基本的に神隼人の独り言です。アニメゲッターロボアークの前日譚を意識して書きました。
喋るキャラが神隼人のみです。
ご注意を。
スタスタスタ
そんなありきたりな擬音すら頭に浮かばない程の静寂の中、私は歩いていた。
理由なんか無い。ただ歩きたい、ふとそう思っただけだった。
視界の先に緑色の結晶があるのが確認できる。随分と増えたものだ。
あれからどれ程経った?もう赤子が親に孝行するようになるまでの年月が過ぎたか?
寂寥感に満ちた考えを一旦頭の隅に置く。
見えて来た。
「地獄の釜・・・・・・」
かつてこの場所で行われた実験。
早乙女博士が作った戦闘用ゲッターロボ、ゲッターロボGを使用した実験。
一号機、ドラゴンの形態で行われたその実験のさなか、事件は起こった。
突如としてドラゴンが暴走し、その場にいた研究員を吹き飛ばしたのだ。
「ゲッタードラゴン・・・・・・何故、お前はここに居続ける・・・・・・」
武蔵、早乙女博士、弁慶、渓、凱、號、竜馬、タイール、・・・・・・ゲッターロボに関わり、私と交流をもった彼らは、皆私の前から消えていった。
だというのに、このゲッタードラゴンだけは大人しくこの釜の中で鎮まっている。いや、眠っているだけなのかも知れんが、そんなもの分かるはずもない。
ふと、昔の自分を思い返してみる。少なからず社会に不満を抱え、学生運動を始め、いつの間にやらリーダーと呼ばれるまでになっていた。
そんな時に早乙女博士に声をかけられ、リョウと武蔵の二人と共に恐竜帝国に挑み、武蔵の死を見ることしか出来ず、新たに出現した百鬼帝国と戦いを繰り広げ、ゲッター線を使わないゲッターロボなんてものも開発もした。
なんと一辺倒なことか。自分の人生には、転機と言える学生運動を除く全てにゲッターが関わっている。最早呪いと呼んで良いかもしれない。
「・・・・・・とすると、ゲッターの呪縛か・・・・・・」
リョウか真ゲッターで宇宙に飛び立つ時、その顔は晴れやかだった。まるで、その呪縛を受け入れ歓喜するように。いや、歓喜ではない。まるでそれが当たり前のようだった。
「早乙女博士・・・・・・貴方はまるで、知恵の実を食べたようだ。ゲッター線を発見し、それでいてゲッターロボなんてものを作り上げた。こんなことが、他の誰が出来る?ハハハ、知恵の実か。我ながら、なんとメルヘンな例えが浮かんだものだ・・・・・・」
いや、待てよ?
誰かが言った。ゲッター線とは、生命体を進化させるのだと。
進化した生命は、いずれ高次の存在に至るのだと。
ならば、あながち間違いではない?
早乙女博士は、言ってしまえば最初に知恵の実を発見したのだ。ゲッター線という知恵の実を、誰よりも早く見つけた早乙女博士は、その実がどう見えた?その実をどうした?
そんなものは分かりきっている。
きっと、今にも齧り付きたくなる程に熟れていたに違いない。
そんな果実が眼の前ある。早乙女博士は科学者だ。
科学者にとって、叡智を授ける知恵の実は、何が何でも手に入れたい、口にしたいはずだ。
それに博士は、本来宇宙開発用のゲッターロボを、即座に戦闘に転用し、あまつさえ戦闘用のゲッターロボの製造に迷い無く舵を切れる人間だ。
そんな人間の前に、極上の果実が、無造作に、無遠慮に置かれている。
食べない訳がない。
旧約聖書において、始まりの男女アダムとイブは、蛇に唆され食すことを禁じられていた知恵の実を食したという。それによりアダムとイブは善悪を知った。
博士はこの知恵の実を食べ・・・・・・新たな概念を得たのだ。始まりの男女が善悪の概念を得たように。
その実を食べ続けることで、人が到底到達出来ない場所にある知らなかったものを知った。
では誰が、何が博士を唆した?
ただ目の前にある見知らぬ果実を、どうやって食べさせた?
魅力か?誘惑か?それとも、脅迫・・・・・・?
「ゲッター線」
ふと言葉が口から漏れる。
そうだ。ゲッター線だ。
生命体を進化させる作用があるのなら、きっかけが必要になる。
進化のきっかけが。
「ハチュウ人類の襲撃・・・百鬼帝国の出現・・・プロフェッサーランドウの蜂起・・・これら全てが、ゲッター線が導いた事だとしたら・・・・・・」
瞬間、最悪な空想が止まらない。
「・・・ゲッター線は、最初は博士の前に知恵の実として現れた・・・・・・いや、違う。もしや、ゲッターの意思は初めから別の誰かに向いていた?」
迷わず、あの男の名に至る。
「流竜馬」
ゲッターロボの搭乗者。一号機、イーグル号のパイロット。
一度ゲッターから離れるも、最後は真ゲッターと共に行った。
「ゲッター線は、初めからリョウを目的にしていたのなら、早乙女博士に知恵の実を食わせ、その後リョウに博士ごと食わせるなら・・・・・・まるで、博士は黄金の果実だ」
黄金の果実。ギリシャ、北欧神話において、食べれば不老不死になれるという果実。人の手に余る、紛うことなき神の果実・・・・・・
「選んだのか?ゲッターという神が、リョウを選び、リョウに最高の状態で食わせるために博士を利用し、宇宙を行ける力、ゲッターロボを製造。そして真ゲッターという完璧に熟れた状態で食させた・・・・・・宇宙へと飛び立った真ゲッターを黄金の果実とするなら、リョウは、死んでいない?ゲッターに呑まれ、生きているのか?・・・・・・いや、ゲッターそのものが生き、リョウや博士を飲み込んだ?」
もしそれが真実ならば、我々人類はゲッターに利用・・・・・・いや、支配されていたと言える。だが、そうすると分からないことがある。
「何故、博士はアークを残したのだ?」
アーク。早乙女博士が真ゲッターロボ開発時に構想したプロトタイプにして、最後の遺産。
我々の手で完成させたゲッターロボ。
「アーク・・・・・・世界を飲み込む大洪水から生き延びるため、ノアが作り上げた方舟・・・・・・」
ノアの方舟。
生命体の絶滅を防ぐため、この世の全ての動物が雌雄一組ずつ乗せられた船。
「博士がゲッター線に操られていたと仮定すれば、真ゲッターで終わらせても良いはずだ・・・・・・博士は、抵抗したのか?そのために、余分なアークを作ったのか?」
頭の中に疑問が溢れ出す。
「・・・・・・いいや、違う」
そうだ、違う。
博士がゲッターに操られていた?
いいや、博士は知らなかった。
リョウも、號も、タイールも。
真ゲッターで飛び立つとき、まるで何かを悟ったような顔にも見えた。
ゲッターは操ってなどいない。
始めからそうなる運命だった。
だからこそ
「アークは、なんだ?」
もしかしたら、博士は消失する前に、わかっていたのかもしれない。
わざわざプロトタイプの設計を残したのだ。
真ゲッターが完成し、不要となったものだというのに、我々が完成までこぎつけるように残していたのだ。
運命を、理解していたのかもしれない。
真ゲッターで完結するはずだったマシン。その余分。
運命に無い、イレギュラー。
アークとは、真ゲッターによって終了する運命を変えた、まさに、延命の方舟・・・・・・
「待てよ?・・・・・・博士ではなく、真ゲッターこそが黄金の果実ではないか?不老不死という言葉で表すのではない。人間をさらなる境地に押し上げる存在だとすれば、すでに、真ゲッターはやっている。ゲッター線は、実行している。アークは、そんな果実が全人類に行き渡ることを阻止するために作られたのではないか?全人類が、今よりも高次の存在になることを阻止するために・・・・・・そんな事をするのは、大方化け物の類だ・・・・・・」
悪魔や邪竜、鬼のような・・・・・・
「鬼?」
自らの言葉を反芻したとき、鬼という言葉が引っかかった。
確かに、初めてゲッターアークを見たとき、その顔で鬼を連想した。
「鬼。いや・・・・・・そうか・・・・・・鬼か」
鬼。
角が生え鋭い牙を持つ人型の怪物。
「今伝承等に残っている鬼の中には、朝廷が自らの侵略行為を正当化するために、領主を鬼と呼んだと考えられている者もいる・・・・・・アークは、そんな鬼なのか?」
では、アークを鬼にしたものは、誰だ?なんだ?
いや、鬼の中には生来人の味方をする存在もいる。
アークがそんな鬼ならば、あるいは・・・・・・
「いや、この話は終いにしよう」
どれだけ答えを探したとしても、すでに答えを知る者はこの世にいない。
確信を得たとしても、それは空虚な憶測に過ぎない。
「ここに来て、珍しく考え込んでしまった」
「こんなところ、無心で来るような場所ではない。疲れているのか・・・・・・?」
「・・・・・・」
研究所の中に差し込む光の中、空を見上げると、遠い場所に行った戦友が浮かんだ。
「・・・・・・皆、俺を置いて行くんだな・・・・・・」
夜風が白衣を翻した。
ゲッターについて考えれば考えるほどわからなくなっていくので書くのに難儀しました。
まあでも今の自分ができる最大限の文章能力で書き上げられました。
まだわからないことが多い・・・・・・
ゲッター・・・・・・