ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。   作:ハニボン

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リアルが忙しくて遅くなりました。最近投稿頻度2週縛りすら守れなくなっているの本当にすまない……。

今回は新ガール顔合わせ回でプリボム要素はあんまり無いけど、一応プリボム編のスタートになります。


ボンバー世界の民は大抵チョロい

 プルーンは激怒した。

 

 必ず、かの邪知暴虐のモモコの姉御とスタッフをわからせねばならぬと決意した。

 

 プルーンは痛いのとか苦しいのとかが嫌いだ。意識も低いしやる気もないし、これまで激しい努力をしたことがないし、これからも激しい努力をするつもりもない。それでも……それでも……。

 

『スーパーアイドルに……なれますか……?』

 

『はい! なれますよ!』

 

 モモコへの憧れで、プルーンはアイドルを目指したのだ。極度の仕事嫌いであることを告白しても、ニコニコと満面の笑みを浮かべたモモコは受け入れてくれた。その時のモモコはなんかいつもよりゴリマッチョに見えたが……自分の気持ちをわかってくれたのだとプルーンは喜んでいたので、あまり気にしなかった。

 

『んへ♡ わ……わかりました。プリティ・ボンバーズに入ります……』

 

 それがプルーンがプリボム入りを果たした歴史的瞬間(エピソードゼロ)。これで人生イージーモードだとプルーンは本気で思っていたのだが……もちろん考えが甘すぎたのは言うまでも無く。

 

 なめてんじゃねえぞ! こら! とモモコのスパルタしごきに、プルーンは毎度涙を流しながら悲鳴を上げていた。

 

 トップアイドルを目指すモモコのアイドルレッスンは並大抵のものではなく、プルーンは途中何度も逃げ出そうと考えたことか。しかしプルーンの考えなどお見通しであり、モモコは飴と鞭をうまく使い分けてプルーンをコントロールしてみせた。ずっと間近で見ていたパインは密かにモモコのことを『猛獣使い(エクスペンタブルズコンダクター)』と勝手に異名を付けていたりした。

 

 ともかくそんなモモコの手腕により、プルーンのアイドルとしての実力は折り紙付きと断言できるまでに成長していた。無論それはすべてモモコのおかげというわけではなく、元よりプルーンには天才的頭脳を持つパインに匹敵する仕事の才能があったのが大きいだろう。

 

 ナースアイドルというコンセプトデビューのために、取る必要のない医師免許を世界最年少で取得できる頭脳。プリボム特有の瞳をキラキラと輝かせるスマイルも、プルーンの才能が生んだオリジン。スパルタながら元々面倒見が良いモモコからしてみても鍛えがいがあり、サブリーダーのパイン同様に成長を楽しみにしている存在である。

 

 しかし技術やアイドル力を身につけていっても、心はあんまり成長しなかった。

 

『睡眠で忙しいので、他当たってくださーい』

『働きたいのは山々なんスけど……膝に矢を受けてしまってな……』

『母の姉の友人の同僚のペットの犬の子供の前世が体調不良なので、早引きします!』

 

 などなど言い訳のレパートリーは日々更新され、仕事嫌いがより拍車をかける状態になっていた。

 

 そしてなによりプルーンが嫌がったのは……ボンバーバトルもやらなければいけないことである。

 

 ただでさえアイドルのレッスンや営業もしたくないというのに、女の子がバクダンとかナイフとかビームとかチェーンソーで倒し合うクレイジーなバトルの練習にまで参加しなきゃいけないなんて……正気じゃねえ!

 

 あれやこれやと言い訳や仮病を重ねて、これ以上の仕事はしないぞとプルーンは全力で抵抗し続けた。

 

 長く厳しい孤独な戦いになるだろう……と駄々をこね始めた当初はそう思っていたのだが、意外にもモモコはプルーンの要望を受け入れたのだ。

 

 えっ? そんなあっさりでいいの? とプルーンは拍子抜けしたが、代わりに別の仕事をやってもらうとモモコは告げる。内容は児童養護施設へのチビッコたちへのサプライズ訪問であり、この仕事を断るのだけは許さないと付け足した。

 

 まあチビッコ相手なら……とプルーンは承諾。ボンバトと違って危ないことはないし、適当にやるだけでいいのですごく楽である。プルーンはやる気スイッチを入れ、スタッフさんの車でいざチビッコたちの元へと赴いた。

 

「プル~ん! プリティ・ボンバーズの裏リーダー! ナースアイドルのプルるんるん♪ チビッコのみんな~! 今日はプルるんるんと一緒……に……!?」

 

 ポイ~ンと華やかに登場したプルーンを待ち構えていたものは児童養護施設のチビッコたち――ではなく。そこはボンバー事務所の小部屋の一つであり、女子高生を中心としたボンバーガールズが集まっていた。

 

「…………」

 

『…………』

 

 シロとクロを先頭にガールズも聞いていないといった様子で驚いており、プルーンも全然違う相手たちで思考が止まり、お互いに何とも言えない沈黙がその場を支配していた。

 

 だが華麗な登場を果たしたプルーン本人が初めに思考を再起動させ――自分が騙されていたことに気付き、冒頭の激怒へと繋がった。

 

「姉御~! スタッフゥ! 今日はチビッコ相手の営業だって言ってたからスイッチ入れたのに~! だましたなこのアホ~!!」

 

「あんたこうでもしないと絶対来なかったでしょーが」

 

「プルーンさんは前にもお仕事サボって逃走したことがありますからね~。今回は他の新ガールさんたちと一緒の紹介なんですから、逃げちゃダメですよ〜?」

 

 オマエオマエオマエ〜! と両手の人差し指で何度も二人の頬をつついてくるプルーンに対し、憎んでくれて一向に構わん! とモモコは毅然に振る舞い、こないだのお返しじゃ〜いとスタッフさんは悪い笑みを返していた。

 

 スタッフさんが言ったとおり、本日は新ガールズの顔合わせの日で、バトルマップに集まるとバレてしまうのでこうして小部屋にみんな集まってもらっていたのだ。

 

 図らずもトップバッターで自己紹介(?)を終えたプルーンに、ガールズは大変そうな子が来たな〜と感想を抱くが「モモぴゅんたちがしっかり見張るから、みんなの邪魔にならないようにするわ」とモモコが安心するようにみんなに公言していた。

 

 たち、とは他のプリティ・ボンバーズの面々のことであるが、今この場にいるプリボムはモモコとプルーンのみである。

 

 本当は最後の一人であるメロンも一緒に紹介したかったのだが、今プリボムの知名度と人気はBBCの宣伝効果と合わせたメディア展開によって、軌道に乗ったところである。スケジュール的にも仕事に穴を空けられないということで、メロンが自主的にまた次回でいいとの話なり、パインと共にアイドルのお仕事へ行っていた。

 

 それと指導役のユキトも今この場におらず、理由は昨夜から準備していた練習プランのデータが入ったタブレットを家に忘れてしまったので、取りに戻っているためである。

 

 プルーンは今すぐにでも逃げ出したかったが、モモコとスタッフさんの監視があるため逃げられない。隙を見て……と考えていると、次の新ガール紹介が始まっていた。

 

「うぇ〜い♪ 新ガールのオリーヴっスぅ! ポジションはシューター! 相棒のつぐみんでぇ〜味方ベース守護りまくっちゃうじゃん♪」

 

 陽キャのギャル、降臨!

 

 相変わらずだな〜とオレンは笑顔で呟き、大半のガールズはギャルだー! と盛り上がっている。しかしその大半に含まれなかったガールズ……主にウルシ、グレイ、パプルの3人はその陽キャオーラに圧倒され、顔を青くしてガタガタと震えていた。

 

 こいつら陰キャだ。同じく陽キャオーラに白目を剥きかけたプルーンにはすぐにわかった。

 

 同じ陰キャ同士、おちついて、ここはあえて目を合わせて後退りしつつ隙を見て人中正拳突き!! とプルーンはアドバイスしようとしたが……。

 

「ちょーチキられてる件〜www ま、あーしだってビビってカラお互い様々〜♪」

 

 魂斗羅ギャル・オリーヴのコミュ力が炸裂した。

 

オチカ(お近づき)にこれタピっとくゥ? エグウマでオスメス(オススメ)♪」

 

「タ……ピ……オ……カ……!」

 

 まずパプルがタピオカドリンクにフラ~っと釣られ――――。

 

「ナニそのコーデ!! ちょーイケてんじゃん!? 今度ショップレクチャってヨ〜♪」

 

「え? そ、そうですか……? ボムタウンに良い店ありますよ……?」

 

 グレイのファッションに目を輝かせたオリーヴがベタ褒めし、グレイもたじたじになりながらも顔から緊張が取れて好意的になっているのがわかる。

 

 そして最後にウルシはというと……。

 

「ギャル……ええやん……」

 

「簡単に絆されてんじゃねえよこの陰キャの面汚し共ォ!!!?」

 

 オリーヴのやさしさを目の当たりにして、完全に良い人判定を下したウルシにプルーンがとうとうキレていた。退と魔が付く忍もびっくりな即堕ちである。

 

 これこそオリーヴの善性から生まれた魔性……純粋なるデビルだぜ!

 

 陰キャと陽キャの2つの種族は相反するものだ。陰キャはその特性から常にその陽キャを恐れ生きていく事を余儀なくされた哀の戦士である。その現象(フェノメノン)はガールズ界でもまたしかりだった。

 

 だったのだが……この場に当てはまるのはプルーンのみとなり、さらにフェノメノンの襲来はこれで終わらない。

 

「ユキト……センコーにスカウトされて、キミらのトコで世話ンなる事になったボンバーガール・テッカだ。ポジションはアタッカー。ストリート以外のバトルは初めてだけど、腕力には自信があるから期待してくれていいよ。

 任務の都合で今度の大会には参戦できないけど……それまでは積極的にバトルのこと教えてもらうから、よろしくね?」

 

 クールに自己紹介を終えた不良ガール、降臨!

 

 おいおいギャルの次にヤンキーなんて役満じゃねえかいつからマガジンの世界になったんだよ、ボンバーリベンジャーズはもう完結しただろとまたしても白目を剥きそうになるプルーン。

 

 レディースだー総長だー! とガールズが盛り上がる一方、少し心配そうにしているものや盛り上がり以上に目を輝かせるものもいた。

 

「あらあら……腕力に任せるだなんて、少し物騒ですね……」

 

 争いを好まず、愛と平和を望むヴァンパイアハンターなセピアは腕力で戦うアタッカーと聞いて乱暴的じゃないかと心配していた。大剣、鉄球、チェーンソーを振り回しているお前が言うか? な目をアクアはセピアに向けるが、視線はすぐにテッカの方に戻していた。

 

「…………」

 

 その視線は警戒というものではないが、雰囲気的にシンパシーのような自分と同じものを微かに感じていて、自分でもよくわからない複雑な心境になりながらアクアはテッカを見ていた。

 

 無論その視線に気付いているテッカはアクアに話しかけようとしたが――話しかけるより先に、テンション高めなガール2人が質問してきた。

 

「テッカさんってあのダダンダーンの一員ってほんとですか!? あとサインください!」

 

「小鉄さんやアンさんに会った事は!? テーマソング歌えますか!? あと握手お願いします!」

 

「不良に心奪われてんじゃねえよこの小童どもがぁ!!!」

 

 オタクであるウルシとグレイが目を輝かして迫り、その2人を通せんぼするようにブロックを生成するプルーン。ギャルにビビりカッコイイ不良ヒーローの登場にテンションの上げ下げが激しい2人に、プルーンはとうとう耐えきれないとばかりに感情を爆発させていた。

 

「アイツらはなぁ! いっつも人様にメーワクかけてるクセにたまーにちょっと良い事するだけでクラス全員の好感度かっさらっていってモテるわ卒アル写真のセンター独占するわ修学旅行のバスの一番後ろの席でうるさいわモテるわでもぉ……なんだっつうんだよ!!!」

 

 お前昔なんかあったんか……? とちょっと面倒くさくなって黙って聞いていたモモコが思っていると、プルーンの叫びを最後まで聞いたテッカは静かにプルーンへと近づいた。

 

「………」

 

 無言で近づくテッカに、プルーンは今ので怒らせてしまったのかと顔を青くしてすぐに逃げようとするが……後方は今自分が生成したブロックがあり、自ら退路を断っている状況にしてしまったことに気付いた。

 

「ンヒィ……! ぷ、プルるんは武力には屈しないからなー!!!」

 

 ドンッ、とテッカはブロックの壁に手をついて壁ドンでプルーンを追い込み、プルーンは怯えながらも虚勢を張ってみせた。周りのガールズも一触即発かといつでも止められるように見守っていたが……。

 

「キミに辛い思いさせたみたいで悪かったね……」

 

 テッカは優しい笑みを浮かべて、プルーンに話しかけていた。

 

不良(アタシら)も本当はただの弱虫(さびしがりや)なんだ。大目に見てやってよ」

 

「――――」

 

 至近距離で真正面から浴びせられるテッカテカスマイルゥ……に、プルーンは簡単に自分の脳が焼かれていた。いつだって陰キャというものは不意なイケメン笑顔とやさしさに弱いのだ。

 

 だが、プルーンは諦めない。不良ってかぁ~っこイイんだぁ~♡ んへ~♡と心が動きまくっていても、まだ屈してはいない。残る理性を振り絞り、アイデンティティを守るため、プルーンはNO! と突きつけるために立ち上がる――――!

 

「プルーン、だったよな? 初めてで大変だろうけど、ここにいるの全員優しいやつだからいつでも頼ってくれよな!」

 

「あーしも新人だしィ。プルぴっぴも一緒にがんばろうじゃん♡」

 

「んばぁ……」

 

 た……たまんねえ……ッ!

 

 魂斗羅コンビによる陽キャスマイルの追撃が再び襲い掛かり、プルーンは今度こそ呆気なく屈してしまっていた。陰が一方的に警戒しているだけで、陽の人は基本的に優しいのだ。

 

 ドロリと邪気が祓われるような感覚。そしてなにより3人に囲まれ優しくされたのはプルーンにとってあまりにも刺激が強く――それが引き金となり、プルーンの精神は限界を迎えた。

 

「ち……ちっくしょ~! プルるんはだまされね~からな~!」

 

「あっ! プルーンこら、待ちなさい!」

 

 3人を振り切り、プルーンは逃走した。モモコが制止の声を上げるが止めること叶わず、プルーンは「次は必ず3人の五感をうばう!!!!」と捨て台詞を吐きながらプルーンは出口の方へと駆け出した。

 

 前方にプルーンを止めるものはなく、このまま行けば脱出できるのだが……出口のドアが開き、部屋に入ってきた誰かに衝突した。

 

「ごめんみんな、遅くな――って、うわ!」

 

「わふっ」

 

 急な出現なためにプルーンは止まれずに、そのまま現れた人物の胸に飛び込む形となってしまった。

 

 プルーンは逃げるのに夢中で最初誰にぶつかったのかわからなかったが……匂いや体格など、医学的に人体に詳しいプルーンはすぐに相手が男性であることに気付いた。すりすりと顔を擦りつけるようにしながら男性の――ユキトの顔を見上げた。

 

「えっと、君は……プルーンだよね? 大丈夫? 怪我とかしてない?」

 

 突然の突撃だというのに嫌悪感などは見られず、純粋にプルーンを心配しているのがわかる。常識というか普通の対応ではあるのだが、プルーンからして見ても優しい人という印象が残るのは必然であり。だからこそ一目見て、プルーンは直感でユキトの本質に気づいた。

 

 そうだ。間違いない。目の前の人は……この人は。

 

 ――――どこまでも自分に優しくしてくれる(チョロくて、甘やかしてくれる)タイプの人であると。プルーンの瞳には映っていた。




めっちゃ中途半端だけど、ちょっと長くなったのでここまで。メロンは次回から登場で、プリボム中心の話となります。投稿ペースもできるだけ戻すようにしなきゃ……(使命感)
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