ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました。   作:ハニボン

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疑われるのも転生者の特権なのかもしれない

 まず最初に正直に言おう。俺はボンガオタクではあるが、参戦キャラの元ネタの原作ゲームを一度でも遊んだことがない。

 

 知識として原作の存在を把握すれど、だからといってそれら原作ゲームを探して遊ぼう、とはならなかった。ファンとしてもオタクとしてもそこはどうなんだと思われそうだが……そこまでの情熱が俺には無かった。もっと言えば普通にボンガの方がしたい、というのが俺の素直な感情である。

 

 ツインビーのゲームシリーズもまた然りで、『なんか見たことあるかも』と思うくらいのものだ。パステルやメローラ姫などツインビーキャラのこともボンバーマンガで知ったほどの筋金入りである。

 

 つまりはメローラ姫のことはボンバーマンガでしか知らないし、それ以上のことも神様あたりの設定ぐらいしかわからないのである。設定的にもやっぱりメロンとの絡みが多かったからね。

 

 でも……そんなお方が、俺に話があるということは……。

 

「……初めまして、メローラ姫様。改めまして、メロンが所属するボンバーチームの指導役をしている砂色ユキトと申します」

 

「いえいえ、そう畏まらずに……気軽にメローラとお呼びください、ユキトさん」

 

「いやいや、流石にそういうわけには……」

 

 俺は深くお辞儀をして簡潔に自己紹介すると、メローラ姫は気負わぬよう変わらずこちらを気遣ってくれたが、格としても存在としても次元が違う目上の人にフランクな態度で接するわけにはいかないので、お互いに謙遜しあっていた。

 

 このままでは話が進まないので、俺から話を振ることにした。

 

「えっと、メロンから俺に話があると伺ったのですが……?」

 

「はい。ユキトさん自身に関わる……いいえ、はっきりと申し上げます。『砂色ユキト』さんについてのお話になります」

 

 こちらを見据えたメローラ姫の断言に、当の本人である俺はあまり驚きの感情はない。心当たりは一つしかなかったからだ。

 

「それは……俺の正体に関わることだからでしょうか?」

 

「はい。その通りです。ユキトさんは既に察しているようなので単刀直入に聞かせていただきますが……ユキトさんは別の世界からこちらの世界に来た人、なのではないでしょうか?」

 

 確信を持った質問、というよりは確認だった。そして同時に俺の中の確信が正しかったのがこれで証明された。

 

 やはりメローラ姫は俺の正体を──俺が転生者であることを知っている。

 

 俺がそう思っていたのは、メローラ姫は神様だから……というなんの捻りもない一言ではあるが。少なくとも俺が考えて思い浮かぶものは、これしかなかったのだ。

 

 親が娘の指導役に話があるということ自体はなんらおかしくはない。だがわざわざここまで連れてこられて、これからよろしくねの挨拶だけで終わるとは到底思えない。

 

 ならばここに呼んだのは秘密の話をするため……俺が転生者であることを追及するためだろう。

 

「……メローラ姫の言うとおり、俺はこの世界とは別の世界から来た、ということで合っていると思います」

 

 俺は少し……不安になりつつも肯定した。このボンバー世界の異物である俺にどのような話が──どのような沙汰を下すのかはわからない。

 

 裁かれるとか消されるとか、あって欲しくない想像ばかりしてしまう。なんでそんな話になるんだよと思われるかもしれないが、逆にそれ以外でどんな話をするのか思いつかないのである。

 

 それでも誤魔化すような真似はするべきではないと、俺は直感したのだ。

 

「やはりそうですか……あなたは……」

 

「はい、俺は……」

 

 だから、ちゃんと自分の口から言おう。そう決意して、俺はメローラ姫と合わせるように答え合わせをした。

 

「転移者ですね?」

 

「転生者です」

 

「「………………ん?」」

 

 答え合わせは絶妙にすれ違い、お互いに困ったように声を漏らしていた。あれ? 転生じゃなくて転移……?

 

「えっと……転生者、ですか? 転移者ではなく?」

 

「あっはい。学生の頃にやってたボムリフティングパスを失敗して、その時のボムの爆発で前世の記憶取り戻した……って感じですね」

 

「ほーら母様! メロメロが言った通り、やっぱり下民ちゃんは今じゃ一般常識になりつつあるよくいる転生者ちゃんでしたの〜!」

 

「いや、たしかに創作ジャンルの基盤にはなってるかもしれないけど……現実で一般常識になるほどいるわけじゃない、とは思うよ……?」

 

 前世の記憶からの転生だったからそこらへんの仕組みはよくわからないけど……。異世界転生です=ファンタジーです。な感じだよね、昨今のは。

 

「転移ではなく転生……でもそれなら今まで探し出せなかったのも……」

 

 俺とメロンが転生モノ談義に花を咲かせ始めている中、メローラ姫はなにか呟きながら自分の中で情報を整理している様子なのがなんとなくわかった。

 

「ごめんなさい、ユキトさん。混乱させてしまいましたね。転生は分野違いと言いますか、どちらかといえば天界の方たちの分野になってしまいますので……前例的にも、てっきり転移者の方と思っておりました」

 

「いえ、少しだけ混乱はありましたが、そこまでではないので気にしないでください。ただ……その、先ほど前例と聞こえたのですが。俺が呼ばれた理由も、その前例が関係しているのでしょうか?」

 

 メローラ姫の謝罪を受け入れつつも、その中で気になっていたワードについて俺は質問した。

 

 前例……ということはやはり、俺以外の、前世と同じ世界からやってきた存在がいたということだ。

 

 自分だけが特別だなんて思っていないので、驚きはない。なんで俺の正体にほぼ気づいていたのかはわからないけど……やっぱそれも神様だからわかるものなのかな?

 

 漠然とそんな考えをしていると、俺の心中を察したのかメローラ姫は肯定しつつそのことについて話し始めた。

 

「ユキトさんの言う通り、その前例こそがユキトさんをこうしてこちらへお招きした理由になります。まずはそこからお話させていただく必要があるでしょう。少し長い話になりますが……聞いていただけますか?」

 

「もちろん……いえ、ぜひお願いします」

 

 メローラ姫の確認の問いに、俺は迷うことなく頷いて答えた。

 

 無関係じゃないと思うし、無視できるものではないと感じた。聞かなければ話が進まないとかではなく、俺自身が特に聞かなければならない大切なことだと思ったからだ。

 

 短い返答ながら俺の意思が伝わったのか、メローラ姫は柔和な笑みを一瞬浮かべ──すぐに真剣な眼差しで俺の返答を受け取った。

 

 そしてかつてを思い出すように、メローラ姫は紡ぐ。

 

 この島を襲った危機。救いを求めた(祈り)によってこの世界に招かれた、とある少年の冒険の物語(ツインビーRPG)を語り始めた。

 

          ●~*

 

 黒い霧がどんぶり島を覆い、島民達が次々と倒れる事件が発生した。

 

 メローラ姫はその危機をツインビーたちに伝えようとしたが、邪悪なる謎の結界に阻まれ身動きが取れない状態にされてしまい──彼女の助けを聞いた異世界の少年がメローラ姫を封じる結界を破り救出したことで、どんぶり島を救う冒険の物語が始まった。

 

 少年は各地に散らばったツインビーの仲間たちを探し、魂を奪い集める怪物たちを倒していき、島を襲う異変の謎を追って……この事件の首謀者の元へと辿り着いた。

 

 その者の名はグリード。少年の居た世界から来た同じ住民であり、邪悪などす黒い精神をダークベルに認められ、支配者としてこの世界に襲来した闇の存在である。

 

 グリードは黒い霧を用いて島民達の魂を奪い、強い魂を使って怪物を創造し、すべてを手に入れようと目論んだ。だが最終的にグリードは少年とツインビーたちに敗れ、元の世界へ戻される結末を迎えることとなった。

 

 欲望を増幅させ精神を闇へと導くダークベルは対となるシャインベルとの衝突により消滅。こうして冒険の物語(ツインビーRPG)の幕は大団円で閉じた──というのが事件の全貌であることを、メローラ姫は教えてくれた。

 

 そして最後に、重大な情報を付け加えた。

 

「このお話をする必要になったのは……ユキトさん。あなたが『彼』やグリードと同じ世界から来た人であることを、魂で感知したからです」

 

          ●~*

 

 今明かされる衝撃の真実ゥ! であった。

 

 そんな大冒険が繰り広げられていたんだな、とユキトは興味津々で聞いていたが……ここで自分と繋がることに驚き、同時に同じ出身である自分を警戒するのは当然のことであると納得していた。

 

 驚いているユキトに、メローラ姫はどういうことなのかを続けて説明した。

 

「このどんぶり島を救ってくれた『彼』には大いに感謝しています。忘れられない恩です。ですがグリードのような邪な存在が再び現れないとも限りません。なので異世界からの来訪者が来た場合、すぐに感知できるように自動で力を行使していたのですが……」

 

 まさか転生者だとは思いませんでした、とメローラ姫は少し困ったように笑っていた。

 

「たしかに転生と転移は違うものですけど……その違いだと来訪者の感知ができない、ということでしょうか?」

 

「ええ。わからないということはありませんが……あくまで別次元の存在を想定していました。転生はその世界の存在として生まれ変わるものなので、それが嚙み合って微弱に存在を感じ取れてもどこで何をしているのかはわかりませんでした。今日のライブでメロンとユキトさんが出会えたことで、ようやく話す機会を得ることができたのです」

 

「本当は母様が直接下民ちゃんに会いに行くつもりだったんですの。でも下民ちゃんのプライベートのことを考えて、ここまで来てもらうことになったわけですの!」

 

「島に着いてからここに来るまで時間が掛かったのは少し気になりましたが……ともかく。先の話のグリードなどの件で、こうして一度お会いする必要があったのです」

 

 メローラ姫は呆れた視線をメロンに向けながら最後にそう締め、メロンは知らぬ存ぜぬとのほほんとした顔をして明後日の方向を向いて視線を逸らしていた。

 

 ここに連れてこられた経緯を知り、ユキトはようやく全て理解する。そして不安に思ったことの一つを、口に出していた。

 

「……その……俺はこれからどうなるのでしょうか……?」

 

 異物である自分に下される沙汰である。

 

「俺の前世の世界のことを知っているならわかると思いますが……俺は前世でみんなのことを知っていて、スカウトされたとはいえ指導者と教え子という関係で近づいたことになっています。やましいことをするつもりは微塵もないと命を賭けてでも誓います。ですがやはりその辺りのことでなにかしらの罰が……」

 

「重いー!? 下民ちゃん! グラビティに考えすぎ! ヘビーに捉えすぎですのー!?」

 

 死にたくはないが、やはり異物として推し同士の間に挟まった罪を償うのには命を差し出すしか……と覚悟を決めようとするユキトに、先ほどまで穏やかに進んでいた会話から一転してユキトとの温度差を感じたメロンが驚愕して止めに入っていた。

 

 メローラ姫も罪を認める罪人の告白みたいな雰囲気になってるユキトに対し、落ち着かせるように一つ質問する。

 

「ユキトさん。一度落ち着いてください。ユキトさんはボンバーガールのみなさんに危害を加えたりだとか悪意を持って接しているわけではないですよね?」

 

「はい。それ自体ありえないし、俺にとってみんなは希望です。生きる活力であり夢の象徴……というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、俺にとっては過言ではありません」

 

 あれ? マジで感情デカくね? と大真面目に断言するユキトにメロメロ親子は思ったが、メローラ姫はとにかく話を続けた。

 

「ユキトさんは罰せられることを望んでいますが……それほどまでに大事な気持ちを抱いて接しているのなら、私は大丈夫だと思いますよ? そもそもやってもいないことに対して罰も何もありません。私は守護神であっても、裁定者ではないのですから」

 

「でも……出会う前から知っていたわけですし……当人達からしてみれば気持ち悪く思うと思うんです。それに先ほど聞いた事件の話の通りならば、元が付くとはいえ異世界人である俺は監視対象のはず。罪を問われて俺の中にある心当たりといえばこれしか……」

 

「そこです。ユキトさんはそこを勘違いしているのです」

 

 メローラ姫はユキトの言い分を聞いて、ようやく合点がいった様子でお互いにすれ違った認識を是正した。

 

「たしかに私は異世界人ということでユキトさんとの接触を求めましたが、それはあくまで一度お会いになる必要があっただけです。もしユキトさんが邪悪なる者であるのならすぐにわかりますし、こうして会って少しお話してユキトさんの人となりを知ることが目的でした。

 グリードの件で、勘違いさせてしまいましたね。なので改めて……ユキトさんは大丈夫です。この世界や仲間たちに害を成すようなことはしないと、惑星メルの女王として断言します」

 

「そう……ですかね……?」

 

「ええ。自信を持ってください」

 

「そうですの! モモコたちからボムラインで話は聞いてましたけど、下民ちゃんは自分を卑下しすぎるところは良くないですの! 人類みな欲深いくらいで丁度いいんですから、下民ちゃんはメロメロたちをもっと求めてもいいんですの〜!」

 

 はっきりと太鼓判を押すメローラ姫と、言っていることはともかくこちらを励ましてくれているメロンにユキトは少し安堵できた。

 

 でもなんでそんなに信じ切れるのだろうか? と疑問を口にしてみたが、「()()()()()()()()()()()、ご安心を」とメローラ姫がにこりと笑みを浮かべていた。

 

 意味深な言い方が少し気になったが、とりあえずはそういうものかとユキトは特に疑わずに話をのみこむことにする。

 

 メローラ姫の目的もすでに達成されていたようなので、ここでの話は終わりだろう。あとは転生者の秘密に関してはこの場にいる三人だけの秘密にしてもらおうと、ユキトはメロメロ親子にお願いした。

 

「その、お願いがあるんですけど……自分が前世の記憶でみんなのことを知っている転生者であることは、ここだけの秘密にしてもらえないでしょうか? 突飛な話ですし、この秘密は自分から話すようなものでもないので」

 

「もちろん! 下民ちゃんの秘密は女神の威信にかけて、誰にも言わないと誓うですの! ……下民ちゃんとの秘密を実質独り占めできましたの……♡

 

 最後の部分が聞き取れなかったが、なにやら嬉しそうにしながらメロンが強く同意してくれたことにユキトは再び安堵する。だが対照的にメローラ姫は……気まずさと謝意が滲んだ表情をしていた。

 

「……そのことなのですが、先に謝らせていただきます。すみません、ユキトさん。私はそのお願いを聞くことはできません」

 

「母様……?」

 

 ユキトのお願いを、メローラ姫ははっきりと断っていた。真っ先に驚いたのはユキトではなく、メロンだった。

 

 分裂しているとはいえ同じ存在だ。なのに心意がわからないといった様子のメロンに、ユキトも一緒に困惑している姿が並んでいた。メローラ姫は勿体ぶることなく、その理由を答えた。

 

「理由は……すでに彼女たちが聞いているからです」

 

 告げられた言葉を合図に、メローラ姫の背後にある5本の柱の内4本から人影が現れた。

 

「……や、やっほー……ご主人」

 

「こ、こんなところで会うなんて、奇遇ですにゃ……」

 

「ボス〜……転生者ってマジなんスか?」

 

「数時間ぶりだね、マスター君!」

 

 人影の正体──モモコ、パイン、プルーン、パステルの四人のガールたちが姿を現したのだった。




・ツインビーRPG
ツインビーシリーズの最終作となるゲーム。RPGとしての評価は賛否が分かれるが、ツインビーの世界観を味わうキャラゲーとしてはおすすめな作品。

・『彼』
ツインビーRPGの主人公にしてプレイヤーの分身。原作では性別は不明となっているが、選択肢の内容やマルチエンディングの一つであるフィーレンエンドでお兄ちゃんと呼ばれていて男の子のように思われている描写なので、本作ではそのまま男の子説を採用した。

・ダークベルとシャインベル
ダークベルは作中で軽く触れたように、使用者の……というか持ってるだけで精神を悪堕ちさせるロード・オブ・ザ・リングの一つの指輪みたいなやばいベル。対となるシャインベルは『使者を呼び寄せるベル』で、助けの願いをシャインベルに向けて飛ばすことで、強い光の心を持つ使者である『彼』を呼ぶことができた。

・砂色ユキトの存在。
転生した際、前世の記憶(ボンガ愛)が強く魂に刻まれていたため、メローラ姫の異世界人センサーに超微弱ながらも感知されたが、どこでなにをしていたかまではわからなかった。
しかしこうして直接会えたことで繋がりができ、ようやくユキトが歩んだ軌跡を星の記憶から読み取って辿ることができた。悪事を一切働いていないのを確認できたため、太鼓判を押すことができた。

・転移の話してるけど、これどんぶり島にチアモ襲来しない? メローラ姫大丈夫?
とっくの昔に襲来してる。だが異世界転移はあくまでシャインベルの能力であって、メローラ姫でさえ次元の壁を越えて特定の人物を召喚などはできない。しかもシャインベルは一度しか鳴らないのでもう使えず……と説明したがもちろんチアモは駄々をこねまくった。
最終的に無理だと納得し、代わりにどんぶり島の占い師の元で少しの間だけ占い修行をしてもらうことになる。ユキトと接触してパピーちゃんが来ることを確信したのも、その占いが関係している。

・転生は天界の分野
パプルとブラスはユキトが転生者であることをなんとなく察知している。ただこんなにはっきり記憶が残っているのまでは予想できていない。

実を言うと本当は転生あたりの話は書くつもりなかったんですけど、いろんな元ネタゲームの設定調べたりしてたらツインビーRPGの存在を知って、じゃあ書かないととなって今回の話が誕生。うまく書けているか一番不安な回になりました……(震え声)

次回モモコたち視点を描いて物語の序盤を一区切りとし、物語の中盤へと突入する予定です。
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