86-エアプサンマグノリア共和国物語…… 作:聖女マグノリアオルタ
星歴2140年。
サンマグノリア共和国第二共和制政府樹立から一年。
革命を成し遂げた白系種も有色種も問わず、勇敢な戦士たちが結成した新生サンマグノリア共和国軍は、この一年間、押し寄せる〈レギオン〉の猛攻を、必死に耐え続けてきた。
本来ならば、残存する軍の戦力のみで行われるはずだった遅滞戦術。だが、革命の熱に身を捧げた多くの志願兵が加わったことで、それを可能にした。この革命兵たちは、その勇気と信念だけで前線に立ち続けたのだ。
だが、共和国軍の戦力はなお脆弱であった。
正規軍が壊滅し、数多の熟練した士官や兵士、そして最先端の兵器が失われた今、残された軍は訓練も受けていない元一般市民たちが主力を担い、彼らが手にする武装は基地の倉庫や博物館で眠っていた古びた兵器ばかりであった。
共和国軍の主力兵器は、〈レギオン〉や
それでも彼らは戦い続けた。
共和国中からかき集められたこれらの兵器を駆使し、次々と湧いてくる〈レギオン〉を少しずつ撃退しながら、遅滞戦術を繰り返す。汗と血にまみれながらも、彼らは耐え忍び、何とか前線を維持していた。
だが、〈レギオン〉の無限とも思える圧倒的な物量は、あらゆる防御線を粉砕し、共和国軍の努力をあざ笑うかのように侵攻を続けている。
そして、ついにその侵攻の矛先が東部戦線に集中し、共和国の全市民が避難している85区へと、〈レギオン〉は総力を挙げて進軍を開始した。
大地が揺れ、戦場は炎と煙に覆われる。
砲火は昼夜を問わず鳴り響き、降り注ぐ砲弾はまるで鉄の雨のように地表を貫き、大地を赤黒く染めていく。その光景はまるで終末のようで、果てしない戦場には絶望が漂っていた。
しかし、〈レギオン〉は進撃を止めない。
彼らは不死の兵器だ。
彼らには恐怖も痛みもない。
ただ無心に前へ進む。
圧倒的な破壊力と驚異的な運動性能を持つ無人機の群れは、たとえ兵士たちが力尽きても、弾薬が尽きても、疲れを知らずに押し寄せてくる。
数百、数千、いや、数万、数十万と押し寄せる鉄の波。
いくら壊しても、すぐに補充され、戦場には新たな〈レギオン〉の群れが姿を現す。彼らは減るどころか、増える一方だ。
彼らには差別も憎悪もない。
ただ命令に従い、全ての生命を平等に蹂躙し、殺戮するだけ。白系種も有色種も関係なく、冷酷無慈悲な機械の兵士たちは、人間の心など考慮することなく、ただ破壊と死をもたらしていく。
革命によって高揚していた共和国軍の士気も、今やその理不尽な現実を目の当たりにし、絶望へと引きずり込まれていた。彼らの心は、次第に折れ始めていた。
兵士たちの多くは、正規軍の軍人ではなかった。
つい一年前まで、彼らは普通の生活を送る市民だったのだ。
商人や農民、職人、学生だった彼らが、今や銃を取り、〈レギオン〉という無慈悲な敵に立ち向かっている。
そんな彼らが正規軍を半月で壊滅させた〈レギオン〉に対し、一年も戦い続けたことは、もはや奇跡と呼んで差し支えないだろう。
だが、その奇跡も、時間と共に彼らの精神をすり減らし、限界まで追い詰めていた。
それでも、彼らは戦うことを止めなかった。
共和国を守るため、彼らの信念と共に、弾薬が尽きるまで迎撃砲による砲撃を続け、履帯式戦車や装輪式装甲車で果敢に突撃を敢行した。
「共和国万歳! 劣等帝国主義者の尖兵に死を!」
突撃する戦車の中で、一人の白系種の青年が叫んだ。
彼は共和国の栄光を信じ、白系種こそ最も優れた人種だと疑わなかった。彼の中には、純粋であるが故の差別的な思想が根付いていた。それは、彼にとって当たり前の信念であり、他の人種は皆劣等民族だと見なしていた。
しかし、その誇りはただの傲慢では終わらなかった。
彼は信じていた。最優秀種たる白系種こそ、偉大なる共和国のために先陣を切り、血を流して戦うべきだと。
勝ち目がなく、死が確実であることを悟っても、彼の誇りは揺るがなかった。青年は、愛する共和国を守るため、その胸に誇りを抱きながら、死地へと果敢に突撃していった。
「最悪だ……本当に。ごめんね、母さん。私は先に逝くよ。ここから先は、一歩も通さない!」
防御陣地に迫りくる〈レギオン〉の隊列に向かい、一人の金系種の少女が涙を浮かべながら最後の兵器——
それはまるで時代遅れの巫山戯た玩具のように見えるが、彼女にとっては数少ない残された〈レギオン〉を破壊できる兵器だった。
この防御陣地には、もうこの珍妙な兵器の類しか残っていない。
無限に湧いてくる〈レギオン〉を相手に、かつて蓄えられていた武器や弾薬はすでに尽きていたのだ。
目の前に迫る無敵の機械群を前に、彼女は自分の運命を理解していた。
この兵器を放った後、自分が生き延びることはないだろう、と。
家族の顔が脳裏に浮かび、胸を締め付けるような悲しみが彼女を襲う。もう二度と会えない。その現実が、彼女の心を打ちのめしていた。
それでも、彼女は進んだ。
革命新政府は、有色種である自分や家族を守ってくれた。その恩返しを、今こそ果たさなければならない。共和国の為に戦うことが、彼女にとって最後の使命だった。
ついに斥候型の〈レギオン〉が防御陣地に足を踏み入れたとき、少女は手榴弾を握りしめ、勇気を振り絞って突撃を試みた。彼女の小さな体に宿る力が、最後の瞬間に爆発するようだった。
———
その瞬間、空を裂くようにいくつもの光の筋が走り、〈レギオン〉が埋め尽くしていた大地が轟音とともに爆裂した。地面がまるで生き物のように揺れ、空気は衝撃波で震え、〈レギオン〉の無機質な群れが粉々に砕け散る。
それは、一人の異能を持つ共和国の天才が転生者の友人から授かった異世界の知識と国家総動員の戦時体制を利用して捻出された人員と膨大な国家予算を基に創り出した、驚異的な威力を誇る
この兵器は、後に登場する〈レギオン〉側の
———ドローン全機展開。〈アレクサンダ〉各機、出撃!
次の瞬間、防御陣地に浸透していた〈レギオン〉に対して、雪のように白い純白の多脚機甲兵器が一斉に襲いかかる。砂塵を巻き上げながら戦場に躍り出るその姿は、まるで神話に登場する巨大な獣のごとき威容を誇っていた。
それは、共和国が総力を挙げて開発し、量産に成功した超高機動型の有人多脚機甲兵器だった。可変機構を搭載し、人型と四足歩行形態への変形が可能なこの〈アレクサンダ〉は、まるで踊るかのように戦場を駆け抜け、機体がごとに特色がある豊富な武装バリエーションを駆使して敵を次々に撃破していく。
この機体は、卓越した機動性と攻撃力を持ちながら、操縦には高度な技術を要し、乗り手の育成には多くの時間を要した。そのため、戦場への投入が遅れていた。しかし、その分、戦力として投入された時の影響は絶大だった。
先行量産機三百機が一斉に展開され、さらには人工知能を搭載した無人ドローン型約七百機が放つ弾幕が〈レギオン〉の群れに襲いかかる。戦場を駆ける〈アレクサンダ〉たちは、まさに無双。兵士たちを鼓舞するかのように、圧倒的な力で敵を蹴散らしていった。
〈レギオン〉はその機動力に翻弄され、さらには降り注ぐ
絶望的な突撃を試みようとした白系種の青年が目にしたのは、
また、手榴弾片手に
全ての戦場で形勢が逆転し、共和国軍が〈レギオン〉の群れを圧倒した。
やがて、数を大きく減らした〈レギオン〉は撤退を余儀なくされた。
長きにわたって旧式兵器で耐え忍んできた共和国軍の努力が、ついに報われる瞬間が訪れたのだ。
———今こそ、反撃の時です!
無線越しに響き渡るその凛とした声が、兵士たちを鼓舞するかのように力強く響いた。
その声は、かつて兵士たちに革命の火を灯した少女、レイラ・バーンスタインのものだった。
———
兵士たちの視界に、黄金に輝く一機の多脚機甲兵器が映った。
そのボディは金色に輝き、機体各所には荘厳な装飾が施されていた。まるで半人半馬の異形のケンタウロスを思わせるその機影こそ、共和国の御旗である五色旗を掲げたレイラ・バーンスタイン専用機だった。
「聖女様が、私たちの聖女様が来てくれた!」
「それに、あれは五色旗の御旗……!」
「自由と平等、博愛と正義と高潔を表す共和国の魂……!!」
兵士たちの目には輝かしい希望が映り込んでいた。
彼らがかつて信じ、戦ってきた理想の象徴が、今ここに現れたのだ。
この瞬間、彼らの心は再び燃え上がった。疲弊し、希望を失いかけていた彼らの魂に再び火が灯った。
「間違いない! この戦い、我々の勝利だ……!!!」
「うおおおおお!!!!」
兵士たちの雄叫びが戦場に響き渡った。
白系種の青年も、少女も、生き残った者は皆声の限り叫んだ。
共和国軍の士気は一気に高まり、その勢いは最早誰にも止められなかった。
こうして、戦況は完全に共和国側へと傾いた。
残存していた〈レギオン〉も、共和国の機動力に優れた多脚機甲兵器部隊に追撃され、間もなく壊滅的な被害を出しながら戦域から完全に撤退。
この日、ついに共和国は、開戦以来初の〈レギオン〉の撃退に成功したのだ。
エアプサンマグノリア共和国産兵器その2
電磁投射砲《ダインスレイヴ》
威力だけなら電磁加速砲型《モルフォ》をも上回るレールガン。
元ネタは鉄血のオルフェンズの《ダインスレイヴ》