ソードアート・オンライン ー浅葱の剣聖ー   作:狂華翠月

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ALO編始動です!それではどうぞ。





フェアリィ・ダンス編
第十二話 現実への帰還


 鋼の城《アインクラッド》は崩壊し、プレイヤーたちは現実世界へと帰還した。

 

 重い瞼を開けて、ぼんやりと見えてくるものは辺り一面、白だった。そうして徐々に視界が鮮明になっていくとここは病室だということが理解できた。

 

「(ああ、やっと)………」

 

 動くのを拒否し、鉛のように重い体に鞭打ち上半身を持ち上げながら、私たちを2年間SAOに閉じ込めたナーウギアを頭から外します。ようやく戻ってこれた現実に余り実感が湧かないでいると、慌てて医師と看護師の方が駆け付けてきました。SAOの皆さんもおよそ同時期に目覚めて忙しいのでしょうか。

 

「沖田さん、私の声は聞こえますかー?」

 

「………はい」

 

 喉の渇きを満たすため水を喉に通した後、五感や健康状態、その他諸々の確認をされ、体が全体的に衰弱をしていると判断されました。これからのリハビリに少しだけ憂鬱になっていますと、一人の女性がこの病室に入ってきました。

 

「怜君、久しぶりね。体調はどうかしら?」

 

「凜子さん……まぁ今はこんなのですがほかの帰還してきた方と比べたら、大分肉が付いているんだそうです。あとニ週間もしないうちに元に戻しますよ」

 

 そうして私を訪ねてきたのは晶彦義兄さんの元恋人、神代凜子さんでした。当たり障りのない会話をした後、本題に入ります。

 

「凜子さんは………」

 

「ホントだったら残された私は警察に検挙され、彼の共犯者として裁かれる身だったんだけど、それを予見していた彼が私を「脅された」って形にして無罪放免となったの。……本当だったらあの日、彼をなんとしてでも止めようとしたんだけど………顔を見ると、決意が揺らいじゃってね。彼を止められなかった責任は私にもあるわ」

 

「………晶彦義兄さんを止めれなかったのは凜子さんだけの責任ではありません。………それと晶彦義兄さんから伝言です「現実に馴染めず浮世離れしていた自分を、何とか現実に繋ぎ止めてくれた君には感謝している。こんなことを言う権利もないのかもしれない知れないが今でも愛している」、と」

 

「…………ごめんなさい、少し見苦しいところを見せるわ」

 

 そうして静寂の中、凜子さんのすすり泣きの声だけが病室を埋めていた。

 

 

 

 

 宣言通り二週間でリハビリを終わらせると、医者の方は何か恐ろしいものを見るような目つきで私を見てきました。何でしょうね、早く終わるに越したことはないと思うのですが。あまり納得がいきませんね。

 

 そんな感想を零すも五感も弱っており、特に味覚、嗅覚はあまり働かなくなっていたが、リハビリ中には全て正常な値にまで回復していた。昔病気のせいで一部白くなった髪は特に変化はなかったようだが。

 

 

 今は二年間分の情報収集と勉強をして一日を過ごしているソウジは、ある人物と出会うためカフェに足を運んでいた。

 

「誠二郎さん、お久しぶりです。相変わらず何か胡散臭いですね」

 

「出会って言われる最初の一言がそれとは流石に悲しいなぁ……」

 

 少し落ち込みながら晶彦義兄さんの後輩──菊岡誠二郎さんが名刺を渡して来ました。

 

「《総務省SAO事件対策本部》…ですか……これはまた……」

 

「ああ、僕から君に色々と聞きたいことがあってね。まあ、あっちでの話を色々と聞かせてほしい。毎日の生活やボス戦。それと、茅場晶彦に関する情報もね」

 

「確かに私はあの人の義弟でしたがそこまで詳しく話せることはありませんよ。結局、最後はあの人と斬り合って終わりましたし」

 

「……ああ、どんなに細かいことでもいい。是非話してくれ」

 

「それでは、その対価としてSAOでの知り合いの連絡先を教えていただけませんか?あとここ、誠二郎さん持ちですよね。店員さん、すいません」

 

「ああ、勿論便宜は図るが……程々にしてくれよ」

 

 ──何が程々ですか、何か企んでいるようですし。ボイスレコーダーで録音しているのも見えている

 

 SAOの初日から順を追って過ごしてきた日々をソウジは口に出していく。ある程度のところで切り上げはしたが、すぐに話を聞きに来ることになった。次の予定を決めた後、誠二郎の財布を軽くしたソウジは帰路に就いた。

 

 

 ー2025年1月19日ー

 

 

 自転車で坂道を上り終えたどり着いたのは巨大な高度医療機関だ。駐輪場に自転車を置いて、手続きを済まして無人の病院の廊下を歩いて進んでいく。最上階にエレベーターでたどり着き病室に入る。病室に入り口には《結城明日奈 様》と書かれた札が貼られ、病室のベットではナーヴギアをつけたまま眠っている彼女の姿があった。

 

「キリトいや──和人ですね。貴方もここに来ていたのですか」

 

「……ああ、アスナもお前が来てくれたら喜ぶだろう」

 

 そう言ったきり和人は暗い顔をしながら彼女の手を握り続けていました。

 

 正午も近づき二人もそろそろ帰宅しようとしたタイミングで、二人の男が入室してきた。

 

「おや、君たちも来ていたのか。桐ヶ谷君、沖田君」

 

 そういって私たちの前に現れたのはアスナの父親、総合電子機器メーカー《レクト》のCEOである結城彰三であった。私たちは頭を下げて挨拶をする。

 

「お邪魔させていただいています、結城さん」

 

「お邪魔してます」

 

「いやいや、君たちが来てくれたらこの子も喜ぶだろう」

 

 そうして彰三はアスナを見て考え込みながらももう一人の男を紹介した。

 

「よろしく、須郷伸之です──それで君たちがあの英雄の………沖田君なんかは茅場を倒したんだってね」

 

 ──この人………晶彦義兄さんのことを

 

 須郷の言葉には明確な悪意が込められていた。彰三はアスナの様子を見届けると須郷と数度言葉を交わした後、病室を後にした。すると須郷は突如様子を豹変させながら話し始める。

 

「さっきの話は僕とアスナが結婚するという話さ」

 

 それから須郷はSAOのサーバーを自分の部署で管理している事。養子として結城家に取り入ろうとしている事。自分達が学生だから何も出来ないだろうと馬鹿にするように病室を後にして行った。私たちは無言で病室に取り残される。

 

「…………」

 

「和人、話があります。さっきの須郷の話、何とかなるかもしれません」

 

「な、どういうことだ。怜」

 

「和人も自転車で来ていましたよね。歩きながら話しましょう」

 

 駐輪場に向かう途中、私と和人はさっきの須郷の言葉とアスナが目覚めないことについて話していく。

 

「そもそもSAOから帰還できていないプレイヤーが300人もいるというのがおかしいんです。晶彦義兄さんはSAO事件を引き起こした時も、プレイヤーの入院も含めて全てを手配していました。そんな彼がプレイヤーの帰還に支障をきたすこと自体がおかしいと思いませんか?」

 

「確かにアイツが何か不具合を残すとは考えにくいな………」

 

「これに関してはあくまで推察でしがありませんが」

 

 キリトも納得したように頷く。それを横目に見つつ私は言葉を続ける。

 

「それで須郷が言っていたようにSAOサーバーを管理しているのはレクトのVR技術研究部です。そこから新たなゲームが発売されているのは知っていますか?」

 

「アルヴヘイム・オンライン……確か一年前に発売された魔法があるVRMMORPG………」

 

「ええ、おかしいとは思いませんか?レクトはアーガスを吸収する前はゲーム開発の部門すらありませんでした。アーガスの社員も殆ど退職してしまったいます。そこから一体どうやって未だに未開拓分野であるVRゲームを、しかも前例のない広大な広さを持つアルヴヘイム・オンラインを作ったと思います?」

 

「それは………」

 

「簡単なお話です。無いなら作るんじゃなくてよそから持ってくればいいんです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()S()A()O()()()()()で作られているんです」

 

「な………!」

 

「勿論機密事項ですよ。それで、怪しいと思いませんか?SAOから帰還出来ないアスナと結婚しようとする須郷の部署で開発された、SAOのサーバーを流用して作られたアルヴヘイム・オンライン……どうですか」

 

 和人は私から矢継ぎ早に繰り出される情報の量に驚きつつもあの茅場の義弟ということで自分を納得させる。そしてあまりの須郷にとって都合の良い事態に疑いの目を持ったのだろう。

 

「確かにこれは……だがあくまで状況からの推察でしかないだろう」

 

「ええ、私もそう思っていたのですが………この写真を見てください」

 

「これは……!アスナ!」

 

 私が差し出した携帯端末に映る写真をみると、和人は見知った顔に衝撃を受ける。

 

「ええ、このゲームで目指すべき世界樹の枝に鳥籠に囚われている形で写ったそうです。探してみる価値はあると思いませんか?かなり分のある戦いだと思いますよ」

 

 私の言葉に和人は悩む。

 

 ──確証を得れないまま動くのは……ただ、アスナがあの男のものになってしまうまで時間がない

 

 きっと彼の中では葛藤もあったはずだ、それでも和人は迷いを振り切り決意した。

 

「もういつまでも焦れったく待っているのは終わりだ。怜、協力してくれるか?」

 

「ええ、その言葉を待っていました。アルヴヘイム・オンラインは明日には和人に届くようにしていますので。ゲーム機はナーヴギアで動きますが、覚悟は出来てますか」

 

「もう何度も被ってるさ、死んでもいいゲームなんてヌルすぎるぜ」

 

「和人、そのセリフ、ちょっとイタイです」

 

「な………!」

 

 そうして私たちはアスナ救出のために動くこととなりました。

 

 ー12月20日ー

 

 私は再びVRの世界に降り立つこととなりました。あれ程、危ない思いをしたというのに自分は懲りていないらしい。あるいはVRが私と晶彦義兄さんをつなげるものだったからだろうか。VRへの嫌悪感はまるでない。あんな大事件が起きていたにも関わらず未だにVRゲームが発売されていたことには驚きましたが今は置いておきましょう。

 

 ベットの上に寝転がりながら、私と晶彦義兄さんの繋がりを感じさせるナーヴギアを装着し、シールドを降ろします。

 

「リンク・スタート!」

 

 各種感覚の接続テストが行われていく。そしてそれらが完了するとアカウント及びキャラクターの作成を開始します。IDやパスワードをSAOのときのものを打ち込んでいく。キャラクターネームは少しの間躊躇いますが思い入れのある「ソウジ」とします。

 

 ALOではプレイヤーは妖精としてキャラを作る際、種族をここで決めるそうだ。容姿もランダム生成されるそうですが現実の顔とそこまで差が生まれるわけではありません。運営もアバターに課金してほしいでしょうし。

 

「う~ん、《猫妖精(ケットシー)》か《水妖精(ウンディーネ)》で迷いますね」

 

 結局私は現状パーティーメンバーがキリトしかいないこと。どうせ黒ということから《影妖精(スプリガン)》を選ぶであろうことを予想し、合流を早めるため近いホームタウンにすること。この二点を考えてウンディーネを選択した。二ヶ月ぶりのフルダイブの感覚を懐かしみつつ──

 

「おや?」

 

 突如映像がフリーズしたかと思うとモザイクが視界を覆い、視界が徐々に晴れるとそこは遥か彼方の上空でした。

 

「どうなってるんだぁぁぁぁ」

 

「あ、キリト。これどうなってるんでしょうか?」

 

「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないだろーー!」

 

 こうして私たちはしばらくの間落下し続けました。

 

「フムグ!!」

 

「………………(ストッ)」

 

 キリトはランディングのやり方を知らなかったようだ。私たちが着地した場所は樹齢数百年はありそうな樹が生い茂った大森林です。これからのゲーム攻略のため、ウインドウを確認していますと

 

「…………まさか!」

 

「おい、ソウジお前知ってるならなー……

 

「キリト、そんなことは今どうでもいいです。キリトもウインドウを確認してください!」

 

「お、おう」

 

 私に気圧されウインドウを確認したキリトも表示されている事実に驚愕します。

 

「な、これは……!」

 

「やはりキリトもそうでしたか……恐らくナーヴギアでログインしたことでセーブデータが書き換えられていますね。ALOはSAOのシステムを流用しているのが原因でしょうか」

 

 そこには文字化けしたウィンドが開かれていた。スキル欄には《カタナ》やら《体術》、《武器防御》に《神速》なんかが並んでおり、アイテム欄にも耐久値が全回復している「菊一文字則宗」など文字化けせずに残っているものもいくつかありました。確認を進めているうちにキリトが突如驚きの声を上げたかと思うと無色透明の宝石を取り出しました。

 

「頼む……あってくれ……頼むよ……」

 

 すると突如白い光が爆発した。そして徐々に姿を変えて一人の少女を形作った。やがて閉じていた両眼をゆっくりと開いていく。

 

「俺だよ……ユイ。分かるか?」

 

「また、会えましたね、パパ」

 

 お互いを抱き合い感動の再開が終わったたところで声を掛けます。

 

「久しぶりですね、ユイちゃん」

 

「あ、ソウジさん。お久しぶりです!」

 

 ユイちゃんとの挨拶も終わり、キリトは疑問に思ったことをユイちゃんに質問します。

 

「で、ユイ。今俺たちのアイテムはどうなっている?」

 

「そうですね、SAOからALOに上書きされる際存在しない物として、ウインドウで表示できず文字化けしたようです」

 

「このアイテム群、やっぱ破棄するべきか?」

 

「はい。文字化けしたアイテムは捨てるべきかと。スキル熟練度に関しては、プレイ時間と比較すれば不自然ですが、システム的には問題ありません。ただ、破損したアイテムに関しては、エラー検知プログラムに引っ掛かるといけないので、破棄するべきです」

 

 

 ユイちゃんと現状確認を行い、アイテムを整理した後、キリトの装備を整えるためここから一番近い《風妖精(シルフ)》のスイルベーンに向かうこととなりました。

 

 

 ーリーファsideー

 

「気の強い子だな、仕方ない」

 

 サラマンダーのリーダーがランスを持ちこちらを突き刺そうとした瞬間

 

「うう、いててて…………上手く着地が出来ないな」

 

 一人の少年が空から墜落してきた。あの浅黒い肌とクリアグレーの翅からしてスプリガンだろう。

 

「何やってるんですか、頭から激突するなんて」

 

 するともう一人がスプリガンを追う形で空からの着地する。水色というより白と言うべきだろうか、滑らかな白髪に、綺麗な容姿が多いウンディーネでも中々見ない整った容姿のプレイヤーがスプリガンのプレイヤーに手を貸す。二人はまるでここで何も起こっていないかのように自然体で振る舞っている。

 

「何してるの!早く逃げて!」

 

 彼らを逃がす為に声を掛けるが三人に挟まれて思うように動けない。すると彼らはこちらに向き直り

 

「重戦士三人で女の子を襲うのはカッコわるくないか?ソウジ」

 

「ええ、自分たちの非力さを認めているようなものですし、あまり感心しませんね」

 

「はぁ、こいつらバカじゃねぇの。お前ら丸ごと狩ってやるよ」

 

 そう言ってサラマンダーの一人がランスを突きつける。その時信じられないことが起こった。何とそのスプリガンはランスを手で受け止めて、サラマンダーの仲間の方へ投げ飛ばしたのだ。

 

「ええと、あの人斬ってもいいかな?」

 

「ええ、別に構わないけど………」

 

 そう言うとスプリガンの少年が剣をだらりと構えたかと思うと……

 

「な!」

 

 ──速すぎる!

 

 リーファはこのSAOなら五指には入るほどのスピードの持ち主だ。その彼女が目で追いきれなかったスピードで二人をPKしたスプリガンの少年に驚愕する。

 

「キリト張り切ってますね。剣を振るの好きなんでしょうか」

 

 などと隣のウインディーネが喋っていたのを聞き取る余裕もないほどに。

 

 サラマンダーのリーダーが撤退した後少しのいざこざがありつつもリーファとソウジ、キリトは自己紹介を行った。

 

「とにかくお礼を言うわ。この世界のことが知りたいのなら任せてね。私はリーファ」

 

「俺はキリトだ。よろしく頼む。この子はユイだ」

 

「私はソウジです。これからよろしくお願いしますね」

 

 こうしてソウジたちは世界樹を目指していることを伝え、リーファとシルフ領のスイルベーンに向かうこととなった。

 

 

 キリトが暴走したり、着地に失敗して塔の外壁にぶつかることもあったが、無事にスイルベーンにたどり着いたソウジたちは、リーファが奢ってくれるということで飯屋《すずらん亭》を目指して足を進めていた。するとリーファのパーティメンバーでありリアルでのクラスメイトでもあるレコンが声を掛けてきた。

 

「無事だったんだね、リーファちゃん」

 

「あー、うん。どうにかね」

 

「流石だよって、スプリガンにウインディーネ!こいつらスパイじゃないの?」

 

「こら、失礼なこと言わないの。彼らは私を助けてくれたのよ」

 

 初対面の相手に失礼なことを言うレコンを注意する。

 

「へっ?」

 

 唖然とするレコンを余所にリーファはレコンを指差す。

 

「こいつはレコン。私たちのフレンドなんだ。君たちに合う前にサラマンダーにやられちゃったんだ」

 

「そりゃすまなかったな。よろしく、俺はキリトだ」

 

「よろしくお願いしますね、私はソウジです」

 

「ああ、よろしく。…………ってそうじゃなくて。ああ、もう」

 

 リーファの様子に説得を諦めたレコンは連絡事項をリーファに伝える。

 

「リーファ、シグルドたちはいつもの酒場で席取ってるよ。分配はそこでやろうって」

 

 ALOではPKされたり、死亡するとアイテムの30%をランダムにロストするか、相手に奪われるが、保険枠と言うものがあり、あらかじめ設定したアイテムは死亡しても生き残ってる仲間の元に預けられる。

 

 その為、私たちのパーティーも貴重なレアアイテムは保険として設定し、生き残った私が持っている。

 

「うーん、今日はやめとくわ」

 

「え!」

 

「今日はこの人たちに奢る約束をしたから。私の分は皆んなで分けていいわよ」

 

 そうして私はトレードウインドウを操作してレコンに今日稼いだアイテムをすべて送る。

 

「行けたら参加するから!それじゃあ」

 

 そうしてレコンとも分かれ、今は三人とも《すずらん亭》に到着し、リーファとレコンの関係をキリトとソウジに問われつつも席に着いて食事に舌鼓を打っていた。

 

「それにしても、えらく好戦的な連中だったな。ああいう集団PKはよくあるのか?」

 

「元々、火妖精族サラマンダーと風妖精族シルフは仲悪いのよ。だけど、ああいう集団PKは最近になってからなのよ」

 

「そのサラマンダーたちの目的は恐らく」

 

「ええ、きっと………近いうちに世界樹攻略を狙ってるんだと思う」

 

 私の言葉に、キリトが反応を示す。

 

「それだ。その世界樹について教えてほしいんだ」

 

「そう言えば、そんな事言ってたね。でも、なんで?」

 

「世界樹の上に行きたいんだ」

 

「……それは、全プレイヤーがそう思ってるよ。っていうか、それがALOのグランドクエストなのよ」

 

「と言うと?」

 

「ALOは空を飛べることを売りにしてるけど、滞空制限があるでしょ。どんな種族も連続で飛べるのは十分が限界なのよ。だけどね、世界樹の上にある空中都市に最初に到達して、《妖精王オベイロン》に謁見した種族は全員、《アルフ》っていう高位種族に生まれ変われる。そうなれば、滞空制限はなくなり、いつまでも、自由に空を飛ぶことが出来るのよ。だからこそ、全種族プレイヤーは、世界樹を目指しているの」

 

「なるほど、それで皆世界樹に挑んでいたのか」

 

「キリトは知らなかったのですか………」

 

「まぁ、ソウジ、私も気持ちは分かるわ」

 

 元々私がこの世界のことをキリトに教えていたのだが、余りの知識の不足にソウジが嘆く。

 

「そう言うなよ、ソウジ。………ありがとうリーファ、色々教えてもらって助かったよ。ごちそうさま。ここに来て会えたプレイヤーが君で良かったよ」

 

「私まで奢って貰ってすいません。そろそろ私たちは世界樹に向かいたいと思います」

 

 そうして二人は席から立ち上がり店から出て行こうとした。その時何故か分からないが二人と別れたくなかった。だから、こんな言葉が口から出てしまった。

 

「──私が連れて行ってあげる!」

 

「な、でも出会ったばかりだしな。そこまで世話になるわけには………」

 

「私が良いって言ってるのよ」

 

「キリトいいじゃないですか、あちら側から言ってくれてる訳ですし。今は少しでも人手が欲しいでしょう?」

 

「………それもそうだな、よろしく頼む、リーファ」

 

「ええ、明日の午後三時にここでね。あたし、もう落ちるから。じゃあまた明日」

 

「ありがとう」

 

「ありがとうございます」

 

 そうして私はログアウトしていった。今でも出会って大した時間も経っていない彼を引き止めるような発言をしてしまい、思い出すだけで顔が赤くなる。

 

 

ーソウジsideー

 

 

 私はALOからログアウトした後、端末に向かい合いながら須郷の裏を徹底的に洗っていました。そうして出てきたのはとても表に出せるようなものでありませんでした。

 

「それにしても酷いですね、脳の感覚処理以外の思考、記憶、感情のコントロールを実験。そのための素材としてSAOから人間を集めて………アメリカの軍需企業とのやり取りも確認できましたし………処理は然るべきところに頼みましょうか」

 

 そうして私は端末の電源を落としました。

 

 

 

 




ソウジは茅場さんの技術力も信頼していますし300人も帰還出来ないプレイヤーがいるのはおかしいという動機でこの事件を探っていたという事情があります。


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