あいあむちょび髭、画家を目指す 作:ジャーマンポテトin納豆
ある日の朝。心地良い気分と共に目が覚める。
するとタイミング良くドアを叩く音がする。
「閣下、おはようございます。よくお眠りになられましたか?」
「……うむ、よく寝れたようだ」
「それは結構。今日はとても天気が良いですから、絵を描くには絶好ですよ」
「それが許される時勢では無かろう」
「そうでしたね。申し訳ありません」
言いながらしゃかしゃかと動くのは今年で25歳だったろうか、2年ほど前にここで働き始めたエリカという女性だ。なぜわざわざ私の世話役をやりたいと言ったのか、てんで分からない。
なんせ私は今年で55になる訳だから、じじいの側にいても良いことなどないだろうに。
そんなふうに思う私がいるのは、ドイツは首都ベルリン。
そしてそのど真ん中にある、総統官邸である。
とは言っても爆撃や砲撃を受けて軍高官に怒鳴り散らかしたりしてなどいない。それどころかベルリンが瓦礫の山にすらなっておらず、国民は総力戦体制下ではあるが今のところ平穏な生活を送っている。
おかしな話だ。
私は画家を目指して、二度目の人生を歩もうとしていたのに気が付けば何故か国家元首に担ぎ上げられている。
確かに気付くことすら無く、明確に拒否しなかった私も悪いが、だからと言って本人が知らぬ間に何故担ぎ上げられた挙句に政治家になっていた?
意味が分からない。
私はただ、絵描きとして生きて、あわよくば絵描きで生活していければと、人並みに結婚して子宝に恵まれて、平凡な幸せを得たかった凡夫であるというのに。
どうしてこうなった?はやく辞めたい。
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なぜ私が総統官邸にいて、そこで寝泊まりし、閣下などと呼ばれているのか。それには深い、深い、訳があるのだ。
良ければ、ジジイの半生の歩みを聞いていってくれ。私の話し方の下手さを差し引いてもそれなりに面白い話になるだろう。
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私の人生は、誰も信じるまいが、今世を含めて実のところ2回目になるというのは私しか知らぬことである。
どうせ誰に言ったところで信じないだろうし、若年性アルツハイマーなどを疑われて病院に叩き込まれては堪ったものでは無い。
この時代、こういった精神疾患や脳疾患と言ったものは未だ解明が進んでおらず、21世紀の現代医学の恩恵を受けて来ていた身としては信じられない療法が行われることも多々ある。
前世の私は先に言った通り、21世紀の日本で生まれ育った。所謂ミレニアムベイビーと言うやつで、ちょうど2000年に生まれたわけだ。
そこで両親と祖父母の愛情を一身に受けて成長したのだ。兄弟はというと、弟がいた。と言ってもお互いに必要以上に干渉するような仲では無く、会話をしないことも殆どだったと記憶している。
お互い無関心というより、お互いの興味があるものが全く違っていて二人とも自由にしていただけの話なのだ。だから別に会話や交流が無くとも別に苦でもなんでもなかった。
私の家はどちらかというと恵まれていた家庭だった。
それは単純に金銭的という面だけでなく、精神的な面でも、育ちという面でも言える事だった。正直に言うと食べる事や学ぶことに於いて今世、前世のどちらでも苦労したという記憶が私には無いのだ。
そんな私は様々な習い事をやらせてもらい、そして私の中で最も興味関心を引いたのは絵を描くことだった。私は天才では無いが、それでもどうにかこうにかして芸術大学に進学し、学生生活を謳歌していた時のことであった。
両親は大喜び、祖父母も大喜びで、こっちが気恥ずかしくなるぐらいの喜びようだったのを今でも覚えているとも。
そして順調に進級して、学校から家路について暫くしたときだった。
背後から凄まじい衝撃が私の全身に襲い掛かった。死ぬ間際、アスファルトの上で全身の骨が粉砕され内蔵も筋肉もぐちゃぐちゃになりながらも、辛うじて残った意識で見た犯人は、どうやらそれもかなりスピードが出ていた大型トラックによるものであるらしかった。
居眠りなのか、誤操作なのかは分からないが、なんにせよそのすぐあとに私の一度目の人生は終わりを告げたのである。
何気無い日常生活の中の幸せというのは、ほんの一瞬、些細な事で失ったり奪われたりするものというのを、あの時身を以て体験したのである。
そんな私が二度目の生を与えられたのは、1889年オーストリア=ハンガリー帝国のブラウナウ・アム・インという町だった。
名前をアドルフ・ヒトラーの名を洗礼によって与えられたときは、赤ん坊ながらに絶望したとも。
私が、あの世界史に名を残す極悪非道な美大落ちに生まれ変わっただと?なんという冗談だ。三流小説の方が面白い設定だぞ、と絶望の連続だった。
何よりも、私は美大に受かっているのだ、ちょび髭と一緒にしないで貰いたいところである。
しかも時代が悪過ぎる。第一次世界大戦、スペイン風邪の世界的な大流行、世界恐慌、第二次世界大戦と少なくともこの世の地獄のような出来事が連続して起こる時代に生れ落ちるなど、堪ったものでは無い。
私は前世で何か相当悪い事でもしたのか?いや、そんなことはしていないし寧ろそれなりに人助けをしていた筈だ。
なのにこの仕打ちとは、やはり神なんぞ存在したとしても碌でも無い奴に違いないのだろう。
しかしいくら絶望したとしても、アドルフ・ヒトラーとして生まれてしまった以上、自分から死ぬという選択をしない限りはどうにかして生きていくしかない。ならばどうするか?
そもそも政治に関わらなければよいのだ。
政治に関わらずに生きて行けば、私一人と家族ぐらいは平穏に生きていけるだろう。あんなもの私よりも頭の良い連中がなるだろうし、ヒトラーと言えども絵描きとして生きて行けばいいのだ。そう考えた私の願いは、脆くも打ち砕かれるのだが、その時は知る由も無かった。
今生も両親がとてもいい両親だったか、と言われると否であった。
というのも父が性的に奔放だったからだ。
私が知る限り、腹違いの兄弟が10人ぐらいはいるのではなかろうか。実の兄弟も上に3人いるが、それにしても私生児の多いこと多いこと。
私の知らないところでどれだけの数の異母兄弟がいることやら分かったものではない。
そんな父と私の仲は決して良好とは言えず、寧ろ悪いと言ってよかった。
父は独学で税務署の職員となり、どんどん昇進して最終的には税関上級事務官にまで登り詰めており、無学歴としては異例中の異例と言っていいぐらいだったのだ。
その影響か、生来のものなのかは分からないが、私が絵描きを目指していることを告白すると凄まじい勢いで否定されたのだ。
しかも私が3歳か4歳ぐらいのころに田舎に引っ越して始めた農業が失敗していたこともあって、この時代では特に珍しくは無いが鞭や棒を使っての八つ当たりのような折檻もされていた。
当然現代日本での生活を20年以上も送っていた前世がある私の、父に対する心象が良くなる訳も無く、仲はどんどん悪くなっていった。
そんな中で父は独学で公務員になったことを誇っており、私達に対しても税関事務官になることを強く望んでいた。ところが私は絵描きになりたいといい、お互い譲る訳も無くますます対立が激しくなる。
結果として私は1907年、18歳の時に家を出た。
しかしそんな突然家を出て生きていけるほど甘い世の中では無い。結果、叔父叔母夫婦の下に転がり込み、養子となったのである。
叔父夫婦には子供がいなかったというのもあってか、転がり込んできた私を温かく迎え入れてくれた。
そして私は画家になりたい、ということを打ち明けると二人は応援してくれたのである。
とは言え正直この時代の物書きやら絵描きやらは割と人間性がクソ側のタイプが多く、最初は渋い顔をされたが。
とは言っても実家を出奔してきた影響もあって、現代でいう中学校や高等学校をちゃんと卒業する必要があった為に数年遅れを取ることになった。幸い、私は絵描きとしての才能があったようで1911年、一度目の受験でベルリン芸術大学に合格した。22歳のときのことだった。本当は建築学も専攻したかったというのもあってベルリン工科芸術大学とどちらを受験するか迷った末に進学したのである。
資産家、投資家だった義両親はベルリン郊外に邸宅を構えており、大学に通うのに苦労することは無くそれどころか学費も全額払ってくれた。それでも個人的に思うところがあったのと、社会経験をする為に幾つかのアルバイトをしつつ、前世では縁の無かったドイツ美人ともお知り合いになることが出来た。
まぁ、どうも現代で言うところのメンヘラという女性と交際し、別れるとなった時に危うく刺される所だったが刺されなかったので些細な問題であろう。
しかしそうして青春を謳歌している中でも時勢はかなり怪しい雲行きになり始め、もうすぐ第一次世界大戦が勃発するという頃だ。
学生の私には関係が余り無いことと思いたいが、戦況によっては総動員される可能性もある。ましてや文系大学生の私は理系大学生よりも徴兵される可能性が高い。
……もし徴兵されるとなったらどうやって逃れようか。北欧辺りに逃れれば平穏に過ごせるだろうか。
そうこう考えている内に、1914年6月28日にオーストリア=ハンガリー帝国帝位継承者フランツ・フェルディナント大公がサラエボにて暗殺されるという大事件、世に言うサラエボ事件が発生した。
真偽は定かではないが、犯人の裏にはイギリスが糸を引いているとかなんとか言われいている。当然オーストリア=ハンガリー帝国はそれはもう、ブチ切れ状態となった。
フリードリヒ皇帝の一貫性の無い発言に振り回されたり、国民が燃え上がってしまったりで後に引けない状態になったが、それでも各国は戦争回避の為に尽力していたのは確かであった。
しかし各国の努力は実らず、1914年7月28日に開戦に至ってしまったのである。
特にドイツ帝国は東西に戦線を抱えることになり、一部動員で300万もの兵力を動員することが出来るロシア帝国と、普仏戦争の復讐に燃えるフランスがロシアの要請によって参戦。
シュリーフェン・プランによってベルギーとルクセンブルクへ侵攻すると、ベルギーの中立を侵害したとしてイギリスまでもが連合国側で参戦した。更には日英同盟を締結していた大日本帝国までもが連合国側へ参戦し、戦火は瞬く間に欧州だけでなくアジアにまで広がった。
当初、ドイツ帝国は快進撃を繰り広げていたが9月のマルヌ会戦で進撃が止められると対仏、対英戦線である西部戦線は一気に消耗戦に突き進んだのである。
結局、連合国側も中央同盟国側も敵の進撃を食い止める為に塹壕線を構築し始め、最終的に1917年まで戦線は全くの膠着状態となったのである。
東部戦線ではロシア帝国がオーストリア・ハンガリー帝国に勝利したが、タンネンベルクの戦いとマズーリ湖での戦いでロシア帝国に勝利を収め、その進軍を食い止めた。
しかしながらアジア方面で1914年10月3日~14日ごろにかけてマリアナ諸島、カロリン諸島、マーシャル諸島が日本軍によって占領され、1914年10月31日からは中国におけるドイツ租借地である青島と膠州湾で日本軍との戦闘が開始された。
一週間の戦いの末、現地守備隊は11月7日午前6時30分に降伏。捕虜となったドイツ兵の中には戦後、日本にそのまま残る者も少なくなかったというのは余談である。
1914年11月にはオスマン帝国が我々側で参戦。カフカス、中東でも戦端が開かれ始めた。
1915年になるとブルガリアが中央同盟国側で参戦。
ヨーロッパ全土は瞬く間に火の海に包まれて行ったのである。
1917年。
西部戦線は急速に悪化しつつあった。
東部戦線こそロシア革命の影響でブレスト=リトフスク条約を締結して大戦から離脱したものの、主戦場である西部戦線の戦況は相も変わらず膠着状態である。
アメリカの参戦によってドイツの劣勢は明確なものとなり、戦線こそ後退していないものの激戦が繰り広げられることとなった。
史実と違ってドイツ本土も無事ではなく、フランス本土から飛来した飛行船や航空機による爆撃が行われ、国境地帯は荒廃。ケルンやドルトムント、デュッセルドルフエッセン、ミュンスター、マンハイム、ダルムシュタット、フランクフルト・アム・マインといった都市はそのほぼすべてが爆撃、砲撃に晒されたのである。
首都ベルリンも無事では無く、バルト海の制海権を握られてしまった上に、軍艦から発艦した航空機による爆撃も度々行われており、私が通うベルリン芸術大学にも爆弾が数発命中して講堂などが損傷を負った。
完全に破壊されているわけでは無いし、小さいとは言っても首都への爆撃を許しているわけである。国民からすればそんなものは関係無い。
更には不足する人手を補う為、所謂根こそぎ動員が行われ始め、私達学生にも徴兵の手が伸び始めていた。
いわゆる『学徒動員』というやつである。
「……俺達も、ついに徴兵されるのか」
ポツリとつぶやいたのは誰だろうか。
一か所に集められた学生たちに、政府のお偉いさんが何やら演説をしている。カイザーの為だの、祖国の為だの、ご高説を垂れているがそんなものどうでもいいのだ。私は戦争に行きたくない。死にたくない。ただそれだけである。
とは言え脱走すれば、極刑は免れないわけだし、さてどうすべきか。
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1917年7月。
28歳の私は、他の学生達同様に碌な訓練も施されず、軍服と装備、そして銃を渡されただけで戦場に送られたのである。兵士どころかそれを指揮する為の士官も足りず、士官学校を繰り上げでたったの一年で卒業した私よりも年下の男が小隊長であった。聞けばまだ21歳だと言うではないか。
こんなことで大丈夫だろうか、という心配は、それどころの話では無いのだろうな。
前線に到着すると、死体から発せられる腐敗臭と火薬、長期間身体を洗っていない人間の臭さ、あらゆる臭気が混ざった酷い臭いが辺り一面に蔓延しておりついて早々に誰もが顔を顰める。
それに加えて死体に卵を産み付けにやってきたハエの大群である。不快という不快、不衛生という不衛生の全てを詰め込んだような場所が、この戦争での戦場というものだ。
「これで俺達も終わりだな……」
「そう言うな。別にまだ死ぬと決まった話じゃない。死ぬ可能性が高いというだけじゃないか」
「それはこの戦場では終わりって言っているのと同じだろう。この光景を見てよくそんな呑気な事が言えるな」
そう言って仲間の一人が、指を刺す先の光景は正しく地獄そのものであった。
緑溢れる森や草原だった場所は、毎日常に行われる砲撃戦で耕され、一面土が露出している。
そして露出している土は更なる砲撃で耕され、大小の砲弾痕が無数に空いており、そこに雨が降って水が溜まり、不衛生さにより一層拍車を掛けている。
砲弾痕の中には茶色く濁った水が溜まっており、そこにはここ数日で死んだのであろうドイツ兵の死体と、フランス兵、イギリス兵、アメリカ兵の死体が水面に浮いている。
砲弾痕の中、外に関わらず辺り一面に千切れた手足、上半身、或いは下半身の無い死体が無数に転がっており、鉄条網に引っ掛かったまま死んでいる者もいる。
私達が身を隠す塹壕も酷い状況で、先日の大雨の影響で塹壕内には大量の水が溜まっているままだ。
到底人間が生活していられる場所では無い。
こんなところでこれから戦わねばならないとは、私の未来は暗いのかもしれない。
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1918年2月。
なんの因果か分からないが、私は幸運なことに生きている。
最初のうちはあの手この手で脱走しようとしたりしたものだが、悉く上手くいかなかった。
偵察命令を受けて、そのまま敵の捕虜になってやろうとした時はどこも同じような光景だから道に迷った挙句に何時の間にか敵陣を通り抜けてその後方に出てしまい、何故か敵司令部を見つけてしまった。
あの時は慌て過ぎていて自軍に帰ってしまい、しかも報告までしてしまったのだ。
なんで報告なんかしたんだ、と頭を抱えたが後の祭りである。
気が付けば勲章を授与され、しかも階級は一足跳びに軍曹になってしまった。おかしい。
とは言え実際兵士不足は深刻で、特に前線勤務経験のある伍長から軍曹階級の兵士が全くいないのである。それどころか士官すら不足しており、通常ならば少尉が指揮する兵士はどれだけ多くても50名前後であるのに、現在のドイツ軍は少尉1人あたり150人、中隊規模の兵士を指揮しているところもザラにあるほどだ。
当然、少しでも能力があると分かれば階級が上がって部隊指揮を任される。
さらに私の不運は続く。
勲章授与以降、何故か私は神が私に敵対しているのではないか、と疑うほどに武運と戦果、功績に恵まれてしまっているのである。
敵の士官を捕えること6回。
敵の塹壕を突破すること5回。
敵の重要な情報を得ること7回。
こんな事ばかりだから、気が付けば勲章塗れ、階級は中尉である。
どうしろと言うのだ。
しかも私が指揮する兵士は300名を超えているんだぞ?普通中尉と言ったら精々100名、多くても150名かそこらだろう。なんでその倍もの兵士を従えているのだ。
さらに言わせてもらうと、私の部隊に限った話ではないが、戦死傷者があまりにも多くなり過ぎた為に兵士不足で、ここ数ヶ月ぐらいは女子供老人まで兵士として送られてきているのだ。
子供と言っても、17、18歳とかではなく、10歳前後の本当の意味での子供である。
女性兵士も多数、50歳、60歳の老人も多数であり、まともな兵役適齢年齢の成人男性兵士は私の部隊ではたったの40名しかいない。戦闘能力なんてまともにあるわけが無いのだ、しかもこれで戦えと言われているんだからどうしようもない。
「中尉、司令部から攻撃命令が」
「そんなもの出来るわけないだろう!防衛が精一杯だろうがっ!!」
「司令部にはなんと返信しますか!?」
「我攻撃能力無し!防御も危うし!至急マ!ト!モ!な!増援を求む!」
「はっ!」
司令部の馬鹿どもめ、こんな現状でどうやって敵陣を攻撃して突破しろと言うのだ。こっちは満足な兵士も無いというのに。
それどころか包帯、医薬品、食料、水も不足していてここ最近は1日1食が当たり前なんだぞ。防寒着なんてろくに支給されていないから、新しく送られてくる兵士は寒さに震えるしかない。だから寒さに耐えられない少年兵や女性兵、老人兵は凍死する兵も少なくない。私はまだ余裕があった頃に防寒着一式を貰っているからいいが、子供達は辛かろう。
朝から晩まで腹は減っているし、喉は乾くし、寒さは敵味方問わず襲い掛かってきて、容赦が無い。せめてもの救いは、弾薬は大量に補給されている事ぐらいだ。
敵の砲撃が始まった。
おそらく突撃前の準備砲撃だろうが、この砲撃音はアメリカだな。
「中尉、敵の砲撃です!」
「砲兵隊に支援要請!砲撃が止むまでは塹壕から頭も指の先も出すなよ!」
暫くしてようやく砲撃が止んだ。
腕時計を見ると3時間も砲撃が続いていたらしい。幸いにも塹壕や待避壕への直撃弾は無く、点呼を取ると全員無事だそうだ。
「中尉、敵の攻撃です!」
「射撃開始!腹の足しにも寒さも凌げないが、弾は山程ある!」
準備砲撃が終わってすぐにアメリカ兵が突っ込んでくる。
雪が降っていると言うのに、攻撃してきやがって。
しかも温かそうな防寒着を着ているときた。こっちは夏用の軍服を着ている奴が殆どなんだぞ、寒さに震える私達の身にもなってみろ!空気の読めない連中め。
MG08が次々と射撃を開始し、アメリカ兵に向かって銃弾が次々に飛んでいく。撃ち出された7.92×57mmモーゼル弾の大半は空を切るだけに終わるが、1発当たれば殺すことが出来る。
塹壕戦は防御側が圧倒的に有利だ。だから私達は持ち堪えられている。でなければとっくの昔に突破されていただろう。
数時間の攻撃を耐え切り、アメリカ兵は自分達の塹壕に撤退していく。
だが我々は寒さという敵と常に戦わねばならないのだ。
「エーリヒ、何人かを集めて死んだアメリカ兵の防寒着を集めてこい。このままじゃ戦って死ぬ前に皆凍死してしまう」
「分かりました。人選は自由にしても?」
「構わんが、子供や老人、女は連れて行くなよ。今回ばかりは足手纏いにしかならん」
「でしょうな。騒がれたら堪らない。では、行ってきます」
「気を付けろ。敵は常に見ているぞ」
「はっ」
エーリヒは数少ない熟練兵だ。歳は確か24歳だったか。
彼は5名を率いて防寒着を奪いに出ていく。
「フランツ、エーリヒ達を援護する。機関銃に付いておけ」
「了解」
何人かの熟練兵に声を掛け、エーリヒ達を援護させる。
私は双眼鏡を覗いて、エーリヒ達と敵の塹壕を逐一監視する。エーリヒ達に敵兵が迫れば、機関銃に射撃命令を出して危険を知らせなければならないからだ。
「そうだ……。そのまま静かに、バレる前にササっと済ましてしまえ……」
幸い敵に見つからずにエーリヒ達は1人4着の防寒着を持ち帰ってくることに成功した。
これで24着だから、24人が寒さを凌ぐことが出来る。
ついでにM1911自動拳銃やら、敵の武器を色々と持ち帰ってきたようである。
「中尉には、こいつが土産です」
「M1911か。良い銃だな。ありがとう」
「いやいや」
「エーリヒ、しばらく休憩したらまた行ってきてくれ」
「お安い御用です。俺達で部隊の寒さを解決してやりますよ」
彼はそう言うが、皆がいつまで保つか分からない。
凍死する方が早いかもしれない。
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1918年11月11日。
人類史上初となる第一次世界大戦は、ドイツ帝国が属する中央同盟国側の敗戦で終結を迎えた。
パリ条約が締結され、ヴェルサイユ条約体制が敷かれた世界は、余りにもドイツにとって厳しく苦しいものだった。
世界では、ドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国、ロシア帝国の4つの帝国が崩壊。
ホーエンツォレルン家、ハプスブルク家、オスマン家 、ロマノフ家は君主の座を追われ、ドイツ帝室はオランダへ亡命したようだ。
ロシア帝国は、私の知る歴史の通り、ソビエト社会主義共和国連邦となった。とは言えどうやら、なんの因果かは分からないがロマノフ家は逃げて生き延びているという噂がまことしやかに囁かれている。
どうやらロマノフ家はシベリアを通り、日本経由で何処か別の国へ亡命したとからしく、ソ連だかロシアだか赤軍だか分からないが、臨時政府が血眼になって探しているようだ。
ドイツは敗北による多額の賠償金に加え、独仏国境地帯は結局殆ど国境線が変わらなかったものの、戦闘による深刻な被害を受けた為にしばらくの間は人間が居住出来る環境に無い。
大量に使用され残留している毒ガス、大量の砲弾や銃弾による鉛汚染、多数の死体が転がる極不衛生環境。
フランス、ベルギーは戦勝国ながらドイツによる進撃を許し、パリまで一歩手前まで追い詰められた事などもあって国土は荒廃し、復興には長い年月を必要とする。
ドイツも悲惨な状況にある。
国境地帯の居住不可地域、多額の賠償金、多数の戦死傷者による人口不足、労働人口不足、そして深刻な食糧不足。
それにドイツ国民はヴェルサイユ条約の内容や条文、条項において屈辱を覚え、そして報復を考えたほどである。
事実ヴェルサイユ条約はフランスによるドイツへの報復的なものであるのは間違いなかった。
史実ドイツではこれが原因の一つとなり、第二次世界大戦が始まってフランスはドイツにボコボコにされるわけだが、少なからず私を起因とした理由でこの世界では第二次世界大戦は起きないだろう。
何故なら政治家になる気が欠片も無いからだ。
しかしながら東に怪しい動きを見せ始めているソ連が存在し、やはり二度目の世界大戦は避けられぬだろう。
そうなれば欧州は赤の波に飲み込まれてしまう。
共産主義は嫌いだ。どこか別の国に移り住むことも視野に入れておくべきか。
「はぁ……」
「中尉はこれからどうするんです?」
「私か?そうだな……。そうだなぁ……、分からんよ」
部下の一人に聞かれるが、どうするかな。
叔父叔母は戦争中に亡くなってしまったと訃報を知らせる手紙が届いている。二人の遺産は私に相続されているようで、莫大な遺産が残っているがそれを食い潰しながら生きていくのは、気乗りしない。
大学も戦争の影響で行けるか分からないし、学び直せるのはいつになることか。
「中尉、ぼくたちは……」
声を掛けてきたのは少年兵達だった。
彼らはまだ10歳以下の子供もいるぐらいだから、いきなり戦争が終わりました、あとは自分でなんとかしてください、と言われてもどうにも出来ない。
「……とりあえず、家に帰るしかなかろう」
とは言うものの、彼らの両親が無事である保証はどこにもない。
むしろ成人として真っ先に戦場に送り込まれて死んでいるかもしれないし、そうなれば彼らは戦災孤児という事になる。
ドイツに戦災孤児を養うだけの力は、まず間違いなく残っていないだろうから、多くはホームレス、ストリートチルドレンとならざるを得ない。生きていく知恵も技術も、何も無く、あるのは役に立たない幾つかの勲章と銃の扱いが出来るだけ。
酷い話だ。
「とにかく、君らは家に帰りなさい。もし何かあったら私のところへ来るといい」
見捨ててしまう方が簡単だが、僅かに残る良心がそうさせてはくれない。良心を無くしていた方が、この世界では遥かに楽だったろうに。
子供達に、雑嚢や背嚢に補給所などから盗んできた食料や水を詰め込めるだけ詰め込んで持たせ、送り出す。
私も自分の背嚢、雑嚢5つに詰め込めるだけ物資を詰め込んで、小銃は背嚢に括り付け、士官用に支給されたルガーP08、戦利品のM1911拳銃は予備の弾倉ごと、用心のために懐に忍ばせておく。
最近、治安がかなり悪化しているらしく、盗賊紛いや野盗がよく現れると聞く。
小銃より拳銃の方が咄嗟に撃って反撃ができる。
どちらも威力に優れているが、より強力なのはM1911だ。幸い予備弾には困らない。
ベルリン郊外の自宅に帰ってくると、私が出征した時より随分と寂れたように感じる。
玄関を開けると、暫く掃除をしていない、埃が溜まった時の特有の匂いがする。暫く誰も住んでいなかったから埃っぽさがあって、棚や机の上には分厚い埃が積もっている。
叔父も叔母も死んでしまったから今の我が家には私一人だ。
棚の上には私が大学に合格した時の、叔父と叔母と私の3人が一緒に移った白黒写真が写真立てに入れられている。その隣には出征前に取った写真がある。あれには私しか写っていないが、今とは全く顔が違うだろうな。
さて、戦場から無事に帰ってこれたわけだが、これからどうするかを考えなくてはいけない。
まずは稼ぎを得て、食い扶持を何とかしないと。
幾ら莫大な遺産があると言っても、食い潰して生きていくのはどうかと思うし、それに金だけあっても食べ物が無い。
「……畑でも、耕そう」
幾らか考えた末、畑を耕すことにした。
とは言ってもこの時代のドイツは、はっきり言ってしまえば不毛の土地というもので、正直碌な農作物を育てることは出来ないし、それに加えて私は農業初心者である。
農業の知識と言えば小学校の頃に学校行事で野菜を育てたり、稲作をやったりしたぐらいで、不毛の土地と私の知識と経験不足のダブルパンチでより困難であるが、それでも食べないと生きていけない。
ジャガイモやキャベツ、テンサイぐらいなら育てるのは簡単だというから、育てて食べて、飢えを凌げる。
そうと決めれば即行動である。
鍬やらなにやら、農機具をあちこちから持って来て、敷地の一角を耕す。
確か、ジャガイモは2月~4月頃に植え付けを行い、収穫は11月頃になる。
テンサイも4~5月頃に植え付けて、10月頃に収穫なので最初の栽培は来年になる。いずれにしてもそれまでに畑を耕しておかなければ。
畑を耕し始めてから2週間。
かなりの広さを耕すことが出来たが、まだまだである。
11月ももう終わりに近づいてきていて、すぐにでも12月を迎えて次の年が来る。
一応、軍の食糧庫から有難く頂戴してきた食料があるが、それも沢山あるわけではない。
12月に入って数日した頃、唐突に来客があった。
誰だろうか、と思いながらここ最近の治安状況も考えて押し入り強盗の可能性もあるからM1911を懐に忍ばせて玄関へ向かう。
左手でドアノブを握り、右手で懐の拳銃のグリップを握る。
ガチャッ、と玄関を開けるとそこには見知った顔の持ち主が14人、並んでいた。
「お前達か……。どうした?」
そこにいたのはつい最近まで私の部下として戦っていた少年少女達であった。
「中尉……」
「……なるほど、状況は理解した。とりあえず入りたまえ」
子供達の身なりは酷く、服は酷く汚れていて、一か月以上まともにシャワーも浴びていないようで酷い臭いだ。
靴もかなり擦り減っていてかなりの長距離を歩いてきたのだろう、と簡単に予想出来る。
「なにはともあれ、取り合えず食べると良い。随分と食べていないようだ」
リビングで食事を出し、食べさせる。
やはり長い間食べていなかったのか、勢いよく食べ始めた。
ラインナップは、缶詰が主で、それに農家に行って直接買い付けてきたジャガイモと、小銃を担いで仕留めた猪肉だけである。
それでも一週間、二週間とマトモに食べていない子供達からすればご馳走に見えたのだろうか、それとも安心したからなのか、ボロボロと泣きながら食べている。
彼らの事情は何となく察することが出来る。
大方、家に帰っても家族がいなかったのだろう。この世界のドイツは文字通り、根こそぎ動員を行ったので女子供老人も兵士として徴兵されている。
だから彼らの兄弟や親族も軒並み徴兵されて、この世にいないのかもしれない。
運が良ければ連合軍の捕虜になっているかもしれないが、ドイツに帰ってくることが出来るのは数年は先かもしれない。
ともあれ酷い臭いのする子供達の為に湯を沸かす。
あんまり薪や石炭、木炭、石鹸に余裕がある訳ではないが、申し訳ないがあそこまで臭いというのは耐えられない。
数時間掛けてようやく綺麗になった子供達に、スリッパと服を与える。
軍服も軍靴もボロボロだし、なにより子供達にあのまま軍服を着せていたくなかった。
彼らは年齢順に下から、
ペーター 10歳(男)
カール 11歳(男)
アンネローゼ 12歳(女)
クラウディア 12歳(女)
ディートリヒ 13歳(男)
クリスタ 13歳(女)
エレオノーラ 13歳(女)
フランツ 14歳(男)
フリッツ 14歳(男)
ギュンター 15歳(男)
ハインリヒ 15歳(男)
エミリア 15歳(女)
フローラ 15歳(女)
ジークリンデ 16歳(女)
最年長は16歳と、前世で言う高校1年生か2年生ぐらいだ。
彼女が私の部隊に配属されたのは、確か去年か一昨年ぐらいだったはずだから、ジークリンデに至っては14歳で実戦を経験したことにはなる。
本来ならば学業なり、色恋なりをしている年頃だ。
綺麗になった子供達を、まずは疲れているだろうからと客間にそれぞれ通し、積もる話は明日か明後日にでもしようという事で寝かせてきた。
腹も膨れて身体が綺麗になったとなれば眠たくなるのは必然である。
翌日、子供達と話し合った。
皆は独仏国境に近い場所に住んでいたことで、連合軍の攻撃で家は無くなっており、両親も徴兵によっていなくなっていたらしい。なんとも……。
私がどうするかだが、子供達を受け入れて一緒に暮らすことにした。
放り出してしまうのは簡単だが、そうなれば子供達にある未来は暗く、苦しいものだ。
こんな私でも欠片ほどの良心が残っていたのだろう。
そんなわけで子供達にはそれぞれ役割を割り振った。
まず全員に勉学に励むことを義務付けた。これから先、ドイツに限らず学がなければならない。
子供達は本来、勉学に励む時期を戦争で失っている。だから少なからず私が教えられる範囲で勉強を教えてやらねばならない。
そして16〜15歳までの子には、食料調達のために狩猟を私と一緒にやってもらう。嫌な話だがまともに銃を扱えるのは私と年長者ぐらいだ。
戦地では下の子達には専ら弾運びなどの雑務をやらせる事が殆どだったから銃の扱いは中々難しいのである。
それより下の子達には私や年長者と一緒に家畜の世話、畑の世話を任せる。家畜はどこからか脱走していた鶏が20羽、牛4頭、豚5頭、羊9匹がいるから、一人で世話するのは大変だったのだ。それ以外の家事などはみんなで協力して、だ。
さて、子供達と暮らし始めて一ヶ月。
新たな職探しをしているが、残念ながらこんな時勢では仕事がない。
大抵の人間は職を失っており、路端には職や食べ物を求める人が溢れており、近くのベルリンは食料不足に陥っている。
さらにはここ最近、野盗や盗賊紛いの犯罪者集団が好き勝手やっているらしく、治安もかなり悪くなってきている。
政府や行政はおろか、治安維持機構すらまともに機能しなくなっており、自分の身は自分で守るしかない。
「今日も駄目でしたか?」
「あぁ。それどころか治安が悪過ぎて仕事どころではない。私達の家が襲われるのも時間の問題かもしれん」
「そんなに、ですか……」
家に帰るとジークリンデが出迎えてくれる。
頭を抱えながら、過ごす事しばらく。
外国資本流入によってようやく経済が安定してきたと思ったら、事実よりも随分早い、1921年に世界恐慌が起こってしまう。
これによりアメリカ資本は軒並み撤退してしまい、復興しかけていたドイツ経済は一気にどん底に突き落とされた。
世界恐慌が早く起こった理由は定かではないが、なんにせよ私たちの生活はより一層苦しくなった。
失業率は50%を超えており、大戦が終了してから3年しか経っていないドイツ経済は事実上の破綻状態に陥っている。
とは言っても私からすると、悪いことではない。
今のドイツは100ドルあれば王侯貴族のような豪勢な生活が出来ると言われるぐらいだが、叔父叔母夫婦から相続した遺産には多額のアメリカドルが含まれていた。
だから私は少なからず、子供達含めて飢えや寒さに苦しむことはないのだが、ただこの現状を黙って見ているわけにも行かない。
上手くやれば、一財産を築く事も出来る。
今のドイツは様々な会社の株式や、会社そのものが売りに出されている。有名どころの企業ですら自社の株式や施設、設備を売りに出している状況なのだ。しかも格安と言えるような値段で、だ。
私はそれらを購入した。
最初に購入したのはブローム・ウント・フォス社を始めとした造船会社が売りに出した造船所であった。
そこで輸送船や客船を幾らか造船し、貿易事業を始めた。
海外の安い製品を輸入し、それをドイツで売る。
ドイツはあらゆる物資不足に喘いでいるから、多少割高でも買う必要がある。
まぁ信頼は金では買えないので、ギリギリ利益が出る程度に抑えてはいるがね。
貿易事業が上手く回り始めたら、次は敗戦の煽りでMAN社が売り出していたエンジン部門の一部を買い取ったり、鉱山や鉄道の購入を始めた。
ドイツは石炭と鉄鉱石が豊富に取れる国で、古くから有名である。これを活用しない手はない。
それと並行して、困窮者に対して炊き出しをしたりあばら屋ではあるが、雨風を凌げる場所を提供する。
慈善事業、私の自己満足にしかならないだろうが。
ーーーーーーーーーー
1928年。
あの手この手で、様々な分野の会社や工場を吸収して事業拡大したりと、気が付けば巨大企業になっていた。
何がどうしてこうなったのかだが、あちこちから連れてきた技術者や科学者をそれぞれが得意とする分野に放り込んで、とやったり優秀な者達を引っ張ってきて経営していたらいつの間にかである。
「社長、お時間です」
「うむ」
ついでに言っておくと、酔った勢いで何やら色々と、余計なことをベラベラ喋ってしまったのか私が知らない間に私を党首とする政党まで出来上がっていた。
いや、本当に私は何を喋ってしまったのだ?
今日はその集会、いわゆる政党演説というやつであるが、なんか色々都合良く辞められないだろうか、とぼんやり考えるのであった。
とまぁ、私が知らない間に政治家になっていて、どうせ落選だろうと高を括っていたら、あれよあれよと言う間に国家元首である。
まだ1929年だぞ?史実でもナチスドイツが政党を握るのは1933年のことだ。
「なぜ……?なぜこうなった……?」
頭を抱えながら、ボソリとつぶやく。
私はただ、子供達に不自由無くしてやりたいだけで、ついでに良い感じのところで社長も辞めて、大学に戻って画家を目指そうと思っていただけなのに。
なぜ私は国家元首の席に座っている?
なぜ国民は万歳と言いながら私の名前を叫んでいる?
私は何か、知らぬ間に歴史に名を残す悪事を働いてしまったのだろうか?
はやく辞めたい。
ともあれこの席に着いたからには、やるべきことをやって責務を果たさねばならない。取り急ぎどうにかしなければならないのは国内経済だ。
戦争と世界恐慌の影響でズタボロのドイツ国内経済をどうにかして立て直さないと何も出来ない。
今後の国際情勢を考えても、国力が無ければどうにもならないし、このままでは欧州はおろかドイツが赤い波に飲み込まれて行ってしまう。
先ずは47%という凄まじい失業率をどうにかしつつ、国民生活を少しでも豊かにする必要がある。
取り合えず、公共事業で雇用を創出しつつ、税金を可能な限り下げて経済を回す必要がある。
「取り合えずの対策として、全国中での道路建設と、鉄道網の敷設を行って対症療法的な、経済対策を行いましょう」
「うむ。だが我が国の国土はアメリカほどの大きさは無いから公共事業でどうにかしようにも限界がある。それ以外の経済対策はどうするかね?」
「そこが問題です。現状、というよりここまで酷い状況だと、まともに回復させるのに少なくとも数十年は掛かります。減税すると言っても限界はありますし、そもそもの収入が低ければ購買意欲も何もありません」
経済大臣からも、頭を抱えるばかりだと現状の経済状況を報告される。
ドイツ政府の対策は減税に加えて公共事業を大規模に行って雇用を生み出すことだ。
減税に関しては言わずもがなであるが、公共事業の方を説明しよう。
公共事業で主に行われているのは、国内中へ鉄道線の敷設、高速道路の敷設、道路の舗装、各港の拡張整備など、兎に角思いつく限りのものだ。
というか現状政府が出来ることなんてこれぐらいしかない。
「ともかく、経済大臣は今後も引き続き対策を練りつつ、人材流出は徹底的に防いでくれたまえ。必要であれば多少の大きな金銭が出て行っても構わない」
「承知致しました」
「外務省から、喫緊のご報告が」
「どうかしたか」
「外務省の対外諜報部、ソ連支部から対外拡張政策の予兆あり、との報告が上がってきております。ヨーロッパでの当面の目標はフィンランド、ポーランド辺りになるとのことです」
うまいこと潜り込ませたソ連へのスパイから、無視出来ぬ情報がもたらされた。
やはりこの世界でもソ連と戦わなければならないのか……。
「時期は何時頃になると予想されているか?」
「1939~41年頃になると」
「……それまでに、我々は各国と連携を取り、そして軍備を整える必要があると?」
「申し上げにくいですが、その通りです」
「なんとまぁ、難題を突き付けて来るものだな」
腕を組んで考える。
今この場でどうこうすることは不可能だ。
10年先とは言えどもこの死に掛けの、いやもう既に死んでいるのと何が違うのか分からない経済状況の中で、世界恐慌の影響を全く受けていないソ連の、拡張された軍備と膨大な人口を相手に戦わなければならんとは。
10年ほどで膨大なソ連軍を押し止め、尚且つ反撃できるだけの国力と軍備を整えろというのか?
……現実的じゃないな。少なくとも今すぐに初めて間に合うかどうか。
それにヴェルサイユ条約もある。
あれにはドイツの軍備を大きく制限するものと、兵器の新規開発をさせないと言う条文がある。
これをどうにかしない限りは、お隣のフランスと戦争になる可能性すらある。
そしてソ連に隣接する各国と協力体制を築く必要もある。
これは単純に仲良くしましょうでどうにかなる問題では無い。
それも軍事や経済が絡むとなるとより面倒臭い。
「それをやるには、まず条約をどうにかせねばならない。少なくともイギリスか、フランスのどちらかを説き伏せて味方につける必要がある」
「はい。すぐにでも外交交渉を始める準備は整っております」
「宜しい。イギリス、フランスとの交渉と並行して東欧各国、北欧各国とも交渉を進め、可能な限り早急に交渉を纏めて、各国と同盟を結べるようにしてくれ」
「陸軍省、海軍省からは何かあるかね?」
「外務省の報告が正しいのであれば、今すぐにでも軍備を整える必要がございます。ソ連は限定動員だけでも300万を優に超す兵力を揃えられます。それに航空機、戦車なども合わせれば実際の戦力値はもっと大きく開くことになります」
「その通りだが、今ここで条約を無視して軍備を進めれば交渉が出来なくなる。表立っての軍備は出来ないだろう」
「では、どうされるので?」
「兵器の研究は秘密裏に、各国にバレることが無いように徹底的に秘匿した上で進めたまえ。その上でヴェルサイユ条約の軍備に関する項目の撤廃を交渉する」
「承知致しました」
「宜しい。では解散」
そう言って解散となる。
私もやるべきことをやらねば。
2か月後。
1930年5月7日。
私はイギリス、ロンドンは首相官邸に居た。
現在のイギリス首相はラムゼイ・マクドナルドだ。
私は今日、彼と会談して条約の破棄同意を取り付けるのだ。そのためにイギリスまでやって来たのだから。
この日の為に海軍大臣を務めているウィンストン・チャーチルに渡りを付け、反共主義者の権化とも言える彼を橋渡し役としてこちらの味方に付けているが、上手く行くかどうかは分からない。
「ラムゼイ首相、本日はお時間を頂き感謝します」
「いえ。それで、本日はどういったご用件で?態々国のトップが来られるほどの大事ということだと認識しておりますが」
「先日から、貴国と交渉させて頂いているヴェルサイユ条約の我が国に対する軍備制限の全面撤廃に同意して頂きたいのです」
「ふむ。ですが何故です?我が国としましても、再びドイツと戦火を交えることは望んでおりませんが」
ラムゼイは暗に、復讐戦を俺達に仕掛けるつもりじゃないだろうな、と言っているのだ。
当然と言えよう。
実際ドイツ国民の、対英、対仏感情はかなり悪いままだ。
あれだけ過酷な条件のヴェルサイユ条約を叩き付けられ、そしてその結果として自分達の生活が困窮しているのだから、当然と言えば当然だろう。
「それに、貴国がどこかの国に戦争を仕掛けるつもりが無いのならば現状でも問題は無い筈ですが?」
よくもまぁ、言えるものだ。
「今回の交渉を始めたのは、それが原因です。我が国はイギリスに対してまだ重要な情報をお渡ししていない状況で交渉していたのです。今回は私自らが、その情報と共に交渉の席に就くことに」
「重要な情報?」
「一切を内密に、口外厳禁にしていただきたいのですが、我がドイツからソ連に対する情報収集活動で、ソ連が対外拡張政策を採る可能性が高い、という情報を得ております」
「……それは本当ですかな?」
「事実です」
「それが、我が国となんの関係が?」
「貴国はロシア革命の時、ロマノフ家がどういった末路を辿ったか、御存知のはずです。その悲劇が、赤の波に呑まれたイギリスで起こらない保証はありますか?」
「……」
「上手く国外に脱出して、オーストラリアか、カナダにでも亡命することが出来ればいい。ですが、事がそう上手く運ぶばかりではありません。その時、トラファルガー広場の断頭台に送られるのは、貴方が敬愛する国王陛下や、王族、貴族。そして政治家である貴方もただでは済みますまい」
私のその言葉にラムゼイは黙る。
共産主義のソ連と、立憲君主制のイギリスはどうやっても相容れない。
ソ連はヨーロッパ大陸を制圧すれば、打倒王政を掲げイギリスに攻め入るだろう。海を隔てているから、強力な海軍がいるからと言ってもそれは絶対ではないのだ。
その時、イギリスはどれだけ戦えるか?モンロー主義を拗らせ、ソ連のスパイが山ほどいるアメリカは果たして間に合う形で参戦するか?
同じ立憲君主制の日本は地理的にかなり遠く、そして頭の上にソ連がいる。第二次日英同盟を結んだとしても、現実的な協力体制がどこまで取れるか分からない。
そうならないように、イギリスは大陸に対共産主義の防波堤となる同盟と協力体勢を築いておく必要があるのだ。だからこそ私はこうしてイギリスに足を運んで直接交渉をしているのである。
まぁ史実イギリスの動きを見ていれば、確証とは行かないがこちらの要求を呑む筈だ。
交渉は2日間に及び、一度検討させて頂きたいということで私はドイツへ一度帰国することになった。
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直接交渉から1か月後。
チャーチルの猛烈な後押しと根回しがあったようで、イギリスはドイツのヴェルサイユ条約における軍備制限条項の完全撤廃に同意する旨が外務省に伝えられた。
しかしフランスはこれに一切同意しておらず、このままでは時が過ぎるばかりだ。
「閣下、やりましたな!」
「あぁ、これでようやく動くことが出来る」
「では、すぐにでも再軍備宣言をされますか?」
「再軍備宣言とは仰々しい。そう言わんでもいい。同意していないフランスを刺激するのも面倒だから、穏当に行こう」
「承知致しました」
その翌日、ドイツがヴェルサイユ条約に於ける軍備制限条項をイギリスの同意を得て正式に破棄する旨が世界中に向けて発信された。
勿論フランスは反発を強めているが、連中まで相手していられるほど時間的な猶予は残されていない。こちらに手を出して来ない程度に牽制して、あとは無視である。
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《ドイツの再軍備は我がフランスにとって明確な脅威でしかない!奴らは再び我が国との戦争を望んでいるのだ!!ドイツが望むなら再び戦火を交える事となるだろう!!》
一々噛み付いてくるな。黙ってろエスカルゴ野郎。脳みそにマカロンでも詰まってるのか?クロワッサンでも食ってろ馬鹿野郎。
自分達だけではドイツに勝てなくてイギリスとアメリカに散々助けて貰った癖に何を言うか。
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軍備制限条項破棄と同時に、我が国は大規模な軍拡を始めることになった。
公共事業だけでは働き口が足りず、職の無かった者や、大戦の後に軍備削減で軍を追い出された元軍人も多く参加することになっている。
即戦力とまではいかなくとも、基礎的なものはあるから時間の大幅な短縮には繋がる。
「現状、陸軍は60万人、海軍には10万人、空軍には6万人ほどの入隊志願者が押し寄せてきております」
「だが、まだ足りないな」
「はい。対ソ戦を念頭に考えれば陸軍だけでも最低5倍の兵力が欲しいところです」
「だがそうもいくまい。当面の間は徴兵と合わせて、国内経済政策と、各国との同盟締結を進めていくしかなかろう」
「はい。すでにポーランド、フィンランド、ルーマニア、ハンガリーの同盟参加が内々に打診されており、調整中です。スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、エストニア、ラトビア、リトアニアの6か国は現在検討の段階です」
「宜しい。引き続き各国との交渉を進めるように。どれだけ味方を作れるかが勝敗を分ける」
「承知致しました」
既にフィンランドへは新装備への更新の為に、余剰となったKar98を始めとした旧式装備を大量に輸出する手筈を整えている。
取り合えず、部隊に配備されていた約12万丁と、倉庫で予備保管となっていた10万丁の、合計32万丁の内、8万丁をフィンランドへ輸出し、4万丁をバルト3国へ。
そして5万丁づつをポーランドとルーマニアへ輸出する予定である。
輸出される装備の殆どは歩兵装備が主で、それ以上のトラックや装甲車、戦車などの重装備はドイツでも足りていない状態なので輸出は中々進まない。だが既にトラックの生産体制は整えてあるので、来年頃から本格的に生産ラインが稼働する。そうすれば各国にも少なからず行き渡らせることが出来る筈だ。
目標機械化率としてはドイツ陸軍だと装甲師団や砲兵師団、輜重師団などは機械化率100%を目指し、歩兵師団の機械化率は40~50%としている。
最悪歩兵師団に関しては30%程度の機械化率でも構わない。
同盟国の軍で言えば、装甲師団、砲兵師団、輜重師団に関しては機械化率80%~100%を目標にしており、歩兵師団の機械化率は20%を目標としている。
トラックの設計は私の会社だが、生産は私の会社だけでなく、BMW、ポルシェ、アウディ、ベンツといった各自動車メーカーに大量生産を命じてある。
軍全体の完全機械化は難しいだろうが、このまま順調に生産が軌道に乗って進めば歩兵師団ならば1940年頃までに目標としている50%ぐらいの機械化率は達成することが出来そうである。
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研究開発にも力を入れなければならない。
陸軍であれば、歩兵用火器と戦車、装甲車、榴弾砲の開発に大きく力を入れている。
対空砲は88mm対空砲があるので、これを基本としつつ高高度から飛来する重爆撃機を狙い撃つための128mm高射砲の開発が急がれている。
海軍では日本から、工作機械の購入の代金と共に航空母艦の技術や設計図を得ているので、それを元に航空母艦のノウハウを身に着け、早ければ1935年、遅くとも1936年頃までには航空母艦の建造に取り掛かれるようにしたいところである。これと並行して空母艦載機の研究も進めている。
ソ連海軍が保有する戦艦、計画が進められているソビエツキー・ソユーズ級戦艦に対抗する為に新型戦艦の設計、開発も進められている。
本来ならば航空母艦に建造能力を全振りしたいところなのだが、大西洋や北海の天候や波浪などの関係で航空母艦に全て頼ることが難しいこと、史実世界と違ってこの世界ではどうなるか分からないので、念の為に進めているのである。
それと駆逐艦、潜水艦も十分に研究、開発を進めている。
空軍では、戦闘機と爆撃機、戦略偵察機、対地支援攻撃機など、多岐に渡る機種を研究、開発しているところである。
戦闘機は言わずもがなであるが、爆撃機は各社に対して4発重爆撃機の開発を命じている。敵地奥深くに飛んで行って爆弾を落とし、敵産業基盤を壊滅させる。これだけで戦争の優位性は大きく変わる。
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1933年、開発を命じていた歩兵用火器である自動小銃と機関銃の試作品が完成したと報告が上がった。
この自動小銃は、所謂アサルトライフルを目指して我が社で開発が進められたものである。
細かい事は省くが、端的に言うと自動小銃はStg44を、機関銃はMG42を丸パクリしたものである。
一々最初から設計していたら時間が足りないし、そんな面倒な事をするぐらいならば最初から頭の中にあるものを使ってしまえというだけの話なのである。
結論から言えば、まぁ特に問題は発生せず普通に陸海空軍全てで採用されることになった。
自動小銃の弾薬は既存の7.92mmモーゼル弾をぶった切ったもので、7.92mmクルツ弾と呼ばれる。
製造設備を流用出来るので生産性の向上が見込める。3年以内に全部隊の小銃をこの自動小銃に置き換えていく予定だ。
機関銃の弾薬は7.92mmモーゼル弾をそのまま使うので、弾薬製造設備や工場の機材を新しいものにする必要が無い。
弾薬消費量の関係で工場を増設する必要はあるだろうが、既存設備を丸ごと流用出来るというのは大きな利点だ。
これら試作自動小銃と試作機関銃は数か月の試験を行い、徹底的に問題点や改善点を洗い出し、1934年10月19日に陸海空軍に主力小銃、主力機関銃として正式採用がされた。
正式名称は自動小銃がStg34(シュトゥルムゲヴェーア34)、機関銃はMG34となったわけである。
それぞれ採用年の1934年の下2桁を採って名付けられたものだ。
すぐに部隊配備が進められ、まず最初に歩兵師団のkar98から順次置き換えられていった。
置き換えられたkar98は同盟国に輸出されていくことが決定している。
正式採用がされた翌月には自動小銃だけで陸軍から40万丁、海軍から3万丁、空軍から10万丁の、合計53万丁の生産契約が結ばれることとなった。
機関銃は陸軍で2万丁、空軍で2万丁の合計4万丁となっている。
陸軍の調達数はあくまでも既存部隊への配備数であり、海軍と空軍は今後の拡張を見越してのものになる。
なので陸軍と空軍に関しては今後の部隊規模拡大に伴って調達数がどんどん増加すると見込まれる。
これとは別にMP40を丸パクリした短機関銃が開発されたが、似たような性能の自動小銃があるなら別に短機関銃は要らないのでは?ということで生産配備は治安維持部隊や警察などの少数に留まることになった。
ーーーーーーーーーー
戦車は、段階的に開発を進める事となっており、現在では3号戦車を取り合えず配備している所である。
この3号戦車は主力というわけでは無く、75mm対戦車砲、88mm対戦車砲を搭載する中型戦車の開発が完了するまでの場繋ぎという扱いになっている。
とは言え活躍の場が全く無いのかと言われるとそうではなく、輸出用戦車として諸外国からかなりの人気があるのである。
というのもこの3号戦車、史実の3号戦車をパクリつつ、傾斜装甲を採用したり各部を堅実なものに手直しした結果、史実の3号戦車より生産性、信頼性や整備性が高くなったのだ。
重量は24tと軽い方で、エンジンはマイバッハ製4ストロークV型12気筒ガソリンエンジンを搭載しており、馬力も400馬力と重量24tの戦車としてはそこそこの馬力を有しているので馬力不足というわけでもない。速度も整地であれば40km/h、不整地でも23km/hは出せる。
余程の悪路でも無ければ進むことが出来る走破性能があり、過重でもないので大抵の橋も渡ることが出来る。
装甲も正面装甲で61mmの厚さを有している。しかし実際には45度の傾斜装甲なので、避弾経始を取り入れており、見かけ上の装甲厚は約80mmとなる訳である。
この80mmと言う装甲厚は、この時期の戦車としては重装甲であり、これを貫通出来る対戦車砲はほぼ存在しないと言っていい。
史実のティーガー戦車の正面装甲が100mmだったので、それに迫る分厚さだ。
しかしながら正面装甲を厚くしたことで、側面装甲は50mmと薄く、背面に至っては30mmしかない。なので側面に回られたりするのは厳禁ということである。
この時代、特殊セラミックやらを用いた複合装甲なんてものは存在しないので、単純な装甲の厚みで覆うしか無いのがもどかしいところだ。
乗員は5名となっている。
3号戦車は国内の第2装甲師団に配備される300両に留まり、それ以外は輸出用戦車としてフィンランド、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、バルト三国に輸出する為の生産が主である。
同盟各国にはマトモな戦車は無く、3号戦車は喉から手が出るほどに欲しい貴重な装甲戦力であるようで、フィンランドとポーランドからは400両づつ、ハンガリーは250両、ルーマニアからは200両、バルト3国からはそれぞれ100両づつの注文がされており、合計1550両の発注となる訳である。
3号戦車とは別に後継戦車として開発中の4号戦車、5号戦車についても少し触れて行こうと思う。
4号戦車は50口径75mm対戦車砲を装備し、より対戦車戦能力を高めたものになる。
この50口径75mm対戦車砲は装甲貫徹能力が非常に高く、タングステンを用いた硬芯徹甲弾Pzgr.31を用いた場合、100mの距離で角度90度の約150mmの装甲を貫通することが可能になっている。1000mの距離でも約110mmの装甲貫通能力があり、既存の戦車であれば各国のあらゆる戦車を1000mの距離で正面から撃破可能なのだ。
副武装には車長用にキューポラ部分にMG34を旋回機銃として1丁、同軸機銃に1丁、正面装甲部分に1丁と合計3丁搭載している。
乗員の自衛用火器としてStg34をそれぞれ携行している。弾数は20発弾倉4つと心許無いが、無いよりはマシである。
重量は30tに抑えられており、エンジンは3号戦車に搭載されていたものを改良して450馬力にしたものを搭載している。
速度は整地で40km/h、不整地で21km/hとそれなりである。
装甲は車体正面装甲70mmであるが、45度の傾斜装甲を有するので見かけ上は91mmの装甲厚を持つ。
側面50mm、背面30mmとやはり側背面はどうしても薄くなってしまう。
乗員は5名を予定している。
4号戦車は1936年までには開発完了し、実戦配備が出来るように開発を進めている。
とは言っても、4号戦車ではやはり恐竜的進化と遂げるソ連戦車を安定して撃破するのは難しくなってくるだろう。
それを見越して開発が進められているのが5号戦車である。
武装は70口径88mm対戦車砲を搭載しており、貫通能力はタングステン弾芯の硬芯徹甲弾で約250mmの貫通能力を誇り、通常徹甲弾でも約200mmの貫通能力がある。
よっぽどの超重戦車とかでもない限りは、殆どの戦車を1000mの距離から撃破可能なものとなっているわけである。
副武装に同軸機銃、車長用旋回機銃、正面装甲部にそれぞれMG34を1丁づつ搭載予定だ。
装甲は車体正面装甲93mmであり、45度の傾斜装甲なので見かけ上の装甲厚は121mmとなる予定だ。
砲塔正面は110mmの装甲厚。
エンジンはマイバッハ製の800馬力エンジンを搭載予定である。
なので整地で40km/h~50km/h、不整地で約30km/hを予定している。
重量は45tと四号戦車の1.5倍となっている。
とはいえ、実用的な運用が可能なのは現状の技術力であれば、だいたい40~45tほどなので、この辺が重量の限界であろう。
5号戦車は1938年頃までには実戦配備が出来るように開発を進めている。
それぞれ3号戦車、4号戦車、5号戦車は派生型が幾つか同時並行で開発されている。
架橋戦車、戦車回収戦車、工兵戦闘車両、対空戦車、工兵作業車両の5種類である。
もっと正確に言うならば、工兵作業車両はクレーン車とショベルタンク、資材運搬車、塹壕掘削車、砲兵牽引車の3種があるので9種類となる。
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架橋戦車は戦場に於いて、河川などに簡易的な戦車も渡ることが可能な架橋敷設を目的としたものであり、5号架橋戦車においては重量50tにまで耐えられることが可能なように設計、開発が進められている。
架橋の長さは折り畳まれている状態で9m、展開すると18mの長さを誇り、川幅14~15m程度の川を問題無く渡ることが出来る性能を有する予定である。
三号架橋戦車、四号架橋戦車、五号架橋戦車の3種類となる予定であり、三号架橋戦車は輸出先の国にもパッケージの中の一つとして既に輸出されている。
配備としては、装甲連隊の工兵中隊に各4両を予定している。
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戦車回収車は戦場で損傷、擱座した戦車や装甲車、自走砲の牽引回収を目的としたものであり、5号戦車回収車は重量45tの五号戦車を牽引する為に足回りの強化とエンジン馬力を1100馬力への強化を図っている。
自衛用にMG34を一丁、乗員用にStg34を各員1丁づつの携行がされる予定である。
乗員は6名を予定している。
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工兵戦闘車は、最前線で障害物除去や地雷除去、敷設などの危険な任務を担う戦闘工兵を迅速かつ安全に送り届け、そして収容する為に設計、開発される。
こちらは5号戦車が配備された代わりに、後方に送られて来た3号戦車、4号戦車を改造して配備がされる予定だ。
ーーーーーーーーーー
対空戦車はその名の通り、対空機関砲や対空砲を装備して装甲部隊や歩兵部隊、砲兵部隊の頭の上を守る為のものである。
基本的には5号戦車が配備され後方に送られた3号戦車、4号戦車の2種類からの改造という形になる。
搭載対空機関砲は20mm対空機関砲、ボフォース社製40mm対空機関砲の2種類を考えている所である。
既に20mm対空機関砲は4連装でベルト給弾式のものを用意しており、それぞれ120発(約4m)の弾薬ベルトとなるので継戦能力も申し分ない。
ボフォース社製の40mm対空機関砲は同盟締結に向けて協議中のスウェーデンの企業であり、ボフォース社から自国軍への供給だけでは採算が取れるか分からないから、是非とも売り込ませて欲しいとのことで、ドイツ陸海空軍に直接売り込みに来たという経緯がある。
これに対して我が国は、20mm対空機関砲は有していたものの、それ以上の距離を撃つことが出来る対空機関砲の存在が無くて自国で1から開発しようかとしていたところだったので、かなりタイミングが良かった。
実際性能試験を行ってみると、良好な結果を残し、40mmという口径もあって航空機相手ならば威力は十分、射程も長く、今後の航空機の進歩を考えても問題無く対応出来るという範疇であり、陸海空軍で正式採用が決まったという経緯がある。
旋回性能も電動駆動なのでサイズと重量からしても十分に速い。
装填も4発クリップを次々に装填していく方式だから、一々弾薬ベルトを撃ち切ったら新しい、それも重い弾薬ベルトを必死になって装填し直す必要がなく、継戦能力も高いとあって空軍と陸軍においてはかなり好評なのである。
既に海軍では艦艇搭載用として連装砲架のものが200基、単装砲架200基が発注されている。
空軍でも飛行場防衛や各都市の防空を担っている関係上、連装砲架のものを500基、単装砲架のものを1000基も発注しているので、大口顧客となっているわけである。
しかしながらボフォース社の生産ラインは自国軍への供給、イギリス軍への供給なども併せてもう既にパンク寸前、てんてこ舞いでありドイツへの供給がどうやっても間に合わないということで、最終的に海空軍の発注分の内、200門をボフォース社が直接製造し、残りをライセンス生産するということで落ち着いたのである。
陸軍でも対空戦車や拠点防空用に88mm対空砲や127mm対空砲と共に配備を進める予定なのでライセンス生産でも大量生産が可能なのは有難いところである。
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工兵作業車のうち、クレーン車は、重量20tのものを持ち上げることが可能なクレーンを有しており、回転式では無いので車体を一々動かさなくてはならないが、左右15度づつの旋回範囲を有しているので大抵のことは出来るというわけである。
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工兵作業車のうち、ショベルカーは、もうそのまんまである。
こっちはクレーン車と違って360度の旋回装置とアーム、バケットを有しており、ついでに排土板も装備しているので地面を均すことも可能だ。
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塹壕掘削車は回転式の掘削機を装備しており、深さ2mまでの塹壕を掘ることが可能だ。
というのもこの車両を開発した経緯は、早い話が凍った大地に素早く塹壕を掘ることが出来るようにするためである。
ソ連との戦争が可能性として大きい以上、どうしても冬になれば極寒の台地で戦う必要がある。
特に北欧のフィンランドや、反撃の際にソ連領に踏み込めば冬場は地面が凍ってしまい、マトモに穴を掘ることが出来ない。そうなると兵士達は身を隠す場所が無く、敵の砲爆撃に無防備に晒され続けることになる。そうならないように、この塹壕掘削車を開発するのである。
通常の地面で一時間に500m~700m、凍った地面でも1時間で200m程度の掘削が可能となっている。
これがあれば、兵士たちが体力や時間を消耗して塹壕を掘る必要が無くなる。
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資材運搬車は、基本的には3号戦車か4号戦車の車体を流用することで、木材や建設資材、コンクリートブロックを運搬することを目的としたものである。
戦場に迅速に資材を運ぶことが出来るというのは、何事にも代えがたい事項であり最優先されるものだ。
コンクリートブロックはドイツ本国や同盟各国の工場で、地下に埋設する指揮所を事前に作っておくのである。
それを前線に運んで、穴を掘ってそこに埋めるだけでいいという、パッケージ化されたものがあるのだ。それを運ぶために資材運搬車が必要になってくるのである。
砲弾や砲塔を載せていない都合上、17トンまでの物資を搭載することが可能で、車体後部には牽引装置の装備しているので榴弾砲やリヤカーを引っ張ることも出来るのである。
資材運搬車と言っても、実際は資材の他に武器弾薬、食料燃料水医薬品、部品と基本的に載せられることが出来るものであればなんでも運べてしまうので結構万能なのである。
装甲は取っ払っているので構造がおんなじというだけだから防御力は全く期待出来ない。精々小銃弾ぐらいなら防げるというぐらいでしかない。
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砲兵牽引車は、名前こそ変わっているが実際は資材運搬車を砲兵用に砲弾搭載機能と砲兵を乗せる為に座席をくっ付けただけの資材運搬車だ。
何故こうなったのかと言うと、資材運搬車の汎用性が高過ぎて砲兵隊に榴弾砲牽引車として大規模に配備されている状態なのだ。
車体後部に無駄に頑丈な牽引装置を搭載しているお陰で、元が戦車で馬力もあるので大抵のものは引っ張ることが出来るし、88mm高射砲ですら引っ張れてしまうという状態なのである。
砲兵の主力榴弾砲である10.5cm榴弾砲や15.5cm重榴弾砲の牽引も出来てしまうし、砲弾も40発程度なら兵員と共に載せて運ぶことが出来るというので、砲兵からこいつを牽引車として配備して欲しいという要望が後を絶たず、軍としても同一車種を製造するだけでいいので新規開発をする必要が無く、まぁいいかということで牽引車として正式採用されてしまったのである。
結局資材運搬車と砲兵牽引車は、三号戦車がドイツ軍に400両ちょっとしか配備されない予定であるのに、1935年時点で配備数が既に1500両を超えているという状態なのだ。
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これら戦車とは別に、装甲車の開発も進めている。
戦車は車両という特性上、どうしても歩兵と比較して移動速度が速い。
戦車は一見して無敵のように見えるが、実際は意外と弱いものなのだ。潜伏した歩兵に側面や背面を取られてしまえば、簡単に撃破されてしまうし、戦車だけでは索敵網を広く取ることが出来ない。歩兵もそうだが、どうしても単一の兵科では弱いというのが軍隊なのである。
戦車は装甲師団、歩兵師団直轄の装甲大隊、戦闘団指揮下の装甲連隊に配備される予定だが、そうなると戦車と歩兵が相互支援が出来る体制を構築せねばならない。
そこで装甲車の出番である。
装甲車と言っても、より細かく記すならば装甲兵員輸送車という区分になると思うのだが、これの存在が重要なのである。
この装甲兵員輸送車は最大で操縦手、車長、機銃手の3名に加えて歩兵12名の兵員を載せることが可能な、兵員を敵銃火、敵砲火から防護し迅速に戦線に展開、装甲部隊との連携が可能な性能を求めて設計、開発が進められている。
とまぁ、陸軍だけでもこんなに色々と研究開発を進めている状態だ。
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空軍でも迎撃戦闘機、戦闘機、4発重爆撃機、対地支援攻撃機、高高度高速戦略偵察機と5機種の開発が進められているのである。
輸送機は爆撃機を改造することで用意する予定である。
迎撃戦闘機は以下のような要求性能となる。
最高速度650km/h以上
武装 20mm機関砲4門以上、30mm機関砲2門
航続距離 800km
最高飛行高度 11000m以上
エンジン 1~2発
生産性、整備性に留意すること
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戦闘機の要求性能は以下の通り。
最高速度630km/h以上
武装 20mm機関砲4門以上
或いは7.92mm機銃8門
100kg~250kg爆弾2発
航続距離 1700km
最高飛行高度 9000m以上
生産性、整備性に留意すること。
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4発重爆撃機 要求性能(最大爆装量搭載時)
最高速度 530km/h
武装 単装、連装含め7.92mm機銃15門
或いは単装、連装含め20mm機関砲12門
或いは7.92mm機銃と20mm機関砲の混載
航続距離 3000km程度
最高飛行高度 10000m以上
爆弾搭載量 250kg爆弾16発以上、4t以上
搭乗員 約10名
生産性、整備性に留意すること。
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4発輸送機 要求性能(最大物資搭載量時)
4発重爆撃機を流用すること
最高速度 470km/h
武装 無し
航続距離 3000km
最高飛行高度 4000m
最大搭載量 完全武装兵士30名或いは物資3t
軽車両1両或いは重迫撃砲4門
病床10床 軍医2名と看護兵8名
生産性、整備性、居住性に留意すること。
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対地支援攻撃機 要求性能(最大武装時)
最高速度 420km/h
武装 機首に20mm機関砲4門
或いは30mm機関砲3門
或いは7.92mm機銃8門
爆装 250kg爆弾2発
ロケット弾 8~16発
エンジン 2発
航続距離 2000km
最高飛行高度 3000m
乗員 2~3名
生産性、整備性に留意すること
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高高度高速戦略偵察機 要求性能
最高速度 700km/h
武装 無し
装備 写真撮影機等
エンジン 2発
航続距離 4000km以上
最高飛行高度 12000m
乗員 2名
少数生産を目的としているので生産性、整備性は度外視してもよい。
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空軍で開発が進められている機体は以上である。
現状、戦闘機と迎撃戦闘機の2種は1937年までに実用化、配備が開始が可能と報告されており、4発重爆は1938年頃に、対地支援攻撃機も1938年中には量産と配備が可能であるという。
そして最重要である高高度高速戦略偵察機だが、これは量産性、整備性といった兵器に必要なものを一切度外視しており、最新技術である与圧コックピットも装備しているので、生産性は月産3機が限界であるという。
職人が1から10まで丁寧に製造することで、ユニットコストは4発重爆よりも高いが、まぁ少数生産配備なので構わんだろう。一応設計と開発は1937年までに終了し、1939年までに部隊配備を終えて偵察任務に就けるようにする予定である。
職人は全員国と軍で囲って情報が外に漏れることが無いように徹底しており、整備兵や搭乗員もどこの基地配属なのか、どんな機体に乗っているのか、何の役割を担っているのか、ダミーのものを用意し暗記させており、真実の口外は一切厳禁としている。
誓約書を書いて貰っており、これを破った場合良くて終身刑、最悪死刑になる。
因みにであるが、この高高度高速戦略偵察機は最重要機密扱いなので同盟各国に対しても一切存在を明かされていない。
これ以外だと陸海空軍共同でレーダーの開発にも力を入れており、既に備え付け式ではあるが対空レーダー2種類と対艦レーダー2種類の計4種類が実戦配備状態にある。
何故2種類ずつなのかというと、異なるレーダー波を用いているからである。
前世であれば一つのレーダーで2種類、3種類のレーダー波を使い分けることが出来たが、この時代ではまだそんなことは出来ない。なのでレーダー波が違う2種類のレーダーをそれぞれ開発し、同時運用を行っているという訳なのである。
今開発が進められているのは車両搭載型の小型レーダーと、対潜レーダー、潜水艦搭載用レーダーである。
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海軍の方は建造計画が纏められており、既に戦艦と空母は起工されている。
建造計画にある艦艇は以下の通り。
ビスマルク級戦艦(1936~1943年建造)
同型艦 4隻
ビスマルク(起工1936年)
ティルピッツ(起工1937年)
グナイゼナウ(起工1939年)
ウルリッヒ・フォン・フッテン(起工1941年)
グラーフ・ツェッペリン級航空母艦(1936~1942年建造)
同型艦 8隻
グラーフ・ツェッペリン(起工1936年)
シャルンホルスト(起工1936年)
ヒンデンブルク(起工1936年)
デアフリンガー(起工1939年)
バイエルン(起工1939年)
へーリンゲン(起工1940年)
ペーター・シュトラッサー(起工1941年)
クラウゼヴィッツ(起工1942年)
アドミラル・ヒッパー級重巡洋艦(1935~1941年建造)
同型艦 8隻
アドミラル・ヒッパー(起工1935年)
ブリュッヒャー(起工1935年)
プリンツ・オイゲン(起工1935年)
ザイドリッツ(起工1937年)
リュッツオウ(1938年)
ブリュッヘル(1939年)
フリードリヒ・デア・グローセ(1940年)
マッケンゼン(1941年)
アウグスト級軽巡洋艦(1935~1938年建造)
同型艦 8隻
ライプツィヒ級防空巡洋艦(1935~1938年建造)
同型艦 8隻
レーベレヒト・マース級駆逐艦(1934~1936年建造)
同型艦 10隻
ヴィルヘルム級駆逐艦(1935~1937年建造)
同型艦 10隻
カール・リヒター級駆逐艦(1936~1938年建造)
同型艦 10隻
リヒャルト・バイツェン級駆逐艦(1937~1939年建造)
同型艦 10隻
シュタイン級駆逐艦(1938~1940年建造)
同型艦 12隻
エムデン級駆逐艦(1939~1942年建造)
同型艦 12隻
ニュルンベルク級駆逐艦(1941~1944年建造)
同型艦 15隻
ダンツィヒ級駆逐艦(1943年~1946年建造)
同型艦 15隻
ザッハウ級練習艦(1934~1935年建造)
同型艦 4隻
ザッハウ
ケルヒャー
ガイスラー
ラングスドルフ
ザッハウ級はこれから先、海軍の人員を養成するのに最優先で必要なため、最初の2隻を1隻づつ建造し、問題の洗い出しを行った後に残りの2隻を問題点の修正をした上で建造するのだ。
U‐Ⅲ級潜水艦(1937~1938年建造)
同型艦 8隻
U‐Ⅳ級潜水艦(1939~1939年建造)
同型艦 16隻
U‐Ⅵ級潜水艦(1939~1940年建造)
同型艦 16隻
U‐Ⅶ級潜水艦(1940~1940年建造)
同型艦 16隻
U‐IX級潜水艦(1943~1945年建造)
同型艦 36隻
U‐XXI級潜水艦(1945~1945年建造)
同型艦 36隻
U‐Ⅲ~U‐Ⅶ級潜水艦までの代替の為、建造数が多くなっている。
この二つの級の潜水艦は潜水艦としての性能が高く、少なくとも今次大戦において最も優れた性能を誇ると言える。
IX型は潜航深度を130mとなっており、静穏性も優れているがその分、建造費も高く構造も複雑なために量産には向いていない。
対してXXI級は量産性に優れ、性能もそこそこだ。
何故高性能なIX級のみを量産しないのか、というと色々と理由はあるが予算の問題だ。既存の53隻の潜水艦を代替し、尚且つ数を幾らか増やすことを考えるとどうやっても予算が足りないのである。ましてや対ソ戦の為に陸軍と空軍に予算の大部分を回している現状で、そこまで海軍に回すことの出来る予算が無いのだ。
特にソ連海軍の拡張もここ最近は特に目立ち始めており、16インチ砲装備の戦艦だけでなく巡洋戦艦並みの超甲巡と呼ばれるような艦艇の建造も続々と建造を進めているようで、乗組員の練度という想定しずらいものを差し引いても十分な脅威となる。
我が国は北欧諸国や、アジア地域との海上輸送航路を抱えておりこれらは戦略上重要なものである。
合成ゴム、合成石油を作る為の合成精製所を各地に建設を進めているが、『それはそれ、これはこれ』である。
希少金属に関しても同盟国で産出されるがどの国もドイツ以上にソ連に近く、より脅かされやすい。そうなると戦況や人的資源によっては輸入出来なくなる。そうなればアジア地域で産出される希少金属は輸送コストは掛かるが手に入りやすいという利点がある。
しかしそれを断てば我が同盟は瓦解する。
ソ連だけでなく、スエズ運河経由でジブラルタルを通り、ドイツへ運ばれてくる資源はどうしても地中海を通らねばならない。
そこにはイタリアが存在し、ムッソリーニが実権を握っている以上何をやらかすか分からないパスタ野郎共である。最悪ソ連と手を組んで地中海で通商破壊をやられたら堪ったものでは無い。
第一次世界大戦は『我々が通商破壊をする側』だったが、対ソ戦となれば『我々が通商破壊をされる側』となるわけである。
そういった場合に備えて潜水艦よりも水上艦艇を中心に整備、編成する必要があるのだ。
海軍の規模は小さいが、海軍と言うのはとにかく1から10まで金食い虫で、年間数隻の建造でも維持費を含めて陸軍10個師団規模の予算が当たり前のように吹き飛んでいくのである。
軍事費の内、陸軍4割、空軍4割、海軍2割といった具合で割り振られているが一括では勿論払えないので建造費に関しては分割払いである。政府が軍艦の建造費を分割払いとは、国民が聞いたら失笑を買うのではなかろうか。
海軍の予算の内、既存艦艇の維持運用を除けばこれが限界なのである。潜水艦に関しては所謂『ハイ・ロー・ミックス』というやつである。
合計で230隻の建造計画である。
これに輸送船や補給艦などの補助艦艇を合わせれば300隻ほどになる計算である。
ドイツにこれだけの海軍力は必要無いと言うかもしれないが、ソ連海軍がかなりの近代化と拡充を図っているという情報を手に入れているのだ。少なくとも戦艦10隻程度の建造がされるらしく、既に3隻が建造中であるという。
空母の建造計画は無いようだが、重巡洋艦や軽巡洋艦、駆逐艦を合わせても200隻ほどの建造計画があるという。
なので海軍力の弱い同盟各国の制海権の維持やシーレーンの防衛も考えるとこれぐらいは、というわけである。
現在建造中なのは、大型艦だとビスマルク級戦艦の1番艦ビスマルク、空母グラーフ・ツェッペリンとシャルンホルストの2隻、重巡アドミラル・ヒッパーとブリュッヒャーの5隻である。
それ以外の艦艇は順次建造が開始されている状況だ。
艦隊の編制は戦艦1隻、空母2隻、重巡1隻、軽巡4隻、駆逐艦13隻の合計21隻の水上艦隊を4個艦隊。
潜水艦隊は14隻を束ねた潜水艦隊を4個艦隊。
U‐IX級潜水艦とU‐XXI級潜水艦が配備されれば、1個艦隊32隻体制となる予定である。
とは言ってもこれは10年以上先のことなので、取り合えず潜水艦は偵察哨戒戦力分が揃っていればいいのである。
これら戦闘艦艇の他に輸送船30隻、兵員輸送船12隻、揚陸艦10隻、艦隊随伴補給艦12隻、タンカー20隻を同時並行で建造中である。
北欧諸国や同盟各国から輸入した鉄鋼を始めとした物資を輸送するには、どうしても海路を使う必要がある。北欧諸国以外からのモノであれば陸路でも行けるが、輸送量という観点からどうしても海路を使わねばならないのだ。
北欧諸国からの資源輸入を陸路となるとどうしてもソ連領内を通らないとならないし、びっくりするぐらいの遠回りである。
特に対ソ戦の最前線の一つになるフィンランドへは継続して武器や物資を送り込んで国境線の防備を固めさせる必要がある。
既に海軍が保有する輸送船10隻と、民間船舶会社保有の20隻が任務に従事しているが、特にカレリア地峡近辺を巡る戦いは激戦となることが予想されるので、可能な限り建設物資などは送り込んでおきたいところである。
フィンランドへ行った輸送船は帰りにフィンランドで多数産出される鉱物資源、例えばクロム、ニッケル、イルメナイト、銅、鉛、亜鉛といった戦略上重要な鉱物資源や、木材といったものを大量に積み込んで、ドイツへ帰って来るのである。
スウェーデンからは鉄鉱石、鉛、亜鉛、銀、銅、金を輸入してドイツで製品にして再び各国に売ったり供与したりとしている。
ノルウェーからは豊富な石油、鉱物資源、鉄、ニッケル、チタン、銅、アルミ二ウム、コバルト、亜鉛、ニッケルを輸入している。
それ以外にもノルウェーには造船ドックを7か所建設しており不足する輸送船の建造を発注することで、賄いつつ経済を回している。
ポーランドからは岩塩、石炭、亜炭、銀、銅、鉛、亜鉛、金、マグネシウム、硫黄と大量の食糧を輸入しており、東欧ではポーランドが最前線となる為、ポーランドには陸路と海路の二つで建設資材、武器兵器、弾薬を大量に送り込みつつ、ポーランド国内にも工場を建設することで弾薬と砲弾の供給体制は確立しつつある。
ルーマニアからは主に石油、石炭、天然ガス、亜鉛、鉛、金、銀、鉄、岩塩、銅を輸入している。
ルーマニアは古くから石油と石炭が豊富に取れる国で、これを活用しない手は無い。と言ってもドイツ本国にまで石油や石炭、天然ガスを運ぶのはコストが余りにも掛かり過ぎるということで、ルーマニアに石油精製設備を建設することで、精製されたガソリンや重油を大量に輸入しているのである。
ルーマニアはポーランド同様、東欧での最前線の一つになる国であり、こちらの防御も重点的に行わなければならない。
余談であるが、各国から輸入される石炭とドイツで産出される石炭は、火力発電以外はその殆どが液化燃料として活用されている。
フィッシャー・トロプシュ法と呼ばれる方法で石炭を液化燃料にすることで、不足しがちな燃料を補っているのである。
現在ドイツ政府の計画としては1940年までに50か所の工場を整備し、1日辺り24万8000バレル、年間1300万トン程度の生産を目標としている。これは史実ドイツにおける1944年時点での生産量のざっくり2倍の数字であり、5年の歳月を掛ければ達成出来ない数字では無い。
史実ではナチスドイツによる迫害で多くのユダヤ人が虐殺されたが、私はそんなことはしない。
そも、私は共産主義や社会主義が嫌いというだけで別にユダヤ人にはこれと言って特になんの感情も無い。
それに優秀な人材がユダヤ人に多いのは確かな事実だ。
特にノイマン、アインシュタイン、ニールス・ボーアと言った、もう彼らの頭の中はどうなっているのか分からないような大天才達は、軒並み我が社だったりドイツの研究機関でかなりの額の予算を与えられながら研究に勤しんでいることは明記しておく。
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「現状、各国との足並みは揃いつつあります。ですが、思った以上に兵力が足りません」
「現在の陸軍の兵力は?」
「同盟国全体を合わせて120万です」
「……少な過ぎる。対ソ戦の初期から中盤に掛けては防衛戦が主眼とはいえ、限定動員で300万、400万を搔き集められるソ連軍相手に、同盟各国の兵力を入れても到底足りないな」
「海軍からも、兵士不足を報告させて頂きます」
「空軍もかね?」
「はい」
軍備の急激な整備に人手が間に合っていないのだろう。仕方が無いとは言っても、何とかして解決しなければならないところである。
「分かった。どうにかして兵士を集める手立てを考えてくれ。私も考える」
「了解しました」
「フィンランド・ソ連国境部の守りはどうなっている?」
「現在、予定していた建設は約60%まで進んでおります。ですがやはり兵士不足が目立ちます」
フィンランド防衛の要と言える国境線要塞は北部と南部に分けられる。
要塞と言っても、皆が想像するようなものでは無く、基本的には塹壕とトーチカ、鉄条網、地雷を組み合わせたものである。
一部は堅固な鉄筋コンクリート製の巨大な建造物、主に司令部施設などがあるが、大部分は塹壕と土嚢、トーチカで構成されている。
フィンランドの守りの主眼はフィンランド南部に置かれている。
というのもフィンランドの首都であるヘルシンキはバルト海沿岸に存在し、しかもその首都までは街道一本で繋がっており突破されるとあっという間に首都ヘルシンキが最前線、下手をすると首都陥落ということになる。
それに加えてフィンランド南部はカレリア地峡という戦略上の要衝に面しており、尚且つソ連軍の要衝であるサンクトペテルブルクがある。ここを突破されると、ソ連軍はバルト海に自由にアクセスすることが出来、そうなると北欧諸国陥落という問題が現実味を帯びて来る。
それにフィンランド南部は多くの湖沼や湿地帯が多数存在しており、防衛が容易という利点がある。なのでフィンランド防衛は南部に主眼を置いているのである。
「フィンランドは何と言っている?」
「兵士が足りないから小銃は余っている、だそうです」
「ルーマニアも?」
「そうです。同盟各国は全て兵士不足です」
「戦時でもないから徴兵や動員をするわけにもいくまい」
兵士不足の解決案はそうポンと出て来るものではない。
戦時ともなれば大規模徴兵や大規模動員が可能だが今は平時だ、それをやるわけにもいかない。
「募集は引き続き行いたまえ」
「はっ」
「閣下、ポーランドからどうにかしてもっと兵力と資材を送れないか、と来ております」
「ポーランドには精鋭の数少ない装甲師団を3つも配備している。これ以上の兵力配置は現状難しいと返答してくれ」
「はっ」
現在の防衛計画は平坦な地形が広がるポーランドにただでさえ数が少ない装甲師団が主戦力として配置されている。
ポーランドは平坦な地形が広がっており、山岳などが無い為、防衛は難しい。しかしながら戦車を始めとした装甲戦力が展開し、その機動力を十分に発揮が可能な地形でもある。
そこでドイツが有する5個装甲師団の内、3個師団をポーランドに派遣し防衛に就かせているのである。
ポーランドには、
3個装甲師団
9個歩兵師団
3個砲兵師団
5個防空師団
3個戦闘団
6個工兵連隊
4個輜重師団
以上が陸軍から主な兵力としてドイツから派遣され、配置されている。
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装甲師団は4個装甲連隊、2個装甲擲弾兵連隊を有し、最大で432両の戦車を有することになる。
1個小隊 戦車4両
1個中隊 戦車12両
1個大隊 戦車36両
1個連隊 戦車144両
1個旅団 戦車288両
1個師団 戦車432両
1個装甲師団は4個装甲連隊、2個装甲擲弾兵連隊、1個対空戦車連隊を有する。
なので装甲師団は432両(人員2300名)の戦車、1万3000名の装甲擲弾兵、144両(人員約1100名)の対空戦車を有する。
人員は1万5000名~1万6千名ほどになる。
各部隊の輜重部隊も併せての人数なので、そこそこ大きい人員を抱えていることになる。
ポーランドには装甲師団だけで約1300両の戦車戦力が存在することになるが、これでも少ない方である。
史実におけるソ連軍のT‐34の生産数は戦中生産数だけで約6万両である。物量で我々に圧倒的に勝るソ連軍の攻勢を凌ぐことは難しい。
現状、ドイツ本国で戦車の量産は続けられているが、それでも装甲師団の編制と訓練は間に合っていないのが現状である。
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砲兵師団は、4個砲兵連隊を有し最大288門の榴弾砲を有する。
砲兵師団には15.5cm榴弾砲(操作人員12名)、10.5cm榴弾砲(操作人員5名)のいずれかを配備されている。
1個砲兵小隊は4門の何れかの砲を装備する。
1個砲兵中隊は小隊を2個の計8門の砲を有する。
1個砲兵大隊は32門の榴弾砲を有する。
1個砲兵連隊は3個砲兵大隊96門の榴弾砲を有する。
1個砲兵師団は192門の榴弾砲を有する。
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1個歩兵師団は4個歩兵連隊を有する。
歩兵分隊は機関銃分隊と小銃分隊の2種類に分類される。
小銃分隊はStg34を装備する歩兵8~11名、MG34装備の機関銃手1名の最大12名で構成される。
機関銃分隊はMG34を3~4丁装備し、こちらも最大12名で構成される。
1個歩兵小隊は1個MG分隊と4個小銃分隊で構成され、7~8丁のMG34を有する。
これとは別に迫撃砲小隊が存在し、12cm迫撃砲12門を装備する。
1個歩兵中隊は通常小隊4個、迫撃砲小隊1個の計5個小隊で構成される。
これとは別に連隊直轄の偵察中隊が存在し、オートバイ32台を有する。
1個歩兵大隊は4個中隊で編成される。
(16個通常小隊、4個迫撃砲小隊)
これとは別に対戦車大隊が存在し、75口径75mm対戦車砲24門を有する。
1個歩兵連隊は4個歩兵大隊、1個対戦車大隊、1個高射機関砲大隊、2個偵察中隊を有する。
1個師団は4~5個連隊を有し、最大で2万5000名ほどの兵員で構成されることになる。
ここに人員輸送用や迫撃砲牽引用のトラックやハーフトラック、軽車両をざっくり500両ほどが存在することになる。
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防空師団は各飛行場や前線部隊、重要都市の防空を担う高射砲、高射機関砲を装備する師団である。
主に野戦防空師団と都市防空師団の2つに分けられる。
高射砲部隊には88mm高射砲と、40mm高射機関砲、20mm高射機関砲が配備されている。
127mm高射砲は重量とコストの面で備え付け運用が望ましいという結論が付けられたため、対空戦車への転用は行われなくなったのだ。
それでも生産コストを下げることが出来ており、各国首都や重要都市、建設された飛行場の防空に活用されている。
元々は海軍艦艇に搭載する艦載砲だから、砲弾や部品に互換性があるので、より生産性を高める事が出来るのだ。
1個高射砲小隊 高射砲4門
1個高射砲中隊 高射砲12門
1個高射砲大隊 高射砲36門
1個高射砲連隊 高射砲108門
1個高射機関砲小隊 高射機関砲4基
1個高射機関砲中隊 高射機関砲16基
1個高射機関砲大隊 高射機関砲48基
1個高射機関砲連隊 高射機関砲144基
防空師団は、前線防空か飛行場、都市防空によって編成が変わる。
都市防空任務や飛行場防空任務に就いている第2、第5防空師団は、高射砲連隊3個、高射機関砲連隊2個で編成される。
しかし前線での防空任務に就く師団は、2個高射砲連隊と3個高射機関砲連隊で編成される。
これとは別に機動防空連隊なるものが編成される予定だ。
これは拠点防空の為の部隊ではなく、前線部隊の移動中や、野戦飛行場の防空を担う師団である。
88mm高射砲を搭載した4号対空戦車、40mm高射機関砲を搭載した4号対空戦車、20mm連装対空機関砲を搭載した4号対空戦車の3車種を装備する。
移動式レーダー車、射撃管制装置を搭載した4号戦車など、対空戦闘に必要な機材は全て4号戦車の車体を用いて移動可能な状態にしてある。
1個小隊 4号対空戦車 4両
弾薬運搬トラック 4両
1個中隊 4号対空戦車 12両
レーダー搭載車 1両
射撃管制装置車 1両
弾薬運搬トラック 12両
1個大隊 4号対空戦車 36両
レーダー車 3両
射撃管制装置車 3両
弾薬運搬トラック 36両
1個連隊 4号対空戦車 108両
レーダー車 9両
射撃管制装置車 9両
弾薬運搬トラック 108両
テレフンケン社で開発されたレーダーは、元々はウルツブルクレーダーと呼ばれる備え付けの巨大なレーダーである。
それを車両搭載が可能な程度にまで小型化したものがウルツブルク2である。
簡易的とは言えレーダー射撃が可能で、射撃管制装置と組み合わせることでレーダー射撃管制射撃を行えるようになっている。まだまだ距離と高度、敵機の速度の測距は甘いが、人力でやるよりは遥かに命中精度が高い。
部隊によればレーダーと射撃管制装置を用いずに対空射撃をした場合と、用いて射撃した場合、命中率にざっくり3倍程度の差があるようだ。
88mm高射砲は10発撃てば1発命中する、或いは敵機を加害範囲に捉えることが出来る程度の命中率であったが、レーダーと射撃管制装置を用いて射撃をすると10発射撃すれば3~4発程度の命中率になるようだ。
この移動式レーダーは、地上設置型レーダーや艦載型レーダーに比べると探知距離、精度の全てにおいて劣るが、それでも70kmの探知距離を誇り、ざっくりながら高度も測定可能な代物だ。
空軍向けに配備されているものは戦闘機などに搭載されている無線装備などとも十分に連携出来るので簡易的ながらもレーダー管制も行えるようにしてある。
この機動防空師団は6個連隊が編成される予定で、現在は第1機動防空連隊がハンブルクで編成されて錬成中、第2機動防空連隊が編制途上にある。
第3機動防空師団は指揮官の任命と司令部の設置、所属兵士の配属は済んでいるが、対空戦車の生産が追い付いていないために機材が殆ど無い状態だ。それでも年内中には機材も揃えて本格的な訓練に移る予定である。
対空戦車の配備はどうしても歩兵師団や装甲師団、砲兵師団に配備するのが優先になってしまうので、編成がゆっくりなのである。
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戦闘団は所謂諸兵科連合部隊と呼ばれるものだ。
1個装甲連隊に1個装甲擲弾兵連隊、1個偵察大隊、1個砲兵連隊、2個防空大隊、1個工兵大隊、1個輜重連隊、2個整備大隊が配備される。
司令部には直轄部隊として1個通信大隊が配備され、各部隊や後方上級司令部、空軍との連携を密に取れるようにしてある。
戦車144両(人員約730名)、榴弾砲72門(人員約530名)が主戦力であり、そこに偵察兵力としてオートバイ約120台、軽装甲車40両。
装甲敵弾兵連隊は約4300名の人員と、装甲連隊の機動力に追従する為に170両のトラックを装備している。
防空大隊には対空戦車72両、レーダー車6両、射撃管制装置車6両が配備され、戦闘団の頭上を十分に守る。
輜重連隊は戦闘団全体の補給を担う最重要部隊であり、固有装備としてトラックと燃料運搬トラックを合わせて200両を装備する。
整備大隊は戦車や各部隊のトラック、装甲車、バイク、榴弾砲など、あらゆる装備のメンテナンスや修理を請け負う部隊であり、こちらも完全機械化されている。
砲塔を持ち上げる為の移動式組立大型クレーンなど、固有の装備もある。
工兵大隊は他の工兵部隊と変わらず、建設車両や機材を装備している部隊である。
砲兵や対空砲兵はその性質上、どうしても平らな地面が必要である場合が多く、備え付ける場所が斜めだったり軟弱地盤だったりするとちゃんとした砲撃が行えない。そこで工兵隊のブルドーザーやロードローラーなどで地面を平坦にして、押し固めてやるのだ。
それ以外にも部隊の進路上の障害物を除去したり重要な役割を持つ。
戦闘団司令部直轄の通信大隊は短距離通信機、長距離通信機をそれぞれ多数装備しており、空軍の4発重爆撃機を改造して用意した通信中継機を介して様々な部隊と連携が取れるようにするのが役割だ。
必要であれば空軍に航空支援を要請しなければならないし、各部隊と通信して連携を取る必要も往々にしてあるだろう。
そのための部隊なのである。
規模こそ1万名程度であるが、全体的な戦力を見ればそれなりに纏まったバランスの良い部隊で、使い勝手のいい部隊と言える。
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工兵連隊は、建設の為の装備を多数保有する部隊である。
ロードローラー、ブルドーザー、ショベルカー、クレーン車、塹壕掘削車といった建設車両は勿論のことだが、削岩機、小型電動ノコギリ、ボーリング車とあらゆる建設車両、建設機材を保有している。建設や工事に関わる事なら何でも出来るというのがこの工兵連隊である。
今はドイツ国内から各国に伸びる鉄道建設と、最前線での防御陣地、要塞、飛行場、それに付随する宿舎や地下壕の建設を連日行っているところである。
ここ最近は訓練よりも、防御陣地構築だったり飛行場建設だったり要塞建設だったりと、ツルハシを振るったり鋸を引いたり、釘を打ったり、地面を均したり、土木工事ばかりやっているので本人達も兵士なのか土木職人なのか分からなくなってきたと言っている。
これでも月に一度は射撃訓練をやってもらっているのだが、とは言え国境線の防衛線構築は急務なのだ、どうか我慢して欲しい。
彼らの戦闘力はほぼ皆無に等しく、個々人の装備するStg34と猿臂以外だと、申し訳程度に1個歩兵中隊が護衛に就いているだけなので戦闘部隊に襲われれば一溜りも無い。
彼らには敵部隊に襲撃された場合は機材を全て放棄してでも逃げて生き延びる様に厳命している。
というのも彼らほどの建設に精通した人手を戦闘なんかで死なせられるほど、ドイツに余裕は無いのである。
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輜重師団はその名の通り、補給や補充を司る軍にとって最重要部隊だ。
彼らはトラック1500台、弾薬運搬トラック1500台、砲弾運搬トラック1500台、燃料輸送トラック2000台を始めとした、トラックを大量に有する本当に補給に特化した部隊である。
輜重師団は、上記のトラックで編成された通常編成の輜重師団と、鉄道輜重師団の二つに分けられる。
鉄道輜重師団が鉄道で物資を前線近くの駅まで運び、そこから輜重師団がトラックを使って最前線の各部隊に物資を運ぶのである。
軍用鉄道は全て陸軍鉄道運輸局の管理下にあり、輸送用鉄道は4両の牽引車に引っ張られ、最大120両の貨車を引っ張ることが出来る。
この鉄道編成の中には対空機関砲や対空機銃を搭載する武装貨車も含まれており、最低限の自衛が出来るようにしてある。
しかしそれでは無防備と変わりないので、戦時に於いては規定として空軍戦闘機1個中隊が常に上空で待機して護衛を行うようにしてある。
鉄道など航空機からすれば恰好の獲物でしかなく、守るには最低限これぐらいの措置は必要ということである。
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ポーランド陸軍の兵力は3号戦車を装備した2個装甲師団、そして21個歩兵師団が戦力として存在する。
だが装甲師団の主力は3号戦車で対ソ戦となると些か心許無く、歩兵師団の主力装備は我が国の倉庫から引っ張り出されて供与されたkar98や、自国で生産されたボルトアクションライフルであり、機関銃は小隊に1丁か2丁。
砲兵戦力は各歩兵師団に15.5cm榴弾砲がドイツからの輸出分と現地生産分がごちゃまぜに100門づつ程度があるぐらい。
正直対ソ防衛戦をやるとなると、どうしても戦力、火力共に不足していると言わざるを得ない。
ポーランド国内に軍需工場を多数建設中だから、銃弾、砲弾の供給は1938年頃には安定するとされているが、主に砲兵装備や戦車と言った兵器不足は否めない。ポーランドでも戦車、榴弾砲などの兵器は生産されているが全く足りていない。
現在ドイツ軍の編制としては1個装甲師団、3個歩兵師団、1個砲兵師団、1個防空師団、1個輜重師団を纏めたものを1個軍団として編制している。
なのでポーランドには3個軍団が現在存在するわけである。
正確に言うならばチェコ・スロバキアとポーランドは同一管区として扱われているので、2国で3個軍団である。
ドイツ軍は部隊や師団の多くを各国に派遣している状況であり、これは単純に各部隊を各地の地理や地形に慣れさせ、頭に叩き込ませるためである。
ドイツ国内には1線級戦力である3個歩兵師団、1個装甲師団、1個砲兵師団、1個輜重師団が置かれており、ドイツ本国の役割は兵力の編制と訓練、休養地である。
各国に派遣されている兵力で負けているのならば、今の内から各国の地理を部隊単位で頭に叩き込ませ、少なくとも地の利はこちらに味方を付けておかねばならないからだ。
フィンランドには2個軍団、ルーマニア、ハンガリーにそれぞれ1個軍団。
バルト三国とブルガリアには1個軍団づつ。
というような派遣状況だが、実情は戦車の生産が間に合っていないので装甲師団を欠いた状態であったり、砲兵師団を欠いた状態だったりと正直なところあんまりよくないというのが実際のところなのである。
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「閣下、オーストリア共和国が同盟参加を承諾しました」
「それは大変喜ばしい事だ。是非ともオーストリア政府に電報を打ってくれ」
「はっ」
オーストリアにはかねてより同盟に参加するよう、要請していた。
と言うのも、オーストリアは軍事上最重要戦略物質の一つであるタングステンの産地だからである。
史実世界においてもタングステンは中国が生産量の8割、次いでロシア、カナダが産出国であった。
残念ながら我がドイツを含めて同盟各国にはタングステンを纏まった量を産出する国は無く、各国で細々とした産出やカナダからの輸入に頼っていた。
カナダ産のタングステンの問題は、輸送コストが高く、戦争ともなれば航路が襲われる可能性が高い事だ。
輸送には大西洋を渡らねばならず、どうしても船便が必要になるしその長い距離をみすみすソ連海軍が見逃すわけがない。
どうやらソ連は潜水艦の大型化を図って大西洋への進出を画策しているようで、既に20隻ほどの大型潜水艦が就役して配備状態にあるという。それだけでなく水上艦艇部隊の拡大も進めているらしく、得られた情報によると現在戦艦数隻の建造を進めているらしい。
詳細なスペックは掴めていないが、どうやら16インチ砲を主砲としているようで、それだけでも十分な脅威であるが、巡洋戦艦級も複数隻建造しているらしい。
重巡洋艦や軽巡洋艦といった艦艇も纏まった数が建造されているらしく、通商破壊に乗り出してくれば大きな脅威となる。
史実のソ連海軍は独ソ戦開戦の影響などもあって結局殆どの艦艇の建造を中止したりしてマトモな海軍を有していなかった筈なのだがどうやらこの世界のソ連は、海軍軍備計画をかなりの勢いで進めているようである。
それらからシーレーンを守ったりするのに、どうしてもこちらも戦力が必要となるのである。
大軍拡を進めるソ連海軍に対する我がドイツ海軍の建造計画は戦艦4隻、空母8隻、重巡8隻が主戦力となる。
ビスマルク級戦艦のスペックは以下の通りになる。
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ビスマルク級戦艦
同型艦 ビスマルク
ティルピッツ
グナイゼナウ
ウルリッヒ・フォン・フッテン
全長 260m
主武装 50口径41cm3連装砲3基9門
副武装
10cm連装両用砲12基24門
40mm連装高射機関砲 14基28門
20mm連装高射機関砲 27基54門
20mm単装高射機関砲 37基
レーダー
対水上レーダー2基
対空レーダー 4基
射撃用レーダー 8基
光学機器 多数
射撃管制装置
主砲用 6基(2基予備)
両用砲用 4基
40mm高射機関砲用 6基
20mm連装高射機関砲用 9基
機関
ワーグナー式重油専焼高圧型水管缶 14基
ブラウン・ボーベリー式ギヤードタービン4基4軸推進
機関最大出力
161000hp(標準蒸気圧時出力)
170100hp(高加圧時出力)
最大速力 33.6ノット
航続距離 16ノット/8500海里
乗組員 2313名
装甲厚
舷側 340mm
第一甲板舷側部 150mm
水線面下部 180mm
主砲正面 370mm
主砲側面 230mm
主砲後部 330mm
主砲天蓋 180mm
主砲バーベット部 350mm
両用砲砲正面 100mm
両用砲側面 80mm
両用砲後部 40mm
両用砲天蓋 50mm
司令塔 全周400mm
艦載機 アラドAr193A‐3水上偵察機2機
カタパルト 艦後部1基
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というような感じになる。
主砲の41cm砲は日本から長門型戦艦の主砲設計図やノウハウを取り寄せ、日本海軍技術者を招聘して完成させたものである。
最新の光学機器や射撃レーダーと組み合わせたものであり、現時点では世界中で最も進んだ戦艦主砲であろう。
元々ビスマルク級戦艦の建造数は2隻に抑える予定だったのである。
だが諜報部がソ連海軍の建造計画を掴んだことで、戦艦2隻では足りないのではないか、という議論になった。
私としては空母が8隻あればソ連海軍を艦載機で叩き潰せると踏んでいたのだが、やはりこの世界でも航空機で戦艦を撃沈することは不可能という認識が強く、実例も無い為に私も海軍を説き伏せるだけのことが出来なかったのだ。
だから空母8隻を最優先で建造し、実戦配備に就かせることを海軍に認めさせる変わりに、こちらも戦艦4隻の建造を認めたのである。
ビスマルク級戦艦は史実のビスマルク級の問題点を修正したようなものである。
史実のビスマルク級戦艦はどうしても間に合わせ感があったが、この世界では時間があるので入念に設計を行い修正するべき場所は徹底的に修正したのである。
推進軸を4基に増やし、装甲厚や装甲部も必要な場所に必要な厚さを施してある。
特に対砲弾防御だけでなく水雷防御も大きく強化されており、1tクラスの航空魚雷でも10発程度ならば耐えられるように設計されている。
ダメコン能力も高く設計されており、艦内にはダメコン専門班が複数存在しよりダメコン性能を高められるようにしてある。
対空兵装も大幅に増やされており、特に当初は15cm3連装砲を副砲として装備する予定だったのを、10cm連装両用砲に変えることで対空、対艦の両方を担えるようにしてある。
レーダーや射撃管制装置も実用レベルのものが完成したので、それも搭載している。
1番艦ビスマルクは1936年2月から建造が開始され、1937年12月の就役を目指しているところである。
2番艦ティルピッツは1937年3月に建造を開始し、1939年2月頃の就役を目指している。
3番艦グナイゼナウは1939年建造開始、1941年の就役を目指している。
4番艦ウルリッヒ・フォン・フッテンは1941年建造開始、1943年就役を目指している。
今は1937年7月なので今年中にはビスマルクが就役し、来年の7月頃には訓練を終えて戦力化される予定である。
空母は既に1番艦~3番艦までが建造を開始しており、それぞれ1936年2月、1936年7月、1936年12月に建造を開始しており、3隻とも1938年に就役する。
4番艦以降の就役は4番艦と5番艦が1939年に、6番艦1940年、7番艦1941年、8番艦1942年の就役予定となっている。5番艦以降は年に1隻の就役と建造を目指すと言うわけである。
搭載機は80機を予定しており、スペックと搭載艦載機は以下の通りになる。
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グラーフ・ツェッペリン級航空母艦
同型艦 8隻
排水量 34500t
全長 270m
最大幅 32m
吃水 7.6m
機関
ワーグナー式重油専焼高圧型水管缶 12基
ブラウン・ボーベリー式ギヤードタービン4基4軸推進
機関最大出力
200000hp(標準蒸気圧時出力)
220000hp(高加圧時出力)
最大速力 36ノット
航続距離 16ノットで8500海里
乗員 2100名
兵装
10cm連装両用砲8基16門
40mm連装高射機関砲12基24門
20mm連装高射機関砲12基24門
20mm単装高射機関砲34基
レーダー
対水上レーダー 1基
対空レーダー 3基
射撃レーダー 6基
光学機器 多数
射撃管制装置
両用砲用 4基
40mm高射機関砲用 4基
20mm連装高射機関砲用 4基
発艦用カタパルト
蒸気式2基(耐荷重6000kg)
装甲
舷側200mm
装甲板、燃料タンク、空間装甲、不燃材、装甲板の積層装甲
甲板
30mm装甲板の上に木甲板貼り付け
搭載機 80機
煙突は艦橋一体型を採用している。
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機関出力がビスマルク級戦艦よりもかなり高いが、これは発艦用蒸気カタパルトを装備しており、そちらに流用する為である。
この大型艦建造の為に、ドックを幾つか新しく建設しており、そちらにも大分お金が掛かっているが、この世界のドイツは同盟各国に武器弾薬を輸出しているので、一応歳入はある。
それ以外にも貿易などで工作機械などを日本やイタリアに輸出したりとあの手この手で稼いでいるので、史実よりは経済状況はマシというレベルである。
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戦闘機 Fw190
BMW社製空冷エンジン 1基
武装 20mm機関砲4門
7.92mm機銃2門
選択装備 250kg爆弾2発
100kg爆弾4発
50kg爆弾4発
上記の何れか
速度 600km/h
航続距離 1700km
全備重量 4800kg
防弾性能
燃料タンクは防弾ゴムと5mm厚防弾板の2重構造。
コックピット周りは30mm厚の防弾板で全周を囲い、前面30mm、側面15mm、後方30mmの全周防弾仕様。
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攻撃機 Fw190(複座雷撃型)
BMW社製空冷エンジン 1基
固定武装 7.92mm連装旋回機銃 1基
選択武装 1t航空魚雷(胴体下懸架)
500kg爆弾2発(胴体下懸架)
250kg爆弾4発(胴体下懸架)
以上から1tまで
速度 550km/h(1t航空魚雷搭載時)
航続距離 1500km
全備重量 5400kg
防弾性能
燃料タンクは防弾ゴムと5mm厚防弾板の2重構造。
コックピット周りは30mm厚の防弾板で全周を囲い、前面30mm、側面15mm、後方30mmの全周防弾仕様。
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急降下爆撃機 Fw190(複座爆撃型)
BMW社製空冷エンジン 1基
固定武装 7.92mm連装固定機銃 1基
選択武装
500kg徹甲爆弾1発(胴体下懸架)
500kg通常爆弾1発(胴体下懸架)
250kg通常爆弾4発(胴体下、翼下懸架)
100kg通常爆弾8発(胴体下、翼下懸架)
50kg爆弾14発(胴体下、翼下懸架)
20cmロケット弾2発
15cmロケット弾4発
10cmロケット弾8発
以上の中から1tまで選択可能
速度 560km/h
航続距離 1500km
全備重量 5200kg
防弾性能
燃料タンクは防弾ゴムと5mm厚防弾板の2重構造。
コックピット周りは30mm厚の防弾板で全周を囲い、前面30mm、側面15mm、後方30mmの全周防弾仕様。
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3機種とも大元は空軍向けに開発された機体で、それを艦載機用に必要な装備を搭載したり手直ししたものなので、空軍戦闘機Fw190と同じ機種と言えるものだ。
空軍仕様のFw190は以下のスペックの通り。
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Fw190(空軍仕様)
BMW社製空冷エンジン 1基
武装 20mm機関砲4門
7.92mm機銃2門
選択装備 250kg爆弾2発
100kg爆弾4発
50kg爆弾4発
上記の何れか
速度 653km/h
航続距離 2000km
全備重量 4500kg
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艦載機仕様よりも軽量且つ、高速であるのが特徴だ。
艦載機に必要な装備が丸々要らないのだから、その分軽いのは当然だしそうなると速く飛べるのも当然である。
航続距離も若干こちらの方が長い。防弾装備に関してはどちらも同じである。
空軍仕様のFw190を関西戦闘機型に改造し、そこからさらに艦載戦闘機型Fw190を改造して雷撃、急降下爆撃に特化させることで、機体を用意したのである。
これは単純な話だが、整備性や量産性を上げる為だ。
空母という限られた空間の中で、整備性を確保することは最重要だ。
そこで艦載機の3機種とも大元が同じ機体ならばエンジンや機体の整備は同じマニュアルを使って、それぞれ固有の装備の整備マニュアルを別に作れば解決する。
人手不足もあってそう簡単に熟練整備兵を育成する余力の無いドイツ海軍からすれば、全部同じ機体で整備方法も固有装備を除けば全部同じというのはかなりのアドバンテージになる。
戦闘機には爆弾懸架用の装備は整備の際に後付けでちょっとなら爆弾が搭載出来る。
雷撃型や急降下爆撃型の2つは、それぞれに転用が出来なくも無い。ただ、懸架装置の交換がかなり面倒なので、基本的には余程の緊急でない限りは行われることは無いだろう。
極端な話、空軍機を海軍の艦載機に改造して運用することも出来るし、艦載機仕様のものを改造して空軍機として運用することも出来るのである。
……ん?今思えばこれって多用途戦闘機と同じようなものなのでは?
フォッケウルフ社から提出されたときは、同じ機体で4役熟せるなんて物凄くお得じゃないか!って喜んでいたが、もしかしてフォッケウルフ社、物凄く張り切って設計開発したのでは?
後で凄く褒めて心ばかりになってしまうが私の自腹でモーゼルワイン辺りを贈っておこう。
空母の艦載機は1隻辺り80機の搭載機を誇るので8隻で640機。
定数だけで640機なので、補充用や予備機、訓練機を含めればざっくり1000機ほどの生産数になる。どれぐらいの損失機が出たりするのかは分からないが、少なくとも800機程度の生産はされる予定だから赤字になることも無いだろう。
空母の建造はまだ終えていないが、母艦航空隊となる第1空母戦闘団、第2空母戦闘団、第3空母戦闘団の編制は完了しており、日夜訓練に励んでいる。
問題は空母での発着艦訓練が建造が完了して、試験を終えて、空母乗組員の訓練が終わらなければ出来ないと言う事である。なのでまだ1年半は発着艦訓練が出来ないと言う訳なのである。
それに更に言うとFw190に問題が無いかと言われると、実はそんなことは無く、問題がある。
というのも元々空軍戦闘機として開発されたわけだから、離陸する際に長い滑走路が必要であるのと、着艦速度が速いことだ。
諸外国の空母艦載機を見てみると、艦首を風上に向けて合成風力を作り出して発艦するが、残念ながらFw190はそれが出来ないのである。
機体重量から見れば史実アメリカ海軍艦載機のF4Uと同程度、F6Fよりも軽い、といった具合だが、元々が陸上機用のエンジンを搭載しているので、速度を出して発艦するとなると距離が必要になるのである。
そうなると、航空機の運用機数に制限を設けて、12機~16機程度に抑えて飛行甲板の後ろの方から滑走を始めるか、それとも別の方法で解決するしかない。
グラーフ・ツェッペリン級航空母艦の全長は270mと、空母大国である日米の空母より10mほども長いが、全長が長くなったのには艦載機の都合があったのである。
まぁその分艦載機数や搭載対空火器などに余裕が出来たが、出来れば260mぐらいに抑えたかったのが実のところなのである。
270mの全長を誇っているが、これでもFw190の発艦には難があるとされており、結局解決手段として採用されたのは蒸気式カタパルトだった。
全くノウハウが無い状態だったが、それでも何とか形にして実用に耐え得るものを完成させた技術者陣には金一封を与えたほどだ。
カタパルトが無いと、空母1隻辺りで一度に発艦出来る艦載機数が、飛行甲板の一番後ろのギリギリから艦載機を並べても16機程になってしまうので戦術的にもかなりのアドバンテージとなる訳である。
艦隊編成としては空母2隻で1個艦隊を編成しようと言う事なので、16機しか一度に発艦出来ないとなると合わせて30機しか攻撃隊を送り出せないことになる。
基本的に対艦攻撃とは飽和攻撃なところがあるので、たった30機で、戦闘機を入れたら、雷撃機と急降下爆撃機でたったの22機である。これでは回避されたり外したりすることを考えれば巡洋艦ですら撃沈出来るかどうか怪しいところなのである。
それを解消することが出来るというのは大きいのだ。
あの手この手で試行錯誤しつつ、マニュアルを作ってはその都度修正していく必要がある。
何せ空母運用という点において我々は冒険者であるのだから。
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重巡洋艦に関しては既に3番艦までが就役しており、海軍に引き渡されて訓練中である。
第1艦隊として編制された彼らは、北海やノルウェー海で日々訓練を行っている。
第1艦隊の母港はキール港であり、第2艦隊はキール港、第3艦隊はヴィスマル、第4艦隊はエッカーンフェルデになる予定である。
フレンスブルクも候補に挙がっていたが、デンマーク国境と近く機密保持の観点から候補から外された。
ハンブルク港も候補の一つだったが、エルベ川河口から100kmの内陸部に位置する内陸港であり、緊急出動をするには不便であることが挙げられ、商船の往来も激しいので巨大な軍艦が停泊していられるほどの余力が無いことから候補から外された。
ドイツ海軍艦艇を建造している海軍工廠やドックはキール港、ハンブルク港、ヴィスマル港、ブレーマーハーフェン港、ロストク港、ぺーウ港、シュトラールズント港、アルト・ムクラン港の6箇所に集中している。
これは民間造船所も含めてなのでどこか一か所でもやられると建造計画などに大きな影響が出る。
基本的にドイツに大規模な艦隊が複数停泊出来る港はキール港かエッカーンフェルデぐらいしかなく、事実第1艦隊と第2艦隊はキール港を母港にする予定であり、第3艦隊のヴィスマルも母港としては手狭、と言った感じである。
空母と戦艦、重巡洋艦を収容出来るドックは、キール港とハンブルグ港の合計8個のドックしか無く、戦艦と空母は所属艦隊に関わらず整備や改装、修理はキール港とハンブルク港のどちらかで受ける必要があるのだ。
それ以外の場所では駆逐艦や軽巡洋艦は他の港の造船所でも大丈夫だが、それでも数が足りないのは事実である。
今のところ重巡3隻を主力とした合計23隻の艦隊がドイツ海軍の主力である。
それまで存在していた旧式艦艇は全て解体し、新造艦の建造の為の資材として再利用されているので、殆ど残っていないのが現状である。
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海軍軍備は勿論のことだが陸軍国家として、陸軍も海軍以上に十分に整備をしなければならない。
4号戦車は量産性に優れており、各地の工場で月産300両の勢いで作られているが、それでも年間3600両であり、41年まで作ったとしても37年~41年までの5年間で単純計算で18000両だが、実際は15000両が良い所だろう。
これに1938年に入れば5号戦車が加わるので、4号戦車の生産数は絞られてくるので12000両揃えられれば良い方だ。
5号戦車は1941年までに8000両の生産と配備を目指しているので、合計で2万両。
だがT‐34の生産数はこれの倍以上だ。
戦車の数ではどうやっても敵いそうにないし、各国に生産をさせようにも既にそれ以外の装備の製造で生産ラインは手一杯。とてもでは無いがこれ以上の戦車の生産を行えるほどの余力は同盟国にはない。
なので別の方法で戦車を狩る必要がある訳である。
対戦車砲も一つの手だが、通常の歩兵が敵戦車を50m、100mの距離から撃破出来るようになれば歩兵戦術に革命が起きる。そこで各企業や陸軍兵器開発局に歩兵携帯式対戦車火器の開発を命じたのである。
こうして出来たのは、モンロー・ノイマン効果を用いて敵戦車を撃破する、フーゴ・シュナイダー社から提出されたパンツァーファウストなるものと、陸軍兵器開発局から提出されたロケット弾を改良したオーフェンローア(日本語で煙突という意味)である。
ざっくり説明すると前者は、史実パンツァーファウストと殆ど同じようなものであり、携帯性に特に優れている。
射程も要求された50m以上を超える70mと、性能はクリアしており、垂直装甲であれば150mmの貫通力を持っている。自軍戦車を撃破出来る程度の性能であり、ソ連軍戦車でも十分に撃破可能だろう。
生産性が高くコストも安いし、構造も単純なのでちょっとの訓練で使えるようになるし、使い捨てなので使用後は速やかに離脱が可能で生存性も従来に比べれば高く、対戦車砲よりも歩兵一人で運用出来るので機動力は圧倒的に高い。
ただし、弾頭飛翔速度が極端に低く、山なりの弾道を描いて飛ぶので命中精度が低いという欠点がある。
オーフェンローアは、空軍戦闘機や対地支援攻撃機に搭載される10cm対地ロケット弾を改良して、同じくモンロー・ノイマン効果を用いた成形炸薬弾頭を有したロケット弾を発射する、対戦車ロケットランチャーである。
これの優れている点はパンツァーファウストより射程が長く、150mの射程を有するところである。装甲貫徹能力も角度90度の装甲に対して250mmの貫徹能力を有しているので、馬鹿みたいな超重戦車とかでもない限りは自軍敵軍問わず、すべての戦車や装甲車を撃破可能である。
ただし問題がある。
オーフェンローアはパンツァーファウストに比べて構造が複雑であり、しっかり訓練した兵士でなければ扱えない。
点火するのに電気を用いるので発電用のダイナモを装備しており、尚且つ元が10cm対地ロケット弾というのもあって発射器含めて重量が13kgを超えるという代物だ。しかも運用には射手の他に弾薬運搬手を含めて2~3名必要になるという。
後方に発射時の爆風を逃がして反動を抑制するので、射撃時に後方に立っていると大怪我を負う可能性がある。そこで射撃の際は後方に人員が存在しないかを留意し、射手は伏せ撃ちを行う場合は足を爆風に当たらないように身体を捻ったりして構える必要がある。
ただしパンツァーファウストに比べて命中精度が高く、何処に命中しても敵戦車を撃破可能という性能である。
結果、どちらを採用するか揉めに揉めた上でパンツァーファウストを主に各歩兵分隊に4本づつ配備することになり、オーフェンローアは小隊に付き2門配備することが決まった。
どちらも基本的に待ち伏せ兵器なので、運用としては複数方向から複数の射手が一斉に射撃することが義務付けられた。
それ以外の運用法だと、ワイヤーかロープを撃発装置に繋いで敵戦車が通って引っ掛かると、射手無しでも発射して撃破出来るというブービートラップ的な運用も出来るとしてマニュアルが作成された。
十分に隠蔽された状態であれば、どちらとも敵戦車を奇襲的に撃破が可能なので防御戦闘を主眼としている現状ではどちらも有用な兵器である。
そうこうしている中で、降下猟兵師団が4個新しく設立された。
この師団は言わば空挺部隊で、敵地後方に輸送機で運ばれ降下する任務を帯びている。
対ソ戦における反撃作戦の際にソ連領内の重要地点であるサンクトペテルブルクに強襲上陸を行う作戦計画があり、その際に降下猟兵師団はサンクトペテルブルク後方に降下し包囲殲滅戦を展開する役目がある。
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空軍も拡張を続けており、Fw190の他に迎撃戦闘機Bf109、4発重爆Me366と対地支援攻撃機Bf101、高高度高速戦略偵察機Me211の配備が進められている。
Fw190の性能は既に話した通りだから、重爆と対地支援攻撃機について。
迎撃戦闘機
Bf109
最高速度 652km/h
武装
A型20mm機関砲4門(各門130発づつ)
B型30mm機関砲2門(各門60発)
20mm機関砲2門(各門130発)
C型30mm機関砲4門(各門60発)
エンジン
ダイムラー・ベンツ社製液冷エンジンDB603
航続距離 1050km
最高飛行高度 10400m
防弾性能
燃料タンク
装甲板と防弾ゴムの3層構造
コックピット 側面30mm
正面50mm
背面50mm
底部30mm
コックピットは厚さ30mmの全周防弾ガラス
迎撃戦闘機は極端な話、航続距離を気にしなくてよく、1000kmほどの航続距離に抑えられている。
燃料タンクは胴体にあるものだけで、翼内には武装が目一杯乗せられるようにしてある。
燃料タンクが胴体にある以上、被弾時の火災で搭乗員が危険に晒される可能性が高く、その分防弾性能と消火装置はFw190よりも優れている。
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4発重爆撃機
Me366A型(最大爆装量搭載時)
最高速度 522km/h
武装
機体上部に旋回式20mm連装機関砲1基
機体下部に旋回式20mm連装機関砲2基
機体正面に20mm連装機関砲1基
機体尾部に20mm連装機関砲1基
機体両側面に7.92mm連装機銃4基
航続距離 3200km
最高飛行高度 11000m
爆弾搭載量 4tまで
1t爆弾4発
500kg爆弾8発
250kg爆弾16発
100kg爆弾30発
搭乗員 12名
最高速度こそ要求性能に満たなかったものの、それ以外の性能は十分であり今後の改良で解決するとして採用となった。
生産性と整備性は高いものの、ユニットコストが戦闘機の6倍と高額であり、どうしても生産数が伸びず、現在でも300機をどうにかこうにか配備するに留まっているのである。
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4発輸送機
Me366B型(物資量最大搭載時)
最高速度 470km/h
武装 無し
航続距離 3200km(物資4t搭載時)
最高飛行高度 5000m
搭載量(以下の中から何れか)
完全武装兵士40名
物資4t
重迫撃砲4門
病床10床 軍医2名と看護兵8名
エンジン BMW社製空冷エンジン 4基
爆撃機のMe366をそのまま輸送機仕様に改造したものだ。
こちらも生産コストが高く、戦闘機の4倍になっており、生産数は130機に留まっている。
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対地支援攻撃機
Bf101(最大武装時)
最高速度 421km/h
武装
機首に20mm機関砲4門
機体上面に7.92mm連装旋回機銃1基
爆装 1tまで
500kg爆弾2発
250kg爆弾4発
100kg爆弾6発
ロケット弾 8~16発
エンジン BMW社製空冷エンジン 2基
航続距離 2000km
最高飛行高度 4000m
乗員 3名
生産性、整備性は高いがユニットコストが戦闘機の2倍となっており、生産数は細々と続けられ500機ほどが配備状態にある。
フィンランドとルーマニア、バルト3国にそれぞれ50機が配備されており、残りの350機は全てポーランド、チェコ・スロバキア、ハンガリーに集中して配備されている。
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高高度高速戦略偵察機
Me211
最高速度 730km/h
武装 無し
装備 写真撮影機等
エンジン
ダイムラー・ベンツ社製液冷エンジンDB614 2基
航続距離 6000km以上
最高飛行高度 13000m
与圧コックピット、酸素呼吸器装備
乗員 2名
生産コストは戦闘機の13倍、整備性と量産性は皆無という、少数生産が目的の機体である。現在この機は各方面軍の直轄で運用され、生産数は現時点で30機となっている。
機体は可能な限り空力学的に洗練されており、徹底して空気抵抗の排除をしている。
エンジンもこの機体の為だけに開発された特別性の液冷エンジンを搭載しており、このエンジンがまた曲者なのである。構造が複雑で、整備には専門の訓練と教育を受けた整備兵が行う必要があるのだ。
とは言え情報は何よりも重要なので、金を掛けているわけである。
配備状況は5機がフィンランド、5機がバルト3国、5機がポーランド、5機がルーマニア、チェコ・スロバキア・ハンガリー方面に5機。
ドイツ本国に5機である。
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戦闘機は戦闘航空団と防空戦闘航空団、爆撃機は爆撃航空団、輸送機は輸送航空団、対地支援機も支援戦闘航空団、戦略偵察機は偵察航空団として編制されている。
戦闘航空団は6個飛行隊を束ねた戦闘単位であり、定数216機に予備機20機を含めた合計236機の戦闘機で編成される。
現在15個戦闘航空団が実戦配備に付いている。
第1戦闘航空団(ドイツ)
第2戦闘航空団(フィンランド)
第3戦闘航空団(フィンランド)
第4戦闘航空団(ポーランド)
第5戦闘航空団(ルーマニア)
第6戦闘航空団(フィンランド)
第7戦闘航空団(ルーマニア)
第8戦闘航空団(ポーランド)
第9戦闘航空団(ハンガリー)
第10戦闘航空団(チェコ・スロバキア)
第11戦闘航空団(ポーランド)
第12戦闘航空団(フィンランド)
第13戦闘航空団(ドイツ)
第14戦闘航空団(ルーマニア)
第15戦闘航空団(ルーマニア)
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防空戦闘航空団は6個が配備状態にある。
ざっくり1500機が稼働状態にあるわけである。
第1防空戦闘航空団(ドイツ)
第2防空戦闘航空団(ポーランド)
第3防空戦闘航空団(フィンランド)
第4防空戦闘航空団(ハンガリー)
第5防空戦闘航空団(ルーマニア)
第6防空戦闘航空団(ルーマニア)
ルーマニアに多く配備しているのは油田があるからである。
ルーマニアから産出される石油はドイツだけでなく同盟国全体の生命線とも言える最重要施設だ。
それを爆撃から守る為に2個航空団が配備されているのである。しかも産油地帯に駐留しているから高品質な航空燃料を直接供給され、たっぷりと使って訓練出来るので練度も申し分無い。
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爆撃航空団は2個爆撃航空団が編成されており、ベルリン近郊とドレスデン近郊に所在地がある。
2個航空団が細々と生産された機体を受領して編成されつつあるがMe366重爆撃機の生産数が少ない為に遅々として進まない。
予定では7個航空団1050機の配備を予定しているが、1941年までに間に合うかどうか……。
第1爆撃航空団(ドイツ)
第2爆撃航空団(ドイツ)
第3爆撃航空団(編成中)
第4爆撃航空団(編成中)
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輸送航空団は20機から編成され、全部で6個航空団が配備中、1個航空団が装備受領待ちである。
第1輸送航空団(ドイツ)
第2輸送航空団(フィンランド)
第3輸送航空団(ルーマニア)
第4輸送航空団(フィンランド)
第5輸送航空団(フィンランド)
第6輸送航空団(ハンガリー)
第7輸送航空団(編成中)
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支援戦闘航空団は36機のBf101から編成されており、14個航空団が配備状態にある。
第1支援戦闘航空団(ドイツ)
第2支援戦闘航空団(ハンガリー)
第3支援戦闘航空団(フィンランド)
第4支援戦闘航空団(ポーランド)
第5支援戦闘航空団(ルーマニア)
第6支援戦闘航空団(ドイツ)
第7支援戦闘航空団(チェコ・スロバキア)
第8支援戦闘航空団(フィンランド)
第9支援戦闘航空団(フィンランド)
第10支援戦闘航空団(フィンランド)
第11支援戦闘航空団(フィンランド)
第12支援戦闘航空団(ポーランド)
第13支援戦闘航空団(ポーランド)
第14支援戦闘航空団(フィンランド)
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偵察航空団は6個航空団が編成されている。
第1偵察航空団(ドイツ)
第2偵察航空団(ポーランド)
第3偵察航空団(バルト3国)
第4偵察航空団(フィンランド)
第5偵察航空団(ハンガリー、チェコ・スロバキア)
第6偵察航空団(ルーマニア
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これらとは別にドイツ本国には訓練を目的とした、訓練航空団が3個設置されている。
ドイツ本国の航空団は基本的に各地の航空団の交代要員の意味合いが強く、消耗したら交代で前線に出て行くという形になる。
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1939年。
経済的にも、あの手この手とやったお陰で随分と立て直すことが出来た。
国民生活も1930年に比べれば遥かに良い方向に進んできているし、公共事業とは言え雇用も大きい需要があるので失業率も13%程度にまで抑えられている。
現在の公共事業は、鉄道の敷設と自動車道路交通網を全国中に網羅することである。特に鉄道は同盟各国とレール幅を同じものにしてドイツから直接、荷物の積み替えをしなくてもそのまま前線近くの駅まで物資を運べるようにしているところだ。
だから各国でも人手不足が発生しており、ドイツから出稼ぎ労働者が多数流れている状況だ。
線路敷設はあと1年で人海戦術と機械化で無理矢理達成させる予定だ。
今のドイツ経済状況は、月収にもよるが1年か2年、貯金を行えば自動車を購入することが出来るというぐらいにまでなった。
自動車の値段自体が安くなったというのも一つの理由であろう。
今までは自動車と言えば、高級車ばかりが基本で一般市民でも手を出せるような価格設定というのは無かった。
アメリカを除けば、という話だが、アメリカは世界恐慌の爆心地で経済的に大打撃を被っていたというのに、五か年計画で大成功していたソ連の3倍の経済力があったわけだから比べるのがおかしいのだ。
というかアメリカは天然ゴム以外の資源を自国内で全て賄えてしまえるというのがズルい。
我が国では、天然ゴム産出地を植民地とする各国から輸入することが出来ているが、かといってシーレーンが寸断されないとは限らない。そこで合成ゴム工場を建てているのである。
流石に需要の全てを賄い切れるわけではないが、万が一シーレーンが攻撃されて寸断された場合に備えてのことだ。
合成石油精製プラントも各地に建設しており、ルーマニアの石油施設が入ってこなくなった場合に備えているのは前述の通りである。
話が逸れたが、我が社の自動車部門にあえて性能が低い自動車やバイクを作らせ、それを販売させたのだ。勿論価格が安いからと言って信頼性が悪いというわけでは無いことは名言しておく。
ドイツ人の生真面目な気質からして、技術者陣は受け入れがたいという態度を最初は示していたが、商売とは利益を出した方が偉いのである。
利益を出して経済を回して、国の経済的復興の一助になって欲しいと説得すると頷いてくれたのである。
結果として、低級労働者ならば3~4年、中級労働者ならば1~2年ぐらい貯金すれば購入が出来るという値段の、格安とも言える自動車が完成したのである。
バイクに至っては1年貯金すればだれでも買える、史実現代日本で言うところの原付バイク、軽自動車のようなものが出来上がり、こぞって買い求めたのである。
性能的には、軽自動車が時速60km程度の最高速度と、2人乗りと4人乗りで選ぶことが出来る。
原付バイクは40kmほどの最高速度に抑えられおり、勿論1人乗りである。
こんな形で発売された我が社の製品は、それまで手の届かなかった自動車やバイクが購入出来るとあって、それはもう飛ぶように売れるのだ。
しかも現金一括払いの他に、ローン払いも可能とあって多くの労働者や農家といった旧来であれば自動車を一生掛けても手に入れられなかった者達がこぞって購入していったのである。
それを見た各自動車メーカーは、我も我もと次々と格安自動車事業に参入し始め、自由競争市場が形成されたのである。
勿論消費者第一の為の法案や環境に配慮した法案を通しているので、それに基づいた性能を有しなければならない。
この自動車とバイクは、飛ぶように売れていき、同盟各国にも次々と輸出されており、我が社はウハウハである。
とまぁ、目論み通り市場経済があちこちで活性化しており、どんどん経済が回っている状態を作り出せたのである。
我が社は抱えている社員の数が多く、現代感覚で色々と、住宅補助金だったり自動車補助金だったり、子供や奥さんがいたら補助金出したり、所謂福利厚生を整えたりしていたら、次々と入社希望の優秀な人材がポンポン入ってくることになり、これは良い意味での大きな誤算であった。
経済が活性化していると言う事は、必然的に税収も増えており、気が付けばヴェルサイユ条約で課され、アメリカの仲介で少なくなった賠償金は1938年時点で払い終わり、内政や軍事に予算を全て使える状態になったのである。
そうなるとより一層加速していくことになるが、そこは現代日本を知っている私である。
必要以上に、経済が暴走気味に成長しないように最初から歯止めを掛けて置いたのである。そうすることで意味の分からない勢いで経済成長して、ある日突然ドカンと落ちるようなことにならないように事前に防いでおいたのだ。
特に土地転がしと呼ばれるものは当初から規制対象となっており、首都ベルリンや大都市の地価暴騰という事態にならないようにしている。
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1939年5月。
各地の防空体制も、特に現在はフィンランドを重点に置いて整いつつある。
フィンランドはソ連との冬戦争が控えている。
この世界のソ連もフィンランド相手に領土的野心を剥き出しており、フィンランド政府からは既にソ連から非公式ではあるが領土割譲を要求する文書が届いている。
そこにはスターリンの署名もあり、早ければ9〜10月頃には開戦となる可能性があるという。
カレリア地峡の防衛を主眼に置いた戦略を採るフィンランド軍は総兵力20万人。動員をすれば40万人か50万人は集められる。戦車は約600両、航空機約1000機。
どうにかこうにか、これだけの兵力を揃えられたのである。
しかしソ連は100万を余裕で超えるらしく、150万に達するという情報もある。戦車は約7000両、航空機約4000〜5000機。
兵力差は3倍〜14倍となっており、まともにやっても勝ち目は無い。
しかしながらソ連は軍部から一般市民に至るまで、史実で言うところの大粛清を実行中であり、主要な将軍や指揮官達も軒並み処刑されるかシベリアの強制収容所送りになったという。
トゥハチェフスキーを始めとした優秀な将軍達は既にあの世に送られたというから恐ろしい。
更に言うと我らがフィンランド軍の練度は驚くほど高く、合同訓練を指揮したマンシュタイン大将曰く、
『フィンランド軍の士気、練度は驚くほどに高く、少なくとも冬季戦に於いては、フィンランド軍は我がドイツ陸軍の練度や戦術を遥かに凌ぎ、洗練されており我が陸軍でも敗北の憂き目に遭うのは間違いない』
と称賛している。
確かにその通りで、マンネルヘイム将軍が指揮するフィンランド軍はカレリア地峡防衛線を熟知し尽くしており、まず負ける事はないだろう。
基本はフィンランドに任せるが、いざとなればドイツも味方なので共に戦う準備も出来ているし、フィンランドに駐留しているドイツ軍には冬季戦の為の防寒具を始めとしたスキーなども装備させているからフィンランド軍程とは行かずとも、指揮や士気、練度に問題を抱えるソ連軍を叩く事は出来る。
7個師団約14万の兵力でカレリア地峡一帯を含むフィンランド南部を防衛し、残る3個師団6万の兵力で北部、中部を守る計画だ。
3号戦車を主力とする装甲師団は南部に2個師団、北部と中部には2個連隊づつを配置する。
フィンランド南部に集中するマンネルヘイム線と呼ばれる堅固な防衛線は、あらゆる防御陣地を配置しており、パックフロントや悪魔の庭、それらを改良した陣地が多数ある。
これを突破するのは容易では無い。
リュティ率いるフィンランド政府はいざとなればすぐに戦時体制に移行できる体制を作っているので、官軍民問わず準備万端である。
これと並行して、外交政策も色々と手を打っておく必要がある。
一つ目は大日本帝国をどうするか。
対ソ戦という観点から見ると、日本というのは味方に付けておきたい存在なのである。
直接参戦と行かずとも、満ソ国境に兵力を配置していてくれるだけで、その分ソ連はそちらにも防衛兵力を配置せねばならず、こちらも楽になるのだ。
だが問題は大日本帝国は既に泥沼の日中戦争を繰り広げているということだ。
お陰でアメリカとの関係は最悪となっており、このままいけば遠からず日米開戦となるのは明らかである。そこでどうにかして日本をこちらの味方に引き込みつつ、余計な戦争をさせないようにするにはどうすればいいかと考えたとき、あることを思いついたのである。
【そうだ、日英に再び同盟を結ばせればよいのだ】
と。
イギリスも少なからず日本の南下を警戒しており、これを解消出来るのであれば喜ばしいことだし、なによりこの時期はまだ日英関係は特別悪いというわけでは無かった。
というのもこの世界ではソ連という脅威があるとドイツがイギリスに働きかけたことで、イギリスの注意はソ連に向いているのである。要はイギリスが反共主義に傾いたということである。これを上手く利用して、中国が丸々共産主義に染まるぐらいなら、日本が共産党を叩いてくれた方がいいと吹き込んだのだ。
そうしたら何がどうなったのか、1939年9月30日に割とあっさり『第二次日英同盟』が締結してしまったのである。
こっちとしてはそれなりに手古摺るか、なんなら同盟締結は出来ないのではないかと考えていたから拍子抜けである。
ついでに日本に、というより天皇に軍部の色々と知られたくない裏金とか関東軍の暴走とかを教えたら、日本は日本で粛清の嵐が吹き荒れたのだ。
いやまぁ、情報を教えておいてなんだが、あそこまでやるとは思っていなかった。
どうも2.26事件や5.15事件で天皇は色々と思うところがあったようで、情報を受け取ると1ヶ月程度で軍部と癒着していた企業や政治家の粛清を始め、ドイツが掴んでいる限りの情報だと数千人以上の軍人、企業、政治家が逮捕、投獄、或いは死刑にされたようである。
この時代の日本は過激というのを身を以て知ったのである。
粛清が終わると、日本は中国からさっさと兵を退かせた。
すると中国は数か月は国民党と共産党の争いも無く平和そうだったのに、すぐにまた内戦をし始めた。日本は国民党軍を支援し始め、日中戦争でぐちゃぐちゃのところに再び国共内戦という地獄に叩き落された中国の現状は滅茶苦茶である。
とはいえ我々の目的である日本の同盟参加は果たされることとなったのである。
日本には開戦となっても暫く参戦しないで、タイミング良く背後の一突きをお願いしてある。見返りはシベリアの一部だ。こっちとしてはシベリアは資源の宝庫だが、開発に時間が掛かり過ぎるので手に入れられたとしても一部で良いのだ。
私としては別に領土なんぞ面倒が増えるだけなので要らないと思っているのだが、それで納得する政治家や国民では無いというのが難しい所である。
この日英同盟締結の際になんというか、やはりアメリカ、もといソ連は良い顔をしなかったわけで、色々と裏工作を通じて同盟締結を妨害しようと画策していたがドイツ、同盟各国、イギリス、日本国内では共産スパイの取り締まりが激化し、特に日本ではリヒャルト・ゾルゲを始めとしたスパイ組織が丸ごと摘発、逮捕されていったことにより頓挫した。
この一斉摘発、逮捕は芋づる式にソ連に通じていた政治家や実業家、活動家、軍人が次々と摘発、逮捕されていったのである。
一般市民も逮捕されており、市民の場合は知らず知らずの間にスパイに仕立て上げられたというのが実のところらしいが、特別高等警察はその程度で手を抜くような優しい組織では無い。
逮捕者数は日本全国で3万人にも及ぶこととなり、殆どの人間が実刑判決を受けることになった。
特に政治家や実業家、活動家、軍人には厳しい刑罰が科されることになったのである。
この動きはドイツや同盟各国、イギリスでも変わらずであり、イギリスでも日本と同じような事態になっていたのである。
ドイツや同盟各国は以前から共産主義スパイや活動家を摘発していたのでそこまでの数では無かったが、それでも100名ほどが摘発されるに至ったのである。
イギリスには、日英同盟だけでなく、直接参戦は無いものの我々の工場としての役割も担っている。
特に貨物列車や機関車、牽引車の製造をしてもらっている。
現状同盟各国では軍の工兵に加えて公共事業ということで鉄道敷設事業で鉄道網を十分に構築したが、問題はそこを走る列車が無いことだった。
ドイツ国内で製造される列車の数は、兵器生産にリソースの大部分を割かれてしまっておりどうやっても数を揃えることが難しかった。そこでイギリスに鉄道製造を依頼したのである。
これにより、1940年までに機関車5000両、貨物列車12000両、兵員輸送貨車5000両を揃えることが出来るという
膨大な金が掛かるが、反共主義の権化であるチャーチルの好意で幾らか割り引いた金額で製造を担当してくれるというのだからこちらとしては損は無い。
イギリスも金が入って来るし、こちらは機関車や貨車を揃えることができるので、お互いに利益がある。
フィンランド国内にも十分な鉄道網が敷設されており、兵力移動も問題無く出来る。だだし、フィンランドとは陸続きでは無いので物資や兵力をドイツから送り込むとなると船舶輸送が必須となる。
輸送船に関しては自国内で揃えることが出来ているのでイギリスや日本への外注はしなくていいのが楽なところだ。
因みに機関車や貨物列車の製造の際、ヤード・ポンド法とメートルの違いで揉め、最終的にこちらに合わせたメートル・グラム法で進めることになり、後々イギリスはヤード・ポンド法を捨てることになるのだが、これは余談である。
ーーーーーーーーーーー
1939年11月31日。
史実と同じ日にソ連によるフィンランド侵攻が開始された。
最後通告として再度、カレリア地峡の割譲などを要求してきたが、勿論フィンランドはこれを全面拒否。結果、戦争となったのである。
どうやらソ連は我々同盟を警戒しており、何故かその同盟の中の一国であるフィンランドに領土割譲を要求するという意味の分からないムーブをしてきたのだ。
確かにソ連からすれば要衝であるレニングラード(サンクトペテルブルク)にフィンランド領が近いというのもあって、宜しくない状態だったのは間違いないが、かといって態々戦争する方向に舵を切って来るか?
そのまま何もしないでいればただ睨み合っているだけで済んだのに、実に愚かなことである。
同盟各国は警戒レベルを一気にMAXにまで引き上げ、国境線に兵力を集中させ、更なる侵攻に備えたがどうやらソ連は今回はフィンランドだけを相手にする腹積もりらしく、それ以外のところに攻撃を仕掛けて来る様子は今のところは無い。
同盟各国は即座にソ連に対して軍事行動の停止、フィンランド領内からの無条件全面撤退をするように要求したが、完全に無視されたわけである。
「さて、名目上は同盟国へソ連が軍事行動を行った件に対する緊急会議と言うわけだが、最初に現在の戦況を説明してくれ」
「
陸軍から、マンシュタイン中将が大きな地図を広げて指揮棒を指しながら戦況を説明する。
「フィンランド軍は国内に動員令を発令し、現在30万の兵力が揃っております。対するソ連軍の兵力は戦略偵察機からの情報によりますと、地上兵力約130万、戦車約7000両、航空機約4000〜5000機と推定されます」
「随分と多い。地上兵力だけで4倍以上か」
「北部戦線、中部戦線、南部戦線全てにおいてソ連軍はフィンランド軍防衛線と衝突し交戦中。しかしながら防衛線の突破は一切されておりません」
「要因はなんだね?」
「詳細なことは分かりませんが、幾つか理由が御座います。一つ目がフィンランド軍の防御陣地、防衛線が堅固であること。二つ目は戦時体制を整えて訓練を積んでいたフィンランド軍と大粛清の影響が色濃く残るソ連軍という分かり易い形での練度や士気の差で戦闘となったことです」
「大粛清の影響はやはり末端にまで出ているか」
「はい。とにかくソ連兵の士気はかなり低いようです。防寒装備もおざなりらしく、夏季装備のままのソ連兵が殆どを占めるとか」
「兵士を凍死させたいのか……?」
「分かりません。それに大粛清の影響もあって小隊、中隊クラスから将軍クラスの指揮官の質も劣悪だそうです。攻撃の殆どは無意味に突撃を繰り返してくるだけだそうで、航空機との連携も無く、攻勢準備砲撃の翌日や翌々日に攻撃が始まることもザラにあるそうです」
「なるほど……。と言う事は戦況はフィンランド側が圧倒的有利ということだな?」
「地上戦においてはその通りです。ですが局所的には短機関銃を装備したソ連兵に、ボルトアクション式小銃が主力装備のフィンランド軍歩兵が火力で圧倒される事態も発生しているようです。しかし大勢に影響は殆ど無いでしょう。問題はこの短機関銃をソ連軍が歩兵に行き渡らせたときです」
「森林地帯や市街戦ともなればボルトアクション小銃よりも連射力、弾数に勝る短機関銃の方に圧倒的に分がある。対策は?」
「単純な対策としては、フィンランド軍に同様の短機関銃か、自動小銃を大量に供与することでしょう。ですが我が軍の拡充に自動小銃の供給が追いついておらず、フィンランドへの供与はままなりません。となればそれ以外の手段で対抗するしか無いでしょう」
「具体的には?」
「砲兵火力で接近される前に叩くか、接近されたとしても砲兵の阻止砲撃で叩くという砲兵を頼みにしたものか、或いは短機関銃の弾薬消費速度を逆手に取って全力で補給線を叩くことでしょう。そうすれば弾の消費が激しい短機関銃は弾薬不足で役に立たなくなります」
「なるほど。ではそのように対策するほかあるまい。ともあれ総評としては、フィンランド軍が優勢ということだな」
「しかし航空戦においては兵力差故の劣勢が目立っております。制空権はソ連側に渡ってしまっている状態です」
「ふむ……」
少し考える。
フィンランド軍が圧倒的に有利ならば、少なくともこの冬戦争で同盟国が一斉に対ソ宣戦布告をする必要は無い。ただし何かしらの、明確な支援は必要だろう。
「諸君、我々は同盟国であるフィンランドを助けなければならない。そこでだ。どのような支援を行うべきか?積極的に意見を出してほしい。私としては航空戦力と砲兵が主になるだろうとは思うが、どうかね」
「現状、フィンランド軍がソ連に負けるということは無いでしょう。しかし負ける可能性が無いわけではありません。そこで、我々は閣下の意見の通り主に空軍兵力と砲兵の支援を行うべきだと判断しております」
「一応理由を聞いておこう」
「フィンランド航空兵力は現状、ソ連航空兵力に対して数的劣勢です。これをひっくり返すには単純に兵力を揃える必要がありますが、我が国や同盟国全てから搔き集める必要がございます」
「その通りだ。それはどうやっても現実的ではない」
「そこで対地支援攻撃機、或いは重爆撃機を中心とした部隊を義勇軍として派遣し、ソ連軍飛行場を継続して爆撃して叩くことを提案します」
「なるほど。ソ連航空兵力の地上撃破を狙い、航空撃滅戦を仕掛けるということだな?」
「その通りです。どれだけ航空機の数を揃えても滑走路と飛行場が無ければ意味がありません。なのでそれを破壊してしまえばいいのです」
軍部からの提案は現実的だ。
ドイツ陸軍から歩兵部隊を派遣するとなると、生半可な数ではいけない。
それこそ10万、20万という規模で派遣しなければ地上兵力だけでソ連軍を叩き潰すことは不可能だ。
しかし制空権さえ奪い返すことが出来れば、フィンランド空軍の対地支援攻撃機や爆撃機、戦闘機が地上支援を十分に行える。
そうなれば数の少ないフィンランド陸軍でも、補給が覚束無い、航空支援が無い状態のソ連軍に勝つ可能性は高くなる。
「宜しい。すぐに空軍から義勇軍を編成したまえ」
「承知しました」
「砲兵の方は?」
「出来る事ならば送った方が宜しいでしょう。フィンランド軍は砲兵戦力が心許無いのは事実です。少なくともフィンランド駐留の我が軍から砲兵だけでも義勇軍として参加させれば、大きく変わります」
「そうだな。ならばフィンランド駐留の我が軍砲兵には義勇軍としてフィンランド軍に参加するよう命令を出せ。他の兵力は即応待機状態を維持」
「陸軍は本土から砲兵戦力を派遣する場合、どれぐらいの規模を何日後に派遣可能かをすぐに確認するように」
「「「
「空軍はすぐに爆撃航空団と支援戦闘航空団を主戦力として義勇軍を編成。必要ならば戦闘航空団も出して構わない」
「「「
「海軍は本国から派遣される義勇軍輸送の為に輸送船の手配と、護衛部隊の編制を開始せよ。必要であれば戦艦、空母も編成に加えてよい」
「「「
「財務省はこの義勇軍派遣に掛かる臨時予算を試算し、提出せよ」
「「「
「運輸省は部隊移動の為の鉄道を手配するように。今回は軍の鉄道ではなく民間鉄道を使っての移動をする。これは来るべき日に備えての予行演習だと構えよ」
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「外務省はフィンランド政府に対し、我が国から義勇軍と言う形で部隊派遣と参戦を行う事を通告。フィンランド軍指揮下にすぐに加えられるよう準備を整えておくように伝えておくこと」
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「エネルギー省は今回の派遣に於いて船舶燃料、航空燃料、自動車燃料の約半年分の必要燃料量を、軍から派遣部隊の規模を報告された後に算出、報告せよ。許可が降りればすぐに輸送出来るように準備せよ」
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「内務省は国内共産党スパイの摘発をより一層強化せよ。連中は何処にでも潜んでいるし、省庁内部にいることも視野に入れ、例え軍、政府高官であろうともスパイであれば摘発、逮捕するように」
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「食糧省、義勇軍派遣に必要な食料、水の調達を開始せよ。量には余裕を持たせておくように」
「「「
「保健衛生省はフィンランドへ医師団、看護師団の派遣をする為に、国立病院から医師と看護師を集めよ。義勇軍へ供給する為の医薬品も同時に調達するように」
「「「
「司法省、義勇軍法と関連法案を発動する。準備を」
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各省庁に矢継ぎ早に指示を飛ばす。
指示を受けた者はすぐに席を立ち、お辞儀をするとすぐに与えられた職務を遂行する為に駆けだしていく。
私も準備せねば。
ーーーーーーーーーーーー
1週間後。
各所の準備も整い義勇軍派遣日当日である。
「諸君。今回は義勇軍としての派遣となるが役目は変わらない。同盟国フィンランドの窮地を救うべく赴くのだ。現在友邦フィンランドは窮地にある。それは共産主義者による対外拡張主義によるものだ。私達はその脅威から同盟国と世界を守らねばならない」
「今回の義勇軍派遣は、共産主義から世界を守る為の尖兵であり、そして盾であると自覚してもらいたい」
耳障りの良い言葉を並べる。
なんとも複雑な心境だが、兵達の士気高揚には随分と役に立ったようである。
派遣される部隊は以下の通りである。
第1爆撃航空団
第2爆撃航空団
第1戦闘航空団
第6支援戦闘航空団
2個砲兵連隊
2個高射砲連隊
2個高射機関砲連隊
10個の部隊が派遣されることになる。
これらは全て義勇軍として派遣され、ソ連軍と戦うことになる。
フィンランド側は既に受け入れ態勢を整えており、何時でもよいと言う状態だ。
ただ、爆撃航空団は1個航空団はフィンランド本国のトゥルク近郊に建設されたトゥルク飛行場に派遣されるが、1個爆撃航空団はフィンランドへ直接派遣するのではなく、スウェーデンのストックホルムに派遣され、そこから飛び立って爆撃を行うという形になる。
というのも重爆撃機を受け入れられる飛行場が首都ヘルシンキのヘルシンキ飛行場かトゥルク飛行場か、オウル近郊のオウル飛行場の3択しかない。
しかしヘルシンキ飛行場はソ連軍の爆撃範囲に入っている前線飛行場で、既に戦闘機が多数存在しているので受け入れられるだけのキャパシティが無い。
オウル飛行場はフィンランド中部に位置し、ボスニア湾の最奥部に近い場所だ。現在は冬で、オウルは厳寒の真っ只中。
ボスニア湾は冬の間、沿岸部付近は全て凍結してしまうので海路での補給も容易ではない。
しかも吹雪など、気象条件が悪い日が多く重爆撃機が連日離発着するのには幾らか厳しいものがあるとして、同盟国スウェーデンに外交ルートで交渉をして了承してもらったのである。
1個戦闘航空団はヘルシンキ飛行場へ派遣され、重爆撃機の道中護衛任務に就く。
勿論迎撃任務も行うが、今回は防空戦闘航空団よりも爆撃機の長距離護衛任務、迎撃任務、対地支援任務と任務内容が多岐に渡る為、汎用性が重視され防空戦闘航空団では無く戦闘航空団の派遣となった。
支援戦闘航空団はトゥルクへ派遣される。
砲兵連隊はマンネルヘイム防衛線(南部防衛線)へ派遣され、高射砲連隊、高射機関砲連隊はヘルシンキ飛行場と首都ヘルシンキ防空の為にそれぞれ1個連隊づつが派遣される。
航空部隊はそのまま航空機で行けばいい。
既に先んじて輸送船を手配して丸三日間、24時間作業で船に積み込んで、現地に物資は送り込んであるので弾薬、爆弾、航空燃料、食料水は十分にある。だから行けばすぐに戦える。
ただし砲兵連隊、高射砲連隊、高射機関砲連隊は船舶輸送が必須となるので海軍の輸送船15隻を手配し、キール港から出立し、ソ連軍に爆撃される心配の少ないハンゲーに上陸。そこから敷設されている鉄道を使ってヘルシンキやマンネルヘイム防衛線へ赴くのである。
道中はドイツ海軍の空母1隻、重巡3隻、軽巡2隻、駆逐艦10隻の16隻の艦隊で護衛し、サンクトペテルブルク港から出撃してくる可能性のあるソ連潜水艦に備えるのである。
空母もいるから万が一空襲となっても心配はない。
フィンランド海軍は既にソ連軍と交戦状態にある。
沿岸部を進むソ連軍に対して砲撃を行う為に出撃したりしているが、航空機の攻撃を受けて頓挫している。
戦力としては、海防戦艦2隻、軽巡1隻、防空軽巡1隻、駆逐艦8隻となる。これ以外にも幾らかの戦力はあるが有力とは言い難い。
軽巡はドイツ海軍のアウグスト級軽巡、防空軽巡はライプツィヒ級軽巡を建造しそれを売却した形となる。
駆逐艦はレーベレヒト・マース級4隻、ヴィルヘルム級4隻となっており、いずれもドイツに発注され、ドイツで建造されたものだ。
一応フィンランドの計画としてはアドミラル・ヒッパー級重巡を1隻発注して、購入したいということらしいが現状ではこれは難しいだろう。
現状既にソ連と戦争状態にあり、終結したとしても消耗した陸空軍戦力の回復に予算や人員、資源を費やさねばならず、その後の、起きるかもしれない継続戦争やソ連によるドイツを始めとした同盟国への全面侵攻に備える必要がある。
そんな中で重巡1隻分の予算と人員を確保し、十分な訓練が行えるのか?と疑問に思う。
だからドイツ政府としても、「重巡1隻欲しいんですけど、どうですかね?」という相談をしてきたフィンランド政府やフィンランド海軍に「予算的にも人手的にも厳しいのでは?」と返答している訳である。
なんせ重巡洋艦は1隻で、ざっくり1500~1700名ほどの乗組員が存在するわけである。
これは陸軍に置き換えると40名程度の兵士で編成された小隊を基幹とする大隊が凡そ4~5個大隊。兵力としては少ないながらも一個連隊程度の戦力になるわけだ。フィンランド陸軍からすれば、1個連隊を丸ごと失うというのは結構認めがたい事実なのである。
建造費も馬鹿にならない。
建造費という金銭だけで見れば、アドミラル・ヒッパー級重巡の建造費だけで1個戦闘団か、歩兵師団ぐらいならば十分に揃えられるのである。
フィンランド軍というところから見ると、重巡1隻を手に入れるよりも、その資材や予算、人員で陸軍兵力を整備する方が理に適っているのである。
多分、背伸びをしたい子供と同じ理論で重巡が欲しいといっているのだ。
フィンランド海軍が保有する海防戦艦は、正直に言ってしまうと性能的にはアドミラル・ヒッパー級重巡に完全に負けており、航洋性も明らかに劣っている。
そもそもイルマリネン級海防戦艦とアドミラル・ヒッパー級重巡は設計思想から違うのだから、比べるのがおかしいのだがフィンランドは比べてしまっている訳である。
フィンランドの国力や戦略的には既存の海防戦艦2隻があれば十分だろ、というのがドイツの意見なのだ。
対ソ海軍に関しては、正直今からフィンランド海軍がどうこうして、なんとかなるものではない。ソ連が建造を進めている16インチ砲装備の戦艦が出てきたら、フィンランド海軍は重巡と海防戦艦、駆逐艦だけで戦わざるを得なくなる。航空戦力を加味しても正直戦っても一方的に蹂躙されて終わるだけだ。
だったらドイツに任せておけばいい、というわけだ。
正直に言ってしまうと、現状でもドイツ海軍は欧州でも有数の海軍力となるわけで、こっちに全部任せておけば問題無いだろう、というのがドイツ政府や軍の総意なのである。
勿論イギリス海軍に比べてしまえば子供の様な戦力でしか無いが、少なくとも1つの艦隊同士で見れば十分に張り合えるし、空母の数や艦載機の質で見れば現状だとイギリス海軍を圧倒している。
なんせこの時期の英海軍空母の搭載機数は30~50機が精々だし、艦載機の性能は良いとは言えず、複葉機のソードフィッシュやスクアが主力である。申し訳ないがドイツ海軍の艦載機と戦ったら一方的な勝利を得られるぐらいには性能差に開きがある。
全体で見れば艦艇数、練度の面でイギリスに軍配が上がるだろうが、それでもドイツ海軍は欧州第3位程度の規模と能力を持ち合わせているのである。世界で見れば第4位ぐらいになる。
日米英が、規模や練度で強過ぎるだけなのである。
我々が対するソ連海軍は、はっきり言ってかなり弱く、警戒すべき戦力は潜水艦ぐらいだ。
ドイツ海軍単独で撃破、或いは封じ込めが出来る程度の戦力しかない。16インチ砲装備の戦艦が出てきたとしても航空機で沈めればいいし、沈めきれなければ最後にトドメを戦艦で刺せばいい。
だから態々フィンランドが重巡を持たなくても問題無いのだ。
彼らを見送った後もやることは沢山ある。
「バルト三国駐留の我が軍に厳戒態勢を敷くよう命令せよ。今の段階でこちらに仕掛けて来る可能性が高いのはフィンランドにも近いあそこだ。連中、何時来るか分からないぞ」
「
バルト三国はどうしても国力が弱く、軍もそこまでの戦力や能力があるわけではない。
エストニア、ラトビア、リトアニアの兵力は少なく、3国とも3個歩兵師団程度を辛うじて有しているのみで、編成や戦術、訓練、装備こそドイツ陸軍方式だが、戦車の数も100両程度。
航空機も1個航空団規模をそれぞれ有している程度である。
海軍はドイツに発注したもの、ドイツで言うヴィルヘルム級駆逐艦を3~5隻を装備しているに留まる。
エストニアは4隻、ラトビア3隻、リトアニア5隻と、海軍力は3か国合わせればぱっと見は立派に見えるという具合であろう。
「バルト3国へ増派することは出来るか?」
「3個師団程度であれば可能です」
「宜しい。すぐに3国に通達し会談の場を設けよう」
バルト3国は我々の弱点だ。
どの国も国力的に弱く、自国の軍隊もそこまで強いとか数が多いというわけでもない。
寧ろ同盟の中ではワースト1~3位を争うレベルで兵力が少ないのだ。
国力や人口から照らし合わせると、妥当なところなのだがそれもあくまで『平時であれば』、という巻頭句が付く。
だから戦争の足音が迫っている今では少なくとも兵力を3倍にして欲しいところだが、そう簡単に行かないのも事実なのである。
ーーーーーーーーーーー
翌週、バルト3国にそれぞれ1個歩兵師団を送り込むことをドイツ、バルト三国各政府間で合意し、送り込むことが決定された。
3国からは更に追加で装甲戦力と航空戦力を更に増やしてくれないかと頼まれたが、現状だと4号戦車と5号戦車の二柱で生産しているわけだが、どうしても限界があるのだ。生産数の問題もあるし、何より補給の問題である。
ドイツ軍に配備されていた対空戦車も既に4号対空戦車のものに置き換えられており、3号対空戦車は対空戦車として輸出するか、部品取り用として輸出済みである。
現状、バルト3国の部隊への補給は海路頼みである。
何故なら陸路より海路の方が大量の物資を一度に運べるので、コストパフォーマンスに優れているからである。
陸続きのポーランドならば、鉄道でも問題無く大量の物資を送り込んだりできるが、バルト三国はドイツと陸続きではない。そうなるとポーランドを経由する必要があるが、現状だと手続きをしなければならないので、どうしても手間が掛かるのだ。
陸路だとどうしても1週間程度は掛かるが、海路であればラトビアのリガまで3~4日で行くことが可能だ。
海路に補給が制限されている以上、どうしても部隊規模が大きくなればなるほど維持が困難になる。
バルト3国に展開する現在の部隊数でも、ギリギリなのである。
燃料輸送に関しては、こちらも陸路か海路だ。
ルーマニア=ドイツ間にはパイプラインが建設されており、オーストリア=ハンガリー、チェコを経由するパイプラインが稼働状態にある。このパイプラインは、ルーマニアでも石油精製は可能だが必要量に対して精製量が足りない、ということで建設された経緯がある。
だがこのパイプラインは原油の輸送が出来るだけで、ドイツで精製された燃料を各国へ送り出すパイプラインが存在しないのである。その石油パイプライン建設を最優先にしていたので、他の国に繋がる燃料用パイプラインが存在しないのだ。
一応現在はポーランド、ルーマニア、チェコ・スロバキアへの燃料輸送パイプラインの建設を進めているが、1941年までに間に合うかどうか分からないという状態だ。
ポーランドへのパイプラインはワルシャワを経由し、ソ連国境地帯のビャウィストク、ルブリン、ザモシチ、ジェシュフを結ぶラインを建設している。今名前を挙げた国境地帯の町は、いざとなれば前線近くの補給拠点という役割を担う場所である。
既に燃料を受け入れる為の燃料タンクは建設済みだ。
ルーマニアへはブラショフを経由する、スチャパ、ロマン、バスルイ、ブルラド、ブライラ、ババダグへの各パイプラインが建設中である。
チェコ・スロバキアへは、ミハロフツェ、スニナへのパイプラインが建設中である。
こういった燃料やらの事情でバルト3国へはこれ以上の部隊派遣は開戦してからでないと難しいというのがあるのだ。
ドイツ=バルト3国、ドイツ=フィンランド間の航路には、ドイツで建造された全長250mの大型タンカーが6隻就航しており、燃料輸送を行っている。この大型タンカーはアルトマルク級タンカーと名付けられ、10番艦までの建造と就役が予定されている。
1番艦 アルトマルク
2番艦 マジェスティック
3番艦 ブレーメン
4番艦 アトランティス
5番艦 アンスヴァルト
6番艦 オーロラ
7番艦 ヴィルヘルミナ
8番艦 アリアナ
9番艦 コルモラン
10番艦 ヴィーザル
ーーーーーーーーー
「フィンランドの戦況はどうか?」
「フィンランド優勢のまま推移しております。国境から数kmほどの侵入を許したままですが、ソ連軍にはそちらの方が寧ろ被害を増やす原因になっております」
「ソ連の反応はどうか?」
「今のところ、プロパガンダ的な主張があるのみで講和や和平に向けた動きはありません」
「うぅむ……」
現在、冬戦争開戦から2ヶ月が過ぎたが未だに終わりは見えない。
寧ろ激しさを増しながら、フィンランド国境にソ連兵の屍が積み上がり続けているのだ。
カレリア地峡の防衛線は瓦解する様子は無く、北部、中部からの侵攻を行おうとしたソ連軍も既に粉砕されている。
今のところ戦争の主戦場は南部地域に集中しており北部と中部への攻撃は砲撃と爆撃に留まっている。
ソ連軍は既に70万を超える戦死傷者を出しているのにも関わらず、未だに攻勢の勢いを緩めない。それどころか連日万単位での突撃を繰り返しており、どこからそれだけの兵力を出しているのか不思議でしょうがない。
ドイツが義勇軍として派遣した航空機は、活躍しており既に爆撃機に関してはソ連国境地帯の要衝や補給拠点となっている町、ソ連軍飛行場を継続して爆撃して封殺しており、ソ連空軍の活動を封殺した。
特にフィンランド侵攻におけるソ連軍の要衝サンクトペテルブルクに対しては連日爆撃を仕掛けている。
対地攻撃機もソ連軍補給線や地上部隊へ攻撃を継続しているので、少なからずソ連軍は補給という点でかなりの痛手を被っている筈なのだが……。
サンクトペテルブルクはソ連軍にとってフィンランド侵攻において最も重要な後方拠点となる。
フィンランド南部へ攻勢を仕掛けているソ連軍部隊は必ずと言っていいぐらいサンクトペテルブルクを経由するなりして、そこで弾薬や食料を配布されるからだ。そこを叩かれると言う事は最前線への補給はおろか、撤退した部隊の再編なども満足に行えないと言う事を意味するし、南部戦線のソ連軍全てが補給を脅かされているということだ。
普通なら補給に限界があると判断した時点で軍事作戦は切り上げるなり、一時的に進軍を停止するなり、何かしらの対策をするのが常識だと思うのだがそうもいかないのがソ連軍らしい。
対地攻撃機もソ連軍補給線や地上部隊へ攻撃を継続しているので、少なからずソ連軍はかなりの痛手を被っている筈なのだが一向に攻勢の手を緩める様子は無い。
「フィンランド軍、義勇軍からの情報によりますと、どうも兵士達には満足な物資が支給されていないようです。服は着ているようですが」
「すると何か?ロクな装備も無いままただ突撃だけさせていると?」
「一応小銃か短機関銃は装備しているようです。弾数が小銃10発、短機関銃30発という具合なだけで」
「……意味が分からんな。というより理解したくない」
「それは同意です」
「余程カレリア地峡が欲しいんだろう。ソ連が本気で我々同盟と戦う腹積もりなら、サンクトペテルブルクの安全性を確保する為にカレリア地峡を何としてでも手に入れておく必要があるだろうからな」
「フィンランド領カレリア地峡はサンクトペテルブルクの目と鼻の先です。下手をすると重榴弾砲の射程に入る可能性もあるぐらいですから」
「海軍戦力もそこそこの数がサンクトペテルブルク港にありますからな……」
陸海空軍の統合参謀本部詰めの将軍達と話す。
今日は軍部と会議をする日で、明日は各省庁と会議をする日だ。
一日おきに交代で会議を設けており、業務連絡や事務連絡のような報告から始まり、午前中は殆ど会議で終わることがここ最近である。
「フィンランド軍にソ連軍に対して反撃し、ソ連領内に攻め入るだけの力は無い。だが国土を防衛する力はある。十分に支援しつつ、敵情を徹底的に把握し、何かあれば私が寝ていようと叩き起こして知らせるように。風呂に入っていようと食事中だろうとトイレ中だろうと重大事であれば手段は問わん、即座に報告せよ」
「「「「「
会議が終わると、執務と言う名の書類仕事に取り掛かる。
ふむ。クルップ社の榴弾砲製造は軌道に乗っており来月には3つの新工場が稼働すると。良い知らせだ。
クルップ社は当初、第一次世界大戦を引き摺ってかやたらと無駄にデカい列車砲を作ろうとしていたが、口径80cmの列車砲なんぞ要らん。
あんなのどうやって運用する?それに列車砲よりもより柔軟性が高い航空機というものが登場している今、鉄道沿線にしか攻撃を加えられない列車砲は要らない子なのである。
それでも駄々を捏ねる様に巨大な大砲を備えた列車砲を作ろうと持ち掛けていたが、ドイツ政府や軍としてはそんなもん造る暇があるなら重榴弾砲を1000門作れ、というのが総意なのである。
私達はロマンで戦争をやっているんじゃないんだぞ。
クルップ社が製造した大口径砲は、ビスマルク級戦艦用の41cm主砲身が最後だ。4隻分32本が製造済みで、交換用に14本が倉庫にある。
それ以外は重榴弾砲、対空砲、戦車砲、などの火砲製造に全力を注いでもらっている。
その他の事も色々とやらなければならないので、本当に休む暇が無い。
ーーーーーーーーーーー
1940年5月3日になってようやくソ連は停戦交渉を開始することを受諾。
6月15日になって和平交渉が纏まり、ヘルシンキ講和条約が締結された。内容は以下の通り。
・ソ連は和平締結後1週間以内にフィンランド領内から軍を撤退させること。
・この戦争に於いて発生した損害の、賠償請求を両者共に破棄するものである。
主にこの2つが条件となる。
史実冬戦争を知っていれば、十分な内容であろう。
フィンランドは結果的に一切領土を失う事も無かったわけだ。
賠償金こそ取ることは出来なかったが、これはどうしようもない。
双方の被害はフィンランド側が約1万5000人の戦死者、約3万3000人の戦傷者。
航空機31機、戦車11両、火砲17門喪失。
ソ連は戦死・行方不明だけで40万を超え、戦傷者に至っては100万人を上回り、捕虜約3万名。
戦車約6000両、航空機2500機以上、火砲7000門喪失となった。
ソ連軍の戦車、航空機、火砲の損失要因の殆どは飛行場を爆撃されたり、制空権を失っている中で進軍中に対地支援攻撃機の攻撃を受けたりと、陸戦以前での戦闘で殆ど喪失したものであると報告されている。
ソ連空軍機の約4000機ほどが4発重爆による爆撃で飛行場に駐機しているところで破壊されたものであり、戦車も5000両程度は航空攻撃による損失、火砲も6000門以上が航空攻撃による損失だと報告されている。
ソ連軍は前線に到着するよりも前に航空機からの攻撃を受けて戦車や火砲を失っていたのである。
フィンランド軍陣地への攻撃は、殆どが歩兵単独での突撃で、戦車や火砲に援護されての攻撃は開戦初期を最盛期に、以降は殆ど見なくなっていたという。
「……やはり大粛清の影響が大きいのだろうな」
「どうも将軍から下士官に至るまで訓練不足、練度不足が明らかに目立ちます」
マンシュタインが情報を纏めた書類を差し出しながら話す。
それに続いてモーデルが話す。
「ロシア帝国時代からのベテランを、あれだけの人数を粛清しているんだから当然と言えば当然でしょうが……」
「それでも奴らは、今回の戦争で重要な戦訓を幾つも得たことでしょう。その戦訓は後々我々の明確な脅威になるのは間違いありません」
ルントシュテットも神妙な顔で言う。
ソ連は莫大な犠牲と引き換えに、貴重な戦訓を得た。それは対フィンランド戦だけでなく同盟各国に対しても共通して言えることだろう。
「であろうな。冬戦争が起こってソ連の領土的野心が明確になった以上こちらも、うかうかとはしていられん。同盟各国も気が引き締まってくれていると良いのだが」
「それに関しては問題無いでしょう。国によっては必要経費はこっちで負担するから派遣部隊を増やしてくれ、と言って来ている国すらあるので」
「出来るならとっくにやっている……」
すると義勇軍を率いていた将軍達が一足先に帰国して、報告に訪れる。
義勇軍指揮官であったマンシュタイン元帥、ルントシュテット元帥、義勇軍参謀長モーデル。
海軍元帥エーリヒ・レーダー、同じくカール・デーニッツ、第一艦隊司令官ギュンター・リュッチェンス、第2艦隊司令官ヴィルヘルム・カナリス。
空軍元帥ハンス=フェルディナント・ガイスラー、同じくヨーゼフ・カムフーバー。
「レーダー、海軍はどうだったか?」
「言い方は悪いでしょうが、艦隊の良い訓練になったと思います。今まで実戦になるやもしれない、という空気すら味わった事が無い兵が多かったので、これでいざ実戦となっても幾らかは通用するでしょう」
「それに船団護衛における経験を積むことが出来たのはとても大きいと考えます。船団護衛など、一切経験が無い我々です。手慣れた通商破壊戦を元にし、反映させた戦術はありますが、明確に船団護衛をする側に立ったことはほぼ皆無です。その経験と戦訓が得られたのは幸いでした」
レーダーに続いてリュッチェンスが言う。リュッチェンスの言葉にカナリスも頷いている。
実際に船団護衛任務を遂行していた二人の言葉だ、重さが違う。
「うむ。マニュアル化して全軍に配布するのを忘れないように。頼むぞ」
「勿論であります」
「それと、空母の有用性は凄まじいものです。出来る事なら戦艦よりも空母を最優先で建造して頂きたいのですが」
「それは構わんが、良いのかね?」
「閣下が仰られた通り、戦艦を揃えるより空母を揃えた方が良いと考えを改めざるを得ません。演習では空母相手に戦艦は全く役立たず仕舞いで終わりましたからな……」
デーニッツが言っているのは、1939年2月に行われた海軍冬季大演習はノルウェー沖150kmで行われた演習である。
荒れる事で有名な大西洋の、それも北大西洋で行われた演習で、目的は冬の荒波の中での作戦行動訓練を行う為である。各艦艇の練度向上は勿論だが、特に母艦航空隊の錬成を目的としたものである。
この演習はざっくりいうと、ビスマルク、ティルピッツの戦艦2隻と重巡4隻を中心とする軽巡6隻、駆逐艦20隻で編成された第1グループと、空母4隻グラーフ・ツェッペリン、シャルンホルスト、ヒンデンブルク、デアフリンガーの4隻を中心とした軽巡4隻、駆逐艦16隻で編成された第2グループの対抗演習である。
この演習はレーダーやデーニッツが空母では戦艦を沈める事は出来ないのではないか、とぐちぐち言うものだから、ならば次の演習で戦艦vs空母でやろうじゃないか、となって行われたという、なんとも大人げないやら私情が混ざっているやらの理由で行われた経緯がある。
第1グループはレーダーが指揮し、第2グループはリュッチェンスとカナリスがそれぞれ2隻の空母を指揮していた。
結論から言うと、制空権を失った第1グループが第2グループの空母4隻に好き放題ボコボコにされることになった。
幾ら多数の対空兵装や対空レーダーを搭載していても、300機を超える艦載機の波状攻撃の前では役に立たない。
次々と襲い掛かる艦載機によって、まず最初に軽巡と駆逐艦が次々と落伍していった。
空母を指揮する2人は、艦載機にとって敵機が一番の脅威であり、次は対空レーダーと射撃指揮装置に指揮された対空火器が次いで脅威であると認識していたようで、輪形陣を取って戦艦と重巡を守る軽巡と駆逐艦を最初に狙った。
これによって戦艦や重巡のような防御力を持たない軽巡と駆逐艦は次々にやられていき、気が付けば丸裸状態。
戦艦と重巡たったの5隻で250機を超える艦載機の攻撃を凌ぐだけの能力は到底無く、次々に模擬魚雷や模擬爆弾が命中していき気が付けば撃沈判定を食らっていたというわけである。
それ以降、海軍上層部の中では航空主兵論が大部分を占めており、戦艦の建造は遅らせても良いし、なんなら中止にしてもいいから空母を寄越せ、とせっつかれているわけである。
とは言えドイツの国力を考えるとこれ以上海軍の建造に注力してしまうと肝心の空軍と陸軍の戦備を整えられなくなってしまうわけで、今のところ海軍軍備計画は非常にゆっくりと進められており、陸軍と空軍をハイペースで整えているところなのである。
「空軍は?」
「実戦を経験することが出来たのと、何より各種データが取れたのが大きいですな。これを基にして改良をしたり戦術を組み上げれば、纏まった数の航空機を集めて敵地上部隊に大打撃を与えることも夢ではありません」
「陸軍はそれについてどう思う?」
「空軍機は非常に脅威的です。正直、陸軍の高射砲や高射機関砲だけで凌げるとは到底言えません。対地攻撃機に何度か乗って実際に経験したから言えますが、地上を走るトラックや戦車は良い的にしか見えませんし、歩兵は機銃をちょっと撃たれるだけで身動きが全く取れなくなります」
「まぁ、かといって陸軍が使えない訳では無い。航空機の技術的進歩に対空兵器や戦術が追い付いていないだけのことだ。陸海空軍はそれぞれ十分に情報を交換し連携することを忘れるな」
「勿論です」
各人はそれぞれ頷いている。
マニュアルばかりを追い掛けて固執するマニュアル人間になるのはいけないが、そうでない限りはマニュアルと言うのは有用なものだ。
他に頭を悩ませるのは、飛地であるケーニヒスベルクの防衛だ。
あそこは飛地である上に、最前線に最も近い。一次大戦後の領土割譲の影響で飛地になってしまった関係でどうしても防衛に穴が開きやすい。
だから防衛するのに中々労力が掛かるのである。防衛の要になりそうな河川なども殆どない。
全域に遅滞防御陣地を構築し、ケーニヒスベルク市街地を最終防衛線に設定して、援軍が来るまで耐え抜くという戦術を採用しているが、仮に包囲されたとしてどれだけ持ち堪えられるかは、分からないのが実情だ。
配置兵力は歩兵10万、戦車700輌、装甲車250輌、トラック300台。高射砲、榴弾砲合わせて火砲1800門。飛行場4ヶ所に戦闘機300機、迎撃戦闘機170機、対地支援攻撃機100機が配備されている。
市街地とすぐ近くに隣接する飛行場をぐるっと囲むようにトーチカや塹壕を組み合わせた要塞線を構築しており、繋がる半島を分断するようにも要塞線が置かれている。
ケーニヒスベルクはこの方面一帯への補給拠点であるし、更にはバルト3国への増援部隊の荷揚げ港もあるしいざという時にここから部隊を抽出してバルト3国防衛を行うことも念頭に置かれているから、初動で損害を被るのは不味い。
可能な限り戦力を置いて守りを固めなければならない。
ーーーーーーーーーーーーー
「陸軍と空軍に聞きたいが、新型の高射砲の開発進捗はどうなっている?」
「それはこちらの資料をご覧頂けますでしょうか」
「うむ。あぁ、同時に説明も頼む」
ぺらり、と表紙を捲ると基本的な情報、所謂スペックが掛かれている。
「口径15cmか。中々随分とデカいものに仕上がったな」
「はっ。我が軍の重爆と、諜報部が入手したアメリカ陸軍が開発をしているとされる新型重爆撃機のざっくりとしたスペックを考えますと、最大射高は20000mは無くてはなりません。そうなると127mm高射砲では射程、射高共に不足しておりますし、艦砲の10cm高射砲でも高高度迎撃となると話になりません。ですのでどうしても新規開発をする必要がありました」
「だろうな。ソ連軍と戦うとなれば嫌でも撃墜される機体は出て来るし、それを元にリバースエンジニアリングでもやれば、与圧システムなどのコピーが出来るかや、搭乗員への配慮はともかく1万mの高空を飛ぶ機体を作ることは可能だろうからな。それにアメリカもコソコソ背後で何をするのか分かったものでは無い」
「敵に回らなければ良し、と言う事ですが、今の世情を考えるとどこの国が敵になるやら分かりません。可能性は限りなく低いですが、ソ連に注力している間にイタリアやフランスが背後から突然襲い掛かってこないとも言い切れませんからな」
イタリアはファシズム、フランスはドイツ嫌いというかドイツが憎いといった感じだ。なんで我が国は東にも南にも西にも、爆弾を抱えてなければならんのだ。
フランスに関しては我々と敵対している場合ではないような気もするが、いいのか?
それにフランスはまだしも、パスタ野郎が史実通りにアフリカとかギリシャ辺りに色目を使い始めないか心配で仕方が無い。イギリス領エジプトに手を出そうものなら、イギリスが戦争状態になるからこっちの兵站に影響が出かねない。
何としてもパスタ野郎が馬鹿をしないようにしなければ。
「それで……、砲全体の重量が70t!?砲身長9m!?随分と重いし長いな」
「既存の高射砲に比べれば重く長いですが、移動を考えない固定式であるのと、高高度重爆撃機を狙う為に射程と射高を両立する為にこうなりました」
「……ざっくり見るに問題は無いように見えるが、なにか問題はあるか?」
「砲弾自体の大きさが170cm、炸薬良だけで約6kg、装薬量で約18kgあります。全て合わせて砲弾重量は90kg弱あります」
「あぁ、それは……」
90kgの砲弾なんて人力装填は到底出来ないぞ。装填手だけでも最低でも2人は必要だろうが、それでも厳しいだろうな。
人力装填だと、兵士への負荷も考えると少なくとも装填手だけで6名ぐらいは必要になるな。
「だが解決方法の目途は立っているのだろう?でなければこんな書類出す筈も無い」
「はい。装填方法は半自動装填機構を用いることで解決しました。とは言っても弾薬庫からは人力で運ぶ必要がありますが」
「どのような装填機構だ?」
「想像して頂きやすいのは、リボルバー銃の装填方法です。回転式のドラムというか、保弾板に砲弾をセットするわけです。それを一発撃つごとに回転させて次の弾を装填して射撃するわけです」
「なるほど。これは砲身とくっ付いているからどの仰角でも速やかに装填が出来ると言うわけだな。もしかしてだが、この装填機構は長い砲身に対するカウンターウェイトの意味合いもあるのか?」
「その通りです。砲身が約60口径9mですが、ここまで長いと砲身だけでかなりの重量になります。そこで安定性を保つために反対側にカウンターウェイトを備える事となりましたが、ただの鉄塊を付けるのも勿体無いので、ならば装填機構をくっ付けてカウンターウェイトにしてしまおうとなったわけです」
「ふむ。その装填機構で26発か。分間射撃速度は13~15発だから、2分は撃ち続けられるということか」
「はい。ただし弾倉内の砲弾を撃ち切ってしまうと、再装填の必要があります。射撃しながらでも装填は出来ますが、何せ回転式なので装填のタイミングを間違えると砲弾を挟んでしまい、最悪爆発して周囲諸共吹き飛ぶ、なんてこともあり得ます」
「そこは後々改良していくとして、今のところは数を用意して時間差による射撃でカバーするしか無いだろう」
8門で1つの中隊として編制し、4門が射撃中に4門が装填する、と言う事を代わる代わるやれば間断なく空に弾幕を張れるだろう。
「最大射高は22000mですので、距離が離れていて射撃角度が緩くても射撃は可能です」
「ここまで大規模になると、それ以外の信管やレーダー、電動機、発電機、油圧ポンプなども耐え得るものを新しく開発する必要がありました」
「火道式信管では気温や気圧に影響されて、高高度を狙うとなるとどうしても信頼性が落ちてしまいます。そこで機械式信管を用いることにしております」
「量産は大丈夫か?」
「問題ありません。他の砲弾との生産の兼ね合いの関係で信管より砲弾の製造が少なくなるかもしれないぐらいなので大丈夫です」
それは大丈夫とは言わないのではなかろうか?
「レーダーも最新式のものと連動しており、算定装置も全てこの高射砲の為に新しく開発されたものを使用することになります」
聞く限りでは最新鋭の、あらゆる最先端技術を詰め込んで、それでいながら可能な限り整備性や量産性も考慮されたものに聞こえるが、彼らの顔が幾らか渋いものになった。
「ですが、幾つか解決出来ない問題がありまして……」
「それは、致命的なものなのか?」
「致命的と言えば致命的です」
「何だね、その欠陥は」
「一つ目は砲身寿命が極端に短いことです」
「なるほど……」
砲身寿命とは、射撃時の初速が10%低下するまでの射撃弾数のことをいう。
確かにこれだけ大きな砲弾を角度90度で垂直に空に砲弾を向けた場合に2万m以上の高度に届く性能なわけだから、当然砲身への負荷は既存砲のモノに比べて大きくなるのは仕方が無かろう。
「それで、どれぐらいの砲身寿命なんだ?500発ぐらいか?」
どれだけ少なくても500発もあればとりあえずは、と言ったところだろうか。
それだけの砲身寿命があれば2回ぐらいの戦闘なら耐えられる筈だし、コストパフォーマンス的にもギリギリ許容範囲と言った具合になる。
「350発です」
「は?」
「試射を行ったわけでは無いので、詳細なことは判明しておりませんが、計算によると砲身寿命は350発しかないと算出されました」
「……」
「射撃時の砲身内圧力は2940kg/㎠にもなります。現状の技術力でこれだけの射程、射高に90kgの砲弾を撃ち上げるとなると、どうやっても3000kg/㎠程度が限界だと言われております。ですのでどうしても砲身寿命が短くなってしまうのです」
「その砲身寿命だと、下手をすると一度の対空戦闘で砲身寿命を迎える可能性がある、ということか?」
「その通りです」
「……」
「……」
「続けても?」
「う、うむ。続けたまえ」
あまりにも言葉が出なくて、一瞬会議室が静まり返ってしまった。
いや、350発となると相当少ないだろう。
陸軍の15.5cm榴弾砲であれば50000発以上の砲身寿命があるし、8.8cm高射砲や対戦車砲でも余裕で80000発ぐらいにはなる。
それと比べてしまうとたったの350発しか砲身寿命が無いというのは、軍人でなくとも理解が追い付かなくなって当然だろう。
軍人だけでなく財務省の連中も頭を抱えているな。まぁ、当然か。砲身を作るのにも金が掛かるからな。
砲身寿命が短いということは頻繁に砲身を交換しなければならないし、その分大量に砲身を製造する必要があるのだ。勿論金が掛かるので財務省は頭を抱えるわけである。
「砲身寿命が短いために、砲身交換は簡単に行える必要があります。そこで砲身交換を簡単に行えるように二重自緊砲身とすることになりました。勿論予備砲身は大量に準備することは大前提ですが」
うぅむ、確かに性能としては良いが砲身寿命が短いのは、ユニットコストが安くても結局維持費に莫大なコストが掛かるということじゃないか。取り合えず今はいいか。
「二つ目の欠点が、70tもの重量故に敵機追従速度がとても悪い事です」
「それは不味いだろう。それでは敵機を狙えないではないか」
「……あぁ、語弊がありましたね。正確には、高高度を飛ぶ敵機に対しては十分な追従性能がありますが、4000mよりも低い高度を飛ぶ敵機に対しての追従速度が極端に遅いのです」
「それは、どうにかならないのか?」
「出来なくもないですが、より強力な電動機と油圧ポンプを用意する必要があるのと、砲塔基部の部品消耗が凄まじい速度になります。砲身だけでも頻繁に交換する必要がある事を考えると、こちらを妥協することをお勧めします」
「陣地もそれに合わせて大きくなってしまいます。現状の陣地でも地下陣地にすることで、サイズを抑えることと、防御力向上を図っているので、追従性能を向上するとなると、どうしても陣地が大きくなり過ぎてしまうのです。ですからこのぐらいの能力で我々は妥協しました」
財務省がうんうん。と頷いている。
当然だな。
まぁ、なんにしても70tもの大型高射砲だものなぁ、仕方が無いか。
「それについては今後の改良点ということにしておこう。今のところはこれで納得し、運用に関しては4000m以下の高度を飛ぶ敵機に対して射撃を禁止するということで良いだろう」
「分かりました。そしてもう一つ」
「まだあるのか」
「それが、70tと重過ぎる為に、他の高射砲と違って急加速や急停止をすると基部が壊れます」
(この高射砲、もしかして欠陥兵器か?)
そう思ったのは私だけではあるまい。
実際、軍部も他の各省庁の面々も微妙な顔をしていたのだからな。
そのあとちゃんと話しを聞いてみるとどうやら急加速と急停止が駄目なだけで急旋回は大丈夫なのだという。どうも急停止と急加速をやってしまうと折れたり歪んだりしてしまう可能性があるらしい。
より詳しく言えば、70tの重量を支える為に砲塔基部の各部品は耐荷重性能120tぐらいまであるとのことで急旋回自体は大丈夫なのだが、急停止と急加速をしてしまうと瞬間的に70tの数倍の負荷、150~200tもの重量が一瞬にして掛かってしまうことからどうなるか分からない、ということらしい。
下手をすると耐荷重性能の2倍の重量が掛かる可能性があるのだから、当然と言えば当然だろう。
結果、運用に際して暫定的に作成されたマニュアルにも、『急停止と急加速は厳禁』と書かれることになった。
まぁ、たったの1年でこれだけのものを仕上げてきて、問題らしい問題が3つしかないと考えれば性能も考慮すれば良い兵器と言えるだろうな。
しかし、なんというかこれぞドイツ人らしい、という感じの兵器だな、という印象だ。
装填機構が複雑かつ精緻なのだ。
重量や砲全体の構造を見ても野戦運用は絶対に出来ないだろうな、という印象を覚える。とはいえ野戦配備をするわけでは無いから、こんな複雑で精緻で整備などに時間が掛かるものを運用出来るということだ。
野戦運用ならまず間違いなく使い物にならなかっただろう。
「既に試作砲を8門製造する認可をしたはずだが、どうなっている?試験の話は一切聞かないが」
「そこが問題です。既存の射撃試験場だと威力が有り過ぎて危険なので射撃試験が行えません」
「確かに威力範囲が直径50mとなると既存の射撃試験場では試験は行えないだろうな」
しかもこの砲弾、破壊力をより高める為に内部に惜しげも無く新規開発された高性能爆薬をたっぷりと詰め込んで、しかも大量の焼夷剤入りの弾子を仕込んである。当然こんなものを屋内射場や、軍の演習場だからといってホイホイ撃っていいものじゃない。
炸薬量が5kgの砲弾なんて、これと同規模の炸薬を仕込んである砲弾となると中々存在しない。同規模の砲だと陸軍の10cm榴弾砲とかだろうか?これを超える炸薬量となると155mm榴弾砲ぐらいだろう。確かあれの炸薬量が約7kgほどだったはず。
「それならばどこか別の場所で行うしかあるまい。沿岸部のどこかに適地を見つけてやるしかあるまい」
「候補地はメンヒグート半島の辺りのどこかを、と考えております。海側に向けて撃つ分にはその時だけ船舶航行を制限すれば問題無いでしょうし」
「いいだろう。だが、射場を新しく設置するとなると1から全部作る必要があるのではないか?」
「そこも考えたのですが、とりあえず簡易的なものでもよいと考えております。最初から無理をして整ったものを作ろうとすると時間が掛かりますし、兎に角試射が出来るだけの場を整えてるだけでいいかと思います」
「具体的にはどれぐらいの設備だ?」
「諸々の設備を格納出来る地下壕と、高射砲を設置出来るだけの鉄筋コンクリート製の砲床があればいい、と思います。まぁ、陣地を4つとデータを取れる設備だけあればいいので」
「それは勿論、高射砲用のレーダーなどの必要設備を備えたものだな?」
「はい。でなければ試験の意味がありません」
「兵舎は?」
「簡易的なもので良いでしょう。テントでも構いません。射撃試験場ですのでそう長期間滞在するわけでもありませんから」
「分かった。すぐに建設を始めてくれ」
「ありがとうございます」
「それで、製造はどこが担当する?」
現状、既に民間企業は既存装備の製造で手一杯だ。
そこに新しい高射砲を作れと言っても、無理がある。
「とりあえず試作1号砲に関しては陸軍ブレーメン造兵廠で製造しました。試作2号砲はケルン造兵廠、試作3号砲と試作4号砲はシュトゥットガルト造兵廠で。試作5号砲、試作6号砲は予定ではブレーメン造兵廠、試作7号砲と試作8号砲の製造予定はカッセル造兵廠となっております。ですが9号砲以降の製造はどこも既存装備の生産で手一杯ですのでいつ完成するやら分かりません」
「試作1~8号砲までは各造兵廠に頼み込んで無理矢理予定に捻じ込んでの製造です。申し訳ありません」
「いや、構わん。その点について攻める気は欠片も無い。だが、正式採用の上で量産ともなるとそうは行かん。解決は見込めるか?」
「現状の予定ですと、これに加えてクルップ社のレーゲンスブルク工場、インゴルシュタット工場、アウクスブルク工場の3工場も製造に加わる予定です。それでもこの3か所の工場は既に既存砲兵装備の製造がリソースの大部分を占めておりますので、月産5門が限界とのことです。製造を担当する造兵廠も製造ラインを増やして他の生産に影響が出ないレベルで人手を捻出しても月産10門が限界とのことです」
「それは仕方が無かろう。分かった。完成している8号砲までを、射撃試験場が完成したらテストを行ってくれ。問題があれば解決し、無ければ即実戦配備とする。製造担当造兵廠や各企業に関しては、可能な限りの生産数を確保する為にあらゆる手段を講じるように」
こうして15cm高射砲は射撃試験に挑むことになったのである。
会議から1ケ月後、15cm高射砲8門分の陣地が完成し、いよいよ試験となった。
陣地は実戦を想定したものが構築されており、算定機と砲を繋ぐ電線は長さ6mの鉄筋コンクリート製正方形筒の中に入れられて地下2mのところに埋設されている。
作動には発電機1基で十分なところを3基用意して、尚且つ全て別の場所に設置して敵機の攻撃や爆撃でどの発動機が壊れても、故障しても動かせるようになっている。
一応人力でも操作は出来るようだが、70tもの高射砲を人力で旋回させて装填して撃って、なんて誰が考えてもやりたくはない。そのための措置なのである。
1門毎に1分隊として編制され、4門で1個小隊を編成し、予定では8~12門で1個中隊を編成する。
そして15cm高射砲は中隊毎に射撃を行うが、その射撃は中隊指揮所で指揮される。
新型対空レーダーと最新鋭射撃管制レーダーによって算定、算出された射撃データを各砲を運用する分隊に伝達し、各砲はそのデータによって信管を調整し射撃をするのである。
新型対空レーダーがあるので夜間であっても敵機を捕捉し迎撃を行えるようにしたのだ。
ついでに言っておくと、現状のドイツ軍のレーダーやその周りの技術は掛け値なしに世界一と言えるものだ。
各砲の射撃陣地は70mほどづつ離れており、砲弾の加害範囲が被らないようにしており、尚且つ敵機に対して数発づつの砲弾が加害範囲に捉えられるようになっているのである。
それはそうと何故かレーダーは高さ6m厚さ50cmの鉄筋コンクリート壁に、土を被せた土塁でぐるっと回りを囲まれて守られている。あそこまでがっちり守る必要があるのだろうか?野戦飛行場でもあそこまでがっちり守られたレーダーは無いぞ。
「なぜレーダーがあんなにがっちり守られているのだ?」
「それがですね……。15cm砲を射撃した際の爆風が凄まじくて、そのまま剥き出しにしていると射撃した時にレーダーも射撃管制装置も算定機も何もかもが全部壊れてしまうのです。ここに来る前に空砲弾で試したところ、見事に地上に露出していた設備に見立てた構造物が全てが壊れました」
「だから地下陣地になったのか……」
「そのとおりです」
なんという威力だ。そもそも味方に被害を与えてどうする。
地上設備を射撃時の爆風で全壊させられるとか前代未聞じゃないか。なんなんだ、地上露出設備全壊って。
まぁ、だがそれだけ強力だということだろう。期待が出来る。
「そろそろ射撃試験が開始されます」
「周辺海域の船舶は?」
「……偵察機からは30km範囲には民間、軍問わず船舶無しと報告が上がりました。射撃しても問題有りません」
「閣下、では」
「うむ、試験を始めてくれたまえ」
その言葉の後、要員が慌ただしく動き出す。
「各部点検始め」
「各砲より、各部異常無し、射撃可能と」
「宜しい。ではレーダー」
「レーダー、敵機高度1万2000m、距離20000m!」
この15cm高射砲は最大射高2万m、最大射程30kmというバケモノ染みた高射砲となっている。
なので距離20kmぐらいの敵機ならば問題なく狙って撃つことが可能だ。
レーダーからの情報を元に、算定機によって射撃時の諸元を弾き出す。
この高射砲は、アナログながらコンピュータと連動している。
高射砲の射撃というのは、元居た世界でも、そしてこの世界でも電子技術で1世代、2世代ほど劣るソ連や日本でもコンピュータを用いてやっていた。
その点、ドイツは電子技術において現時点では世界トップを行く。
アメリカが本気を出して来たら抜かれるだろうが、まぁいい。
このコンピュータはノイマン博士が完成させたものである。
ノイマン博士は今、コンピュータ室で結果を見守っている為、ここには居ないが、彼は元々ハンガリー出身で、ベルリン大学とチューニッヒ工科大学で学んでいる所を引き抜いたのである。
勿論、史実通りの天才ぶりを発揮しており、少なくとも数学・物理学・工学・計算機科学・経済学・気象学・心理学・政治学の論文を発表している。
このアナログコンピュータはデジタルコンピュータよりは精度が悪いが、それでもこの時代であれば十分な計算を行えるし、ドイツが投入出来る技術の全てを注ぎ込んで作り上げたものだ。当然性能はダントツにいい。
他の高射砲もこれとは別のアナログコンピュータで計算をしたりするが、ここまで大掛かりなものではないし何よりこんなに金は掛からない。
「Feuer!」
ズドン!
離れていても腹に来る、大きな射撃音が響く。
10cm厚の防弾ガラスが震えている。
4門が号令と同時に次々と射撃を行う。
ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!
26発分の弾倉を全て3分ほどで撃ち切ると装填に入る。その隣の陣地で残る4門が射撃を開始している。
「実戦での想定としては、別のグループが装填時間に射撃を行います。理想としては今のように8~12門を1グループとして、交互射撃を行うというものです」
流石に26発を装填するにはそれなりに長い時間が必要で、26発目を撃ち終わる頃にようやく装填完了のランプが灯る。
そして撃ち終わって、数秒遅れながらまた射撃を始める。
「装填時間は、ざっくり2分半と言ったところか。中々速いのではないか?」
「そうですね。技術者の私はイマイチ分かり兼ねますが、90kgを超える砲弾をこれだけの速さで装填するとなると、速い方なのでは?」
「ビスマルク級の主砲射撃速度が全自動で1分間に3発だ。規模も違うが、一部人力装填で26発をこの速度で装填となるのであれば十分に速い。ただし装填を早める為の訓練は必須だろう」
「人力が絡む以上は訓練する他無いでしょう」
15cm高射砲の試験は問題無く終わり、8門全部で104発の砲弾を射撃。
問題と言える問題は確認されず、正式採用となった。
生産に関しては陸軍のブレーメン造兵廠、ケルン造兵廠、シュトゥットガルト造兵廠、ハノーファー造兵廠、ドルムント造兵廠、クルップ社のレーゲンスブルク工場、インゴルシュタット工場、アウクスブルク工場の8か所で製造されることになったが、各造兵廠では既存砲兵装備の生産に圧迫され、15cm高射砲の月産は各造兵廠でそれぞれ8門が限界、クルップ社では5門が限界ということになった。
それでも最大で月産55門ということだから、13個グループを編成することが出来る。なので8門計算だと12個高射砲中隊を編成することが出来る計算である。
1941年末までに700~800門を揃えられればと言うところである。
ざっくり100個中隊、大隊換算だと約33個大隊の編制が出来れば要地防空に於いて大きな戦力になるのは間違いない。
空軍の大部分を各国に派遣することになる関係でどうしてもドイツ本国の空の守りが薄くなりがちなのだ。だからこの15cm高射砲が防空の要になるのだ。
配備が予定されているのはドイツ本国の工業地帯だ。あれらがやられてしまうと本当に我が国だけでなく、同盟全てが大負けする可能性が高いのである。
この15cm高射砲の配備をここまで急がせたのには理由がある。
というのも、アメリカからソ連にB‐17戦略爆撃機が売却された可能性がある、という報告が上がっているからである。可能性としては五分五分ぐらいらしいが、少しでも可能性があるのであればそれは無視してよいものでは無い。
アメリカ政府上層部にソ連スパイが数多く入り込んでいるのは周知の事実だが、もしこのB‐17売却が事実であるのだとすれば、同盟国全てが危険に晒されることになる。
さっさとソ連スパイを駆逐してくれないものだろうか。
B‐17はB‐29ほどでは無いにしても、高度1万mを超える高度を爆弾を抱えて飛行することが十分に可能で、特に史実でドイツ本土を焼き払ったB‐17G型にもなると約1万2000mの高高度飛行性能を実用上昇限界性能として備えている。
その場合、我々の迎撃手段は迎撃機しか存在せず、対空砲では迎撃が出来ないということになる。そうなれば後方地域への爆撃で我々の継戦能力が失われる可能性も高く、出来うる限り対策をしておかなければならない。だからこそ15cm高射砲の配備を急がせたのである。
最初に製造された試作8門の15cm高射砲を含めて、続いて生産された9号砲~32号砲の32門はベルリン工業地帯に配備された。
最初の8門以外は12門づつの中隊として編制されている。
この配備はベルリン工業地帯防空のためという理由と、15cm高射砲を扱う兵員の養成、訓練を行う訓練所の役割も兼ねているからである。
ベルリン工業地帯はシュプレー川沿岸部に広がる工業地帯で、民需、軍需問わず数百以上の工場が存在するドイツ経済、軍事の根幹を成す地域である。
他にも同規模で言うとルール工業地域なども多数存在するがいずれにせよ一か所でも爆撃でやられてしまうと、再建するのに下手をすると10年は掛かる。
ドイツ本国は基本的に最前線に位置しないが、各国に対する武器兵器供給、部隊再建や訓練の為の後方支援という重大な役割を担っている。
各国にも軍需工場が建設されているが、規模や能力は我が国の10分の1以下なんてこともある。
生産されるものも銃弾や砲弾、小銃、機関銃が殆どで、それ以外の航空機、自動車、戦車、対空砲、対戦車砲といった兵器は殆どがドイツからの供給に頼っているのが現状なのだ。
これは単純に各国の国力が関係しており、ドイツは腐っても列強国で、世界中に植民地を持っていた国でもある。それと比べると同盟国は国力が劣ってしまうのだ。ドイツの人口は色々と支援だったり手当だったりを政策として行ったことで、総人口は7300万を超えることになっているが、他の国はそうもいかない。
ポーランドは精々2000万人、フィンランドは約350万人、ルーマニアもざっくり1400万人ぐらいに落ち着く。チェコ・スロバキアも1000万人程度で、ハンガリーも1000万人程度。
バルト3国は3か国合わせて300万人に行くかどうかといった具合だ。スウェーデンは630万人程度。ノルウェーも300万人ほど。デンマークも400万人前後とされているので、同盟国全体で1億5000万人ぐらいになる計算だ。
ソ連の総人口はざっくり1億人800万人ぐらいになる。
しかも総動員体制ともなれば5000万人ぐらいの兵力を一気に突っ込んでくることだってできるわけである。
人口などの問題もあってこれ以上は、というのが現状なのである。
だからドイツが戦略爆撃によってやられてしまえば、同盟国はマトモの戦うことが出来なくなってしまうのだ。なので15cm高射砲の配備地はドイツ国内に決定したという経緯がある。
勿論同盟国が戦略爆撃で叩かれないように戦闘機や迎撃戦闘機の配備は進めるが、もし開戦となったらその時はそもそも先んじてソ連軍の飛行場や爆撃範囲内にある軍需工場をこちらの戦略爆撃で叩いてやる作戦がある。敵の前線飛行場や補給拠点がまともに機能しないようにすればいい。
それでも暫くの間は、圧倒的兵力差を前にこちらは防戦一方になるだろうが、どちらにせよ最初の数年は耐え忍ばねばならないのだ。
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我々の中で最も頭の痛い問題は補給である。
戦争に於いてあらゆる物事の中で最優先に考えるべきは情報と補給である。
この点、情報に関しては外務省傘下の対外情報局、内務省傘下の対内情報局、軍傘下の保安局が存在する。これ以外にも民間にも情報収集や防諜を担うところがある。
既に軍と外務省、内務省の情報収集部隊は各国に展開しており、多くの情報を齎してくれている。これ以外にも彼らは防諜を担当しており、我が国に存在する対外防諜法と対内防諜法を元にソ連スパイや各国の諜報員の摘発などを行っている。
だからよっぽどのことが無い限り、絶対とは言えないが我が国が情報という面で遮断されることは無いだろう。
しかし最も頭が痛い補給という問題は、常に私達を悩ませているのである。
というのも、前線や最前線に物資を補給するには大陸国家である為に、どうしても鉄道かトラックの二択に殆どの場合絞られる。
一応内陸部に船で物を運ぶことも出来るが、縦横無尽に運河や河川があるわけでは無いし、まさか今から運河を整備する訳にも行かない。となるとどうしても鉄道である程度最前線に近いところまで運んで、駅からはトラックに積み替えて車列を成して最前線に運んでいく必要がある。飛行場であれば鉄道を隣接させているが、最前線に鉄道を敷設するわけには行かない。
鉄道の量で我々が最前線に送り込める物資の量が決まり、勝敗が決するのだ。
我々は航空部隊の幾つかの戦略目標として、敵の鉄道線が含まれているが敵にとっても我々の鉄道線は戦略目標なのである。
だから我々はドイツ国内だけでなく、同盟各国内に張り巡らされた長大過ぎる鉄道線をどうやって守るのか、というのも考えなければならない訳だ。
「しかしなぁ……」
運輸省の面々とどうやって鉄道路線を守るのか、という問題で連日頭を悩ませているわけである。
総延長距離が数十万kmもの鉄道を、どうやって守れというわけだ?どうやったって普通の歩兵連隊で守ろうものなら数百万もの兵力が必要になる。前線近くの鉄道ならそれでもいいが、より後方の鉄道だとそうもいかない。
「一番手っ取り早いのは戦闘機だが……」
空軍は空軍で対ソ戦を正面からやるならまだ戦力不足は否めない、と言っている。
既に300機ほどのFw190を鉄道防衛の為に配備しているが、どうしても航空機だけだと穴が開いてしまうし、常時航空機を張り付けておけるわけでは無い。
特に夜間は航空機への搭載が可能な小型レーダーの配備はまだまだ先なので、夜間は航空機とは別の手段で鉄道を防衛しなければならないわけである。
「航空機用のレーダーが実用化されれば、こんなことで悩まなくても良いんだが……」
「それは仕方がありません。どうやっても1943年までは実用化出来ないと回答されているのですから、今は別手段を考えましょう」
「うーん……」
「閣下、装甲列車は駄目でしょうか?」
「装甲列車か……」
装甲列車は手段としては悪くはない。
ただ装甲列車は欠点の方が多いのだ。
普通の列車だとそこまでの重量物を運んでいない場合では線路を爆破しないと通れてしまうが、装甲列車はその重量故に線路のボルトを一本外しておくだけで勝手に脱線するし、行動が線路に限定される。
航空機が発達した今だと微妙、正直言ってこいつ必要か?という扱いなのである。
「航空機が夜間でも作戦行動が可能になるまでの繋ぎと考えれば悪くない案では?」
「そうだな。しかしそれだと開発までに随分時間と金が掛かってしまうのではないか?」
「武装と車台に関しては既存のものを流用すれば良いでしょう。牽引の為の機関車や牽引車は装甲で覆う必要があるので幾らか時間が掛かるやもしれませんが、2ヶ月もあれば設計図は作れます」
各鉄道会社や機関車などの設計を担うクルップ社の出向担当者がそう答える。彼は鉄道関係の専門家だから、信用出来る言葉だろう。
「……分かった。では装甲列車の設計を進めてくれ」
「承知しました」
こうして軍や企業と話を進めて具体的な性能が決定された。
ーーーーーーーーー
1939年式装甲列車
牽引車 前後1輌づつ
牽引車装甲 前面20mm
側面20mm
上面40mm
牽引車武装 MG34 正面 1挺
両側面 1挺づつ
兵員車台 5輌
各車最大60名
3段ベッド20台
全周20mm厚装甲
上面40mm厚装甲
高射砲車台 4輌
88mm高射砲各1門づつ
砲弾 各300発
MG34 両側面に1挺づつ
高射機関砲車台 8輌
40mm連装高射機関砲 4基
(弾薬各1500発)
20mm4連装高射機関砲 4基
(弾薬各2000発)
電源車 4輌
発電機各4基
全周30mm厚装甲
上面40mm厚装甲
弾薬車 3輌
88mm高射砲弾 1200発
40mm高射機関砲弾 10000発
20mm高射機関砲弾 20000発
全周40mm厚装甲
上面40mm厚装甲
機関銃車 2輌
MG34 各6挺づつ
全周20mm厚装甲
上面40mm厚装甲
搭乗人数
牽引車操縦員 8名
歩兵 30~40名
高射砲兵 48名
高射機関砲兵 80名
発電機操作員 16名
弾薬運搬員 48名
機関銃兵 36名(装填手、弾薬手含む)
計266~276名
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こうして装甲列車が採用されたのである。
各車の装甲は、牽引車と弾薬車、電源車のものが厚くされており、機能不全にならないように配慮されている。
どの車台も上面に関しては40mm厚の装甲を有しており、これは敵機からの攻撃に耐え得る為に最低限必要とされた数値の装甲厚だ。機銃掃射には十分に耐えられる設計にはなっているが、ロケット弾や爆弾の直撃には耐えられない。
どの車両にも最低限全周20mmの装甲が施されており、これは敵の小銃や機関銃からの射撃に耐え得る為の厚さでしかない。
この装甲厚の元になった根拠の一つに最近ソ連軍が配備を始めた14.5mm弾を用いる重機関銃を持ち出されたら耐えられるかどうか、というものがある。詳細な性能は判明していないから、20mm厚の装甲で防げるかどうかは正直に言えば微妙といった具合だ。
装甲に用いられているのは戦車用の特殊装甲で、ニッケル、クロム、モリブデンなどの希少金属が使われているものだ。だから単純な鉄板よりも防御力は高い筈だが、だからと言って油断は出来ない。こちらのパンツァーファウストやオーフェンローアが鹵獲されて使用されればどうやったって耐えることは出来ない代物だ。
牽引車1輌で引っ張り、もう1輌で押すという方式を採っているので、一応10輌~20輌程度の車列であれば別に牽引が出来る。兵員輸送であれば20輌を引っ張れるが、重榴弾砲などの重量物牽引となると、精々10輌が限界らしい。
よっぽどのことが無い限り装甲列車がその任務を与えられることは無いが。
装甲列車には地上戦の為に歩兵が1個小隊程度乗っており、彼らは鉄道沿線で敵ゲリラコマンドなどの掃討を目的とした、まぁ特殊部隊のような性質を持った部隊である。彼らは爆発物処理などの技能も習得しているので線路に爆薬などが仕掛けられていてもそれを処理することが出来る。
この装甲列車は最終的に15車列分が製造されることになり、運用は陸軍鉄道部が担うことになった。
装甲列車は一旦、航空機の夜間作戦飛行が可能になるまでの繋ぎであり、航空機の数が十分に揃えば順次退役していく予定だ。
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話していなかったが、以前から陸軍で特殊部隊が編制、組織されている。
敵地後方への浸透、破壊作戦や情報収集、偵察、狙撃、爆撃誘導などを主目的とした特殊部隊が編制されているのだ。
規模は1個連隊、1000名ほどと小さいが敵地での味方勢力を作ったりなどの作戦を行う部隊だ。100名づつの特殊作戦大隊で編成されており、これが10個大隊。司令部はベルリンに存在する。
特殊作戦連隊司令部の指揮下には以下の部隊が所属している。
・第1特殊作戦大隊
・第2特殊作戦大隊
・第3特殊作戦大隊
・第4特殊作戦大隊
・第5特殊作戦大隊
・第6特殊作戦大隊
・第7特殊作戦大隊
・第8特殊作戦大隊
・第9特殊作戦大隊
・第10特殊作戦大隊
実際に現地で作戦行動を取る実働部隊。
各大隊は300名程度で構成されており、部隊員は10名前後の分隊で行動する。
装備はStg34、MG34、拳銃、手榴弾、爆薬などであり、正規戦を行うわけでは無いのでパンツァーファウストやオーフェンローアなどの重火器は装備しない。ただし必要であれば支給されるし、各部隊員も問題無く扱える。
各国の武器なども問題無く扱えるように訓練されており、現地でサバイバルを行いながら長期間に渡って任務を継続することが出来るのがこの特殊作戦大隊だ。
・特殊戦支援航空団
・特殊戦支援大隊
情報収集、作戦支援、兵站維持、補給など後方支援を担当する。
・特殊戦訓練学校
志願者の訓練と選抜を行う。
特殊部隊に志願資格を持つ者は以下の通りになる。
・自発的志願者であること
・現役勤務の男性軍人或いは男性兵士であること
・出生地がドイツであり、尚且つドイツ国籍保有者であること
・身辺調査に於いて問題無しとされた者
・降下猟兵資格を取得済み、或いは取得見込みがある者
・降下猟兵訓練へ参加することが可能な者
・戦闘服、戦闘靴で100mを泳ぐか、戦闘服、戦闘靴、ヘルメット、突撃小銃を装備した状態で50mを泳ぎ切ることができる者
・陸軍共通一般適性テストで100ポイント以上を有している者
・陸軍共通体力試験に於いて、250ポイント以上を有している者
・特殊部隊体力試験を合格出来る者
・陸軍健康診断において全ての項目で異常無しとされた者
・ドイツ軍秘密情報取扱資格を保有している、又は取得見込みのある者
・所属兵科区分を特殊部隊区分に変更可能な者
・パイロット、軍医などの特定兵科や技能職種で勤務していないこと
・新兵、2等兵、1等兵の場合は兵科が歩兵であること
・入隊後、特別な理由が無ければ48カ月間勤務可能なこと
・以前に別の特殊部隊を除隊していないこと
・軍規違反、法律違反、軍法裁判、軍法会議、民事裁判、刑事裁判等、あらゆる点で起訴歴、逮捕歴、収監歴等がないこと
・2親等までに精神異常者、自殺者、犯罪者がいないこと
以上が基本的な志願資格保有者である。
資格を有していれば、どの兵科や職種でも特殊部隊に志願することは可能だ。
士官と下士官などでまた別の条件が追加される。
士官
・階級は大尉、又は大尉への昇進が決まっている中尉であること。
・ドイツ軍秘密情報取扱資格に於いて最高機密取扱資格を有している、又は取得基準に適合、達していること
・将校基礎訓練課程を修了しており、現在所属している兵科及び部隊での勤務成績が優秀、又は最優秀であること
・ドイツ軍語学適性試験で80点以上を獲得、又はロシア語、フランス語、イタリア語、英語、日本語、スペイン語、オランダ語、ポルトガル語の何れかを操ることが出来る者
下士官
・階級は上級上等兵、伍長以上であり、1等軍曹以下であること
・高等学校卒業資格を有すること
・現在、訓練学校や新兵訓練等で教官を勤めていない、志願兵事務所担当ではないこと
・入隊後、軍での勤務を続ける意志があること
・現在所属している兵科と所属部隊から特殊作戦資格訓練課程への参加許可を正式に得ていること
・臨時勤務を命じられている場合はその期間が、特殊作戦資格訓練課程の開始に影響しない程度であること
・伍長、特技兵、3等軍曹の場合は特殊作戦資格訓練課程に参加する前に、所属部隊から移動できること
・他部隊への配属を希望していないこと
・1等軍曹の場合、入隊から12年以内、1等軍曹に昇進してから10カ月以内であり、尚且つ4か月以内に特殊作戦資格訓練課程参加の為に基地移動が可能であること。そして降下猟兵資格を取得済みであること
以上の資格を有した者が順次特殊作戦訓練課程に送られ、合格すれば見事特殊部隊員となれるわけである。
特殊作戦資格訓練の期間は9段階に分けられる。
第1段階 特殊部隊員評価・選抜
3週間掛けて各人の評価と選抜を行う。
特殊部隊員として基本的な素質である基礎体力や協調性と言ったものを備えているかどうかを見極める。
内容は体力試験、障害物コース、走破訓練、行軍訓練、ランドナビゲーションやサバイバル訓練、問題解決能力の測定、チームワークがあるかどうかを徹底して見極められる。
第2段階 基礎訓練
6週間掛けて、体力、精神力、チームワークを徹底的に向上させる。
第3段階 語学訓練。
期間は14カ月。
潜入などを行う為に、各訓練生はそれぞれ習得を目指す言語を選択してそれぞれ学ぶことになる。
選択可能言語は、ロシア語、イタリア語、英語、日本語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、オランダ語、アラビア語となる。
第4段階 個人技能訓練
期間は16週間。
射撃などを始めとする基本的な戦闘技術と個人技能の習得と向上を目指し、ドイツ軍内のあらゆる兵器や装備品、車両等の扱いを覚え、それに加えて他国の武器や装備、車両の扱いを習得することを目的としている。
市街地戦や不正規戦などの訓練も行われるが、まだまだ研究途上なので部隊配属後も随時更新される。
第5段階 専門技能訓練
期間は24週間~48週間
将校課程、衛生課程、狙撃課程、陸戦課程、工兵課程、通信課程に分かれて専門技能をそれぞれ習得することを目的としている。
衛生訓練が最も長く48週間の訓練となり、狙撃が次いで36週間、工兵と通信は24週間となる。
第6段階 専門技能訓練2
期間は48週間。
ここでは酸素ボンベなどを用いた潜水訓練や空挺降下訓練、水中作戦、市街地戦闘などの訓練を行う。
第7段階 心理戦
期間は5週間。
人心掌握などの心理戦について学びつつ、実戦していくことになる。
この際、町中や各国で実際に訓練を行う。
第8段階 総合訓練・総合演習
期間は8週間。
あらゆる環境や状況での演習を行う。
集大成と言っても良い訓練と演習であり、敵支配地への潜入、偵察、破壊活動から始まり、現地勢力との接触や交渉、協力関係の構築、現地協力者の訓練、現地協力者や組織の攻撃の組織化、敵支配地域からの脱出までを全て通して行う。
この演習はドイツ全土、同盟国全土で広域的に行う訓練であり、同盟各国に対しても通達されていない、知らされていないものだ。
第9段階 訓練修了手続きと卒業式典、配属大隊発表、移動準備
期間は1週間
全ての過程を突破した者は、晴れて特殊作戦資格が与えられ、部隊配属となり特殊部隊員となることが出来る。
この後に実任務や配属部隊での訓練を積んでいくことになる。
以上の過程を全てクリアした者にだけ陸軍特殊作戦徽章が与えられることになる。
彼らは家族、妻、子供、親族、親しい友人にも一切自分の所属部隊を明かすことは許されない。
そのために彼らにはそれぞれダミーの所属部隊と階級が与えられ、家族や友人に対しては所属部隊と階級を使うことになる。
というように通常部隊以外にも、特殊部隊が編制されたりと陸軍は中々なことになっている。
とはいえ特殊部隊と言ってもまだまだ黎明期であり、その戦術などは洗練されて行くべきものがあるが、それでも世界的に見ても特殊部隊の名に恥じない能力と規模を誇ると言っていい。彼らの活躍もまた、必要不可欠なのである。
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1940年末頃になると、軍の体制も整った。
戦時動員の為の準備や法案も既に何時でも発動が可能な状態で待機しており、常備部隊においては万全の態勢と言って差し支えない。
陸軍は総兵力100万名を数える。
装甲戦力も4号戦車と5号戦車を合わせて約20000両。
砲兵師団、装甲師団、装甲擲弾兵師団、戦闘団は完全機械化済みで、電撃戦から包囲殲滅戦、防衛戦の火消し役まで担える。歩兵師団も50%の機械化を達成している。
6個降下猟兵師団も何時でも実戦投入可能な状態を維持しており、彼らの輸送と敵地降下の為の手段は空軍とは別の陸軍所属輸送航空団が担う。
これらとは別の、トラックやハーフトラックなどの車両や装備類を合計すれば、少なくとも現状世界で最も優れた軍隊と言える。
同盟各国も、砲兵や戦車の数に差はあれど少なくとも歩兵師団に関しては機械化率40~50%を達成出来ている。
特殊部隊の方もすでに各国やソ連国内に網を張っているようで問題無いようだ。
空軍
Fw190戦闘機 約20000機
Bf109迎撃戦闘機 約6000機
Me366重爆撃機 約2500機
Me366輸送機 約550機
Bf101対地支援攻撃機 約4500機
Me211高高度高速戦略偵察機 50機
作戦稼働機は全て合わせて約3万4000機に達し、同盟各国の空軍戦力も合わせれば現時点で約5万機を数えることができる。
海軍
空母 5隻
戦艦 2隻
重巡 6隻
軽巡 8隻
防空巡洋艦 8隻
駆逐艦 58隻
潜水艦 56隻
海軍戦力は戦闘艦艇だけで143隻を数える。
空母へーリンゲン、戦艦グナイゼナウ、重巡フリードリヒ・デア・グローセ、駆逐艦2隻が現在は建造中である。
水上艦艇は3個艦隊をそれぞれ編成している。
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第1艦隊
空母 グラーフ・ツェッペリン
シャルンホルスト
戦艦 ティルピッツ
重巡 プリンツ・オイゲン
ブリュッヘル
軽巡 2隻
防巡 2隻
駆逐艦 12隻
給油艦 4隻
給糧艦 3隻
給兵艦 3隻
給水艦 4隻
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第2艦隊
空母 ヒンデンブルク
デアフリンガー
戦艦 ビスマルク
重巡 アドミラル・ヒッパー
ブリュッヒャー
軽巡 2隻
防巡 2隻
駆逐艦 12隻
給油艦 4隻
給糧艦 3隻
給兵艦 3隻
給水艦 4隻
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第3艦隊
空母 バイエルン
重巡 ザイドリッツ
リュッツオウ
軽巡 2隻
防巡 2隻
駆逐艦 12隻
給油艦 4隻
給糧艦 3隻
給兵艦 3隻
給水艦 4隻
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以上が編成され、主力艦隊として配備状態にある。
建造中の戦艦と空母は訓練終了後に第3艦隊に配属される予定だ。
第4艦隊までが編成される予定だが、第4艦隊に関しては艦艇が建造すら開始されていないので、まだまだ先のことである。
主力艦隊とは別に1個練習艦隊、3個潜水艦隊、1個護衛艦隊が存在する。
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練習艦隊
練習艦 ザッハウ
ケルヒャー
ガイスラー
ラングスドルフ
駆逐艦 4隻
潜水艦 8隻
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護衛艦隊
駆逐艦 12隻
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第1潜水艦隊
潜水母艦 1隻
駆逐艦 2隻
潜水艦 16隻
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第2潜水艦隊
潜水母艦 1隻
駆逐艦 2隻
潜水艦 16隻
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第3潜水艦隊
潜水母艦 1隻
駆逐艦 2隻
潜水艦 16隻
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これらの艦隊とは別に、タンカー、輸送船、揚陸艦、上陸用舟艇などの補助艦艇が存在する。
彼らは特に単一の艦隊を組んだり、そこに所属するということは今のところ無く、基本的にはドイツ本国と同盟各国、アジア資源地帯を行き来したりして物資や資源を運んでいる。
必要であれば船団を編成し、護衛艦隊が就き、それでも護衛戦力が足りないとなれば主力艦隊から戦力を抽出することも出来る。
アルトマルク級タンカー 10隻
1番艦 アルトマルク
2番艦 マジェスティック
3番艦 ブレーメン
4番艦 アトランティス
5番艦 アンスヴァルト
6番艦 オーロラ
7番艦 ヴィルヘルミナ
8番艦 アリアナ
9番艦 コルモラン
10番艦 ヴィーザル
オーセンティック級タンカー(2万t級タンカー)
同型艦 17隻
T級輸送船(1万2000t級)
同型艦 67隻
ノイシュタット級揚陸艦
同型艦 10隻
1番艦 ノイシュタット
2番艦 トレンネブルト
3番艦 カウシュホルン
4番艦 フィンドルフ
5番艦 ヴッパータール
6番艦 イッセルブルク
7番艦 ノルトキルヘン
8番艦 エップシュタイン
9番艦 メトラッハ
10番艦 クレンペル
大型上陸用舟艇(日本軍の大発動艇改良版)
162隻
小型上陸用舟艇(日本軍の小発動艇改良版)
153隻
日本からの技術供与で得た上陸用舟艇となる。
これの利点は大部分を木造で済ませることが出来るという点であり、鉄資源の節約になることだ。
実際に船体の殆どは木製で、金属部分は接合部とタラップ、エンジンとエンジンルームだけとなる。
流石に木製なので荒波の中を渡っていくことは難しいが、揚陸艦や輸送船に載せて上陸地点の近くに運べばある程度の天候を無視して上陸戦を行うことが出来る優れモノだ。
この上陸用舟艇は使い勝手がかなり良く、陸軍の方でも河川の渡河や橋を架ける際に基部として用いることも出来る為、かなりの数が工兵隊に導入されている。
大型の方だと60名ほどの完全武装の歩兵を載せることが可能で、現在開発が進められている上陸用舟艇は4号戦車、5号戦車を搭載することが出来るものとなる。
ちょっとした武装を施して武装舟艇として河川警備や防衛に当たらせることも出来るし、汎用性が思いのほか高く優秀な兵器だ。
陸軍の方にも多数が配備されており、工兵部隊の装備となっている。
工作艦 ヒルデスハイム級工作艦
同型艦 4隻
ヒルデスハイム
レムシャイト
コブレンツ
ヘルネ
大型艦艇修理施設が少ない北欧諸国に艦隊を派遣する際に、そこでの修理や改装をする為に建造された。
造船所はあるが、流石に戦艦や空母を何隻も受け入れられるだけの造船所は無く、どうしても渋滞してしまうことが予想され、簡易な修理や改装であれば担えるように建造されたのである。
艦隊随伴給油艦(主力艦隊配属)
同型艦 12隻
給糧艦(主力艦隊配属)
同型艦 12隻
給兵艦(主力艦隊配属)
同型艦 12隻
ゾンネンブルーメ級測量艦 同型艦 4隻
ゾンネンブルーメン
リーリエ
リンデン
トゥルペ
S級駆潜艇 20隻
M級掃海艇 20隻
L級哨戒艇 20隻
H級魚雷艇 20隻
ドルムント級病院船
同型艦 8隻
ケムニッツ級水上機母艦
同型艦 4隻
ケムニッツ
クレーヴェ
ノイヴィート
ディリンゲン
小型モーターボート 133艇
大型ゴムボート 21艇
中型ゴムボート 20艇
小型ゴムボート 23艇
海軍の戦力はこんなものである。
中々纏まった戦力ではなかろうか。
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1940年4月11日。
今日から1ヶ月間、海軍の第2艦隊がジブラルタル、スエズ運河、スリランカ、シンガポールを経由して日本へ親善訪問を行う為に出港する日である。
第2艦隊
空母 ヒンデンブルク
デアフリンガー
戦艦 ビスマルク
重巡 アドミラル・ヒッパー
ブリュッヒャー
軽巡 2隻
防巡 2隻
駆逐艦 12隻
給油艦 4隻
給糧艦 3隻
給兵艦 3隻
給水艦 4隻
輸送船 7隻
この訪問には同盟の結束力強化の目的があり、イギリス海軍からもキング・ジョージ5世と、就役したばかりのプリンス・オブ・ウェールズの戦艦2隻にイラストリアス、フォーミダブルの2隻、ヨーク、エクセターの重巡2隻、エディンバラ、ベルファストの軽巡2隻、駆逐艦10隻が日本を訪問することになっている。
日本は欧州から離れているが、対ソ戦略上はとても重要な位置にある。その日本との関係強化と世界3大海軍大国の一角を担う日本との練度向上や連携力強化、技術交流などを目的としたものなのだ。
陸軍からも2個歩兵連隊を主力とした部隊が、空軍からも各種航空機が派遣され、それぞれ交流を行う予定である。
日本には既にかなり大型の機材を多数輸出しており、情報によるとかなり久しぶりに戦艦の建造をしているとかで、その情報が正しいならば史実通り大和型戦艦なのではないか、と考えている。詳細なスペックは判明していないながらも、順当に行けば46cm砲装備となる筈だ。
それ以外にも空母の建造にも注力しており、現時点で翔鶴型航空母艦が5隻も建造中であるという。史実では2隻しか建造されていない筈だが、何が理由なのかさっぱりだ。
しかも戦艦のうち、フソウクラス、イセクラスの4隻を老朽化を理由に除籍、解体している。
恐らくだが、この動きには財政上の理由があると思われる。
戦艦は建造と維持に凄まじいコストが掛かるが、空母や駆逐艦が主力であればそれをかなり抑えられる。
要は戦艦よりコストが安上がりな空母に舵を切ったというわけである。それに対ソを意識した場合、海軍より陸軍を早急に整える必要があるが、海軍はとにかく金食い虫だ。
議会で老朽戦艦は真っ先に除籍、解体処分になったのだろう。
それでも老朽戦艦4隻の代替の為に新型戦艦2隻を建造しているというから驚きである。
さすがは海軍大国というべきだ。
現在の日本は軍事予算の大部分を陸軍に注ぎ込んでおり、来るべき対ソ戦を意識しての陸軍の装備更新や編成などを急速に進めつつあるという。
史実では日中戦争と太平洋戦争が始まったことで、陸軍の近代化計画はまるごと全て潰れてしまった日本陸軍だから、この辺は大きく良い影響で進んでいると言える。
「諸君らは日本という遠くに位置しながらも、重要な同盟国へ親善の為に派遣される。特に海軍の面々は学ぶことも多いだろう。短い期間ではあるが多くの事を学んで吸収してきてほしい」
盛大な式典で、国民の多くも詰めかけながら艦隊は見送られる。
本来ならば私も赴くべきところだろうが、流石にこの忙しい時に一緒になって行くことは難しいので、航空便で行って1週間ほど日本に滞在することになっている。
ベルリンを出発し、2日間掛けてブカレスト、スエズ、ムンバイ、スリランカ、シンガポール、香港、台湾を経由して日本に行って、そしてまたドイツへ戻って来るという中々ハードな日程となる。
道中のブカレストでは2時間の首脳会談を行う予定であり、それが終わったらすぐに飛び立つ。
勿論バカンス気分で行ける訳も無く、それどころか道中ですら会談やら書類仕事やらで山ほどある。
この出張で唯一の楽しみは50年近くぶりになる日本食が食べられるかもしれないという事だけである。