………もしかしてフェアリ・ダンス編は天空の城ラ○ュタだったのか()
諸事情により投稿が遅れました。すいません。
2025年1月22日
キリトと私がリーファと共に駆け抜けた八時間にも及ぶALOでの冒険も終わりを迎え、週に一度行われる4時から15時にまでメンテナンスが終わった後に再度集合ということでログアウトをすることとなりました。
その後ナーウギアを取り外した私はそのままベットに意識を沈めていきます。ある程度の睡眠を取った──と言っても3,4時間ですが……
私は眼を擦りつつ、朝食の準備を行うため台所へと向かいます。数日前に買ってきた食パンにマーガリンを塗り付けながら、予め用意していたサラダを胃に流し込んでいきます。
──ふむ、可もなく不可もなく…といったところですか
どちらかといえば自分の好みである和食を用意したいのは山々なのですが、そこまでの時間も気力も湧かずいつも適当な朝食を食べるてしまう自分に目を瞑る。
包丁捌き以外は至って料理の腕前が人並みな沖田さんはこんなものでしょう、はい………という誰に対する言い訳かも分からないことを心の中で呟きながら黙々と料理を口の中に運んでいきます。
自分以外は存在しない寂しげな食卓を見つめて、この様な風景に慣れてしまったのはいつ頃だろうかと自分の記憶を探り始め…
「過去を振り返っても意味はありませんね……私には………」
もうあの日々は私の記憶の中にしか残っていません。脳裏に浮かんできた光景を振り払い、時間が確保出来た今日中に終わらせておくべきことに取り掛かります。
「あの人に会うのはちょっと気が進まないんですが……」
いつも
「もしもし、菊岡さんですか?時間大丈夫ですかね?SAOの未帰還プレイヤーたちが戻ってこない理由が分かりました。ええ、…………そうですね。はい、それについてはそこで渡させて頂きます。…………それでは」
菊岡さんとの通話も終わり、食べ終わった食器を手洗いして片付けつつ今後のスケジュールを組み立てていきます。あそこまで行くにはそれなりに時間が掛かりますし、早めに準備に取り掛かるべきですね。クローゼットから服を取り出して着替えを済まして身嗜みを整え、データを紙ベースに纏めます。
準備も終わり物寂しい家に別れを告げ、菊岡さんが指定したレストランへと向かいます。それにしてもあの人食事処に随分詳しいですよね、グルメなんでしょうか?とつまらないことを考察しながら、東京の街並みを視界に入れ足を進めます。
ふと、空を眺めると鉛色の曇天が空を覆っており、天気予報では午後から首都圏では雪も降るとあった通り冷え込んだ空気となっている。厚着はして来て正解でしたね、と過去の自分の判断に感謝します。
約束の十分前に店に到着し席に着いて料理を注文しつつ、外の冷え込んだ空気と店内の文明の利器によって温められた空気の温度差に堪らず上着を脱いでいると私をここに呼び出した人物がやってきました。
「菊岡さん、一応聞くんですけど公務員ですよね。昼間からこんなところ来て問題ないんですか?」
「なーに、総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室…なんて長ったらしくて御大層な名前がついてるが結局のところ窓際部署だからそんな大した仕事もないしね。それに何たって君からの情報だ。これだって十分仕事のうちに入るさ」
SAO事件では対策チームの責任者だったが、有効な対策が打ち出せなかったため出世コースから外れてしまった……そうです。そう考えると菊岡さんも義兄さんが引き起こした事件の被害者の一人、ということになりますが私があれこれ言うのも違いますし、彼もこれは自分の責任ということで既に話は済んでいます。
……というかこの性格も原因の一つなんじゃないですかね、と口から出かかった言葉を飲み込む。
「それで君は如何するんだい?学校の方は」
「あー、そのことですか。今は少し迷っています………というか今日は随分踏み込んできますね」
「これでも一応官僚としてプレイヤー全員の受け入れ先を探したり、SAO事件の被害者である君を含めた学生のための学校を設立したりしてるんでね。現場の声というものは重要だろう?それに君は茅場さんの義弟だからね、これでも気にかけてるんだ」
「………そうですか、ありがとうございます。確か都立高の統廃合で空いた校舎を利用して、SAOから帰還した中高生向けの臨時学校を作る……でしたっけ。入試無しで受け入れて、卒業したら大学受験資格も与える、とそんな感じでしたか」
「ああ、大凡その通りだね。君はどんな風に考えている?」
「……もちろん建前も嘘じゃないでしょうが数年に渡ってVRという世界で過ごしてきた私たちという一種の問題児を一か所に監視も兼ねて集める意図があるように思えますね。SAO内での中高生となったらそれなりの数が居ますし、それらの貴重な検体のデータ収取という意味も含んでいるんじゃないんですか」
「……君が言ったことは概ね合っているよ。国も君たちの存在の取り扱いに困っていてね」
「実際しょうがないんでしょうけどね。そもそも思春期真っ盛りで精神的に多感な時期に、デスゲームが行われた環境で過ごした学生たち。何らかの対処をしませんと世論に叩かれるでしょうし、実際PKなんてものがまかり通ってしまっていた環境で二年間も過ごした経験というのは彼らの人格構成に大きな影響を与えたはずです。
「あー、大体君の言うとおりだ。こちらとしても君たちに対して出来るだけ便宜は図ったつもりなんだけどね………如何せん前例がないない尽くしの、初めてだらけでね……そうなるとこの国が慎重になるのは君も知っているだろう?上も君らがSAO内であったことを現実でも起こしたりしないか、みたいな心理面での影響を危惧しててね。観察等の意味でも一纏めにすることになったんだ。それで君は学校に行くのかい?君の学力からしたら必要はないと思うが……」
「そうですね……今は決めかねている、といったところでしょうか。……そろそろ本題に入りましょう」
用意してきた書類を取り出して、菊岡さんに手渡します。
「こちらが先程お伝えしたものとなっています」
私から手渡された書類を受け取りつつ、それらに目を通していく菊岡さんは次第に顔を険しくしていきます。
「これは……本当なのかい?いや、君からのものである以上そうなんだろうが………」
粗方読み終えたであろう菊岡さんはこちらに向き直り、自分を納得させる意味も含めて私に問いかけてきます。
「ええ、私も初めて確認した時は目を疑わざるを得ませんでした。ただ、もしプレイヤーをゲーム内へと閉じ込めるんだとしたら納得できる理由です。わざわざ数百人のプレイヤーの脳を弄って実験を行うためだけにサーバーを立てるのは馬鹿にならない金額が必要ですから、ALOを隠れ蓑としてその内部で実験を行っているんでしょう」
「確かにそうだね………しかしこの極秘データを気付かれずに引っ張り出すとは…………やはりすごいね、流石茅場さんの……っと、すまない。遠慮が無かったね」
「…………」
菊岡さんがこの店を選んだ以上は
「それで、この情報は僕が預からせてもらってもいいかい?」
「勿論、その為にここに来たんですから。管理を徹底してくださるのであればこちらから何も言いません。後はお任せします。ただ………」
「……ただ?」
「いつもは胡散臭い貴方ですが………
「っ………ああ、承った。君の期待は裏切らないと約束しよう。何か分かった事があったら何時でも伝えてくれ」
こちらの物言いに何を感じ取ったかは知りませんが菊岡さんは一瞬言葉を詰まらせつつも、こちらの眼をしっかりと見ながら言葉を返しました。
そして、「これからは忙しくなるな~」なんてことをぼやきつつ、書類を鞄に仕舞い込むと足早に店から去っていった。彼にこの情報を託すのには不安がないと言えば嘘になりますがここは彼を信用します。
私は料理を食べ終わった後、店を出て家へと足を進めます。そんな中ALOに閉じ込められた未帰還プレイヤーたちのことが私の脳裏に横切ります。自分に義兄が引き起こした一万人を巻き込む大事件に、私の中でも区切りがついていないのかもしれません。未だに自分をソウジ/沖田怜として割り切れていないのか……そんなことを考えながら帰路に着きました。
あの後は今後の料理のためにスーパーで食材を買い揃えた後少しの準備を行い、約束の時間にログインすると泣いてるリーファを、やや不器用ながらもキリトが慰めている様子が目に入りました。
「……まさかマッチポンプですか?だとしたらいよいよ私が庇えるとこが無くなります」
「オイこら、茶化すんじゃない。そもそも何で俺が悪事を働いた前提なんだ」
キリトが不満気な様子を見せながらこちらに文句を吐いてきますが…………まぁ余罪多数で余裕でアウトでしょう。私が幾ら敏腕弁護士だとしてもキリトを庇いきるのは不可能でしょう。減刑を頼み込むので精一杯ですかね。なんてことを考えているとリーファが立ち上がります
「まぁ大抵はキリトが悪いんだけど、今回はこっちが迷惑掛けちゃったからそんな責めないで上げて」
「分かりました」
「何でリーファもそうなんだよ!」
そんなキリトの叫び声を聞き流し、街の活気あふれる喧騒をBGMに私たちは──メンテナンス明けでモンスターやアイテムのポップもリセットされたということもあり一層賑やかで様々な種族であふれるアルンを進んでいきます。
最初は少し切なげな顔をしていたリーファも今は、緑一色に統一されたスイルベーンとは違った良さを見出したのか眼を輝かせながら辺りを見渡します。そしてアルン市街を物色しつつ歩いていくと圧倒的な存在感が視界に入り込んできます。
「わぁ……」
「これは……確かに世界樹と冠されるのも納得です」
地表を突き破って地下世界まで浸食していた世界樹の根は、このアルンで一つにまとまっている巨大な根が幾つにも枝分かれしながら伸びていったものだった。アルン市街地の表層にも伸びている根を寄せ集めた幹はバベルの塔を表すが如く文字通り宙へと伸びあがっている。
飛行制限エリアを示す雲を貫いて空と混ざり合い境界が見えなくなるまで高くその寸前で幹から放射状に枝が広がっているのも確認できる。まさに世界の樹というべきものだろう。
「確かあの樹の上には街があってそこで………」
「妖精王オベイロンと
世界樹を眺めつつ、会話をしながらアルン中央市街へと入ろうとした瞬間、キリトの胸ポケットに収まっていたユイちゃんが顔を突き出し、青い空を食い入るように見つめます。
「お、おい………ユイ、どうしたんだ?」
周囲の目を憚るように小声でキリトが尋ねます。私とリーファもユイちゃんに駆け寄りますが反応はありません。数秒が経つとユイちゃんはかすれた声で呟きます。
「ママ……ママがいます」
「本当か…………!」
ユイちゃんから告げられる情報に私もキリトも顔を強張らせます。
「ええ、間違いありません!このプレイヤーIDはママのものです。ママはこの上空にいます!」
そう告げられるや否やキリトはバン!と空気を響かせながら上空へと飛び上がります。慌てて私とリーファもキリトの後を追いかけます。アルンで過ごすプレイヤーたちも何事かと視線を向けますが今は構っていられません。
数秒も経たないうちに市街の上空へと飛翔し、こちらも
「気を付けて、キリト君!!すぐ近くに障壁があるよ!」
先程の会話で出てきた肩車で世界樹の枝に辿り着きそうになったため慌てたGMが急遽設定したとされる障壁──恐らく須郷の仕業でしょうをキリトに伝えようとするが、鬼気迫る様子のキリトには届いていません。
一切速度を緩めないまま雲海に突入したキリトを止める為、白い海を突き進みもうすぐ青い空が眼前に広がりかけたところで凄まじい勢いで何かと何かが衝突した音が空気を揺るがし黒い影が落ちてきます。
この高度からの落下はHPの全損のみならず現実世界にも多大な影響を及ぼします。キリトを受け止めようとしたタイミングでキリトは意識を取り戻しました。すぐに空へと突進しかねないキリトを後ろから抑え込みます。
「……!おい、ソウジ離してくれ、行かなきゃならないんだ」
魂の奥底から響いてくるようなキリトの叫びに心が揺らぎますが、今ここでキリトを離すわけにはいきません。後から合流したリーファと共にキリトを抑え込んでいると、胸ポケットからユイちゃんが飛び出します。
システムに属する彼女ならという僅かな希望もゲームシステムという絶対的な檻がユイちゃんを無情に弾き返します。それでもユイちゃんは必死の面持ちで口を開きます。
「警告モード音声なら届くかもしれません………ママ!!私です!」
ユイちゃんの叫びも届かず万策尽きたと思われたとき、見えるかどうかギリギリの小さな光が瞬きました。やがてそれはフワフワと舞いながらゆっくりとこちらに落ちてきます。
キリトも障壁にぶつかろうとすることをやめ、ぼんやりと視線を向けます。空にキリトが翳した手に途方もない時間をかけて白い光は収まります。私とリーファ、ユイちゃんがキリトの手を覗き込むとそれは妖精と魔法のファンタジーなALOには似合わない無機質な銀色のカード型のオブジェクトでした。
「………これはカード、ですかね………?」
「リーファ、これ、何だか分かるか……?」
「ううん、私もこんなアイテム見たことない。クリックしてみたら何か分かるんじゃない?」
リーファの助言に従ってキリトがカードらしきものをクリックしますがウインドウが表示された様子はありません。その時、ユイちゃんが体を乗り出しながら言いました。
「これは……システム管理用のアクセス・コードです!!」
「「……………!」」
このアイテムの重大さに息を呑みます。
「これでGM権限を行使したりは出来るのか?」
「すいません、それには対応するコンソールが必要で……私はシステムメニューを表示するのが限界です……」
「そうか……ユイ、これは偶然落っこちてきたとかじゃなく………」
「ええ、ママが私の呼びかけに反応して落としたんだと思います」
「……キリト」
「ああ」
私の考えついたことはキリトにも伝わっているでしょう。幾ら抜けているところがある須郷といえどアスナの手が届く場所にこんな重要なものを置くはずがありません。
となったらアスナがシステムを隙を突くような形で入手したと考えるべきなのでしょうが………全ての監視の目を潜り抜けていると考えるのは些か楽観的すぎますね。こんなものが盗まれたことにすら気づかないほどあの男は馬鹿ではないでしょう。
「急ぐぞ、ソウジ」
こうした諸々の不安もひっくるめてキリトは前を向いています。きっと今も私たちとは別の場所で戦っているアスナのことを信じて………
「……分かりました」
「リーファ、世界樹の中に通じているゲートがどこにあるか知っているか?」
「ええ、樹の根元にあるドームの中だけど………幾らキリト君でも無理だよ!あそこは大量のガーディアンに守られてて、この一年間で誰もクリア者が出てないんだよ」
今にも飛び出しかねないキリトを引き止めるため、リーファが必死に言葉を並べ立てます。しかし、決意を固めたキリトの心を動かすには至りません。
「それでも行かなくちゃならないんだ。どんな壁が立ち塞がろうとも………だから「一旦落ち着いてください」……何だ、ソウジ」
言葉を遮られたのが気に触ったのか声を少し荒げさせながら私に問いかけてきます。
「キリト、アスナのことが気懸かりなのは理解しますが、だからといって無闇矢鱈に突き進むのは違います」
「俺は至って冷静だ。それよりも急がないとアスナが……」
「貴方は何の事前情報も無しに一年間もクリア者が出ていないクエストに挑むつもりですか。勇気と無謀を履き違えないで下さい」
「っ、………じゃあこのまま何もしないでいろっていうのか。それにここでは失敗したって命が取られるわけじゃないだろ」
「そう言ってるわけじゃありません。普段の貴方なら偵察を行うといった手段が出てくるはずです。それに今の貴方は些か自分の命を軽く見ている節があります。一度立ち止まって頭を冷やしてください」
「パパ、焦るのは私も一緒ですが今は一旦………」
「ソウジ、ユイ…………」
ユイにも呼び止められ動きを止めたキリトは、一度眼を瞑り深呼吸を行うとこちらに向き直る。
「すまない、アスナのことを思うと居ても立っても居られなくて………暫く気持ちを落ち着けることにするよ。ソウジ、リーファ、すまなかった」
「そんな気にしなくていいわよ」
「別に大丈夫ですよ、こちらも強い言葉を使ってしまいましたし……それではキリト、私はこれから偵察に向かいます」
「お前が言うからにはそんなに心配はないが大丈夫なのか?」
「あくまで今回は情報収集を目的としたもので生存を第一優先とします。行けるとこまで行ったら直ぐに戻ってきますから」
キリトとリーファにそう言い残すと私は世界樹の根本へと向かいます。すぐにキリトとリーファの声も聞こえなくなりました。
未だにグランドクエストが突破不可能という認識は変わらないのか、扉の付近に人は見当たりません。豪華な装飾が施される扉の両側にはそれを守護するように私の背丈の十倍以上はあるような妖精の騎士を象った石像が配置されていました。大きな階段を全て上り終え、扉の前に私が辿り着くと同時に右側の石像が眼を青白く輝かせながら問いかけてきました。
『未だ天の高みを知らぬ者よ。王の城へも至らんと欲するか』
手元にウィンドウが表示されます。イエスに指を合わせて押せば、左側の石像から再び声が聞こえた。
『さればそなたが背の双翼の、天翔けるに足ることを示すがよい』
そうして開かれた世界樹の中は闇に包まれていたが、突然眩い光が視界に入ります。そうして見えた世界樹の内部は根や蔦が絡まって構成されており、どこか75階層のボス部屋を思い出させる途轍もない大きさの白い半球状のドームが灯りに照らされていました。
そして遥か上方の天蓋の頂点には円形の扉が見えます。あれが入り口でしょうか。背中の翅を震わせて少し地上から浮き数秒ホバリングした後、衝撃音だけを残しながら一気にトップスピードまで加速し、風を斬りながら飛翔します。
と同時に世界樹の中を照らす灯りから一滴の雫が垂れたかと思うと人型の形を作り、巨大な翅を広げながら私に立ち向かってきます。リアルの方でもグランドクエストの情報はできる限り集めました。この白い鎧を着ている巨大騎士のような敵は《ガーディアン》と言うらしいです。
雄叫びを上げてダイブしながらその巨大な体格に似合う剣を振りかざしてきます。私も意識を”斬り合い”を行うものに切り替え、一切の感情がその機能を停止させ、凍りついていきます。互いの剣がそろそろぶつかり合うといったタイミングで……
「………!」
更に飛行スピードのギアを上げ、加速感に震える体を動かしガーディアンの剣の軌道を計算して体を捻って最小限の動きでもって、一切の減速を行わなずに攻撃を避けながらその巨体さ故に死角となっている懐に潜り込みます。私の急な速度変化に敵も反応できません。そのままガーディアンとのすれ違いざまに──
「ハッ!」
ガーディアンの勢いも利用して装備ごと切断し、首に刀を走らせて刈り取ります。斬られたことにすら気づいていないのか断末魔を発することもなく首と胴体が泣き別れ、そのまま爆炎に散っていきました。
ステータスもSAOのフロアボスには遠く及ばず、技量も特筆すべき点はありません。こちらがSAOからのスキル熟練度や装備も
が、問題なのはその数ですね。既にかなりの数の灯りからガーディアンが出現しており、数百は下らないであろう数が私一人に視線を向けています。普通ならこの大群を前に人はなんらかの感情を抱くのでしょう。
──恐怖
──諦め
──昂り
──興奮
──怒り
ですが私にはそのようなものを感じる機能は必要ありません。既に捨て去った感情は波風立てて揺らぐことすらせず、剣の如く冷たく研ぎ澄ませた殺意のみが私を駆り立てます。
──生きている死体……ですか。確かに言い得て妙ですね
これら全てと戦う必要はありません。幾度となく襲いかかってくるガーディアンを斬り捨て、最小限の動きで持って攻撃を交わしひたすら入り口に向かって飛び続けました。四、五体が一気に私のことを阻まんと舞い降りてきます。
ここで一番取るべきではない行動は、戦闘のためその場にとどまってしまうことです。私が動かないということは後続に続くガーディアンとの距離を作れないということであり、それが最後、袋叩きにされるでしょう。
故に私が取るべき行動は危険が迫った場合のみ回避や受け流すことを中心として、正面取っての戦闘をなるべく少なくすることで常に上へと翔び続けるということです。
一番最初に近づいてきたガーディアンは、最初と同様に剣筋を予測して回避を行いながら首を弾き飛ばす。
爆散して飛び散った体液じみた粘着質の液体が、体に降り掛かることも気にせず、二体目が振りかぶった白金に輝く剣をソウジはそれに添える形で──鋼同士が擦り合う音を響かせ、火花が時々舞いながらも受け流し、SAO時代に鍛えていた体術スキルでがら空きの胴を蹴飛ばして、後ろに続いていたガーディアンを蹴散らす。
その隙に横入りする形で舞い込んできたガーディアンには、すぐに体を反転させ武器を持つ手を肩から切り落とす。
こうして中盤を過ぎた頃には数えるのが億劫になるほどの数が出現し、今なおその数を増やし続けていく。迫りくる敵を避けて、斬り捨てを繰り返しながら進むべき順路の提案と棄却を敵の数と配置による状況を観察しながら、直感的に最短経路を導き出す。
──どうしましょうか……
威力偵察は十分に果してここで撤退してもいいのですが、もう一つ確かめたいことがあるのでこのまま上へと駆け上がっていきます。
こうして遂にクエストも終盤に差し掛かろうというところで………
「……そこまでやりますか……確かにクリアされたら困る場所ですもんね!」
後ろに広がっていた状況に思わずヤケクソ気味に声を出してしまいます。そこには一面を覆い尽くすような数のガーディアンが弓を構えて待機していました。
「とは、言えです……広範囲魔法による爆撃での回避不可能の攻撃、みたいなことをされるよりはマシですか」
いつまで現実逃避をしていたって何も始まらない。この状況を切り抜けるべく脳裏で凄まじい勢いで方法を構築していきます。そして考えついたのが
「難しいことごちゃごちゃ考えるよりも結局
その方法は至って単純、私に当たる矢を全て切り捨てるというもの。土砂降りの雨の如く迫りくる矢を片っ端から斬り捨てます。
──疾く、疾く、もっと疾く!
まだいけます。手を止めてはいけません!
──斬る、斬る、斬る!
ただひたすら矢を斬り捨てますが、体を掠る矢も出始め少しずつこの世界での命を示すHPバーが削れていきます。それでも体の主要な部分に突き刺さるであろう矢は全て叩き落とし、永遠にも思えるひと時をようやく潜り抜けました。一先ず第一波を凌ぎ、目指していたゲートが目の前に現れます。扉を開くべく手を触れましたが一向に開く気配はありません。
──ここに辿り着くまでに何かフラグが必要なのでしょうか………ですがそれは考えにくいですね。全プレイヤーが達成を目指すグランドクエストに、公式からの通知が何もないというのは考えにくい話です。となると他に考えつくのは………システム管理者による権限。つまりプレイヤーには開くことすら出来ない………須郷が考えそうなことです。
扉が開かない理由に当たりをつけつつ、情報収集という目的も達成された今すべきことは生きたままここから脱出するということです。急いでスペル詠唱を行う。私の周りに円環状に単語が何重にも重って漂います。何とか矢を射られる前に発動させることができました。
発動したのは大規模な幻覚魔法、発動時間の短さしか取り柄がなくそれ程効果時間外長いわけでもなければ効果が強いわけでもありません。日頃だと腐りやすい魔法ですが今はこの魔法で十分です。
幻の私に惑わされて第二波も私から逸れて発射され、更にガーディアンの壁に薄い部分が作られる。それを見逃さず重力加速度によって、全速力で隕石のように落下していきます。私の接近によってようやく幻覚効果が解除されたようですがもう遅いです。ガーディアン同士の間にある隙間を潜り抜け、分厚い海を突破する。
後方から弓や剣による追撃が行われましたが、行きと同じように捌きながら出口へと到達することに成功しました。
脳筋は最強!!
どっかの水柱さんも涼しい顔してやってることは「攻撃全部叩き斬る!」ですからおんなじようなものです。