なんと二次創作日刊1位、総合日刊2位というマーリンもびっくりの評価をいただくことができました。読者の皆様の評価・感想・お気に入りあってのことです。これからも本作とフェザリナをよろしくお願いいたします!
ダンブルドアの諸注意は続き、最後に校歌斉唱を挟んでその場は解散となった。監督生たちが先導し、生徒たちは各々の寮へと導かれていく。上級生たちはともかく、新入生の中には眠そうに眼を擦る者の姿も多い。ハリーもその中のひとりだ。
階段やら隠し扉やらポルターガイストのピーブズやらといった障害を乗り越え、やっとのことでグリフィンドール寮の談話室に辿り着いた頃合いともなれば、もう暖かいベッドで眠ることしか考えていないような顔つきのものも多かった。
とはいえ、例外はどこにでもいるものである。
「いや~美味しかったねぇどれもこれも! ねぇハリーとロンはアイス全部食べた? どのフレーバーが良かったかなあ、わたしってばよくわかんなくなっちゃって!」
「……元気だね、フェザリナ」
「いつもキラキラなのがわたしの取り柄だもん! もっともっと褒めてくれていいんだよ~?」
フェザリナの瞳に眠気は浮かんでいない。それどころか列車の中で過ごした昼間となんら変わらない喧しさだった。とはいえ、彼女のおしゃべりにずっと付き合えるような体力を未だ残している者は流石に皆無だ。
「ほら、もう就寝時間だ! 寝室に戻って明日に備えるように!」
監督生のパーシー・ウィーズリーにそう急かされて、生徒たちはそれぞれ男子寮と女子寮へと別れていく。必然、ハリーやロンとフェザリナは離れ離れとなった。
「む~、つまんないの。まあいっか」
フェザリナは気を取り直し、ひとりで螺旋階段を上っていく。どうやら同室の面々は早々に談話室を離れていたようで、フェザリナ以外の新入生は見当たらない。
ややあって、彼女もようやく自らの寝室へと辿りついた。
「た~のも~! 遅れてごめんね!」
バンと扉を開け、寝室へと踏み入るフェザリナ。そこには三人の先客──ハーマイオニー、ラベンダー・ブラウン、パーバティ・パチルが既に揃っていた。グリフィンドールに組み分けされた新入生の女子は、彼女たちにフェザリナを含めた計四人だ。つまり、後からフェザリナが合流することはこの三人も承知していたはずである。
にもかかわらず、三人の間にはいささかの緊張が走ったように見えた。
「……もしかして、あんまり歓迎されてないかな? わたし、何か悪いことしちゃったっけ」
「あー……その、フェザリナ。そういうわけじゃなくて」
唯一フェザリナと直接会話したことのあるハーマイオニーが、慎重に言葉を選ぼうと苦心する。
「貴女が、そう、同室で生活するにあたって……これからずっと、あまりにも元気すぎることが、心配というか」
「あ、そーいうこと? ふふん、それなら安心してくれていいよ。わたしってば、空気を読んで静かにしてるのは得意だからね☆」
「本当に? 信じていいんだよね?」
三人を代表して、ラベンダーが真剣な顔で問いかける。なにせここに集まった面子は、これから七年間の生活を共にするであろうルームメイトなのだ。大広間でフレッドやジョージと散々はしゃぐフェザリナの姿を見せつけられた三人は、彼女が大人しくしてくれるか否かで今後の快適な学園生活は大きく左右されるということをしっかり認識していたのである。
「ほんとほんと! わたしがずっと騒いでたら、他の人はあんまりラッキーじゃないでしょ? わたしはみんなとラッキーになりたいし、みんなが嫌なことはしないって約束するよぉ?」
その言葉に、ハーマイオニーのみならずラベンダーもパーバティも胸を撫で下ろした。
「ごめんね、いきなりこんなこと聞いて。ラベンダー・ブラウンよ、よろしく」
「パーバティ・パチル。はじめましてだね、フェザリナ」
「私も……改めて。ハーマイオニー・グレンジャーよ」
「フェザリナ・アークライト! ピカピカキラキラだから覚えやすいでしょ、よろしくね!」
男子相手ならばともかく、同性の女子に対しての挨拶としては、フェザリナの言葉選びは些か以上に挑発的だった。それでも彼女が反感を買わなかった理由は、大きく分けて三点。
ひとつは組み分けから今に至るまでの短時間で、新入生たちからは既にフェザリナが奇人のカテゴリに分類されていたこと。ふたつは、フェザリナの言葉に毒気も揶揄も悪意も含まれていないのが容易に察せられたこと。そしてみっつは、謙遜するとむしろ嫌味になりそうなほどの輝きを誇るブロンドヘアをフェザリナが持ち合わせていたことであった。
「……今日はもう寝ない? 私、もう眠くて眠くてしょうがないの」
パーバティの言葉にラベンダーもハーマイオニーも頷く。フェザリナは一瞬きょとんとしたが、すぐにその表情を笑顔に戻した。
その後は四人の間に特に会話もなく、各々が寝間着に着替えて手元の灯りを消していく。しかしハーマイオニーが着替え終わったとき、フェザリナはまだ制服のローブを脱ごうともせず、ただベッドに腰かけているだけだった。
「フェザリナ、着替えないの?」
「ちょっと目が冴えてるからね~、気にしないで? 灯りは消しとくからさ!」
「それならいいけれど……明日に差し支えないように、早く寝た方がいいわよ」
そう言いながらハーマイオニーは灯りを消し、フェザリナもそれに続く。ラベンダーとパーバティは数分前にベッドへ潜りこんでいた。カーテンは既に閉められ、月明かりすら入ってこない。
寝室が暗闇に包まれた中、フェザリナが静かにしながらちょっとだけ待ってみれば、すぐに三人分の寝息が聞こえてきた。
「そろそろいっか」
フェザリナは立ち上がり、音を立てないようゆっくり歩く。幸いにも寝室の扉は軋まないようなつくりになっていたし、重ねて幸運なことに、階段を降りた先の談話室ももぬけの殻だった。
本来ならば初日から抜け出そうとする新入生を捕まえるため、監督生のうち誰かが談話室で待ち構えているものなのだが、その役割を担うパーシーはちょうどトイレに行くため席を立っていたのだ。無論、フェザリナはそれを知る由もない。
「ちょっと貴女、門限はもう過ぎてるのよ!」
談話室の外に出た瞬間、フェザリナの背中から待ったの声がかかる。グリフィンドール寮の入口に構える肖像画、太った
「忠告ありがと~! でもねぇ、わたしは行かなきゃいけないから! 合言葉は『カプート ドラコニス』だったよね、覚えてるから大丈夫! じゃあねぇ~!」
「ああこら、待ちなさい!」
親切心から呼び止める婦人のことはスルーしながら、フェザリナは堂々と城内探検に繰り出す。
「さてさて。良い感じの空き部屋があると良いんだけどな~」
フェザリナが初日から門限を完全に無視して飛び出した目的。それは、自分のためのプライベートな空間を確保することだ。ホグワーツに来るからには受け入れなければならないのが共同生活であるが、彼女にはひとりになれる空間が必要だった。
より正確に、具体的に言うならば……フェザリナが日々飲み、日々消費されていく魔法薬。幸運をもたらす薬、フェリックス・フェリシスの調合を行うための、誰にも邪魔されることのないような空間が必要なのだ。
とはいえ、別にこうして深夜にその空間を探す必要はない。一年生は自由時間も多いし、休日もしっかりある。昼間なら校則破りを気にする必要もなく、むしろ生徒たちの出歩いていない深夜帯では、一見空き部屋に見えるその空間が生徒に認知されているかを判断することもできない。
「ふーむ。……うん、迷ったねこれ! ここどこだろ、あっちが図書館で、こっちはぁ……なんだっけ、天文台塔行き?」
それでもフェザリナがわざわざ深夜に空き部屋探しの下見をする理由は単純だ。
普通の生徒がこうして深夜に出歩けば、教職員や監督生たちに捕まる可能性は極めて高い。特に管理人のアーガス・フィルチや、その飼い猫であるミセス・ノリスに見つかりなどした日には最悪だろう。数十点の減点と重い罰則を覚悟せねばなるまい。
それで? フェザリナ・アークライトがたかだか平時の単純な見回りに捕まるとでも?
フェザリナにとって、ホグワーツ城を深夜に好き勝手歩き回ることはリスクでもなんでもない。『深夜でも捕まらないように歩き回れる』可能性がほんの少しでも存在するなら、フェザリナが捕まることなどありはしない。それこそが幸運薬の主たる効能のひとつである。
「ま、行くだけ行ってみよっか! もしかしたら良い場所があるかもしれないし~?」
そして幸運薬は、自らの道を指し示してもくれる。強い目的意識を持てば、それを最善の方法で達成するためにやるべき行為を直感的に理解できる。それがどれほど非合理的に見えても、だ。
故にフェザリナは、幸運薬の導きという名の直感に従って、幸運薬のおかげで誰にも捕まらない深夜の城内探検を行っているのだ。自らの目的だけを決めれば、後は彼女が何をせずとも、彼女自身が取れる最善最良の選択肢が待っている。
「んふふ~、広いお城でひとりきりなのも悪くないね! みんなが寝てるのにわたしだけ起きてるのも、なんだか得してる感じ!」
幸運薬を服用していない平常の感覚を知らないフェザリナにとって、行動を起こすというのはすなわち幸運薬に身を任せるということだった。そうすればすべてが上手くいくのだから、そうしない理由がなかった。
「入学初日から門限破りとは、あまり感心できんのう……ミス・アークライト?」
だからこそ、直感に導かれるまま歩き回った結果として誰かに呼び止められたことに、フェザリナはただただ驚愕した。
「……あれ、あれれ? んむむ、おかしいなぁ。なんでだろ?」
「許されるならば、ミス・アークライトが何を不思議に思っているのかを聞いてもよいかな?」
振り返ったフェザリナの視界に映ったのは、彼女に負けず劣らずキラキラとしたその瞳。
「誰かに見つかっちゃったらまずいのに、わたしは先生に見つかるべきだったって、
フェザリナの言葉を聞いて、ダンブルドアはますます興味深そうな表情と共に彼女を見つめた。