ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました 作:ハニボン
それといままで『プリボム』と略してきたけど、現在のボンバーマンガで『プリボン』と略されていたのでこれからはそちらに……と思いましたが、乗っ取られたステージの建物の看板に『プリボム♡コンサート』って書いてあったから、どちらも使う方向でいくことを一応報告します。なのでプリティーもプリティも両方使います。
……あと今さらだけど、ボンバーマンガの作者様大阪出身の可能性大で、以前にシロのエセ関西弁とか書いちゃってたから、ここはちょっとだけ修正しときますね……(30話)
────573で一番注意すべきなのは最愛さん……最愛チアモかな。俺の予想だと彼女の攻撃は……。
ブリーフィングでユキトが要注意人物として名を上げたのは、最愛チアモだった。
個人的な用事で練習バトルには不参加であったため、573ファクトリーの中で唯一手の内がわからないボンバーガール。わかっているのは573でただ一人のアタッカーという情報のみである。
本来なら未知で不明だらけなガールであるのだが、こちらには昔馴染みのユキトがいる。ユキトはチアモの戦闘方法を知っているということでブリーフィングの際に教えてくれたのだが、少し情報が古いということで懸念点があることも教えてくれた。
ユキトの予想を聞いた時、モモコは「いやいや、それはないっしょ?」と思わず口に出してしまった。同じアタッカーで一番力があるセピアも「試してみたことはありますが、流石に一回では無理ですね……」と困惑した様子であった。
ユキトのことを信じていないわけではないが、流石にその予想は考え過ぎでは? とガールズは思っていたのだが……ユキトの懸念を、モモコはすぐに目の当たりにすることになった。
『お互い仕切り直したところで、バトル再開! 先に動いたのは573ファクトリー! ボマーの藤崎詩織選手とアタッカーの最愛チアモ選手がボムでソフトブロックを……って、ええ!? ち、チアモ選手、
「あはは~⭐︎」
楽しそうにブロックを破壊して突き進むチアモに、会場全体がどよめいている。
素手──より正確にはチアモの両指に装備されている爪であり、ハートがたくさん連なるような形をした
本来であればソフトブロックはボム以外での破壊は不可能である。何度も語ったように、ボンバーバトルは真のボムを究明するために生まれたもの。これに関しては開発側も力を入れており、バトルマップのオブジェクト全てにはボムが一番の特攻ダメージが入るように設定されており、それ以外の攻撃は大体が半減されるように設定されている。どれほどの達人や超人であっても、ソフトブロックだけは一撃で破壊できない強度で徹底されているのだ。
しかし、ここに
原作では『嫉妬』という連続攻撃を繰り出すスキルでのみソフトブロックを破壊できるのだが……『嫉妬』も『一途』も、体力がある限りこの世界ならば普通の攻撃として扱うことができる。通常攻撃で破壊不可オブジェクト破壊可能で制限なしのヤンデレシリアルキラーは好きですか?
「うーわ……本当に壊してくるじゃん……」
遠目に見ていたモモコが素直にドン引きしていた。事前にユキトに聞かされていたので観客ほどの驚きはないが、それでも誰もやらないししなかったボム以外でのソフトブロック破壊は流石にインパクトがあった。
ブロックを掘り進めるという点だけでいえば、実質ボマーが二人いるようなもの。チアモは藤崎詩織と共に、恐るべきスピードでソフトブロックを掘り進んでいた。
素早い展開で、この勢いのまま流れを掴みに来る。防衛側として阻止せねばならぬ573の攻勢であるが……モモコたちに焦りはなかった。なぜならば────。
「
ふと、空を横切る物体がチアモと藤崎詩織の目に入った。
「…………?」
「あら……?」
チアモと藤崎詩織が反射的に見上げ、その正体を確認する。それは上空を飛ぶ球体で……通常のバトルボムであった。ボムはチアモと藤崎詩織の頭上を飛んでいき── 573ファクトリーの中間タワー敷地内へと落ちた。
その一個だけではない。さらに続くように四つのボムが同じ場所へと飛来して、最初のボムの爆発に連鎖し、瞬く間に573側の中間タワーが複数の爆音と共に破壊されていた。
「────っ!?」
『チーム573ファクトリーのタワーの破壊に成功しました! 破壊したのは……なんと、シロ選手!? 現在シロ選手の位置はバトルマップ中央、タワーとはまだ距離があります! 一体、何をしたんでしょうか!?』
『シロさんのボム投げですね。いっぱい練習してたのは知ってましたが、まさかあの距離から連続で投射できるとは……まさに努力の賜物。流石の一言ですねえ〜』
『はえ〜そうなんですねえ……って、ハニーさん!? なんでここに!?』
『うちのガールの宣伝……ではなくて応援もかねて解説として参上しました。凄いでしょう? うちの子たちは』
『えっと、あの、それって大丈夫なんでしょうか……? 立場的に贔屓になるのでは……?』
『そうなりますね〜。何か問題でも?』
『一切隠すことなく開き直ったー!?』
実況ガールとスタッフさんの漫才を尻目に、バトルは進んでいく。まさかこんなに早くタワーを撃破されるとは思っていなかったため、一瞬573メンバーは動きを止めたが、ただ一人チアモだけが足を止めずに前進した。
無論、狙うはタワーを破壊したシロ。ここで一度撃破して相手側の流れを止めておかねば、少し面倒になると判断したからだ。
(知らない動き方だし……センセが教えたんだね。ゲームにはない戦い方を!)
両手の五指を開き、ハートのハンマーネイルを煌めかせ、殺意を忍ばせた笑顔でチアモはまっすぐにシロ目掛けて駆け迫った。
チアモとシロの直接対決。誰もがそう思えたかに見えたが、それを阻止すべく護るようにシロの前に立つボンバーガールが一人。眼帯のアタッカー・オレンである。
「伝家の宝刀────」
オレンは腰のシースに収められた双剣……
引き絞られた弓のように、静かに一瞬を狙う。
その姿から放たれる威圧感は途方もなく、並のボンバーガールが居合わせれば思わず足を止めてしまうほどの気迫が、その眼差しから溢れていた。
しかし、最愛チアモは止まらない。
暗殺一家最愛家の三女で、日常的に家族同士で殺し合う異常な環境で育ってきたチアモアサシン。そんな彼女が熱き魂斗羅戦士の気迫に臆するほど、肝っ玉も精神構造もまともではなかった。
押し通る。その一瞬を待つオレン。
殺し通る。その一瞬に踏み込むチアモ。
────その一瞬が訪れる。
「リヴォルスラッシッュ!」
姿が消えたと錯覚させる速度でオレンが前へ飛び、収められた刃を放った。
目にも止まらぬオレンの前進に、チアモは対応してみせる。胸元で両腕を交差させ、次の瞬間には左右へと弾けた。
甲高い金属音が一度だけ響く。剣を下から振り上げたオレンと、両腕を大きく開いたチアモ。二人の姿は互いの立っていた場所を通り過ぎていた。
(……まじかよ。捌かれた……!)
自分の攻撃が防がれたのが、手応えでわかる。オレンは肩越しにチアモを振り返ったみると、チアモも衝撃で手を軽く振っているものの貼り付けたようなニコニコ笑顔は健在で、まだまだ余裕の雰囲気を感じられた。
これこそが特S級暗殺者である、最愛チアモの実力。オレンはその片鱗に触れた。
面白れぇ、とオレンは呟く。ボンバー警察ほどではないが、魂斗羅の方でも噂くらいは耳にしている。こうして相対するのは初めてであるが、立場関係なくこれほどの強者に出会えたことに武者震いし、自然と歓喜の笑みが溢れてしまう。
戦場なら倒すまで戦闘を続行していたところだが……これはボンバーバトル。敵ではなく敵ベースを狙うのが前衛の仕事だ。
チアモたちの相手は、後衛の仕事である。
「シロ様。今です」
エメラの△スレッドが火を吹き、チアモに襲いかかる。チアモは腕を振るって三つの火球を切り裂くが、その隙にシロが「エメラちゃん、ありがとー!」とお礼を叫びながら横を通っていった。
「の、逃しません!」
「────らぁっ!」
抜けてくるシロをツガルがホーンスナイパーライフルで狙い、オレンがナイフを投擲してビーム弾を弾き飛ばした。「うええ!?」と驚くツガルに、築城が完了したグリアロが合流して落ち着かせていた。
弾かれたナイフは明後日の方向に軌跡を描いたが、光の粒子となって消えると次の瞬間には腰のシースに再構築された。自動で自分の元に戻るこの現象は武器そのものの性能ではなく、バトルマップ内での仕様にあるものである。
これはシューターの射撃スキルのエネルギー補充の要領と同じだ。アタッカーは出場する前には自分が使用する武器のデータを登録して、武装データとしてバトルマップ内のエネルギーをリソースとしてボムスーツが出力し、武器を生成する仕組みとなっている。そのため生成された武器は使用者から一定距離以上離れると自動で消滅し、使用者の元に再生成されるようになっているのだ。
「……よし! 行くぜ、シロ!」
「うん! 思いっきり突撃だー!!!」
生成されたナイフを抜き、合流したシロと共に敵ベースに向けて駆けていく。
「…………」
仕留め損ねたなぁ、とチアモが走っていくシロたちの背中を見送る。殺っておきたかったがしょうがないと、チアモはアタッカーとしての役割を全うしようと前を向き、立ちはだかる敵シューターを見据える。
頭上に大火球を浮かばせたエメラが、αブラストの銃口をチアモへと向けて構えていた。
「チアモ様。僭越ながらメイドのワタシがお相手させていただきます」
「あはは⭐︎
ロボメイドガール・エメラと、ヤンデレシリアルキラー・チアモのバトルが始まる。
中央地帯での乱戦状態が少し落ち着いたところ、頃合いを測っていた藤崎詩織がハードブロックの影から動き出す。すでにこちらのタワーは破壊されている以上、いち早くレインボーチームのタワーの破壊するべきと思考していた。
チアモはエメラの射撃を捌きながらタワーの方へと向かっている。ならばチアモと合流して連携を取るべきだと考え、藤崎詩織はチアモの元へ向かおうとするが……。
「通行止め〜♪」
目の前にブロックが生成され、行手を阻んでいた。無論、それを行えるロールはブロッカーであり……プリティーボンバーズリーダー・モモコが不敵に笑っていた。
「アタッカーとは合流させまんよ、藤崎大先輩。モモぴゅんの用意したステージ……楽しんでいってくださいな♪」
「ふふっ……お手柔らかにね、モモコちゃん」
レジェンドvsニュージェネレーションも、同時に勃発。本戦出場ファーストを決めるボンバーバトルは、いよいよ佳境へと入っていった。
●~*
中間タワー破壊を速攻で成功したことで、狙うは敵ベースのみとシロとオレンは一直線に573ベースに攻め込んでいた。
すでにオレンはゲートやハードブロックを飛び越えてベース内へと入り込んでおり、その後をツガルが仕留めんと追いかけていった。グリアロは現在ベース前のゲートにて、シロを止めるためにゲートの防衛に努めているのだが……シロの猛攻に圧倒されていた。
それはシロのボム投げだ。それも正確無比で、シロはゲートの内側にボムを投げ込んで、グリアロをゲートに近づかせないようにしながらゲートに攻撃していたのだ。
ボムをブロックに変換するグリアロからすれば、内側にボムを投げ込まれるのは厄介極まりなかった。これではゲート外側にブロックを築城できず、防衛はほとんどできていない状況になっていた。ゲートは内側と外側両方からボムが爆発し、恐ろしい勢いで耐久が削られていっている。
(……すごいね、シロちゃん。まさかここまで強くなっていたなんて……!)
グリアロは最後に戦った2週間前の練習バトルを思い出す。あの頃とは動きがまるで違っていた。
直感や本能で動いているのは変わらないのであろうが、ボム投げの戦い方になってからはひたすら突撃してボムを置いていくスタイルではなく、的確にこちらが困る位置にボムを投げ込んでいく合理的な戦い方に仕上がっているのだ。
どこに投げるのが効果的か。相手の動きを阻害する場所に投げ込むのかなど……別にシロは考えて投げていない。直感と本能に忠実に動いているのは変わらずにバトルに挑んでいる。ならばこうして徹底的なボム投げを行使できているのは……ユキトと、それに付き合ってくれたアクアとの特訓による成果である。
その『どこに投げるのが効果的か』などの場所や展開はすべてユキトが教え、選手である相手視点でアクアがさらに詰めていく。あとはバトル中のボム投げを、ひたすら身体に覚え込ませるために何度もシミュレーションを重ねて……シロはボム投げをマスターすることができたのだ。
そして今、努力の成果がこうして発揮されている。
グリアロは被弾してでも前に前に出るべきかと考えていたが、ゲートが完全に破壊されたのを見て踏み止まる。すぐさまボム壁とウォールマジックの遅延で、ツガルがオレンを仕留めてこちらに来てくれるまでの時間稼ぎの方向に切り替えた。
ボトルネック防衛が強いグリアロはベースまで下がるべきかとも考えたが、今はオレンとツガルが戦っているため、被弾なりオレンの攻撃などでうまく守れずシロを通してしまう可能性がある。実際タワーに投げ込めたシロの射程範囲を考えれば今の位置からでもベースに届くはずのに、投げ込んでいない。おそらくオレンに被弾して邪魔しないようにするための配慮なのだろう。
隙あらばメスガキ煽りするプロのメスガキサキュバスクイーンでドベケスの神と知らないうちに崇められるグリアロも、言葉を発する余裕がなく集中していた。シロもまた同様で極限の集中力と真剣な眼差しで挑んでいる。シロはグリアロの守りをどう抜けるか、グリアロはシロの動きを全て読みきれるか……両者は一進一退の攻防を繰り広げていた。
「ウォールマジック……っ!?」
グリアロが並べたボムをブロックの変換。シロは変換されたブロックの前に立って────大型ボムを生成した。
「スーパーウルトラボム!!」
膨らむように大きくなるデンジャラスボムに、グリアロは「ここで!?」と驚愕する。範囲の広いボムなので下がらせるつもりなのだろうが、それはシロも同じ筈だ。このタイミングで切るのかと疑問に思いながらも、グリアロは射程範囲から逃れるために下がった。
シロも下がるのかと思いきや、なぜか変換したブロックの内側にボムを投げ込んでいた。なぜそんなことをしているのかわからずに様子を見ていると、
『パッカ〜ン〜♪』
突如SUBが開き、気の抜ける機械音声と共におもちゃミンボーの顔が飛び出し、同時にカラフルな紙吹雪を舞わしていた。
「は……?」
思わず、グリアロは放心してしまっていた。
あまりに想定外のびっくり箱に驚きよりも戸惑いが勝り、一瞬動きを止めてしまい──横を駆け抜けるシロに気づいて、我に帰った。
「なっ……!?」
『シロ選手、抜けましたー! なんか、すごい面白いボムですね!?』
『たしか、スーパーウルトラなんちゃってボムでしたっけ? 見た通り爆発しない偽物ボムですね。正直どうなんだって、本人ですら思ってたボムですけど……効果的なのが判明しましたねぇ〜』
(やられた! まさかあんなフェイクボムがあったなんて……!)
グリアロは反射的にシロを追いかける。グリアロは前回の練習バトルでは使われなかったボムにこのあたしが騙されるなんて、と歯軋りした。
今使ったシロのフェイクボム────スーパーウルトラなんちゃってボムは、爆風の発生しないSUBの偽物ボムである。一応特殊ボムの類であり、コストはSUBと同じ2の消費を必要とするスキルボムである。
癖が強く使いづらいボムであるのだが、ユキトがこういう場面で使えば効果的では? と指導してくれた。正直ユキトもシロも上手くいくかは全くわからなかったが……今この瞬間は、グリアロを欺くことに成功した。
欺かれた側のグリアロはシロを追うも、足の早さはシロと同じため追いつけない。このままベース内にシロの侵入を許してしまう。
だが……
「きゃっ……!?」
ベース入り口にシロが足を踏み入れた瞬間、突如足元にデフォルメされたドクロマークの魔法陣が浮かび上がり、輝く光がシロを襲った。
グリアロのスキル、ラブドレインだ。ドクロの魔法陣を設置する地雷スキルであり、踏めば160のダメージを与え、その分のハート(回復アイテム)を落とさせるスキルである。
設置後のトラップは10秒間残り、チャージタイムは16秒。なので複数の設置は仕様上できない……原作であれば。
この世界のラブドレインはチャージタイムこそ変わらないものの、設置後の10秒間という持続時間が存在しない。そして最大3個までラブドレインを設置できる効果となっているのだ。
敵が踏むか、貼り直す場合は上限を超えてからスキルの使用が必要となるが、それを踏まえてもユキトが知れば「前世より強くない……!?」と驚くことだろう。
麻痺するような鈍い衝撃を受けたシロは、自分から抜け出るように出たハートのアイテムが右に飛び出るのを見て、ダメージを受けたのと回復アイテムであることを直感で理解する。
回復アイテムは、取らない。よくわかっていないのもあるが、シロはそのまま目もくれずにベース内へと走り込んだ。
(取りに行ってくれればそこで足止めできたけど……上手くいかないなぁ〜)
少し残念に思いながらも、まだこれからだとグリアロはシロを追いかけてベースに入っていった。
●~*
場面は変わり、レインボー側のベースもまた激しいバトルが展開されていた。
ベース前にて、レインボー側の中間タワー破壊に成功したチアモをエメラが対応し、ベース内にてモモコと藤崎詩織が駆け巡っていた。
(やべえ……藤崎詩大先輩、全然ダメージ食らってないじゃん!)
ゴクリ、と冷や汗を流しながらもモモコは仕留めんとボムを配置して動き続けていた。
ユキトと一緒に動画を見直し、ボムの連鎖のタイミングをほぼマスターしたのにも関わらず、あまりダメージを与えれていない。その理由はなんなのかは……相手をしていてわかる。藤崎詩織もまたボムの連鎖を理解している傑物であり、こちらの動きや狙いを完璧に読んでいたのだ。
最小限の動きで爆風を避けていく藤崎詩織の姿は、まさに優雅たれを体現しているかのような美しさがある。不必要にボムは置かず最低限であり、特殊ボムである好感度ボムを的確に置いてベースにダメージを与えていた。
藤崎詩織も多少汗を流してはいるものの……その瀟洒な姿を一生懸命なモモコの姿を見比べれば、藤崎詩織側が優勢に感じられるだろう。
まずい、とモモコは冷静さを保ちながらも、内心では焦っていた。なぜならばチアモがベースに近づきつつあるからだ。
エメラも奮闘するがチアモは手強く、中々仕留めきれずにいる。このままベース内に侵入され、藤崎詩織のとあるスキルで連携を取られてしまえば、一気に勝負がついてしまう可能性がある……前回の練習バトルで、嫌というほどそれを知っていた。
チラリ、と藤崎詩織はベース入り口に視線を向ける。エメラのαブラストの射撃を避けて横を通り抜けて来たのを見て──モモコが予想していた最悪の事態が起ころうとしていた。
「────伝説の樹の下で、待ってます」
藤崎詩織は安らかに微笑みながら目を閉じ、スッと姿勢を正して佇んだ。すると彼女の背後からふわりと巨大な大樹が降霊されていた。
伝説の樹、生える。
藤崎詩織が持つ最大スキル『伝説の樹の下で』は、告白待機状態となり告白相手に触れらることで16秒間の無敵状態にすることがてきる超強力なスキルである。
告白待機状態の藤崎詩織はその場から動くことができなくなるが、その状態は攻撃を何も受け付けぬ無敵状態であり、告白待機は8秒間。告白阻止するには相方の告白相手を近づかさせないようにするしかない。
チアモはその瞳を妖しく光らせ、狂気的な笑みを深め疾る。
モモコが藤崎詩織からばっと視線をチアモに向ける。
エメラがモモコとアイコンタクトし、その目を鋭くさせながら△スレッドとΣスレッドを同時発動する。
三者三様の視線が交差し、衝突する。三人の思いは同じで、ただ一つであった。
────テメェを、ぶっ殺す────!
「ウォールモモコ!」
「ターゲットロック、シュート」
「邪魔ァ!!」
モモコがベース入り口にブロックを生成する。チアモは生成される度にブロックを破壊する。その背をΣスレッドの大火球が襲うも、振り向き様にチアモは腕を振るって切り裂いた。
「極上ウォールモモコ!!!」
「ファイヤー!」
モモコは極上シリーズの氷柱を発生させるブロック生成スキルを駆使し、エメラは次に△スレッドの三つの火球でチアモを狙う。
シューターの猛攻とブロッカーの攻撃防御。どんなガールであれ、ここまでまでされてしまえば撃破は免れないだろう。
しかし、ここにいるは不可能を可能にせんと邁進し続けるジョーカーチェイスのサンカシャにして、次元を超えしボンバーガール・最愛チアモである。
彼女は今、燃えている。なぜならば……
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァ!!!!!」
残像すら残す速度で前後へと振り向きながら腕を振るい、その鋭い爪で氷柱も火球もすべて切り裂いていく。
すべてを壊さんとする世界の破壊者たるその迫力があり、計り知れぬ勢いが今のチアモにはあった。
「くっ……!」
その迫力に圧倒されそうになったが、状況がそれすらも許さなかった。
突破される。藤崎詩織に
モモコは最後まで諦めずに、ボム壁で進行を妨げる。しかしそう来るのはわかっていたようで、チアモはその場で大きく垂直に跳び上がった。
「ち~あ~……」
跳ぶと同時に前方宙返りを描き、そのまま着地する瞬間……着地の場所にハートの踏み板が出現し、チアモは落下の勢いのままにハートを踏み抜いた。
「も~!♡」
「うぎぎ……っ!?」
モモコのボムが爆発と同時に地面からトラバサミが出現し、爆風を防ぎつつ近くのモモコを巻き込み、攻撃と防御両方を成立させていた。そのままチアモはベース内へと侵入を成功させる。
(まだ……まだ……!)
ここが正念場だと、モモコは魂を奮い立たせてド根性を見せる。モモコの極上シリーズには速度デバフが付いている。たとえ攻撃で防がれようと、触れていればそのデバフは有効となる。
チアモを追い抜きもう一度前に立ち、ボム壁を試みようとするが……自分の足が重く感じ、うまく前に進めていないことにモモコは気付いた。
「これ……まさか、私と同じ……!」
速度デバフが掛かっている。身に覚えのある感覚に、先ほどの攻撃が関係しているのだとモモコは即座に気づくことができた。
モモコの推察通りであり、ウルシの『忍法花火隠れ』やテッカの『超究極鉄拳制裁拳』と同じ自分中心を範囲としたチアモの攻撃スキル『束縛』には、速度デバフ効果が付随していた。
しかし気付いたところでもう遅く、チアモを止めることがもうできない。ブロックを生成しようにも、スキルチャージはまだ完了していない。それがわかっていてもモモコは手を伸ばし続け、前に進もうとした。
あと数歩、チアモは藤崎詩織へと届く。藤崎詩織が優しく手を差し出し、チアモはその手に触れようとして──暗殺者としての直観が危険信号を鳴らし、咄嗟にその身を下げた。
その瞬間、チアモがいたであろう数センチ先の場所が、光に包まれた。
「Ωデリート────!」
ベースの外から貫通してきた白い光線──エメラの最大スキル『Ωデリート』が藤崎詩織とチアモの間に放たれ、行く手を阻む光の壁として機能させたのだ。
ここに来るまでチアモも無傷とはいえない。ゴリ押しで行こうとすれば、先に撃破されてしまうのは明白。この局面でのそれは、あまりにも致命的なのはわかりきっていたために、Ωデリートの放射が終わるのを待つことしかできなかった。
Ωデリートの放射が終わると同時に、藤崎詩織の告白待機状態も終了し、降霊されていた伝説の樹も光の粒子となって胡散していた。
「……すみません、モモコ様。先ほどの攻撃で、すべてのスキルがチャージタイムに入ってしまいました。チャージ完了まで、少しばかりお待ちください」
「構わーん! よく止めてくれたわエメラ! ナイスナーイス!!」
「ごめーん、藤崎先輩……失敗しちった☆」
「今のはしょうがないわ、チアモちゃん。失敗しちゃったのは残念だけど、まだまだ勝機はあるわ。頑張りましょ?」
モモコがエメラを褒め称え、藤崎詩織がチアモを励ます。凄まじい攻防の一部始終に会場全体が見入り、歓声を上げる中、レインボーベースのバトルもまた最終局面へと向かっていた。
『すっ…………ごい攻防でしたね! ハニーさん! すごすぎて私、実況を忘れてました!!!』
『同じく見入って解説し忘れた私が言うのもなんですけど、実況として致命的過ぎませんかねそれ?』
●~*
573ベース内のバトルは熾烈を極め────ベースは大破し、崩壊寸前だった。
それを成したのは無論、チームレインボーのシロとオレンであり……特にベースへのダメージを一番に与えているシロは、この場において間違いなく
その戦果を生み出したのは、バトル開始からずっと見せてきたボム投げである。ユキトとアクアとの特訓で磨き上げてきた実践的投擲技術が、573側の防衛を突破してダメージを稼ぎ続けていたのだ。
相性が悪い、とグリアロは舌を巻く。
ボムをブロックに変換する『ウォールマジック』の射程は近距離であり、いたるところにボムを投げて置けるシロの攻撃全てに対処することはできず、ろくに防ぐことができずに恐ろしい勢いでベースが削られていってしまっているのだ。
あまりにもシロが脅威であった。それがわかってツガルもシロを集中的に狙うのだが、縦横無尽に飛んで駆け回るオレンが射撃を防いでシロを守っている。
グリアロが回復スキル『ラブランド』の持続回復により、ベースはかろうじて延命させているが……このままでは時間の問題だ。SUBを成功されればこちらの負け。普通にこのまま投げ続けられても負けてしまうだろう。
ならば取れる選択は一つ。二人を同時に仕留める他ない。
「ツガルちゃん、オレンさんお願い♡」
「! はいです!」
グリアロの指示を理解し、ツガルは狙いをシロから再びオレンへと変える。二丁のホーンスナイパーライフルを構え、その銃口を向けて放った。
「ホーリーナイト・ミサ!」
「おっと……!」
二丁のライフルから放たれる連射に、オレンはナイフで弾くのではなく回避を選択。ベース内を駆けるオレンを、ツガルの銃口が追いかける。
ベースを一周する形でシロと合流したタイミングを見て、目を光らせたグリアロが仕掛けた。
「ウォールマジック!」
三つ並べたボムをブロックに変換し、擬似的な行き止まりを作り、追いかけてきたツガルはボム壁を作ることで挟み撃ちの状況を完成させた。
ここだ。ここで、仕留める────!
「チャイルドプレイ……!?」
両腕を上げて巨大なエネルギー球体を形成し、ふわりと浮かんでブロックを飛び越え放とうしたその先で、グリアロは驚愕する。そこにあったものは────。
「────スーパーウルトラボム!!」
グリアロの最大スキル発動と同時に、大型ボムを生成し終えていたシロの姿があった。
「しまっ……!?」
すでにスキル発動中のグリアロは止まれず、ツガルも急いでアップルスタンサイダーを生成するが──間に合わず、壁にしていたボムが爆発し、爆風がSUBに連鎖して特大の爆発を引き起こした。
シロ、オレン、ツガル、グリアロのその場の全員を巻き込む爆発はベースにも多大なダメージを与え……それがトドメとなって573ベースは完全に壊滅し、勝利を告げるアナウンスが響き渡ったのだった。
『フィニッシュ!! チームレインボー、ウィン!』
573ファクトリーはあともう一回ボンバトさせるつもりです。本選編で。