Re. Blue youth 作:り、理解できりゅ〜〜う♡♡♡
尚、プリンは暫く先とする。
――Epilogue――
はい、こうしてワタクシの物語は終わりました。
遍く絶望の終着点、そう言い表せばワタクシの人生も酷く滑稽で、第三者からは程よい暇潰しにもなるでしょう。嫌に物語じみた人生です…はて、でしたら主人公は誰だったのか。
過去を引き摺り、過去に潰されたホシノさんでしょうか?各学園でトラブルを起こしながらも最後まで生き延びたアルさん?名も無き神々の女王でありながらも、"勇者"で在ろうとしたアリスさん、大いなる力は無くても平和を愛して駆け回ったヒフミさん、キヴォトス規模で最強のヒナさん――
それとも、矢張り……あの大人、『先生』こそが主人公だったのでしょうか?
まあ、斯くあったとしても。そんなのはエンドロールで判明しても仕方がないのでしょうね。
色々あって、世界は滅びました――それが…それだけがエピローグです。沢山死んで、先生も色彩に呑み込まれて。赤く染った空の下、残るのは四肢を喪って空をボーッと眺めるワタクシのみ。
「…………………チッ…」
……嗚呼、なにが《ワタクシ》だ。巫山戯てんのか…最後の最期まで俺は、センパイの"お願い"を叶えられなかった。ホシノを救えなかった、アビドスを救えなかった。
センパイ……ユメ、センパイ…俺、やっぱ無理だったわ。
大いなる力には大いなる責任が伴う、とはどっかの蜘蛛ヒーローが言ってた。別にそういう思想に従うワケじゃねぇけど……でも、でもさ……?
俺だって…助けたかったんだ……前世だとか異世界だとか、色々とあるけど…きっと俺は、主人公みたいに成りたかった。先生みたいに…成りたかったんだよ。
「………く、そ……やり、直したい…なぁ……」
……でも、やっぱり終わる。『ワタクシ』として自分を偽り続けて、全てを
ホント、クソッタレな人生だったな。
赤い空が徐々に黒く染まる――暗い闇に意識が傾き、眠気とはまた異なる喪失感に身を窶す。
こうして俺の――『ワタクシ』の物語は終わりました。俯瞰することしか出来なかった屑の語る、暇潰し程度に消費されるエピローグでした。
どうぞ、ご清聴感謝致します。
◆◆◆
Epilogue――終了を記録、可及的速やかにrestartを実行。――、――――、
execution――error……
execution――error……
execution――error……
execution――error……
execution――error……
execution――error……
execution――error……
execution――error……
execution――error……
暫定――
Condition change.
Blue youth――Re. prologue――
◆◆◆
「………っ!……こ、こは…?」
明るい木目の特徴的な、何処か古くも高級感のある天井。見慣れていた筈の其れは、然しもう存在しない、数ヶ月前までの住居だ。
底のない穴に沈む感覚から一転、気が付いたら日常的な暖かみに包まれていた。
死に際の走馬灯なのだろうか…と、辺りを見渡す。だが走馬灯にしては嫌にリアリティを帯びており、心臓は痛いほど高く鳴る。まるで雰囲気に流れていた死の気配を再度冷静に受け止めたように、みっともなく手が震えていた。
「夢か…?…や、いや……どっちが夢だ…?俺は死んだのか?それとも――」
震える手を握り、僅かに伸びた爪を手のひらに軽く食い込ませた。喪った四肢があるのは今更だが、問題はそこじゃない。
爪を立てた肌には確かに痛みがあった。現実的で、決して夢では再現出来た試しもない痛み。
何が起こっている…?
キヴォトスは間もなく崩壊する筈だった。この慣れ親しんだ寄宿舎の一室だって、そも、建物自体が色彩の襲来を経て犠牲となった物の一つだった。
それからはシャーレの一室を借りていたのだが……現状、小鳥の囀りしか聞こえない平和な空間とは斯くも日常的で、不気味にすら感じる。
「……いや、まさかな……」
死に際――先程までの事だけど、俺は願った。やり直したい、と……そんな夢物語を心の底から渇望した。
だからこそなのだろう。妄想してしまった――四肢が元通りで、壊れた自室で寝ていて、カーテンの隙間から見える空が赤ではなく青で……まるで
でも生憎と、俺は『生きている=巻き戻った』と早々に決め付けられるほど、小説やコミカライズされた書物の主人公並の判断力はない。
受け入れられない、ということでもある。だから事実を俯瞰する事しか出来なくて――
いや、事実を陳列しただけでは確実性に欠ける。
現状は現状として受け入れて、そこから……そうだ、まずは逆説的に考えよう。
どうして"こうなった"、ではなく"こうなった"のはどうしてか――
死ぬ寸前……てか死んでいた俺が、五体満足で立っている………それは可能なのか?いや、どうすれば可能となる?四肢の欠損、よって多量の出血。心臓も撃ち抜かれたけど、即死はしていなかった。打首でも二十秒前後は意識があるって言うし、心臓程度ならもう少し持ちそうなモノだ。
でも事実、あの状態で即死はしていなかったとしても救える手段は現状のキヴォトスには存在しない。
今のこの手は、義手なんかではない。前世ほどまでに男らしくはなく、寧ろ女性になってしまってはいるが……結論、確実に死んでいた俺が現状に至れる
――次に、壊れた寄宿舎が何故直っているのか。
似ているだけの建物――部屋、という線は否定出来ない。でも布団に染み付いた俺のにおい、落書きの目立つ学習机、使い古したラックハンガーと、その下に積まれたR18のエロ本。
紛れもなく俺の部屋で、今の体に与えられた名称――
先程の俺の身体の件と同様、此方も現状では不明――否、妄想じみた『やり直し』しか貧困な俺の頭では思い付かなかった。
最後に――
「……誰かが、色彩を追い払ったのか?」
窓枠に手をかけ、恐る恐るカーテンをズラして外を見る。
「……………っ!」
いつか、崩壊してしまった筈の平和が目の前にあった。空が青く、小鳥が鳴きながら戯れ、遠くの道路では運動部の生徒が列を成して走っている。
なんの異常性も見られない、きっと昨日も明日も同様に続くであろう青春の日々。振り返ってから初めて気付く、尊くも儚い日常。
……もう、認めてもいいんじゃないか…?
例え死に際の妄想だとしても……一時的なまやかしだったとしても、俺は確かに俺の目で『戻った』のだと認識してしまった。
惜しまれながらも短くした髪が腰まで伸びている。落として罅だらけだった携帯端末の画面だって綺麗で、昔から使ってるパジャマは相も変わらず小さくて、でもまだ破れてない。
「は、はは……」
本当に……最低で、最高だ。
「はは……くっ、ははは……!」
涙が頬を濡らす。きっと今なら、身近でクソッタレな神様にも感謝出来る。やり直すチャンスが目の前にある……後悔しかなく、惰性で最期まで生き残った俺だけど………救えるのかな。
……センパイ、今度こそ約束を果たすよ。あの不器用な奴…ホシノを助ける。でも他を見捨てたりもしない。
今度は、今度こそは……成すべき事を成す。
ちゃんと、
「…………つーか、今っていつ?」
時間的な意味で、同時に時系列的な意味でもある。
携帯端末をタップすると画面に淡い光が灯る。そこに表示されるのは『AM6:09』の文字。朝にしては比較的早めの時間だ。
取り敢えず手癖でSNSを開いてトレンド欄に視線を向けると――自分でも分かりやすく息を飲んだ。
「…要するに、初めからってワケね」
連邦捜査部S.C.H.A.L.E――その顧問『先生』。この世界の主人公様がちょうど昨日、キヴォトスに来たらしい。相も変わらず俺には『先生』の姿も性別も《認識出来ない》けど、白いノイズに包まれた大人の情報がネット上で駆け回っていた。
他の生徒には『人型』に見えているらしい彼、もしくは彼女。でも俺には分からなかった。向かい合っても姿が見えない……白い電子的なノイズに包まれている。
姿は見えないのに目が合っている感覚には、得体の知れない気持ち悪さすら覚えた。声すら俺だけには不明瞭に聞こえて、でも脳はちゃんと意味を咀嚼して理解を示しているのだから……きっとおかしいのは俺なのだろう。
その先生がキヴォトスに来たばかり、という事は俺の行動指針も立てやすいと言うものだ。
………欲を言うなら、俺が今の体になったときに戻して欲しかったな。
もう殆ど覚えてないけど…俺は昔、男だった。性自認はそん時のままだから、少なくとも俺は俺の過去を妄想だとか夢だとは思わない。
多分、前世の俺は死んだ。酷く呆気なく、他人の記憶にも残らない死に様だったと思う。
そんで…次に目覚めたら砂漠の真ん中だったってワケだ。ご丁寧にも女の子の身体になって、砂漠の真ん中に放置されたと。神様は大層適当な性格らしい。
手元にあったのは殆どからの鞄と、学生証のみ。当時のこの体は中学三年生だったな……まあ、二年前だけど。
二日くらい彷徨って、絶望したあたりでセンパイ達に拾われた。そこからは砂漠…てかアビドスで保護されて、なんやかんやあって今はトリニティに所属している。
……転生って事でいいのか、それとも憑依扱いなのか。分からないけど、学生証がある割りにはキヴォトスに『操上フタバ』なんて生徒は存在しない。今は俺がいるけど、当時はマジで
各学園で使い回されてるテンプレート的な学生証にも、ご丁寧に所属学園だけが無記入になっていた。
存在しない生徒で、持ち物は学生証と空の鞄のみ。まるでゲームの初期状態だ。衣服の灰色のシャツにジーパンなのだから、無課金初期スキンでしかない。
そも、この世界に存在しながらも銃すら所持していなかったのだから、キヴォトス出身としては外出時に服を着忘れる程度には非常識な状態だった。
よって、俺は自分を転生と定義している。
憑依と言われても元の人物が存在しないのだから、やっぱり転生だ。そも、昨今の転生は定義が曖昧化している。ならば言ったもん勝ちだ。
俺は転生者だ……誰がなんと言おうと、俺は転生者なんだ……!はい、こうして自分を転生者だと思い込む一般キヴォトス生徒が誕生して、今はトリニティにおいて自分をお嬢様だと思い込む一般貧困生徒となった次第。
絶妙に動きずらいトリニティ所属。でも無理を通すしかない……死にたくないけど、また後悔を抱えて最期まで生き残るのはもっと嫌だ。
俺としても『ワタクシ』に準じていたから、正直な所……先生の動向がイマイチ把握しきれていない。顔の見えない大人だから普通に苦手だったし……でも、仕方がない。男として、腹を括ろう。今は女だけど。
――まずはファーストインプレッションだ。
把握しきれている所で、最初にシャーレ所属になったトリニティの生徒は羽川ハスミと閃光弾の二人で、きっと現時点では既に入部している。
そして、次に所属するのはペロキチ…阿慈谷ヒフミだ。詳しいタイミングは分からないけど、彼女は先生がキヴォトスに来て間もなくの時点でトリニティ自地区外に行ったのは数回、その内の何処かで接触したのだろう。
つまり、俺がするべき行動は自然な形で連邦捜査部に入部して、自然な形で先生に関わり続ける事。最悪、エデン条約を理由にトリニティとゲヘナから目の敵にされたらトリニティから転校して……うん、またアビドスにでも入ろう。
きっと、平和への近道は『先生』だ。その為になら、存分に利用してやる……きっと、先生を死なせなければ先生がキヴォトスに希望を示す。
世界が先生を主人公と定めるなら、俺だって並んでやる。全ては、後悔のない未来のために。
もう……目の前で大事なヤツらを失わないために。