ソードアート・オンライン ー浅葱の剣聖ー   作:狂華翠月

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戦闘描写……難しい







第七話 笑う棺桶

 

 殺人ギルド、《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》。ゲーム内の死が現実世界の死となるこのデスゲームの中で現れた、デスゲームならデスゲームらしく殺しを楽しもうというという、常軌を逸した思想を唱える者達によって結成された、積極的殺人ギルド。ギルド結成に当って、マスターとなったプレイヤーの名前は、PoH(プー)

 

残酷非道な思考の持ち主たるこの男は、デスゲーム開始以降、至る場面で暗躍してきた。攻略組・中層問わず全てのプレイヤーの敵として見なされている。同時に、凄まじいカリスマと巧みな人心掌握術を併せ持ちあらゆる甘言を用いて数多のプレイヤーを地獄へ引きずり込んでいった。

 

「さて、どうやって遊んだものかね?」

 

 目の前に転がる獲物をどう始末するか思案するPoH。そんな彼に、シュミットに粘つくような視線を送っていた、頭陀袋のようなマスクを被った腹心であるジョニー・ブラックが陽気に声を上げる

 

「あれ!あれやろうよ、ヘッド!殺し合って残った奴だけ助けてやるぜゲーム!」

 

「そんなこと言って、お前この間結局生き残った奴も殺しただろうがよ。」

 

「あー!今それ言っちゃ、ゲームにならないっすよ、ヘッド!」

 

 目の前で繰り広げられるおぞましい会話に、シュミットはもとより、ヨルコとカインズも戦慄する。そんな二人の様子を見て、赤眼のザザが、にやりと口元を歪めていた。やがて、ジョニーとPoHの会話も止み、遂にシュミットに宣告がなされる。

 

「さて、取りかかるとするか……」

 

 PoHの手には、友切包丁が握られていた。いかに攻略組のタンクの装備であろうとも、この巨大な魔剣クラスのダガーにかかればひとたまりもない。目の前の絶望に恐怖するシュミットの顔に、PoHは愉悦を浮かべながらも、友切包丁を振り上げる。そして、非常なる一撃目が振り下ろされようとしたその時――――

 

 ギィィィンーーーーー!!!

 

 激しい鋼同士がぶつかり合う音が辺りに響き

 

「ぐっ、クソッ!!」

 

 PoHの手から友切包丁が弧を描くように凄まじい勢いで弾き飛ばされた。PoHはすぐに駆け付けてきたプレイヤーに当たりをつけ盛大に舌打ちを打つ。

 

「やっぱりお前か、俺達の動きを鼠を使って這い嗅ぎまわってたのは……《神速》、《浅葱の剣聖》どの名がお好みだ?……ソウジ」

 

 PoHの放った一言に、その場にいた全員に驚愕と緊張が走る。女性とも男性とも取れるような中性的な人物は、右手に持つ刀を軽やかな動作でそれを一振りする。浅葱の羽織と黒袴に身を包んだ少年。PoH達レッドプレイヤーに向けられる双眸はもはや人に向けるものではなく無機質を感じさせるような冷たさを伴っていた。

 

「久しぶりですね、PoHさん。探しましたよ」

 

 PoHの前に対峙するソウジは口調こそ友に話しかけるようなものだが、言葉には普段の温かさのひとかけらも籠っていなかった。

 

「ソウジ……キサ、マ……!」

 

「テメェがケンカ売りやがったんだからな!」

 

 丸腰となったPoHをカバーするため二人の幹部が駆けつける。PoHは友切包丁を見つけるためにも一旦ソウジと距離をとる。

 

「お前、この状況、分かって、いるのか?」

 

「俺の友切包丁を潰したのは称賛に値するが、まだジョニーとザザが残っている。お前一人で相手し切れると思っているのか?」

 

 攻略組最強の一人であるソウジを相手にしても、釈然とした態度を崩さないPoHとザザ。対するソウジは相変わらずの無に近い表情で、彼らに時間制限を突き付ける。

 

「もうあと十分もすれば、攻略組四十人の援軍が到着します。あなた達に逃げ場は無いですよ」

 

 ソウジの言葉に、PoHはフードの中で少し顔をしかめる。現戦力では、攻略組四十人を相手に勝てる筈など無い。PoHは撤退を試みるよう指示を行う。

 

「ジョ、ッ─────!」

 

 PoHが体を僅かに捻るのとソウジの持つ刀がPoHの体を切り裂くのは同時であった。

 

「……お前、随分イカれてやがるな?俺のこと殺す気だったろ?」

 

「それをあなたが言いますか?躊躇いなんて斬り合いの場(ここ)では全く必要ないものでしょう?」

 

 ソウジの言葉にPoHたちは無意識に後ずさる。

 

「俺らなんかよりよっぽど向いているぜ、お前」

 

 

「そうですか……じゃ、死んでいただけます?」

 

 

「ッチ!」

 

 気がついたときには目の前まで迫られ浅くない傷を負わされた。負傷した部位を思わず抑えながら下がりつつ、ザザとジョニーがそれぞれの得物でソウジに斬りかかる。

 

「嘗め、るな……!」

 

「オイオイ!躊躇いの一つもねーぞ、コイツ!イカれてんじゃんか!」

 

 ザザが、私目掛けてエストックの刺突を放ってきます。明らかに私の先ほどの挑発ことに憤っての一撃だ。ソウジはザザの発動したソードスキルによる一撃を()()()()()()()()()()で回避する。

 

 ジョニーが投げ付けてくる麻痺毒の付与されたナイフも余裕を持って刀で叩き落とし、ザザの極めて少ない単発技による硬直時間の隙をつき切りつける。体を切りつけられたザザは少なくないダメージを負ったようだ。

 

「グッ………!!」

 

「ええー、マジでー。今の一つも当たらないのー……」

 

「感情任せの一撃はいけませんよ」

 

 ザザとジョニーの二人をもってしても有利とは言い難い戦況。非常に高い俊敏値をもつソウジの剣筋を見切りつつ捌ききれるほどの力はザザには無く、エストックという武器自体も防御には向いていない。次々と繰り出される連撃を防御すれば相当な耐久値を削られてしまう。ジョニーの投げナイフによる援護も全て切り捨てられほとんど意味が無い。

 

「いい加減、当たりな、よ!」

 

「見えてるのに当たりに行く馬鹿なんてそうそういませんよ」

 

 体術スキルも交えつつザザを追い詰めていく。ザザは苦し紛れのバックステップでひたすらソウジの残像が見えるような的確に急所を狙った殺意の極まった撃ち込みに耐え忍ぶばかりだ。このまま鍔迫り合いが続けば、いずれはザザのエストックが折れてしまい戦局が大きく傾いてしまうだろう。

 

 

 

 更に戦局はPoHにとって不利に傾いていく。

 

 突如、蹄の音が聞こえる。足音はソウジたちに近づき近くまで来ると、馬が後ろ脚だけで立ち上がり、鋭く嘶いた。その騎手は馬から飛び降りるソウジ達を見回して、馬を来た方向に向けさせると、レンタルを解除された馬は走り去っていく。

 

「遅くなった、すまないな。ソウジ」

 

「ホントですよ。次からは早く来てくださいねー」

 

「……そうだな、覚えておくよ」

 

 新たに参戦してきたのは《二刀流》ことキリト。ソウジの雰囲気に違和感を感じつつも返事を返す。

 

「よう、PoH。久しぶりだな。まだその趣味悪い格好してんのか」

 

「………貴様に言われたくねぇな」

 

 PoHを目に入れると挨拶とばかりに煽るキリト。自分の思うような状況にならずPoHは殺意を込めて言葉を返す。何とか自分の愛刀を取り戻せたがキリトが参戦し3対2。状況は悪化するばかりだ。PoHはキリトと剣を交えつつ撤退の手段を模索する。

 

 

「今度、こそ、殺、す!」

 

 キリトの参戦に焦りを感じたザザは戦局を打開するためエフェクトと共に細剣系ソードスキルの8連撃スター・スプラッシュを放つ。だがソウジは一撃目に自ら刀を絶妙な角度で当てることでエストックを上方向へ受け流す。そしてがら空きになった胴にカタナスキル《辻風》を放ちその直後に、体術スキル《弦月》で後方に宙返りをしながらザザを蹴り飛ばす。

 

「キ、サ、マ……!なぜ………!」

 

 吹き飛ばされて仰向けに寝転がる形となったザザを助けに入るため、ソウジに襲い掛かるジョニー。しかし主に暗殺担当で切り結ぶより、奇襲のもと一撃で敵を葬り去るスタイルであるジョニーではソウジの猛攻を抑えきれずナイフが弾かれる。

 

「がっ…………畜生!」

 

 手に持ったナイフを弾きとばし右腕をバッサリ肘から切り落とします。部位欠損ダメージの回復には、数分を要する。その間にジョニーを押さえつけ縄で拘束しました。

 

「っ、ザザ撤退だ。もうタイムリミットだ、ジョニーも捕まっちまったしな」

 

「俺がお前らを逃がすと思うか?」

 

「どうかな?それにお前の顔、俺たちと同類だぜ」

 

 何とか吹き飛ばされたザザと合流するPoH。私の顔を見てそんな台詞を吐き捨てた後、追撃しようと近づくが突如視界を遮る煙が広がります。

 

 突如起こった予想外の現象に、キリトはPoHたちから反射的に退く。それを()()()()()()()()()()()()私も思うような手ごたえを得られない。こうしてまんまと距離を作られてしまったキリトと私は追跡を諦める。

 

 こうしてレッドギルドろの戦いは終わりを告げた。捕らえられたレッドプレイヤーはジョニー・ブラックただ一人……

 

「っく、出来ればこの場で全員捕まえたかったんだがな」

 

「まぁ、一人はとらえられたので良しとしましょう。ですが……」

 

「ぐぅっ……!?」

 

「悪いが、貴方だけは逃がしはしない」

 

「テ、メェ……!」

 

 転移結晶を手にしようと腰のポーチへ向けていたジョニーの手を刀で地面に縫い付ける。ジョニーの目には殺意で溢れかえっていた。

 

 

 そうして笑う棺桶(ラフィン・コフィン)との戦いにひと段落がついたキリト達は三人の方へ視線を向ける。

 

「また会いましたね、ヨルコさん」

 

「ソ、ソウジさん………」

 

「大丈夫ですよ、キリトから話は聞いているんで。安心してください」

 

 そう告げられるとヨルコは上手く口を動かせない。その間にキリトはシュミットに近寄る。

 

「麻痺はもう大丈夫そうか?」

 

「ああ、なんとかな………キリト、助けてくれたことは礼を言う。だが、どうして奴らがここに来ると分かったんだ?」

 

「分かったって言うより、伝わったの方が正しいか?アルゴを経由してソウジから殺人ギルドが行動してるって情報を貰ったんだよ」

 

「ええ、それに指輪事件の犯人が笑う棺桶(ラフィン・コフィン)と手を組んでいることも分かったので」

 

 ソウジの衝撃的な発言に黄金林檎の元ギルドメンバーたちが息を呑む。

 

「な、それはいったい誰なんだ」

 

「黄金林檎のリーダー、グリセルダさんは、サブリーダーのグリムロックさんと入籍していました。システム上、結婚している夫婦はアイテムストレージが共有状態になります。そして、片方が突発的な事故等で死亡した場合、ストレージに納められているアイテムは、もう片方のストレージに容量の限り納まることになります」

 

「それって……まさか!」

 

「そこから先は、直接聞いてみるといいですよ。関係者全員の最期を見届けるために訪れていた主犯が、もうそろそろ連れて来られる頃ですから……」

 

「ほら、早く歩きなさい」

 

 そこで、アスナに武器を突き付けられ長らく歩いてくる、一人の男が現れた。

 

「はじめまして、グリムロックさん。ヨルコさん達が起こした圏内事件をきっかけに、指輪事件の捜査の方も調べさせていただきました。あなたが指輪事件の黒幕……ですね?」

 

「違うよ。私はただ、誤解を解きたくてこの場に現れたんだ。姿を隠していたのも、仕方の無いことだ……あの恐ろしいオレンジプレイヤー達相手に、鍛冶屋の私が敵う筈もあるまい」

 

「笑う棺桶の連中による襲撃が、あなたによるものかは、彼に問い詰めれば分かる話ですよ?グリセルダさんの件に関しても同様です」

 

「レッドプレイヤーの言うことなど、信じるのかね?それは言いがかりにしかならないよ」

 

 グリムロックはここまで追い詰められてなお知らぬ存ぜぬでこの場をやり過ごす気らしい。

 

「彼女が死んだ時、指輪は私のストレージには残っていなかった。おそらく、彼女は指輪を装備した状態で殺害されたのだろう。残念だが、私は指輪の行方については一切知らない」

 

 想像以上に粘りを見せてくるグリムロックに、ソウジたちもどうするかと話し合おうとしたとき……

 

「待ちなさいグリムロック……証拠なら、あるわ……!」

 

 この場から立ち去ろうとするグリムロックにヨルコが声を掛け、グリムロックはヨルコの方を向く。

 

「グリムロック、貴方はこういう風に言いたいわけ?リーダーが例の指輪を装備していて、そのまま殺害されたから指輪はストレージ内に無かったって。でも、それはあり得ないの」

 

 ヨルコは、強い意志を秘めた瞳でグリムロックを睨みつけながら続ける。

 

「……リーダーの死後に、彼女が殺された現場には、殺人犯に捨てて置いて行かれたアイテムがあったわ。発見してくれたプレイヤーがギルドホームにそれを届けてくれた時、私達はこの墓標に遺品を埋めた。……あなたの容疑を決定づける、確たる証拠がここにあるわ!」

 

 ヨルコが確たる物証と宣言したものを取り出した。

 

「それって、もしかして……」

 

「永久保存トリンケット、ですね。マスタークラスの細工師だけが作り出せる耐久値無限という属性をもった大変珍しい保存箱です」

 

 ヨルコは二色の貴金属で出来た指輪を箱から取り出した。

 

「この金色の指輪は、ギルドの印章が入った指輪よ。そして……この銀色の指輪は、彼女が片時も左手の薬指から外すことのなかった、結婚指輪よ!裏側には貴方の名前が掘られているわ。この2つが、グリセルダさんが殺された現場に落ちていたってことは、彼女は両手にこれらを装備していたってことよ!違うなら、反論してみなさい、グリムロック!」

 

 それを聞いた時、グリムロックは衝撃のあまり硬直してしまった。

 

「なんでなの、グリムロック!どうしてリーダーを……奥さんを殺してまで、お金がほしかったの!?」

 

「金……金だって?」

 

 再起動を果たしたグリムロックの表情の変化に、その場にいた一同が戸惑いの表情を見せる。

 

「金のためではない……私は、どうしても彼女を殺さねばならなかった。彼女がまだ、私の妻であるうちに」

 

 グリムロックはゆっくりと語り始める。

 

「彼女は、現実世界でも私の妻だった」

 

 その衝撃的な事実に、その場にいた全員が息を呑み、驚愕する。

 

「一切の不満のない理想的な妻だった。可愛らしく、従順で、ただ一度の夫婦喧嘩もしたことがなかった。だが……共にこの世界に囚われたのち、彼女は変わってしまった」

 

 グリムロックが目を虚ろにしながら話を進めていく。

 

「強要されたデスゲームに怯え、恐れ、竦んだのは私だけだった。だが、彼女は現実世界に居た時より遥かに生き生きとし、充実した様子だった。あの彼女の何処にそんな才能が隠されていたのか、戦闘力も状況判断力も、全て私を上回っていた。その様子を間近で見ていた、私はようやく認めた。私の愛したユウコは消えてしまった。もう永遠に戻っては来ないのだと」

 

 そう言葉を発するグリムロックにはおぞましい程のどす黒い感情が煮詰まっていた。

 

「君達に理解できるかな……もし向こうに戻った時、彼女に離婚を切り出されでもしたら……そんな屈辱に、私は耐えられない。ならば……ならばいっそ合法的殺人が可能なこの世界にいるあいだにグリセルダを!……永遠の思い出のなかに封じてしまいたいと願った私を……誰が責められるだろう?」

 

 グリムロックの動機はあまりにも自分勝手で、開き直ったものだった。そんな狂気的なグリムロックに対しソウジは一人呟いた。

 

「妄言をのたまうのもいい加減にしろ、グリムロック」

 

 キリトの発した言葉は、聞いた者を震え上がらせる絶対零度の冷たさと、刃のような鋭さを宿していた。

 

 普段一緒にいることの多いソウジでさえ見たことのないキリトの様子に、その場にいたほとんどは命が握られているような感覚を覚えその場に固まるしかなかった。だが、その言葉によって己の根本を否定されたグリムロックだけは、怒りによって問いを発することができた。

 

「妄言……だと?私が言っていることが妄言だというのか!」

 

「ああ、俺ははそう言ってる。あんたはグリセルダさんのことをただの人形にしか見ていな。自分の思い通りに動くから可愛がる。自分が気に入らなくなったらそれを捨てる。あんたが愛していたのはグリセルダさんじゃなく()()()()()()グリセルダさんだ。貴方は抱いていたのは、結局ただの所有欲だ。そして何があろうと人を殺すことを決して許されないことだ」

 

 キリトの発言にグリムロックは何も返せなかった。

 

 やがて、元ギルドメンバーがグリムロックのもとへ歩み寄ると、ソウジ達に向かい合った。

 

「……ソウジさん、アスナさん、キリトさん。この男の処遇は、私達に任せてもらえませんか?」

 

「ああ、任せた」

 

「……頼むわね」

 

「お願いしますね」

 

 そう言って黄金林檎のメンバーは去っていった。攻略組のメンバーも合流しジョニー・ブラックの受け渡しも完了した

 

「今回の事件は色々と濃すぎたな。あー、めっちゃ疲れたな」

 

「二日も前線から離れちゃったわ。明日からまた頑張らなくちゃいけないわね」

 

「おい、ソ「そうですね。週末までには、今の層は突破したいところです」ってなー」

 

 こうして圏内事件は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の異常性が垣間見えたと思います。

感想お待ちしてます。
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