ソードアート・オンライン ー浅葱の剣聖ー   作:狂華翠月

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第十三話 妖精の国

 

 

 

 

 

 

 

だいぶストックが削れてきた。マズイ……それではどうぞ

 

 


 

 

ー1月21日ー

 

 

 

ー直葉sideー

 

 平日の午後一時半。埼玉県南部に位置するとある中学校では、三年生に至っても高校入試を直前に控えて集中ゼミナールを受講していた。授業中であることに加え、高校入試や定期試験が迫っている校舎の中は、いつも以上に静寂に包まれている。

 

 そんな中、私をは一人、剣道部の部室を出て駐輪場を目指していた。この時期に学校へ自由登校が認められている数少ない例外、所謂推薦進学組であり、今日学校へ来たのも、剣道部の顧問に呼ばれてのことだった。

 

 ALOをプレイして以来、大事な場面で精神を極限まで集中させると周りの時が緩やかに感じることがある。今日も全日本で上位入賞した顧問から勝ちをもぎ取れた。少し軽やかな気持ちで次の用事に向かうべく、家路に着く。だが、そこへ……

 

「リーファちゃん!」

 

「うわぁっ」

 

 突如校舎の影から現れる、眼鏡の少年。私と同じ中学の制服に身を包む彼は、同級生にして、同じく推薦進学組の、長田慎一だった。

 

「学校じゃその名前で呼ばないでって言っているでしょう、長田君」

 

「ご、ごめん……直葉ちゃん」

 

 突如水を刺されたような気分になり、少しきつめの口調で咎めてしまった。長田は萎縮したように謝り少しの罪悪感を感じたが、ちゃっかり下の名前で呼んでいるとこに気が付き、竹刀を手に持ち一歩詰め寄る。すると長田は再度謝意を示し、首を横に振りながら呼称を改めた。

 

「ごごごごめん、桐ヶ谷さん!」

 

「……それで、何か用?っていうか、何で推薦組のあんたが学校にいるのよ?」

 

「すぐ……いや、桐ヶ谷さんに話があって、朝からずっと学校で待ってたんだ」

 

「ゲゲ……あなたも暇ね。で、話って?」

 

「いや、ここで話すのもなんだし別のところで………」

 

「私用事があるし早くここで言っちゃって」

 

 二、三歩引き下がりながら返答した私に、少し傷ついたような表情を浮かべながら長田は答えた。

 

「そ、そんな………シグルド達が、今日の午後からまた狩りに行こうって。今度はサラマンダーの少ない海底洞窟だってさ。こんな感じだけど、どうかな?」

 

「……悪いけど、あたししばらく参加できないわ」

 

 パーティーメンバーでの狩りの誘いに一瞬、逡巡したがすぐに断った。その返答に、長田は驚きと焦りを見せる。

 

「え、ええ!?何で!?」

 

「ちょっと、アルンまで出かけることにしたから」

 

「アルンって……世界樹の根元の?」

 

 アルヴヘイム中央に聳え立つ世界樹の根元に存在する、ゲーム世界最大の都市であるアルンは、シルフのホームタウンであるスイルベーンをはじめ、各種族のホームタウンからかなり遠く離れた場所にある。

 

 その道のりには、飛行不可能な地帯も多く存在している。出現するモンスターも、そこらにいるモンスターとは強さが違う。正攻法のソロプレイで辿り着ける場所ではなく、当然ながら私もそれを理解している。数日は確実に掛かるであろう行程故、普段なら自分からは言い出さないだろう。そのことを長田は察したのか半ば悲鳴に近い声を上げる。

 

「ま、まさか……昨日のスプリガンとウインディーネ!?」

 

「あ、ああ……うん。道案内することになってね」

 

 昨日の狩りの帰り、私と長田ことレコンが所属するパーティーは、狩りの帰りに敵対種族のサラマンダーの部隊の襲撃を受け、敗走するという結果に至った。私とレコンは、他のメンバーと別れてスイルベーンを目指して逃げていったが、途中でレコンが倒された。

 

 残された私も可能な限りの敵を道連れに後を追うことになる筈だったのだが、思わぬ闖入者の出現によって、窮地を脱することに成功したのだった。その、私を危機から救った人物というのが、長田の言うのスプリガンのプレイヤーなのだが……

 

「な、何考えてんのさ、リー……桐ヶ谷さん!あんな怪しい男達とパーティーを組むなんて!」

 

「いや、でもそんなに悪い人じゃ……」

 

「あのキリトっていうスプリガン……それにソウジとかいうウインディーネの装備、相当強いよあれ!明らかに行動と噛み合ってないし、おかしいよ」

 

 ──まぁそれは確かに………でも彼らは悪い人には見えないのよね。世界樹に行きたいっていうのは本心なんだろうけど……どうして、あんなに必死そうだったんだろう。それに、何て言うか……どこかあの世界に慣れていない感じがあったし……

 

 食事をする傍ら、アルヴヘイムについての話をしていたが、ビギナープレイヤーでも知っている情報について尋ねていた点からして、キリトはあの世界にあまり明るくないようだった。あのゲームでは見ないような剣の使い手であり、スキル熟練度も上限まで上げきっているのだろう、随意飛行で、しかも本気のリーファと互角以上の飛行速度を発揮して見せたが、未熟さが見えた。

 

 装備は初期のものだったが、それを上回るだけのセンスもある。それなのに、まるでALOを始めて間もないビギナーのようにも見える、どこかちぐはぐしている謎の多き人物。それが私の抱いた印象だった。ソウジについてはあまり詳しいことは分からないがキリトと一緒にいることや、装備の観点から考えて相当な実力者だろう。

 

 一方、そんな私の考えを知らない長田は、キリトとソウジのことを完全にスパイだと疑っているようである。故私に彼らと手を切るべきだと必死に説得にかかる。

 

「桐ヶ谷さん、シグルドだって、きっと納得しないよ。あんな怪しい奴らと、泊まり込みで、遠くまで行くなんて……」

 

「妙な想像するんじゃない!!」

 

「ごふぅっ……!!」

 

 妄想に駆られ、卑猥な想像を垂れ流す長田を手に持った竹刀ケースで、胸に一突き食らわせて黙らせると、呻き声を上げながら地面にひれ伏せるのを横目に私は再び家路に着く。

 

「とにかく、そういうわけだから。シグルド達にはよろしく言っておいてね」

 

 再度呼び止めようとする長田の声には耳を貸さず、駆け足でその場を去っていく。駐輪場に止めた自転車へ乗ると、そのまま校門を出て自宅へ向かっていった。

 

 

ーソウジsideー

 

 私はALOの世界にフルダイブし、リーファと一緒に約束の場所でキリトを待ちます。

 

「キリト、来ましたか」

 

「お、俺が最後か。結構早めに来たつもりだったんだが」

 

「私もソウジも早かっただけだったから気にしないで。丁度キリトの装備を買いに行こうって話になったところでさ」

 

 確かにキリトは初期装備で貧弱ですし。私は幸いSAOの装備がそのまま流用出来たのでそれを装備しています。

 

「で、お金持ってる?ないなら貸すけど」

 

「えー…」

 

 キリトは悩む様子を見せるとウインドウを確認します。

 

「あー《ユルド》ってのが単位だっけ?」

 

「そうだけど………ない?」

 

「いや、かなり、結構ある」

 

「そ、じゃあ早速武器屋行こっか」

 

 多分あの様子だとSAOの《コル》がそのまま残っているみたいですね。私も膨大な量がありましたし。キリトの反応を楽しみつつ武器屋に向かいました。

 

「いやー、いくら大切な武器選びと言っても長すぎですよ。防具は特にこだわらなかったんですから………」

 

「しかもソウジを女の子と勘違いして絡みにいく奴までいたしね」

 

「あー、そうなのか。すまん、ソウジ待たせた」

 

「もーいいですよ。その代わり道中は私を待たせた分の働きはしてもらいますよ」

 

 キリトは黒色の防御属性強化された服に黒のロングコートにしたています。キリトの謝罪を受け入れつつ風の塔に歩いていきます。その際リーファはノームやインプに使われる大剣を買ったキリトを揶揄っていました。

 

「なーんで、あんな塔に行くんだ?」

 

「恐らく飛行する際の高度を稼ぐためだと思いますよ」

 

「ええ、その通りよ。キリトはブレーキングの練習しなくて大丈夫?」

 

「確かにな。飛行については今後安全運転のつもりだから問題ない」

 

 そう不貞腐れるキリトを引き連れながら、リーファは塔に向かいます。この距離感………アスナに報告することが増えたかもしれません。

 

「夜までにはあの森を抜けたいから急ぐわよ」

 

「俺は全く地理が分からないから案内頼むぜ」

 

「それはどうなんですか、キリト……」

 

 完全に他人任せなキリトにソウジは呆れつつも足を進める。その際領主館に紋章旗が揚がっていないことにソウジは気づいたが特に気にすることもなく正面扉をくぐり抜けて行く。塔の内部は巨大な円形のロビーとなっていて周囲の壁には所狭しと店が並んでいる。展望台へ上がろうとエレベーターに三人が駆け込んだ時

 

「リーファ!」

 

 突然、ソウジたちの前に立ち塞がるプレイヤーが現れた。振り返った先にいたのは、リーファが今最も会いたくないと思っていた人物。リーファが所属しているパーティーのリーダーにして、シルフの主流派閥の筆頭、図抜けた体格を持つシグルドだった。

 

 両隣には、パーティーメンバー二人が控えている。シグルド本人は、眉間に皺を寄せ、傲慢な態度を取っているその姿に、リーファは面倒な予感しかしなかった。

 

「こんにちは、シグルド」

 

 

 とりえあえず、作り笑いを浮かべながら挨拶したものの、シグルドの表情が緩まる様子は無い。やはり面倒なことになるな、と内心でリーファが想像していると、シグルドが声を唸り上げる。

 

「パーティーから抜ける気なのか、リーファ」

 

「うん……まあね。お金も余裕が出来たし、しばらくのんびりしようと思ってて……」

 

「勝手だな。残りのメンバーに迷惑がかかるとは考えないのか?」

 

「……パーティーに参加するのは都合のつく時だけで、いつでも抜けていいって約束だったでしょ?」

 

「お前は俺のパーティーの一員として既に名が通っている。理由も無く抜けられては、こちらの顔に泥が塗られる」

 

 シグルドの傲然とした物言いに、言葉を失ってしまったリーファ。同時に、つい最近、レコンから忠告されたことを思い出す。ALOのようなハード志向のMMOにおいて、女性プレイヤーは希少な存在であり、特にリーファのように容姿端麗で、シルフにおいて五本の指に数えられる実力者はさらに珍しいという。

 

 だからこそ、シグルドのような強豪プレイヤーは、そのようなプレイヤーをパーティーメンバーとして侍らせることで、自身のパーティーのブランドを上げようとしているらしい。だが、自分がアイドル扱いされるなど想像できず、結局その意見は考えずに放置していたのだが、そのツケが回ってきた形となった。

 

 リーファ――直葉がこのALOに求めたのは、現実世界の柵の全てを振り払って、どこまでも飛んでいける、飛翔の感覚。だが、仮想世界であろうと現実世界であろうと、事あるごとに自分を何かが縛る。昔のことを思い出す。

 

 剣道場に入門して以来、力を伸ばし続けて、いつしか上級生の男子すら負かす程の実力をつけていた。だが、帰り道では他の上級生男子の集団に取り囲まれ、卑小な嫌がらせを受けていた。あの時の上級生男子達の顔は、今目の前に立つシグルドと取り巻きそのものだった。リーファが失望に囚われた時彼女を庇うように二人が矢面に立った。

 

「仲間は、アイテムじゃないぜ」

 

「こうも一方的な態度は関心しませんね」

 

 高圧的な態度でリーファにパーティー脱退取り消しを強要するシグルドを前に、全く怯むことなく立ち向かうキリトとソウジの姿に、リーファの目にも希望が宿る。

 

「何だ………?」

 

「他のプレイヤーを自分のアイテムみたいに装備欄なんかにロックしておくことは出来ないって言ったんだ」

 

「何………貴様!」

 

 キリトからストレートに告げられた言葉にシグルドは眉間に皺を寄せて怒りを露にする。マントを巻き上げ、腰の剣に手を掛ける。

 

「この屑漁りのスプリガンと、貧弱な寄生虫のウインディーネごときが調子に乗るな!どうせ領地を追放された《レネゲイド》だろうが!特にウインディーネの装備だけはなかなか上等だが……リーファもこんな奴を相手にするんじゃない!」

 

 今にも抜刀しそうな状態で一方にまくし立てる言動に、傍で聞いていたリーファもついカッとなって声を上げてしまう。

 

「失礼なこと言わないで!キリト君は、あたしの新しいパートナーよ!」

 

 ──あれ、私は……?……そうですね、リーファを助けたのはキリトですし。……アスナに話すネタが確実に一つ増えました

 

「何……?リーファ、お前も領地を捨てて、レネゲイドになるつもりか!?」

 

「……ええ、そうよ。あたし、ここをでるわ」

 

「……子虫が這いまわる程度なら捨て置こうと思ったが、泥棒の真似事とは調子に乗り過ぎたな。のこのこと他種族の領地に入ってくるからには斬られても文句は言わんだろうな」

 

 ALOのプレイヤーは、二種類に大別される。一つは、種族ホームタウンを拠点として、プレイする中で稼いだ金銭――ユルドの一部を執政部へ上納し、種族の勢力発展に注力するプレイヤー。シグルドやリーファが例として挙げられる。

 

 もう一つは、ホームタウンを離れてアルヴヘイム央都を拠点に、異種族間でパーティーを結成して活動するプレイヤーである。後者のプレイヤーは、前者のプレイヤーから領地を捨てたプレイヤーとして蔑まれ、脱領者――レネゲイドと呼ばれている。

 

「ちょっといい加減にその口を閉じて頂けませんか?」

 

 そんな一触即発の状態で声を発したのは私でした。

 

 ──な、何アレ。全く隙が見当たらない。リアルでももしかしたら私よりも……それに圧がハンパじゃない!

 

「お、お前、何を言っているのか分かってるのか」

 

「分かってないのはそっちじゃないんですか?あなた達は今、無抵抗の他種族を殺そうとしているんですよ」

 

 そうしてシグルドは辺りを見回すと周囲に人だかりが出来ていました。多くのシルフたちがシグルドに非難の目を浴びせます。

 

「シグルドさん、流石に人目のあるところで無抵抗のプレイヤーをキルするのはマズイです」

 

「チッ」

 

 部下に諌められたシグルドは渋々剣を納める。そして忌々しそうに私にもとキリトを睨み、リーファに視線を向けます。

 

「お前等……今、俺を裏切れば、近いうちに必ず後悔することになるぞ。精々、外では逃げ隠れするんだな」

 

「留まって後悔するよりはずっとマシだわ」

 

「戻りたくなったときのために、泣いて土下座する練習をしておくんだな」

 

 それだけ言うとシグルドとその仲間たちは去って行きました。

 

「ごめん、変なことに巻き込んじゃって」

 

「いや………でも、いいのか?領地を捨てるなんて?」

 

 私たちの言葉にリーファは無言になり、そのままエレベーターに向かいます。先導されてシスイルベーンで最も高い塔の頂上へ向かうべく、エレベーターへと乗り込みます。数十秒後、プレイヤー達の飛行場たるパノラマデッキへと辿り着いた私たちの視界に飛び込んだのは、無限の蒼穹。辺り一面には美しいパノラマが広がり、心地よい風が頬を撫でていきます。

 

 ──かつて、SAOにフルダイブした時もこのようなどこまでも広がる蒼い空がありましたね。

 

 ソウジはこの空から義兄が創り出したもう一つの世界を思い出し、感慨に耽っていると

 

「本当にいいのか?」

 

「気にしないで。一人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだもの。むしろ、良いきっかけだったと思ってるわ」

 

 溜息と共に、独白のように続けるリーファ。空を見つめるその瞳には、どこか憂いが見て取れました。

 

「どうして、ああやって縛ったり、縛られたりしたがるのかな?折角、翅があるのに……」

 

 そして思い思いのことを考えていると──

 

「フクザツですね、人間は」

 

 凛とした声の出所は、キリトの胸ポケット。次の瞬間には、きらりと翅を輝かせて飛び立った彼女は、キリトの頭を一回りしてから肩の上へと降り立った。プライベート・ピクシーである、ユイだった。

 

「ヒトを求める心を、あんな風にややこしく表現する心理は理解できません」

 

「あら、可愛い。この子って、プライベート・ピクシー?」

 

「はい。パパのプライベート・ピクシーのユイです」

 

「パパ?……まさか、キリト君のこと?」

 

「そうですね、何したらこんな呼び方になるんでしょう」

 

 キリトに対する「パパ」という呼称に訝しげな表情をするリーファ。更にソウジが誤解を助長するような発言をして、また要らぬ誤解が生じ始めていることを悟ったキリトは、早々に言い訳をする。

 

「言っておくが、俺の呼称は設定したものじゃない。こいつが勝手に呼んでいるだけなんだよ。ソウジも誤解を招くような発言をするな!」

 

「む~……」

 

「ユイちゃんのことをあんな風に言っちゃうパパ、酷いと思いません?」

 

「……!そうです。あんなことやこんなことがあったのに、パパは私のことを、うう」

 

「なっ!」

 

 キリトの訂正に不服そうな顔をするユイちゃん。これを見た私がキリトをさらに弄る。ユイちゃんもそれに乗っかり茶番が繰り広げられる。これ以上話がややこしくなる前にどうにかすべきかと考えたリーファが、苦笑を止めて話の流れを戻そうとします。

 

「ヒトを求める心、か……確かに、単純なようで、色々と複雑だよね」

 

「確かに……そうですね」

 

 空気が重苦しいものとなる中、突如ユイちゃんがAIとしての領分を大幅に超えた、予想外の行動に出ます。

 

「私なら……」

 

 キリトの頬に手を添えると、音高くキスをした。

 

「こうします。とてもシンプルで明確です」

 

 突然のユイの行動に硬直するキリト。傍にいたリーファも同様です。未だに固まったままのキリトを面白く思いながらもユイちゃんを注意します。

 

「ユイちゃん、今は色々厳しい時代なんですよ。そんなことを気軽にやれば、キリトが逮捕されちゃいますからやるなら人の居ないところでやりましょう!」

 

「手順と様式ってやつですね」

 

「……(詳しいことを言うとちょっと違うのですがそのままの方が面白そうですし)はい、ユイちゃんは物知りですね」

 

「おい、ソウジ!」

 

 何やらキリトが騒いでいますが無視します。子は親に似ると言いますし、キリトは女の子ばっかり引っ掛けるのを辞めたらどうですかね?ユイちゃんにも浮気はダメと注意されてましたし。

 

「す、すごいAIね。プライベートピクシーってみんなそうなの?」

 

「こいつが特殊なだけだ」

 

「それでは、そろそろ出発しましょうか」

 

「そ、そうね……それじゃあ、そこのロケーターストーンに戻り位置をセーブしよう」

 

 私の言葉に頷いたリーファは、言われた通りに展望台中央の石碑にセーブを行います。これで、死に戻りする羽目になった際に、見知らぬ場所に飛ばされることも無くなりました。

 

「それでは、行きましょう」

 

 全ての準備が整い、目的地へ向けて飛び立つべく三人は翅を広げる。そして、央都アルンを目指し、いざ旅立とうとした、その時でした。

 

「リーファちゃ~ん!」

 

「あ、レコン……」

 

 塔のエレベーターの向こうから現れたのは、昨日スイルベーンに到着した際、私も会った、おかっぱ髪の少年。リーファのレアルでもフレンドでもあるレコンでした。

 

「酷いよ!一言声をかけてから出発してくれたって、いいじゃない!」

 

「ごめん、忘れてた」

 

 リーファの一言に、がくりと項垂れるレコン。リアルでも友達の相手に、いくらなんでもこれは可哀想だと、私は憐憫の視線をレコンへ向けます。

 

「リーファ……パーティー抜けたんだって?」

 

「う~ん……その場の勢い半分だけどね。あんたはどうするの?」

 

「決まってるじゃない。この剣は、リーファちゃんだけに捧げてるんだから」

 

「えー、別にいらない」

 

 短剣を手に、真剣な表情でそう言い放った彼に、しかしリーファは容赦ない評価を下します。レコンの方も、またもがくりと項垂れたが、どうにか踏みとどまりました。

 

「まあ、そういうわけだから、当然僕もついていくよ。……って言いたいところだけど、ちょっと気になることがあるんだよね」

 

「何よ?」

 

「まだ確証は無いんだけど……少し調べたいから、僕はしばらく、シグルドのパーティーに残るよ」

 

 リーファと親しげな態度を取っておきながら、あの少年が尚もあのパーティーに残るのか内心疑問に思います。弱みを握られていたり………あるいは、何を探ろうとしているのか……私が顔を険しくさせていたところで──

 

「キリトさん」

 

「!」

 

 そこまで考えたところで、ふと声を掛けるレコン。レコンは、いつにも増して真面目な表情で向き直る。

 

「彼女、トラブルに飛び込んで行く癖があるんで、気を付けてくださいね。ソウジさんも頼みます」

 

「……承った」

 

「了解です」

 

「それから、言っておきますけど。彼女は僕の──んぎゃっ!」

 

「しばらくは中立域にいると思うから、何かあったらメールでね」

 

 キリトに詰め寄って何かを言おうとしたレコンの声は、しかしリーファが脛に食らわせた蹴りの一撃によって黙らされてしまった。リーファはそれだけ言うと、塔の屋上から飛び立ってしまう。キリトもまた、レコンに同情しながらも、後を追って飛び立っていった。

 

「彼、リアルでも友達なんだろう?いいのか、あのままで」

 

「問題無いわ。どうせ大したことの無い用事でしょうし、運が良ければすぐに合流してくるわ」

 

 キリトに続き、からかうように声をかける私。そして、さらにユイが続く。

 

「あの人の感情は理解できますね。好きなんですね、リーファのこと。リーファは、どうなんですか?」

 

「ええ、レコンさんはリーファさんが好きなんですよね。私でも分かります」

 

「し、知らないわよ!」

 

 私とユイの爆弾的な質問に、顔を若干赤くして返すリーファ。そんなリーファは慌てて空気を振り払うように叫びます。

 

「さ、急ぐわよ!一階の飛行で、あの湖まで行くよ!」

 

「「了解です!/ああ!」」

 

 

 

 






筆者のモチベーションとなるので感想・評価お待ちしています。



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