ソードアート・オンライン ー浅葱の剣聖ー   作:狂華翠月

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今回はあのヒロインのお話です。それではどうぞ。


第五話 思い出の丘

 

 

 

 

 2024年2月23日

 

ー35階層にてー

 

「はぁぁ!」

 

 これで一通り片付きましたね。この階層は敵モンスターのポップ率や数の多さといった面から見て、スキルやソードスキルの調整や確認、レベルや熟練度上げなど様々なことに利用できるんですよね。便利な穴場でやるこも無くなり街へと帰ろうと道を進んでいると……

 

 

「きゃぁ!!!」

 

「っ……!誰か襲われているのですか!?」

 

 聞こえてきた音の方向を頼りに気配を探り、人影を探る。

 

 いたました!ドランクエイプに襲われているでしょうか?そこには少女が運悪く三体のドランクエイプに囲まれていました。本来なら危険ならば場面となっただろう。そこに黒色の装備に身を固めたプレイヤーがいなければの話だが。

 

 もう問題はないだろう。ドランプエイクはそのままポリゴンになって消滅した。間を置かずして残りのドランプエイクも倒さる。私が近づいてくと会話が耳に入ってきました。

 

「……すまなかった。君の友達を、助けられなかった……」

 

「キリト、どうしたんですか?」

 

「っ……!?ソウジ、お前だったのか。なーんか気配が掴めないよなお前。いつも気づいたら近くにいるよな」

 

「索敵スキルなんてものに頼りきるのがナンセンスなんです。それで何があったんですか?」

 

「え、あ、はい。ピ、ピナが………」

 

 そう言って手に大事に何かを抱えている少女ーー確かシリカさん、でしたっけ。それを見たキリトが励ますように声を掛けます。

 

「……もしかしたらピナを復活させれるかも知れないぞ、シリカ」

 

「え、本当ですか!」

 

 キリトの言葉に先程から一転、シリカの表情に希望が宿った。キリトは先を促すシリカさんの視線に頷き、説明を続けていく。

 

「ああ、ソウジ、お前なら知っているだろ。四十七層の南に、「思い出の丘」と呼ばれるダンジョンがある」

 

「なるほど、確かその頂上に咲く花が使い魔蘇生用のアイテムでしたか。ただ使用できるのは、使い魔が死んでしまってから3日間だけでしたが……」

 

 キリトに尋ねられ、アルゴさんから入手した情報を頭の中から引き出す。

 

「四十七層……私のレベルじゃ……」

 

 やはり攻略の最前線でないとはいえシリカさんには厳しいようです。安全マージンを取って攻略に行くと仮定するなら階層プラス10のレベルが必要になる。シリカさんの現在のレベルは44。いくらなんでも三日間で13レベルを上げるのは不可能です。シリカさんの表情が再び曇ってしまいました。話を聞くとピナはその命を犠牲にしてまで自分を助けてくれたのに、自分は何もしてあげられない。こんな現状を作り出した自分の愚かさ、そして親友を救えない自分の無力さ全てが悔しくて仕方がない、と涙ながらに気持ちを伝えてくれました。そんな今にも泣き出しそうなシリカさんの顔を見て、キリトは問いかけました。

 

「……君の親友を助けたいか?」

 

「…………はい」

 

 シリカさんは涙を流しながらも力強くうなずきました。するとキリトはこちらに向かって

 

「……ソウジ、何かいい武器や防具を持ってないか?」

 

「え……?」

 

「私も一応予備の使わないアイテムはあるので、大丈夫ですよ」

 

「ソウジがそれを出すなら……このコートと、タガーとかはどうだ?」

 

「そうですね……私のと合わせれば、十分です」

 

「えっ、これは……?」

 

「この装備とソウジの分も合わせれば、10レベルくらいは底上げできるだろうし、俺も一緒に行けば、47層でも十分に突破できると思う」

 

「私も同行しましょうか?そのほうが確実ですし」

 

「……いいのか?」

 

「二人よりも三人の方がでしょう?私も協力します」

 

「あ、あの……」

 

 私とキリトが話を進めていると、シリカが遠慮がちに声を掛けてきました。

 

「どうして……そこまでしてくれるんですか?」

 

 シリカは警戒心を抱きながら質問をした。確かシリカさんは中層でかなりの知名度と人気を誇ってたはずです。フェザーリドラ、ピナのビーストテイマーとして中層プレイヤーの間で高い知名度を持つ《竜使い》であるシリカに、ルックスが良いことも相まって下心を持って近づいてくるプレイヤーも多かったことが容易に想像がつく。どう答えたものかと考えていますと、キリトが少し間を置いてから答えました。

 

「どうして、って……目の前に困っている人がいたらほっとくわけにはいかないだろ……それと……君が妹に似ているから、かな……ソウジは?」

 

「そうですね、半分は善意から、もう半分はある依頼のため、こんな感じでしょうか」

 

 理由を述べた時のキリトの顔には、下心や危険な思考は感じ取れませんでした。てかそんなもの感じ取ったらキリトを真っ二つにしてますよ。

 

 まあ、そんな気持ちが伝わったのか、シリカさんは私たちの助力を受けることに決めたようです。

 

「……お願いします。あたし一人では、どうやったって辿り着けませんから……私に力を貸してください、お願いします」

 

 そういって懐からコルを取り出そうとするシリカさんを二人で止めます。

 

「そんなことしなくてもいい、俺たちには目的があって君に協力したんだ」

 

「ま、取り敢えず気にせず受け取ってください」

 

 

 

―シリカsideー

 

 

 白壁に赤い屋根が立ち並ぶ放牧的な農村に穏やかな空気が満ち溢れるといった街。アインクラッドの攻略最前線が五十五層となっている現在、この階層は中層プレイヤーが主に利用され活気に満ちあふれている。そんな街中を私は協力を申し出てくれた二人の少年?と一緒に歩いていく。

 

 

「じ、自己紹介が遅れました。私、シリカって言います」

 

「俺はキリトだ」

 

「私はソウジと申します」

 

 街に入ってから私たちは自己紹介をしていました。三十五層の街の中を、キリトと名乗った全身が黒の装備で固められた少年と、ソウジと名乗る浅葱の羽織袴と黒袴を身に纏う少年に伴う形で歩いていく。その姿が気になりちらちらと視線を送るが、やはり和服というのは西洋系ファンタジーというSAOの中ではかなり珍しい格好となっている。ただ顔が整っておりかなり中性的となっていることもあって、不思議と様になっている。少し嫉妬してしまったのは誰にも言えない秘密だ。

 

「……あの、どうして、ソウジさんは敬語なんですか?」

 

「…………ええ、昔からこういった風に話していると口調が敬語になってしまいまして…こればっかりはどうしようもないんで。まぁあまり気にしないでください」

 

「そうだったのか、初めて知ったぞソウジ」

 

「あ、あと私の方が年下なんでシリカでいいですよ」

 

「ん、分かりましたシリカ」

 

「……それにしてもソウジさんが男性だなんて少し驚きました。女性って言われても違和感ないですし。後なんでそんな剣士みたいな格好してるんですか?」

 

「うーん、顔については性別が時々間違われることについては少し気にしてるんですよね。ま、なれたら問題はないですし。それでこの服装については、どうせ装備を着るならある程度着慣れていた方がいいかなと思いまして。それとこの服装がしっくり来るんですよね、長年着込んでいたような感じがするんです」

 

「ほえー、なるほど」

 

「へー、ソウジそんな理由でその姿してたのか。というか周りに奇妙な目で見られるようなコスプレじみた格好は辞めたらどうだ」

 

 どうやら二人は親しい関係にあるらしい。そんな中、キリトさんがからかい交じりの声でソウジさんの格好を弄る。

 

「……キリト……言っていいことといけないことがあるのを御存じ無いようですね。第一コスプレ感あるのはそっちなんじゃないんですか。どっかのラノベに出てきそうな格好して、全身黒の装備で固めたりなんかして厨二病拗らせてるあなただけには言われたくありません」

 

「ブッ!?」

 

 ……なんか、あまり詳しいことは分かりませんがお互いの言葉がクリーンヒットしてますね。特にキリトさん、現実で言ったらどちらかといえばコスプレじみてるのは私たちの方なんですよね。思いっきりブーメランです。

 

 キリトさんとソウジさんのコントのようなやり取りを見てそんな感想を抱きつつ、明日は四十七層の思い出の丘を攻略しに行く以上、もう少し話をしておいた方が良いかもしれない、そう思い、話しかけようとしたところ

 

「お、シリカちゃん発見!」

 

「俺たちとパーティー組まない?好きな所連れてってあげるからさ。」

 

 そう下心溢れる声で二人の男に呼び掛けられ少し身を竦めてしまう。ビーストテイマーとして知名度の高い、言わばマスコットのような存在である私をパーティーに加えたがる男性プレイヤーによる、パーティーへの勧誘。戸惑いながらも、視線をソウジさんとキリトさんの方へ向けながら

 

「すいません丁度さっきこの方たちと組む事になって……」

 

 一方、断られた男性プレイヤー二人は、ソウジさんとキリトさんに向けて剣呑な視線を送っていた。羨望と敵意を滲ませたそれは、分かりやすい嫉妬心に満ちていた。そうして舌打ちをしつつどこかへ去っていってしまった。

 

「すみません、迷惑かけちゃって……」

 

「別に気にしなくていいさ。ああいう奴らは自分がしたいように出来なくて腹立ってるだけさ」

 

「シリカってかなり人気者なんですね」

 

「いえ……マスコット代わりに誘われてるだけですよ、きっと……」

 

 自分の容姿に魅入られる男性プレイヤーは多く、パーティーやギルドへの引く手も数多。だが、そんな環境に遭って慢心していった結果、かけがえのない大切な親友を失う羽目になってしまった。それを思い出す度、目に涙が浮かぶ。

 

「私が悪いんです。……竜使いなんて呼ばれて、舞い上がっちゃって……」

 

「……君の友達は俺とソウジが必ず生き返らせてみせる……だから安心してくれ」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 見知らずの自分にここまで温かい言葉をかけてけてくれた二人に涙を浮かべながらも感謝を告げる。少しソウジさんの顔が遠くを見るような無機質な顔に見えたのだが、見直す頃には明るい表情しか見ることが出来なかった。迷いの森で出会った時に比べて、三人の間の空気が和やかになったところで、私たちは先程より軽快な足取りで主街区を歩いて行く。

 

「あら、シリカじゃない」

 

「……どうも、ロザリアさん」

 

「森から脱出できたんだ。よかったわね」

 

 赤髪の槍使いのプレイヤーが話しかけてきた。彼女は今一番、私が会いたくない相手であった。迷いの森で口論になったパーティーのメンバーであり、喧嘩別れしてピナを失う羽目になった原因でもある。関わり合いたくはなかったのだが、ロザリアさんは私に付いている筈の存在が欠落していることを、目敏く気付いて追及する。

 

「あら、あのトカゲはどうしちゃったの?」

 

「……ピナは死にました……ですけど、ピナは必ず生き返らせてみせます!」

 

「へぇ~……っていうことは、『思い出の丘』に行く気なんだ。でも、あんたなんかのレベルで攻略できんの?」

 

 いちいち傷口をこじ開けて塩を塗り込むような言葉を投げ掛けるロザリアに、キリトとソウジも目が険しくなる。そしてシリカは最も気にしている事を告げられ黙りこくってしまう。するとソウジが前に出て言い放った。

 

「大丈夫ですよ。私たちが攻略についていきますから。幸いあのダンジョンはそこまで難易度は高くないですし、私たちも一緒に行くつもりです。男に二言は無しってわけです」

 

「あんたもその子にたらしこまれた口?見たトコ、かなり強そうじゃない」

 

「それはあなたには関係の無い話だ。依頼を受けた俺たちは、それに従うだけだ。行こうシリカ、ソウジ」

 

 それだけ言うと、キリトさんは私たちを連れて宿へと入って行きました。

 

 

ーソウジsideー

 

 

 シリカが部屋を取っている宿、風見鶏亭の一階にあるレストラン。そこの四人席に私たちは腰をかけました。

 

「……なんで、あんな意地悪言うのかな……」

 

「……それが、ロールプレイだからだ。シリカはMMOは初めてか?……どんなオンラインゲームでも性格が変わる人は多いんだ。その中には、進んで悪役を演じる人だっている」

 

「それに法的規制の無いSAO(この世界)ならば、現実世界で許されない詐欺や窃盗といった犯罪行為が罷り通ってしまいますから。実際下層のほうでは詐欺が度々発生していますし。アインクラッド解放軍が取り締まっているので何とかなっていますが。或いは、こんな状況だからこそ、現実世界では許されない行為に走る人間が現れるのかもしれませんね」

 

「俺達のカーソルは緑色だ。だが、グリーンカーソルのプレイヤーへ、攻撃をはじめとした犯罪行為を行った場合、カーソルはオレンジへと変化する。その中でも、プレイヤーキル……つまり殺人を行うプレイヤーは、レッドプレイヤーと呼ばれる」

 

「そんな……殺人って……」

 

「ああ残念なことだが確かに存在するんだ。アイテム強奪のため、或いは殺人行為そのものに快感を抱いて人を殺すプレイヤーが……」

 

 空気がどんよりとしてきました。ここは話を切り替えましょう。

 

「それでこのレストランにはどんなメニューがあるんですか」

 

「えっ? そ、そうですね……私のイチオシはチーズケーキですね、とってもおいしいんですよ。それと一応お団子なんかも…」

 

「お団子ですか!?本当にあるんですか!」

 

「ええ、そこまで種類はありませんが…」

 

「これは嬉しいですね、長い間お団子が食べれなかったので……早速注文しましょう」

 

「ソウジ落ち着け、そんなに焦らなくとも団子は逃げないぞ」

 

 こうして賑やかにレストランでの時間は過ぎていき解散となりました。

 

 

 キリトがシリカに『思い出の丘』について説明し忘れていたということで、私たちたちはシリカの部屋を訪れていた。ノックすると、慌てたシリカの声が聞こえてきました……もしかして、もう既に寝ていたのでしょうか?だとすると申し訳ありませんね、明日に説明したほうが良かったかもしれませんね。

 

「お、お待たせしました……!」

 

「大丈夫だったか?もしかして、もう寝てたか?」

 

「い、いえ……それでどうしたんですか?」

 

「いえ、このうっかり者のキリトが47階層の説明をし忘れていたということなので、このソウジさんが一緒に来てあげたというわけでですね」

 

「うるさいぞ、ソウジ。じゃあ説明を始めるけど……今からでも大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

 シリカに了承をもらい、私たちは部屋に入りました。そして、キリトはミラージュスフィアを取り出し、47層の説明を始めた。何で私が呼ばれたんでしょうか?必要なくないですか、私……。それはともかく、シリカはスフィアのから流れ出る映像に見とれていました。そして、説明が『思い出の丘』のことになった時のことだった。

 

「………!っ、用事が出来たので私は先に帰らせていただきますね」

 

「了解です、ソウジさん明日はよろしくお願いしますね」

 

「ええ、こちらこそ」

 

 そして、部屋を出るために扉に向かう途中すれ違ったキリトに

 

《聞き耳》を使って部屋で話していた事を聞かれていたようです、私は外で見回りに向かいますのでシリカを頼みます

 

……!ああ、分かった

 

 そう呟いてから外に出ます。しかし、取得条件がめんどくさいうえに一度使うだけでオレンジプレイヤーになる《聞き耳》を使うなんて碌なことになりません。恐らく、来るでしょう……キリトにも後でメッセージで伝えておきましょう。

 

 

 

 2024年4月24日

 

 

 シリカが私たちと出会い、使い魔蘇生用クエストへ同行することが決定した翌朝。私たちは早速、目的の階層へと出発することにしました。シリカは昨日私から渡された装備らを纏い、そのステータスは10レベルほど底上げされている。早朝であるために、人気があまり無く静かな状態の三十五層主街区ミーシェを、キリトと私は昨日と同じ格好で横切って、転移門に向かって行きます。

 

「キリトさん、47層の街ってどんな場所なんですか?」

 

「主街区の名前はフローリア。一面花畑のフィールドだ。別名『フラワーガーデン』とも呼ばれているんだ。モンスターは植物系が主流だそうだ」

 

「なにか……楽しみですね!」

 

 シリカは少し浮かれているようですね、楽しいところ申し訳ないですがいくら難易度が低いといえど攻略最前線の55階層と8階層しか離れていません。釘を刺させてもらいましょう。

 

「シリカ、確かにここは迷宮区の中では簡単な方ではありますが攻略最前線と8階層しか離れていません。プレイヤーは使い魔と違って都合よく蘇生なんかは出来ません。迷宮区に入る時は気を引き締めてください」

 

「は、はい……気を付けます!」

 

 こうした会話の後、歩いて行く内に、三人は遂に転移門広場に辿り着きました。

 

「四十七層の主街区はフローリア、でしたよね?」

 

「その通りだ」

 

「では行きましょうか」

 

 

「「「転移、フローリア!」」」

 

 

 四十七層に転移した私たちの目に飛び込んできたのは、辺り一面に咲き誇る花畑

 

「凄い……とても綺麗……」

 

「見惚れるのもいいですが迷宮区に向かいましょう、急がないと暗くなっちゃうかもしれないですし」

 

「少しぐらい待ってやれよソウジ。それとも花より団子、花には一切興味がないのか?」

 

「……分かりました」

 

 そんなやり取りを繰り広げつつ私たちは『思い出の丘』の入口へと向かっていきます。

 

「それにしても結構人がいますね」

 

「ええ、ここは主街区からフィールドまで全て花畑です。攻略以外でも観光名所としてプレイヤー間で知名度がかなり高いんですよね」

 

 花壇を眺めながら歩く人々は、仲睦まじく腕を組んだり肩を抱き合ったりする男女が多いですね。つまりこの階層は、所謂デートスポットなのです。シリカが街行く人々を見て、若干顔を赤くしている。だれか好きな人でもいるのだろうか?まぁこれ以上の詮索は野暮というものです。

 

「よしこれからダンジョンに入る、全員転移結晶は持っているか?」

 

「「はい/持ってます」」

 

「よし、それじゃ、行こうか」

 

 こうして私たちはダンジョンへと入っていきました。

 

 

ーダンジョン内にてー

 

「静かですねー。ホントにモンスター出てくるんでしょうか?」

 

「ええ、周りの花に擬態していたりもしますから」

 

「なるほどー………きゃぁぁぁぁ!!!」

 

「な、シリカ!!」

 

 彼女はモンスターの不意打ちによって、触手で足を掴まれ宙づりにされています。

 

「み、見ないでぇぇ!!!」

 

「い、いや……み、見えない!じゃなくて、見てない!」

 

「二人とも落ちちて下さい、特にキリトみっともないですよ」

 

 そう指摘すると二人とも閉じていた目を開きました。

 

「え、なんで?ソウジさんが私を横抱きに?」

 

「ソウジいつの間に!」

 

「ええ、少し気がたるんでいたので危機感を持ってもらうためにも見逃していたのですが……」

 

 触手を切り落とし落下してきたシリカを横抱きで受け止めます。特に傷もないようですし

 

「手荒になってすいませんね。ですがちゃんと周りを注意してから進んでくださいね、立てますか?」

 

「ええ、すいません気を付けます。……お姫様だっこしてもらっちゃった

 

「で、キリトさん何かいうことあるんじゃないですか」

 

 そうキリトをジト目で問い詰めます。

 

「いやあれは不可抗力で第一お前が原因……」

 

「見、見たんですか……キリトさん」

 

「……み、見てない……」

 

「………………キリト」

 

「すいません、ちょこっとだけ」

 

「……ううう……!」

 

 キリトは観念したようにシリカに謝り、シリカは顔を真っ赤にしていました。

 

「てかお前はどうなんだよ!見えたんじゃないか」

 

「別にアレぐらいなら見なくても感覚で敵の位置ぐらい分かります。キリトと一緒にしないでください」

 

 そんなハプニングがありつつもダンジョン内を進み、シリカも戦闘に慣れてきました。

 

「そういえば、キリトさん、妹さんがいるって言ってましたよね?」

 

「えっ……あ、ああ」

 

「そういえば、昨日そんなこと言ってましたね。私も詳しいことは初めて聞きました」

 

「……まぁ、話してなかったからな」

 

 シリカの言葉で話はキリトの妹の話になりました。どうやら、本当の妹ではなく、従妹の女の子らしいです。

 

「まぁ、ちょっと色々あってな……そのせいで俺の方から距離を取っちゃってさ」

 

 そう語るキリトの表情は過去を懐かしみつつも後悔を抱いているようでした。

 

「祖父が厳しい人でさ。小さい頃から剣道道場に通わせたんだけと、俺は2年で止めてさ……その代わりに妹が頑張るって話になったんだ……それから、あいつは猛練習して、遂には全国大会まで出場する程に強くなったんだ」

 

「それは凄いですね、キリトも自慢の妹さんじゃないですか」

 

「まあな、ただそれで結局SAOに入る日も碌に話せなくてな……かなり後悔してるんだ」

 

「そうですか……その妹さんきっと剣道が大好きなんでしょうね。そうじゃなかったら全国大会まで行けませんよ」

 

「………!そっか……ソウジ、ありがとな」

 

「いえいえ、どうってことないですよ」

 

「よーし私もキリトさんの妹さんみたいに「キシャァァーーー」えっ!k」

 

 なーんかさっきから敵が多くないですか?

 

「はっ!!」

 

 ソードスキルを放ち奇襲してきた敵を切り伏せる。

 

「キリトも話すのは別に構いませんが、注意を怠るのはいけませんよ」

 

「うっ……すまん」

 

 そうして、キリトに注意をしつつ、ダンジョンを進んでいきます。

 

「見えたぞ。あれが、蘇生用アイテムが手に入る「思い出の丘」だな」

 

「えっ!本当ですか!?」

 

 目的地に到着し、シリカが台座に向かって走って行った。すると……

 

「これが、ピナを生き返らせることのできるという……」

 

「ああ、使い魔蘇生用のアイテムだ」

 

 キリトに言われて、台座の花に触れ、やがて花がシリカの手に収まる。音も無く開いたアイテムウインドウには、「プネウマの花」と記されていました。

 

「さぁ、このダンジョン内はモンスターがポップしてきて危険ですので、町に戻ってからピナを蘇らせましょう」

 

「うぅ……分かりました」

 

 できれば今すぐにでも蘇生させたいであろうシリカは、私に諭されて思い止まりました。ここは四十七層、注意をせずに無事でいられような甘いフィールドではありません。シリカはプネウマの花をアイテムストレージに納めると、行きと同様に私たちと主街区へと戻って行きました。

 

 

 

 帰り道は順調そのものです。使い魔蘇生用アイテムを入手するためのダンジョンであるため、一般プレイヤーは滅多に寄り付かず、モンスターのポップも極端に少ないようです。ホントですかね?まぁそのため、行きがけの道で私たちが殲滅したものでポップは打ち止めだったらしいです。それと彼らもそろそろ仕掛けてくる頃でしょう。索敵スキルを使わずとも()()()()()()()()()()()()()。そう考え辺りの気配を探っていると……

 

「……キリト」

 

「ああ。シリカ、ちょっと待った」

 

「キ、キリトさん……?」

 

 シリカの前と後ろに出て二人で彼女を守れる態勢を取ります。

 

「そこにいるのは分かっています。いい加減姿を現したらどうでしょうか?」

 

 シリカから見ると誰もいない場所への呼びかけにしか見えないでしょう。しかし相手はすぐに応じました。赤い髪、黒いレザーアーマーを装備したその女性は、シリカも見覚えのある人物です。

 

「ロ、ロザリアさん?」

 

「あたしの隠蔽スキルを見破るなんて……なかなか高い索敵スキルね、剣士さんたち。やっぱり、その装備のレア度から少しは腕が立つかと思っていたけど……それじゃ言いたいことも分かるわよね。プネウマの花を渡して頂戴」

 

 突如見知った人物から犯罪同然の要求をされ困惑しているシリカを横目に、私たちとロザリアの会話は進んでいきます。

 

「そうはいかないですよ、ロザリアさん……いや、オレンジギルド、「タイタンズハンド」のリーダー、と言った方が正確ですかね」

 

「へぇ……」

 

 私の言葉にロザリアは感心したように声を出しました。

 

「で、でも、ロザリアさんは、カーソルがグリーンじゃ……!?」

 

「オレンジギルドって言っても、全員がオレンジってわけじゃないんだ。それにカルマ回復クエストを使えば、カーソルの色は戻せる。獲物を見繕い、潜入して、誘導するのにもグリーンのメンバーがギルドの中に必要なんだ。昨夜、俺たちの会話を聞いていたのも、あんたの仲間だよな?」

 

「そ、それじゃ……この2週間、一緒のパーティにいたのは……」

 

 キリトの説明にシリカはロザリアの行動を理解し、知っているプレイヤーに裏切られたという事実に愕然としていた。ロザリアは続けて誇らしげに話していく。

 

「そうよ。戦力を確認して、お金を貯めてたの。まぁ、今回のあたしたちの獲物はあんた。あんたが途中で抜けた時にはどうしようかと思ったけど……まさか、レアアイテムである蘇生アイテムを取りに行くなんて聞いたからね……そんなお得な儲け話、逃すわけにはいかないからねぇ。それにしても、そこまで分かっていながら、この子に付き合うなんて、あんたら馬鹿なの?」

 

「いいえ、私も貴方を探していました、ロザリア」

 

 私の発言の意図を汲み取れないのかロザリアが怪訝な顔をします。

 

「どういうことかしら?」

 

「私たちの依頼人は、「シルバーフラグス」というギルドのリーダーです。貴方も知っているでしょう?」

 

「……ああ、あの貧乏な連中ね」

 

「リーダーだった彼は一日中最前線の転移門の前で泣きながら、仇討ちをしてくれるプレイヤーを探してたんだぞ。彼の依頼はあんた達を殺さずに、牢獄へと送ってくれっていうものだ。あんた達にその彼の気持ちが分かるか?」

 

「……はぁ、そんなくだらないこと聞かされてもね」

 

「……そうですか」

 

 自分でも驚くような抑揚のない声が出てきた。ロゼリアが少し後ずさる姿が目に入ってきます。

 

「な、何よ、マジになって……ここはゲームの世界なのよ。ここで人を殺したところで、本当に死ぬなんて証拠はないんだから。まったく、本当に人が死ぬなんて信じてるなんて、アホらし……」

 

「もう話したところで無駄のようです……なら後は実力行使のみです。キリト、準備をしてください」

 

「……ああ」

 

 少し動揺の混じったキリトの返答を聞きつつ戦闘態勢をとる。

 

「それより、自分達の心配をした方が良いんじゃない?この人数を見てまだそのふざけた口をたたけるのかしら?」

 

 ロザリアが手を上げると、プレイヤーが前後から現れてきました。前から13人、後ろから11人ですか。

 

「き、キリトさん、ソウジさん、数が多すぎます!ここは、撤退しないと……!?」

 

「……大丈夫。俺が逃げろって言うまで、結晶を持ったまま、そこで待っててくれ」

 

「ええ、キリト、そちらは任せます」

 

「ああ。頼んだぜ、ソウジ」

 

 そうして私は刀を構え、オレンジプレイヤーの集団に突貫していきます。

 

 

「死ねぇ!」

 

「オラァッ!」

 

 十三人が一斉にソードスキルを放ってきました、がシステムアシストに頼り切っていて全く駄目ですね。殺気や攻撃したい位置がバレバレです。

 

「もう少し自分を鍛えてください」

 

 繰り出される13の方向からの剣閃がソウジを喰らおうと迫りくる。が、ソウジはそれらの攻撃を一つの刀だけで次々と捌き切っていく。ソウジは立っている場所から一歩も動かず攻撃を受け流していくだけだった。一方攻撃が流されたオレンジプレイヤーたちは前につんのめる形で姿勢が崩れる。そうして放たれた13発のソードスキルはソウジに傷一つ負わせることも、ソードスキルを発動させることも叶わなかった。

 

「何なんだよ、コイツ!?」

 

「クソッ!当たらねぇ」

 

「まぁ、キリトと同じことしてもいいんですけど、それじゃ芸がないですよね」

 

 周りにバランスを崩され倒れたり、膝を付いているオレンジプレイヤーを横目に見つつキリトのほうを眺めます。それにしても与えたダメージが結局0ってえげつないですよね。

 

「コイツ、チートか何かか!?」

 

「ひどいですね、単に素の技術だけですよ」

 

「……まさか!その顔に特徴的な和服、お前……《神速》か!?」

 

「へぇ、私のことを知ってるんですか。で、まだやります?」

 

「ああ、諦められるかよ……って、俺の剣が!?」

 

「は、なんで……」

 

「俺の斧が………高かったのに」

 

 オレンジプレイヤーたちは使い物にならなくなった自分の武器を見て悲鳴を上げます。13人の武器はいずれも折るなどの形でで破損させました。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。縄で縛って無力化を終わらせますとキリトのほうも片付いたみたいです。

 

「キリト、お疲れ様です」

 

「ソウジもな、って《武器破壊》かよ。えげつねぇ……」

 

「ええ、じゃあ依頼通り送りますか」

 

「ああ、そうだな……コリドー・オープン」

 

 キリトが回廊結晶の発動キーを唱えます。突如青い光の渦が出現すると同時に、タイタンズハンドのメンバー達は一斉に光の中へと群がっていきます。こうして犯罪者プレイヤーは誰一人として逆らうことはせず、全員が牢獄へと送られました。

 

「すいませんね、シリカ、囮にするような形にしてしまって……」

 

「い、いえ……」

 

「ソウジも……手伝ってくれて、助かったよ」

 

「いえ、お安い御用です」

 

 街の主要区に戻って来て、私たちたちは宿に戻っています。ピナの蘇生の準備を始めています。そうして待機していると……

 

「お待たせしました!ピナ、この人たちが私たちを助けてくれたんだよ!」

 

「キュルル!」

 

「わ、可愛いですね」

 

「おっと!あまり近づき過ぎるなよ」

 

 復活後はフェザーリドラのピナと少し戯れました。とても癒されますね、アニマルセラピーは偉大です。そして、別れの時間が近づいてきました。

 

「今回は本当にありがとうございました。ピナは絶対に離しません」

 

「ああ、こっちこそ迷惑掛けてすまなかったな」

 

「ピナさん大事にしてあげてくださいね」

 

「キュルキュル!」

 

「………それであ、あのキリトさん、また今度会えますか!」

 

「え……ああ、部屋でフレンド登録しただろ、メッセージくれたら行ける時なら行くよ。またいつでも会おう」

 

「は、はい。楽しみにしてますね、ソウジさんもお世話になりました」

 

「ええ、それではまた」

 

 私たちは歩き出し、シリカは顔を少し赤く染めつつ笑顔で別れを告げます。

 

 ……私からはノーコメントで。ただ、誰とは言いませんが1階層からずっとペアを組んでいる上に、一緒にご飯食べたりキリトが精神をやられているときのメンタルケアまでしてる人がいるわけですよね。

 

 ……今までの羅列した情報だけだと完全に付き合ってますねコレ……

 

 

 

 そうして竜使いシリカとのダンジョン攻略はぐだぐだしつつ終わりを告げた。

 

 

 

 

 





忘れがちですけどSAOの中って皆さんファンタジー風な格好してるんですよね。まだソウジのほうが現実でよく見る格好ってオチです(まぁかなりどっこいどっこいですが)

たぶんこの時期のキリト格好のこと指摘されたらまあまあな(精神的)ダメージ受けると思うんですよね。誰か指摘したりしなかったのかな?(筆者の記憶から抜け落ちているだけかもしれない)




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