ソードアート・オンライン ー浅葱の剣聖ー   作:狂華翠月

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第十話 終わり

 

 

 

 

「あれは……軍の奴らか?だが、あいつらは第50層を根城にしてるはずじゃ?」

 

 

「……ええ。確かに彼らは強硬派で知られる軍で間違いないんですが……確か、今は組織強化を行っている最中だったはずです」

 

 キリトの疑問に、私は答えつつも現状を訝しみながら、そう答えました。私たちがそんなことを話していると彼らはこちらに向き直る。

 

「休め!!」

 

 リーダー格らしき人物が号令を下した途端、プレイヤーたちは一気にへたり込むように座り込んでしまいました。そのまま、コーバッツは私たちに近づいて、

 

「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ」

 

「キリト、ソロだ」

 

 そう名乗って来たので、キリトが代表して、応えます。

 

「君たちは、もうこの先も攻略しているのか?」

 

「ああ……ボス部屋までのマッピングは終わってる」

 

「そうか…では、そのマッピングデータを提供してもらいたい」

 

「な、ふざけんなよテメー。タダで提供ってマッピングの苦労が分かってんのか!」

 

 コーバッツのあまりの要求にアスナたちが驚く中、このいかにも三流の悪人風なコーバッツは口を開く。

 

「我々は、一般プレイヤーに情報や資源を平等に分配し!秩序を維持するとともに、一刻も早くこの世界から、プレイヤー全員を解放するために、戦っているのだ!ゆえに、諸君らが我々に協力するのは、当然の義務である!」

 

「あなたね……!」

 

 コーバッツの言葉にアスナが反論しかけ、《風林火山》のメンバーも刀に手を掛けようとしています。それをキリトが手で制して

 

「どうせ、街に戻ったら、公開しようと思ってたデータだ」

 

「本当にいいんですか?渡しても碌なことにならないと思いますよ。もらう立場として相応しい対応をしているともおもいませんし」

 

「ああ、別に構わない」

 

 キリトの言葉に私も渋々ながら同意し、キリトがマッピングデータをコーバッツに送った。それを受け取ったコーバッツは、さっきの会話が聞こえていたのか私を睨みながらもキリトに感謝を告げる。

 

「協力感謝する……それからそこの殺人鬼、お前のような奴が私たちの行いに口出しをするな」

 

 それだけ言って、背を向けながら彼は隊を引き連れ突き進んでいく。……なんというか、どっかで見たような捨て台詞ですね。もうちょっとぐらい捻ってもいいと思うんです、ソウジさんは。

 

「それなら私からもひとつ。ボスにちょっかいかけるなら、今すぐ考え直したほうがいいですよ」

 

 理由もなければ話したい相手でもないが、死んでほしい相手という訳でもありません。無謀な進軍を行う彼らに声を掛けます。

 

「それは私が判断することだ。貴様が口出しすることではない」

 

「「!!」」

 

「じゃ、はっきり言います。行くのやめといたほうがいいですよ?あなた達じゃ行っても無駄死にするだけなので」

 

「私の部下たちはこの程度の事で音を上げる軟弱者ではない!!貴様のような人間とは違うのだ!」

 

 コーバッツはそう言ったきり会話を打ち切ってそのまま進んでいってしまいました。

 

「あー、行っちゃいましたね」

 

「……大丈夫か、ソウジ?」

 

 さっきの発言に気を使ってか私の様子を窺うキリト。

 

「ん、特に問題ありません。ああいった視線にも言葉にも慣れていますし。……それにしても本当のようですね。今の《軍》は上層部の腐敗で蓄積した不満を戦果を挙げてもみ消そうとしてるらしいって話」

 

 そう言うとキリトは一瞬顔をしかめつつも私に質問を行う。

 

「あいつら、ボスに挑むとは思うか?」

 

「どうでしょうか、まぁ変なプライドでそのまま突っ込んで全員ご臨終な気がしますけども」

 

「……ソウジ、それは……」

 

「どうしました?彼らもそれを承知で進んだのでしょう。ならば私がいうことはありませんし」

 

 ソウジの言葉にキリトやアスナが固まる。ソウジの声には一切感情が感じられない。只々事実を述べてだけ。死という終着点をソウジは日常のものであるかのように告げる。

 

 そんなソウジの様子に誰も声を発さず辺りが静まり返る。

 

「……ソウジ、俺はあいつらをそのままにしたくはない。気に入らないやつではあるけどな」

 

「そうですか…別に私も彼らに固執する理由もありませんし、全然かまいませんよ」

 

「…そうか、助かる」

 

 結局キリトの提案で《風林火山》も同行することとなって、再びボスの部屋を目指すことになりました。そして20分ほどかけて安全圏からたどり着いた時だった。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「…行きましょう!」

 

「いくぞ、アスナ!」

 

「ええ、分かってるわ!」

 

「お、おい!ソウジ……キリトまで!?ちょっと待ってくれよ」

 

 悲鳴が聞こえた直後、私はすぐさまボス部屋と走り出し、キリトとアスナが私に続きます。巻き込まれる形でクラインたちも付いてくる。そして、ボス部屋は開かれており、その中の光景は地獄の様相となっていた。ボスのHPは四分の一も減っていないにも関わらず、軍のメンバーの何人かはHPがイエローにまで到達している。はっきり言って絶望的な状況だ。

 

「やっぱり、こうなりましたか……」

 

 キリトは倒れこむプレイヤーに声を張り上げる。

 

「早く、転移結晶を使え!」

 

「そ、それが……結晶が使えないんだ!?」

 

「なっ……!」

 

「そんな……!?」

 

「結晶無効化空間でしょうか……?」

 

 兵士の言葉にキリトたちは驚きの声を上げます。この人たちを守り抜くにはあのボスを倒す必要が……ソウジがこの状況を切り抜ける算段を立てないうちにも、事態は最悪の方へと傾いていく。

 

「我々解放軍に撤退の二文字はありえない!そんなことはならんのだ!突撃ぃ!!!」

 

「っ……!いけません、今すぐ引き返してきt

 

 すぐさま援護に入ろうと、ソウジが駆け出すがすでに手遅れであった。

 

 『GYAOOOOOOOOOO!!!』

 

 ボスの広範囲を焼き払うブレスと斬馬刀による痛烈な一撃が軍のメンバーを襲う。衝撃を凌いだ私の前にコーバッツの体が転がってきます。吹き飛ばされたコーバッツのHPはみるみる減っていき……

 

「……そ、そんな馬鹿なわたしは」

 

 自らの死を悟ったからだろうか。コーバッツは絶望の表情をしたまま、何かを求め必死に手を宙に伸ばし……ポリゴンとなって、消えていった。

 

「………」

 

 ──死を悼むべきなんでしょう……本来なら

 

 ヒトであるならば目の前で起こった悲劇を悲しみ、惜しむべきなのだろう。……()にはよくわからない。生きるものは必ず死という絶対的な滅びが訪れる。それが彼の場合は今だっただけの話。

 

 そして私はそんな自分が気持ち悪くて仕方がない。自分が何なのか、吐き気がしてくる。それでも刀を振るうのにこんな気持ち(もの)は必要ない。この場で先ほどの感傷を、噛み殺す。ボスは再び獲物を手にかけようとし、それを防ぐため私も駆け出します。

 

「なっ、待てソウジ!クソッ、俺も行く!」

 

「っ、私も行くわ!血盟騎士団副団長だもの」

 

 ボスを止めようと、飛び出した私を援護するため、キリトとアスナも追いかけてきます。

 

「くそっ、どうにでもなりやがれぇ!」

 

 どうやらクライン達も援護してくれるようだ。申し訳ありません、この借りは必ず返します、と心の中で感謝を告げる。

 

「せえぇぇぇぇい!」

 

 ボスの左上から右下への振り下ろしに合わせる形で私の神速突進ソードスキル《紫電一閃》の一撃がボスの手に見たれられた斬馬刀に命中し…

 

 『GYAAAAAUUUU!』

 

 ボスが突進の勢いに押され少し後退ります。後ろに吹き飛ばされながらも態勢を整えながら着地し向かってきていたキリトとアスナと合流します。

 

「な、ホント無茶なことを」

 

「この状況でごちゃごちゃ言ってはいられません。私がボスのヘイトを買いつつボスを殴っていきます。その間にキリトとアスナはひたすらダメージを出してください。クラインは軍の避難の手伝いをお願いします」

 

「分かったわ」

 

「承ったぜ、よしお前ら行くぞー!」

 

 こうしてボス撃破のための反撃の狼煙があがりました。

 

「よし、いいぞ!…………スイッチ!」

 

 キリトの準備完了の声に、ボスの斬馬刀を弾き、キリトと位置を入れ替わる……そして、私も《神速》を発動させながら、「菊一文字則宗」を握り締めボスを動きの緩急をつけ困惑させつつ斬りつけていきながら、キリトの援護に入ります。

 

「スター、バースト…ストリーム!!!」

 

 そのまま、キリトは二刀流16連撃ソードスキル《スターバースト・ストリーム》を発動させ、星屑のように飛び散る白光が空間を灼くのと共に、ボスの体を刻み始めました。だが、ボスもそのままではやられまいと、反撃を試みようとしますがそれを見逃すわけにはいきません!

 

「思い通りにはさせません!!!」

 

 ボスの一撃を神速20連撃ソードスキル《乱れ花吹雪》を使い、攻撃を弾いて、そのままキリトと入れ替わる形でひたすら斬りつけます。

 

「「うぉぉぉぉぉ!!!/はぁぁぁぁ!」」

 

 そのまま、私とキリトは夢中で剣を振るい続けボスのHPはアスナの削りも合わせてどんどん減っていき、やがて………

 

「はぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!」

 

 『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?』

 

 キリトの最後の一撃がボスを貫き、雄たけびと共にボスは硝子が崩れるようにポリゴンと化して消滅した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「どうやらこれで終わりみたいですね……」

 

 ──ドサッ……!

 

「キ、キリト!」「キリト君!?」

 

 剣を持ったまま、倒れてしまったキリトに私とアスナは慌てて駆け寄ります。少ししてキリトが目を覚ました。目覚めたキリトにホッとしたのか、アスナは涙を流している。

 

 

ーキリトside ー

 

 

「……アスナ?」

 

「キリ、ト……くん……!」

 

 74層のボスも倒し終えると同時に視界が暗転した。そうして気が付いた時には俺はアスナに抱き着かれていた。

 

「……悪い、心配させたな」

 

「大丈夫ですか、キリト?」

 

「…ソウジ、俺はどのくらい気を失ってた?」

 

「数秒程度ですね」

 

 アスナと私の声にキリトは問題ないことを伝え、体を起き上がらせつつ自分が気絶してからどれくらい時間が経ったのかをソウジに尋ねる。

 

「よう……目は覚めたか、キリト」

 

「クライン………何人死んだんだ?」

 

「…俺たちが来る前に2人死んで合計3人だ」

 

「そうか……ボス攻略で死者が出たのは69層以来か……」

 

「……バカ野郎が!死んじまったら、攻略なんて言えねぇじゃねぇか!ソウジもだぞ!お前らもっと自分のことにも気を遣えよ1」

 

 クラインの言葉に誰もが悲痛な表情を浮かべる。耳の痛い話だ。死ぬ気なんてものはさらさらなかったが無茶して仲間に心配かけたのは事実だろう。

 

 その空気を変えようとしたのだろう。クラインが質問をしてきた。

 

「わりぃ、言い過ぎた。俺たちも心配でよ。そりゃお前たちは強いんだけどよ。……そのー、キリト。やっぱ何度見ても凄いなあの二刀流ってユニークスキル!勿論ソウジもな!」

 

 その言葉に俺とソウジは一瞬顔を見合わせ、頷いてからクラインの質問に答えることにした。せっかくクラインが話題を振ってくれたんだしな。

 

「……ま、そうだな。単純に手数が二倍になるってことだしな。ソウジのユニークスキルも大概だがな」

 

「……マジか…てか、キリトやヒースクリフはともかくソウジのユニークスキルって具体的にどんな効果があるんだ……?戦ってるのもあまり見えねぇし分からねぇんだよな」

 

「まぁ、簡単に言うと俊敏値とソードスキルを使用しない攻撃のダメージの大幅な増加。それと、ソードスキルの硬直時間減少といったものが主な効果です」

 

「「「おおおおぉぉぉぉ!!!」」」

 

 ソウジの回答に驚きの声が響き合う。何となく察してはいたが聞かされると改めてその桁外れな効果に驚愕するばかりだ。周りから見られた自分もこういう風におもわれていたのだろうか。

 

「確かにぱっと見は《神聖剣》の方が強いが《神速》も十分ぶっこわれだぜ!通常の剣撃だけで十分な火力を出せるしな。ただ俊敏の向上もあってかなり使い手を選びそうだぜ」

 

「そ、それで!?出現条件は!?ずっと気になってたんだよ!」

 

「……分かってたら、とっくの昔に公開してるよ。いつの間にか、スキル欄に出現してたんだよ」

 

「私もキリトと同じくですね」

 

 クラインの言葉に俺たちはそう答える。正直言ってユニークスキルはわからないことだらけだ。

 

 返ってくる答えを理解していたのか、そりゃそうだよなぁ……とぼやきつつもクラインは続けて疑問を投げかける。

 

「……にしてもよぉ、よく50階層で見せれたな。他のプレイヤーの嫉妬とか怖くねぇのか?」

 

「……まぁ、勿論考えたよ。ただソウジがな……」

 

「「嫉妬が気になるなら二人同時に見せちゃえば良いんです」だっけ、ソウジ君が言った言葉」

 

「ええ、そちらのほうが私たちも力を最大限発揮できますし」

 

 そうしてクラインが75階層へつながる出現してきた扉に視線を向ける。

 

「それで、75層の転移門の扉が出てきたけどよ、キリトはどうするよ?俺たちはアクティベートを行うつもりだけどよ」

 

「……任せるよ。流石につかれたんでな」

 

「そうか。ソウジはどうする?」

 

「私はクラインたちと一緒に75階層に向かいます」

 

「分かった。……お前らの頭についてはご愁傷様だが。ソウジの件については俺がまだ許しちゃいねぇ。さっさとこの場からうせやがれ」

 

 クラインの言葉に軍のプレイヤー達は慌てて転移結晶で帰って行った。

 

「クラインも気にしなくよかったんですよ」

 

 クラインにソウジが声をかける。だがそれはクラインを心配するものであり、自分への罵倒に対してのものではなかった。

 

「お前が良くても俺が良くねぇ。…ソウジはそんな奴じゃねえだろ」

 

「………そうですね、ありがとうございます」

 

 クラインの言葉に、ソウジは目を瞬かせると一瞬顔を伏せた後、自嘲を含めた笑みを浮かべた。自分の目に映った笑顔でありながら影を感じるその表情は次の瞬間には消え去った。

 

「それじゃ、俺たちは行くぜ……それとよ、キリト。まぁ、何だ。お前には勿体無い相手なんだからさっさとしろよ」

 

「おい、クライン!」

 

「そうですよ、キリト。そんないい人手放しちゃダメですよ。クラインさーん、キリトは──

 

「……ソウジ、なぁ」

 

 先ほどの光景は幻であったたかのように、ソウジはいつものように調子よくクラインと一緒に俺のことをいじくる。

 

「ほー、後で聞かせてくれよ、ソウジ……よし、お前ら行くぞ!」

 

「キリト、それではお先に。お二人でごゆっくりとどうぞ」

 

 俺の呼びかけも聞こえていていないかのように振る舞い好き勝手言ってソウジは去っていった。クラインもソウジの話を聞きたくてうずうずしていたのか、ソウジを追って足早にクォーターポイントの七十五層へと向かって行く。

 

「あの、キリト君」

 

「ん、すまない。あんな奴らでな。……でも悪い奴らじゃなかっただろ?」

 

「そうね、愉快な人達だったわ」

 

 こうして、アスナと話が弾んだ時にはソウジのことはすでに頭から抜け落ちていた。

 

 

 

 ──もし、あの時俺がソウジに向き合えていれば……ソウジは…()()()()()()……

 

 

 2024年10月20日

 

 

ーソウジsideー

 

 

 朝刊を見た私は絶句するしかありませんでした。いや確かにアルゴさんならしかねないと思っていましたが改めて新聞を眺めて眺めます。

 

『74層ボス攻略!!!黒の剣士と浅葱の剣聖のコンビで撃破!』

 

『ユニークスキル、《二刀流》、《神速》!74層ボスに炸裂した33連撃ソードスキル!』

 

『最強の座は誰か!《二刀流》vs《神聖剣》vs《神速》!!!』

 

 色々脚色し過ぎといいますか何と言いますか……というか、最後の記事での特集のところ、私こんなこと言った覚えありませんよ。よくこんな記事が書けますね。

 

 てかこの世界観で新聞ってありなんですね。一応紙媒体となっているからですかね?投げやりになりつつある思考を振り払い、後でアルゴさんをじっくりと問い詰めると心に誓います。そんな風に思考がとっ散らかっていたところにアスナからメッセージが届きました。

 

『団長が話がしたいって。今日、血盟騎士団に来れる?』

 

 

ー75階層にてー

 

 

「どうだい、ソウジ君。君も私と一戦交えないかい?」

 

「……お断りしますね。てか、そもそもあなたやる気なんてないでしょう。私の反応をみたいだけですよね」

 

「おや、ばれてしまったか。だが君とも戦いたいというのは嘘じゃないんだがね」

 

「……あなたとの戦いは今ではありません。それにあなたとの戦いは大分迫ってきていますしね」

 

「……ふ、そうか。ではその時を楽しく待っておくとするよ」

 

 そんなことを血盟騎士団団長ヒースクリフさんと話しながら観戦していました。予想通り《二刀流》は50階層の時のように再びアインクラッドに話題の種となっていました。そして噂を聞いたプレイヤーが揃ってこう考えたのです。

 

 ───《神聖剣》と《二刀流》どちらが最強なのだ?

 

 《神速》は使い手である私には討伐戦のこともあって少なからず悪感情を抱いているプレイヤーが存在することもあり、あまり話題にあがることはありませんでした。

 

 そんな噂にヒースクリフ本人がこれに乗ってしまった、その結果がこの巨大な熱気を生んでいる。七十五層にある巨大なコロシアムは満員。垂れ下がっている大きな幕には、これまた大きな文字で『──《二刀流》の《黒の剣士》VS《神聖剣》の《聖騎士》──今、最強が決まる!』と書いてある。

 

 出店もあちらこちらに散見され、どちらか勝つかなんて賭けも行われており、会場の四桁にも上る観客のボルテージは限りなく上がっていた。血盟騎士団の経理の人は中々やり手である、そんな感想をソウジが抱いていると、ヒースクリフは立ち上がりコロシアムに向かう。

 

「では、キリト君との対戦を楽しもうとするか」

 

「まぁ私はキリトを応援しますが」

 

「応援はしてくれないのか…当然といえば当然なのだが……」

 

 そう言ってヒースクリフさんは控室へと向かっていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、歓声を浴びながら《黒の剣士》と《聖騎士》が登場する。決闘デュエルが始まった。キリトは黒と薄緑の二刀を使い圧倒的なラッシュをかける。対するヒースクリフは巨大な十字盾と十字剣を使いその全てを防ぎきる。

 

 盾で攻撃をいなされ態勢を崩されるものの、流石の反応速度で立て直しその動きが加速していき、瞬く間に乱戦となり硬質な擦過音が鳴り響き、二人のスピードが更にギアを上げて唸る。

 

 キリトから怒涛の勢いで放たれる鋭い一撃一撃をヒースクリフは正確にパリイで弾いていく。互いが互いの動きを読みあい、受け流しながらも常に隙を伺うヒースクリフと、そんな隙は与えんとばかりに二本の剣を喰らいつかせるキリトという構図が出来上がる。

 

 幾度となく続く斬りあいの中、キリトが七十四層のボス戦でも使った切り札、16連撃ソードスキル《スター・バーストストリーム》を前傾姿勢で駆け抜けながら発動させる。ヒースクリフは十字の盾と剣で防御に徹するも、エフェクトを伴う双剣のスピードがそれを上回り始めていきく。そして遂に攻撃に耐え切れなくなり盾が後ろに弾き飛ばされる。最後の一撃でがら空きとなった胴にキリトが斬りかかったと思った瞬間

 

 ──世界が……ブレた

 

 絶対に間に合うはずがないヒースクリフの盾は()()()()()()()()()()()()()()()引き戻されていた。今の動きはソウジにも捉えられなかった。キリトの最後の攻撃は盾に流され、その横腹は貫かる形となり、決闘はヒースクリフの勝利となって戦いは幕を閉じた。ソウジは未だ熱狂に包まれるコロシアムの中、一人目の前で起こったことについて考えを巡らせていた。

 

 

 

 

 そして決闘後、キリトはヒースクリフさんとの賭けの結果、血盟騎士団に入団しました。アスナの身柄を心配したキリトによって『キリトが勝てばアスナが血盟騎士団を退団する』、『ヒースクリフが勝てばアスナは退団せず、新たにキリトが入団する』という賭けが行われキリトは血盟騎士団員となりました。ユニークスキル持ちを二人も独占するのだから血盟騎士団は更に強力な組織になるでしょう。

 

 

 2024年11月7日

 

 

「慎重を期して行われた偵察は全滅した。結晶による脱出が不可能な上に、今回のボス戦では背後の退路も断たれる構造となっている。ならば統制の取れた大部隊でこれに当たるしかない。ソウジ君や特に新婚の君たちを呼び寄せるのは本意ではないが、了承してくれるかい?」

 

「ええ、勿論協力させて頂きますよ。ただ結婚してないからって安い扱いはしないでくださいね」

 

「勿論協力させて貰う。ただもし危険な状態になったら俺はパーティーよりもアスナを優先します」

 

「ああ、何かを守る人間は強いものだ。それにソウジ君を軽く見るつもりなどはない、今回の最高戦力だからな。攻略開始は三時間後。75階層コリニアのゲートに集合だ。では解散」

 

 そうしてヒースクリフさんとその配下は部屋を出ていきました。部屋には私とキリト、アスナの三人が取り残される。

 

「これでようやく四分の三、ですか」

 

「そうね、それでもまだ先は長いわね」

 

「ま、取り合えず今は目の前の物事に集中しようぜ」

 

 そうして三人で話し込んでいると話題は最近の出来事へと移っていく。

 

あれだけ焦れったかったキリトとアスナがやっと付き合ったかと思っていたら,いつの間にか結婚していましたし、何故かユイちゃんという養子までできていました。

 

 私の拠点と同じ階層に引っ越してきて驚きあった後、ちょっとしたパーティーもやりました。更にSAO回線保守の責任者であるニシダさんと、池のヌシをキリトやアスナと協力して釣り上げたこともありましたっけ。キリトとアスナにとっては最高の瞬間かもしれませんね、と思いつつも現実に目を向けます。私も準備を行うため会議室から退出したとき、キリトの声が耳に入ります。

 

 

「……アスナ……今日のボス攻略…参加しないでここで待っていてくれないか」

 

「どうしてそんなこと言うの……?」

 

 きっとこれは二人の間でのお話、私が聞いてよい話ではない。そう考えるのとは裏腹に体は動きを止める。

 

「転移結晶が使えない場所じゃ、何が起こるのか分からない…………怖いんだ。君にもしものことがあったら俺は「そんな危険な場所で一人で行って、私には安全な場所で待っていろっていうの?」……っ!」

 

 アスナの言葉にキリトは言葉を詰まらせる。そのままアスナはキリトに近づき、

 

「もしそんな場所でキリト君に何かあったら……私、自殺するよ!」

 

 その言葉に俯いていたキリトは目を開く。

 

「もう生きてる意味ないし、ただ待っていた自分が許せないもの」

 

「っ……ゴメン。俺、弱気になってる…本心じゃ、二人で逃げたいと思ってるんだ……現実世界に戻れなくてもいいから……!あの森の家で、いつまでも一緒に暮らしたい!」

 

「……うん……そうできたら、いいね……毎日一緒にいつまでも……」

 

 そう言って、アスナは続けた。自分たちの現実世界の体がどうなっているのか、ゲームをクリアするもしないも、もう時間が残されていないことを……泣き崩れるアスナをキリトは優しく抱きしめ、静かに呟いた。

 

「……だから今は……戦わなきゃいけない………か……」

 

 

 ──彼らのように私も……覚悟をしなければ……

 

 キリトとアスナの言葉を聞いたソウジは気付かれないようにその場を後にしつつ、決意を固める。目を閉ざせば今までの日々が脳内でよぎる。

 

 ──結局自分は……

 

 彼らと過ごした日々は自分には過ぎたるものだった。自分がなんであるかを思い出せ、踏み出したのは自分なのだから。もう止まるわけにはいかない。

 

 開かれた()()()()()()()()()()()()

 

 

 

ー三時間後ー

 

 

「……以上だ。諸君の検討を祈る」

 

 ヒースクリフの演説も終わりいよいよボス戦です。ヒースクリフが開いた、回路結晶の入り口に入り、私たちはボス部屋の前へと転移しました。

 

「……行くぞ」

 

 ボス部屋の扉を開き、私たちは一気に部屋へと流れ込み、散開した。事前情報通り、扉が閉まり、逃げ場が無くなった。ボスはフロアにはおらず、私たちは警戒を強めます。

 

「………上です!……皆さん端に寄ってください!」

 

 天井に張り付いたクモとムカデと骸骨を混ぜ合わせたような75層ボスであるスカル・リーパーの気配を感じ、散開の指示を出します。こちらを認識したのか、ボスは動きを止めて、こちらに落下してきました。全員がエリア端まで退避したことで被害はなかったようでしたが……

 

 『GYAAAAAAAAAA!!!』 

 

 ボスはそのまま移動を開始し、ソウジたちに襲い掛かかった。その時、ボスの初動に反応できず、動けなかったプレイヤーが鎌の餌食になった。

 

「な、うわぁぁぁぁぁぁ……!?」

 

 ──パリン!

 

「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」

 

 たったの一撃で攻略組でも有数の盾使い(タンク)プレイヤーがポリゴンに変えられてしまったことに、攻略組全体に衝撃と動揺が走ります。ですが、ボスにとってはそんなことは関係なく、他のプレイヤーに鎌を再び振るい始めます。

 

「させませんよ!そんなこと!」

 

 ギリギリでプレイヤーと鎌の間に割って入り、菊一文字則宗で鎌を受け流します。……やっぱキッツイですね!コレ!

 

「ソウジ君!」「ソウジ!」

 

 すぐにキリトとアスナが援護に入ってくれたおかげで、態勢を立て直せました。

 

「どこから狙う……?」

 

「目玉か、足かそれとも……」

 

「恐らく手に見立てられている鎌が最適解だと思います。さっき微かにですが手ごたえを感じましたから《武器破壊》の要領で行えば………」

 

「あのスピードと手数の中でか………ソウジ行けるか?」

 

「ええ、お任せください!ヒースクリフさんもカバーをお願いします!」

 

 ヒースクリフにも援護を要請し、攻略組全体が行動をとり始めました。私たちはキリトたちと共に再び、奴に正面から向き合います

 

 『GYAAAAAAOOOOOOOOO!!!』

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

 ボスの鎌をキリトとアスナの二人がソードスキルで受け止めたところを

 

「「スイッチ!!!」」

 

「ハッ!!」

 

 キリトたちが鎌を弾いたところで、私が鎌を足場にして縮地の要領で駆け上がりボスの頭にソードスキルをぶち込みます。特に技の出が早い神速16連撃ソードスキル《天衣無縫》を流れるように叩き込み、ボスは目玉を全て隈なく潰され鎌を前方に矢鱈めったらに振り回します。

 

 更に追加効果の鈍足のデバフにより、ボスのスピードが大きく下がったのが確認できました。ヒースクリフがボスの攻撃を受け止め皆さんが攻勢に入りました。そして、今度はキリトとアスナのソードスキルがシンクロし奴に決まります。

 

 『GYA…GYAYAGOOOOOOO!?!?!?』

 

 その攻撃に奴は大きくたじろぎ、ようやくHPバーが1本削り切れた。そのまま死闘は続いていく。ソウジやキリト、アスナにヒースクリフを筆頭に、タンクたちが攻撃を防ぎ、隙があれば、側面から他のプレイヤーたちが攻撃する……これを繰り返していき、鎌にも大分ダメージを与え、残りHPバーが1本になった時だった。

 

 『GYAOOOOOOOOOO!!!!!!!!!』

 

 ボスの体が赤く光ったと思えば、デバフは全て解除されステータスも上昇しています。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「た、助け……?!

 

 ボスの急な挙動の変化に対応できず、3人のプレイヤーが切り裂かれてしまいます。

 

「でしたら………ヒースクリフさん!」

 

「……なんだ!」

 

「カバー頼みます!キリト、アスナ……少しの間ヘイトを買ってくれませんか!」

 

「分かった!」「分かったわ!」 

 

 私はボスの視界から外れつつ接近していきます。そしてボスが薙ぎ払いを行ったタイミングでソードスキルを放ちます。

 

「………スゥゥ、《鏡花水月》!」

 

 空間を歪める程の剣戟が、効果音と共に唸り、白光が花のように咲き誇り、空間を埋め尽くす。ソウジが放ったのは圧巻の32連撃、次々と攻撃を叩き込み徐々に鎌にひびが入る。

 

 『GYUOOOOOO!!!』

 

 命を刈り取る武器から一転、ただの大きな的となった鎌が砕け散ちる。剣筋をプレイヤーの意思でかなり調整でき、範囲か一点集中か選択できるまさに《神速》の最大の奥義によって破られた。そしてもう片方の鎌も飛び出した人影に切りつけられる。

 

「させるかぁ!?」「させない!」 

 

 キリトとアスナが振り下ろしを受け止めつつソードスキルで斬りかかる。

 

「キリト、アスナ!鎌の根元が弱点です!!!」

 

「ああ!」「うん!」

 

 ソウジの助言に従って、キリトは二刀流ソードスキル《ダブル・サーキュラー》、アスナは細剣重撃ソードスキル《アヴォーヴ》を撃ち出し阿吽の呼吸で同時に鎌にダメージを与えた。

 

「これで……もう一本!!!」 

 

 そうして、キリトが放った《ダブル・サーキュラー》で遂にボスの武器が両方とも失われる。

 

 『GYOOOOOOOOO!?!?!?!』

 

「これで……終わらせます!」

 

 そうして前傾姿勢を取り、ボスの体の下を潜り抜ければ、足が歯抜けの状態となりました。神速重撃ソードスキル《朧月》。ランダムかつ不規則な動きで当たりを切りつけるという間違いなくソードスキルの中で使用者の自由が利くスキルです。勿論操作がしづらく技量が必要となるのですが……その一撃に、奴は大きく体勢を崩します。

 

「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」

 

 その隙に、全プレイヤーが全力の攻撃を叩き込んだ。キリトの二刀流16連撃ソードスキル《スターバースト・ストリーム》、アスナの細剣最上位ソードスキル《フラッシング・ペネトレイター》、ヒースクリフの神聖剣ソードスキル《ゴスペル・スクエア》、そして、私の神速32連撃ソードスキル《鏡花水月》がそれぞれの方向から決まります。

 

 ──HPバーも減少していきついにゼロになって…… 

 

 『GUGYA…………!?』

 

 

 ──パリン……!!!!!

 

 そうして苦しい戦いを終え、ボスの体は大量のポリゴンに変わり、クリアのウインドウが表示される明るい雰囲気とは反対に、ほとんどのプレイヤーがへたりこんでしまいます。私はポーションを飲みつつ当たりを見回します。

 

「……何人死んだ?」

 

「……5人だ……」

 

「………嘘だろう……まだ25層も残ってんだぞ!?」

 

 そんな重たい空気が漂う中………

 

 ──パアァアァァァァァン!!

 

 ヒースクリフに放たれたキリトのソードスキルがシステムメッセージと共にはね返された。

 

「システム的不死……!?」

 

「ど、どういうことですか、団長!?」

 

 表示されたメッセージは『Immortal Object』ー不死存在、本来プレイヤーが持つものではないです。そう、()()()()()()()()であったらの話ですが。

 

「なんでもないことです。この人のHPは、イエローゾーンに突入しない様、常にシステムに保護されています。そんな設定ができるのは、当然システム管理者のみ…」

 

「団長……まさか……!」

 

「本当に……()()()()、なのか……!?」

 

 このゲーム……SAOを作り上げた天才科学者にして、2022年11月6日の正式サービス開始日に、デスゲーム開始の宣告を行った狂気の天才。それが今、目の前にいると言うわけです。しかも、全プレイヤーの希望の星である、最強の聖騎士という姿で……

 

「ああ、確かに私は茅場晶彦だ。つけ加えるなら、この城の最上階で君達と戦う最終ボスでもある。本来なら九十層で明かすはずだったのだがな……」

 

「……どうするつもりだ?ここで俺たちを始末して、口封じでもするつもりか?」

 

 キリトがヒースクリフ、いや茅場晶彦を睨み付けながら問いかけます。

 

「ふざけんな……!団長……俺らの忠誠を馬鹿にして、騙してきたってのかぁぁああ!!」

 

 茅場のすぐ近くでやりとりを聞いていた一人の血盟騎士団員が立ち上がり、剣を振り上げ茅場へ襲い掛かります。しかし、茅場は眉一つ動かさないで落ち着いた様子で左手を呼び出したウインドウを操作します。するとそのプレイヤーは地面に倒れました。ステータスには、麻痺毒のバッドステータスが表示されています。そのまま、次々とプレイヤーたちが倒れていき、無事だったのは私とキリトだけでした。

 

「キリト君、君には私の正体を見破った報酬としてチャンスをあげよう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。不死属性を解除した私と、一対一でデュエルをしよう。無論、君たちのどちらかが私に勝てば、このゲームはクリアされ、プレイヤーたちは解放される。どうかね?」

 

「ダメだ、キリト!ソウジ!!そいつの話に乗るんじゃねぇ!」

 

「駄目よ、キリト君、ソウジ君!これは罠よ!!お願い、ここは一度引いて……!」

 

 キリトや私に親しい人が引き留めに来てくれましたが、私たちの意志を覆すには至らない。

 

「……いや、この機会を逃したら、次に奴と戦えるのは100層……そんな時間、俺たちにはもう残されていない……!良いだろう、茅場晶彦。その決闘、受けて立つ!」

 

「私もいい加減貴方と決着をつけるべき時がきましたね、受けて立ちましょう」

 

「そうか、私もそう言ってくれると思っていたよ。それじゃあ……」

 

 ──な、体が急に痺れ、て

 

「ソウジ君。君は余りにもイレギュラー過ぎる。少し大人しくしていてもらうよ」

 

 そうして、ヒースクリフとキリトの二人は剣と盾を構え、誰もが息を飲む中デュエルが始まりました。

 

 

 

 





次回はいよいよSAO編クライマックスです。

筆者のモチベーションとなるので感想や評価お待ちしています。


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