾で爆発するのが今のでわかった。

 

 先はどの攻撃もブーメランボムを背後に旋回させ、バウンドボムの爆破で連鎖を繋いだものなのだろう。やっていること自体は単純だが、言うが易しだろう。それにこの戦い方をしているということは……彼は今、近くにいるということだ。

 

「……はあぁっ!」

 

 テッカは気配のする方を見ると、柱から柱に渡るように移動するユキトの姿を発見し、進行先を予測して再び衝天砲を放った。

 

 ユキトはそれをステッキに装填済みのボムで受け止めて後ろに吹き飛ばされてしまうが、丁度柱が背になっているたおかげで遠くにノックバックされることはなかった。

 

「ぐっ……!」

 

 衝撃を抑えきれずに倒れこむユキトに、テッカは接近戦に持ち込むため走って近づいた。ユキトもステッキを地面に勢いよく突いて杖のようにして立ち上がるが……すでにテッカはユキトの前で構えており、一瞬引いた拳が美しい体勢から放たれていた。

 

「鉄拳……!?」

 

 テッカの鉄拳制裁拳が一直線にユキトに迫る。ユキトは一歩も退かず、空いている左腕を前に出して軽くひねった。触れた瞬間、テッカの拳の軌道が外に弾かれたのだ。

 

(パリング!?)

 

 想像すらしていなかった防御法を行ったユキトに、拳を外されたテッカは今日一番に驚愕した。

 

 パリングとは相手の打撃を正面から受けず、腕や手で軽く払って軌道をそらす防御技だ。受け止めるのではなく、流すことで衝撃を逃がし、体勢を崩させるのが狙いである

 

 ボンバーボクシングなどで使われるのがメジャーな防御技なのだが、格闘技などをやっているようには見えないユキトにそれをされたために、テッカは完全に虚を突かれていた。体が前に流れ、前のめり倒れそうになるのを足を前に出して無理に体勢を支えようとしていた。

 

 誰が見てもわかる生まれた隙を、狙わないはずもなく。

 

 ユキトはステッキのボムが装填されている方を地面に向け――――古来より伝わるボンバーバトル最強の必殺技を、ここで解禁した。

 

 それはストリートバトルにはない……公式(旧)ボンバーバトルの馴染み深い名物にして、ボンバープレイヤーならば誰もが一度は使うボンバー奥義……!!!

 

「ゼロ距離ボンバー!!!」

 

 道連れ(自爆)である!

 

 突き刺すように地面へと振り下ろされたステッキのバウンドボムが『0』を表示し、ボムが起爆してユキトとテッカは爆風に呑まれた。

 

「うおおぉっ!」

 

「……っ!」

 

 久しぶりの自爆なのかユキトは少しテンション高めに、テッカは歯を食いしばるように爆風のダメージを受け止める。

 

 ダメージ判定のブザーが同時に響き渡り、同時に会場はバトルが開始されて以来の一番の盛り上がりとなって、2人を称賛する歓声で埋め尽くされていた。

 

 そんな歓声を背に受けながら、粉塵が晴れたタイミングでテッカはユキトに話しかけた。

 

「普通……自爆なんてする?」

 

「使う場面は限られるけど……自爆戦法ってストリートだと結構刺さるんだよね。公式バトルじゃ有利な状況なら積極的に狙ってくる人いるから、接近戦してくるボマーは全員自爆系メンヘラ蛮族くらいに思った方が良いよ?」

 

「ふふっ、なにそれ。表のヤツらもヤバいね」

 

 身も蓋もなさすぎるユキトのボンバト話を聞いて、おかしくてつい笑ってしまうテッカ。

 

 奇を狙うようなバトルになってしまったが、マブダチと一緒にいる以外でこんなふうに笑うのも久しぶりだなと感じて、改めてこのバトルを楽しめていることに気づけた。

 

 同時に不思議にも思う。今までのバトルでも自分を追い込んだ対戦相手は複数いるのに、なぜユキトとのバトルは満たされるようなものを感じるのかを。

 

 自分と渡り合える相手だから? 立場など関係ないバトルからなのか? それもあると思うが、そうではなく――――目の前のユキトが本当に楽しそうにしているからである。

 

 そしてなにより、真剣だったからだ。

 

 ――――熱いね。

 

 そんなユキトの姿は、テッカには眩しく見えた。思えばこんな風に熱狂したことは今まで無かったとテッカは振り返る。

 

 ダダンダーンとしての戦いは真剣だったし熱意があるといえたが、どちらかといえば使命感や責任感の方が強かった。

 

 打弾団はバイク走らせているだけなので、あっても責任感になるのだが……強いていえばバイクにお熱だったくらいか?

 

 ストリートバトルは熱意がある方だっただろう。クイーンの称号をすぐ手にしてしまってからはあまり参加しなくなってしまったから、熱は冷めてしまったが……。

 

 ユキトとのバトルは心を熱くさせてくれた。楽しいと素直に思わせてくれた。

 

(でも……次の一撃で終わる)

 

 お互いに残機は残り一つ。バトルはクライマックスであり、胸を焦がす熱い時間は終わりに近づいていた。

 

 ――――これが終わっても……君はまたバトルしてくれるかな……?

 

 そんなことを思い浮かんで、らしくないとテッカは小さく首を振る。惜しむくらいなら、残りのバトルに集中すべきだ。気合を入れ直そうと拳を握りしめたところで、様子をうかがっていたユキトが声を掛けた。

 

「テッカが良かったらだけど……これが終わったらさ、もう一回バトルしない?」

 

 思いがけない提案に、心が弾んだ。先ほど考えていたこともあって、あまりの都合の良さに心でも読まれたかのような感覚に陥り、固まっているテッカに説明不足かとユキトは続けて話をした。

 

「えっと、テッカとのバトル楽しいし勉強になるから、これが終わった後も再戦したくてさ。それとバウンドボムももっと試してみたくて、できればテッカにバトルのお願いがしたいなーって。無理なら無理で全然構わないんだけど……」

 

「……どっち?」

 

 反応が薄くそれに焦ったユキトが説明し続けていたが、声を絞り出すような呟きでテッカはユキトに聞いた。

 

「バトルが楽しいのとボムの試運転。どっちが優先度高い?」

 

 じっと、テッカはユキトの目を見ていた。急な質問に「えっ?」とユキトは戸惑うが、特に迷う理由もなくすぐにテッカの質問に答えた。

 

「もちろん、テッカとのバトルが楽しいからに決まっているよ」

 

「――――そっか」

 

 表情に大きな変化はない。だが胸中は劇的で、テッカは息が甘く詰まるような喜びを覚えていた。

 

 想像していた熱とは違うかもしれないが、暖かさが胸に広がるのを感じながら……頭はクールにバトルへと思考を戻す。拳に迷いはなくっていた。

 

「あとでやめた、なんてのはなしだからね?」

 

「言わないよ、そんなもったいないこと。決着もまだついてないし、まずはこのバトルを勝たせてもらうよ?」

 

「いいや……残念だけどこのバトル、アタシの勝ちだよ」

 

 自信に満ち溢れているものではなく、確定だとテッカは断言した。どういうことだ? とユキトが疑問に思っているとテッカは近くの柱を蹴るよう駆け上り、空中へと飛んだ。

 

「超究極……」

 

「やばっ……!」

 

 拳に宿る爆発的な力が、圧倒的プレッシャーとなって肌で伝わった。飛び上がったテッカを見てユキトは冷や汗を流し、繰り出される技を察知して急いで射程外へと走った。

 

 それは原作知識で知っているテッカの最大スキル。だがそれはあくまで前世の仕様であり――この世界の奥義に逃げの対応は、悪手であった。

 

「鉄拳制裁拳!」

 

 落下と同時に拳が振り下ろされる。勢いをまとった正拳突きが地面を叩き、轟音とともに床を打ち抜かれ、放射線状にひび割れた。

 

 亀裂は四方へと走り、逃げているユキトの足元まで広がり――足場は一瞬で()()()()()

 

「へっ? いやちょっ、待って――」

 

 足が宙を切り、膝から力が抜ける。重力に引かれ落ちていき――――ユキトはテッカを見上げながら、せめて恨み節だけでもと最後に叫ぶ。そして同時に撃破ブザーが鳴って、バトル終了のアナウンスが響き渡った。

 

「場外勝ちはなしでしょ――――!?」

 

『フィニッシュ!! テッカ、ウィン!』




・場外勝ち
対戦相手が何かしらの方法で場外に出た場合、一回の撃破判定で初期位置にリスポーンされる。今回テッカがやったマップ破壊の場合、破壊された場所はすべて自動的に修復されてから改めて初期位置リスポーンとなる。

・ゼロ距離ボンバー
大体こちらが残機2で相手が残機1の場合に率先して行われる戦法。そんな状況ならやる側はやり得でしかないが、やられる側からしたらクソオブクソでしかないメンヘラ蛮族戦法である。
とあるボンバー選手が「くっ! 殺すならボムで殺せ!」との発言がミーム化され、くっころボンバーという不名誉なあだ名を付けられた有名エピソードがあったりする。

・ユキトがテッカの様子に気づいた。
なんだか寂しそうな雰囲気を感じたが、バトルでしか慰める術を知らぬ悲しきモンスターなので再挑戦の提案をしてみた。知らずのうちにコミュニケーションにクリティカルした。

次回でストリート編は終わりになります。その次はプリボム回を描く予定です。
ではまた。
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