ソードアート・オンライン ー浅葱の剣聖ー   作:狂華翠月

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さっきチラッと見てみたらお気に入りが増えていてびっくりしました。登録してくれた方ありがとうございます。

自分の理想とする戦闘描写が出来ず苦悩する自分が存在する。それではどうぞ。






第八話 討伐戦

 

 

 

 

  2024年8月某日

 

 

 アインクラッド攻略は67階層まで進んでいます。そんな中私はキリトと第56層の《聖竜連合》の本部に来ていました。

 

「あっ!キリト君、ソウジ君、もう来ていたんだな!」

 

「お久しぶりです。ディアベルさん、お元気そうで何よりです」

 

「元気そうで良かったよ。あれからギルドはどうだ?」

 

「おかげさまでなんとかやってるよ」

 

 向こうからディアベルがやってきて、ソウジたちに声をかけてきた。ディアベルは第1階層のことがあって以来、トラウマによってフロアボスとは戦えなくなっていた。しかし、ギルドの長として指揮能力や後方支援などの方面で力を発揮していた。

 

「ディアベル……解放団もこの討伐戦に参加するのか?」

 

「ああ。俺たちも殺人ギルドの被害は見逃せないからな」

 

 現在、『軍』と名乗っていたギルドは、今は大きく二つに分かれました。ディアベルを始めとしたメンバーで構成された、良心的攻略ギルド、『解放団』。 一方、強硬派で有名なもう一つのギルドは今も『軍』を名乗っています。今やほとんどのプレイヤーが解放団に所属しており、軍に所属するプレイヤーの方が少ないです。その他にも攻略ギルドやトッププレイヤーパーティー、《血盟騎士団》のメンバーも来ており、その中にはアスナの姿もありました。

 

「全員揃ったな!これより、《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》討伐作戦会議を始める!」

 

 そう言って、後に惨劇と称される作戦の会議が始まった。

 

「………以上が特に《笑う棺桶》の重要人物であるリーダーのPoH及び幹部の赤目のザザの特徴と戦闘スタイルだ。各自充分に気をつけたうえで人数有利をもって臨め。奴らは人を殺すのに慣れているだろう、油断はするな」

 

「《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》は下層にある洞窟を拠点にしている。明朝、奴らが寝静まっている時を狙い、周囲を包囲してから内部に突入する。恐らく激しい戦闘になるだろう。奴らを出来る限り捕縛して黒鉄宮にぶち込む。それが主な作戦内容だ」

 

 こうして作戦会議は終わりを迎え緊張が部屋を包みました。幹部プレイヤーはそう言い、最後に作戦開始時刻を伝え、去って行きます。そこから、集まったプレイヤーたちは討伐作戦に備え、装備を整えたり消耗品の補充に向かっていきました。

 

 皆さん不安そうですね、まぁプレイヤー同士で戦うなんて攻略組の人にはあまり経験がありませんよね。私の体得してる剣術は斬り合いがゴリゴリにメインですから……もし最悪そうなった場合は………なーんてことにないことを願うばかりですが。

 

 これから迎える戦いに少しの胸騒ぎを覚えつつもそれを押さえつけ自分も装備の確認を行っていきます。

 

 

 

 作戦会議を終え、《聖竜連合》の幹部がポーチから回廊結晶を取り出した。回廊結晶とは転移結晶と違い任意の地点を登録することでその地点を出口に設定できるアイテムで、また、ショップでは売られてなくモンスターからのドロップや宝箱からしか手に入れることの出来ないレアアイテムです。また、回廊結晶は転移結晶と違い何人でも輸送が可能という利点も存在します。

 

「コリドー・オープン!」

 

 結晶が砕け散り《笑う棺桶》が存在する階層へのダンジョンに通ずるゲートが開いた。最初に《聖竜連合》が入り、次にアスナを筆頭に《血盟騎士団》が続く。次にキリトや、クライン率いる《風林火山》や高レベルプレイヤーによるパーティーが続いていく。そしてソウジは最後尾の守備を任されることとなったので一番最後に入ることとなった。ソウジはプレイヤーたちとともに《笑う棺桶》がいるとされるダンジョンに向かっていく。誰もがどこか緊張した表情をしている。そうして一向は《笑う棺桶》がいるとされる洞窟に辿り着いた。

 

「ここが情報の場所だ。諸君は戦闘の用意をしてくれたまえ」

 

 こうして皆さんの準備が整い、突入の態勢を取む。そして

 

「かかれぇーー!」

 

 という合図と共に洞窟に雪崩れ込む。しかし、中には人の気配が感じられなかった。

 

「おいおい、入ってみればただのもの抜けの空かよ」

 

「悪名高い《笑う棺桶》様もビビって逃げちまったかー」

 

「心配して損したよ」

 

 各々が直前の緊張もあってか空気が緩み始める。そんな状況にソウジは顔を険しくさせ

口を開く。

 

「皆さん、こr」

 

「キャッァァーー!」

 

「い、いったいどこから!レッドプレイヤーが!」

 

 密閉空間である洞窟の中に次々とレッドプレイヤーが()()してきます。幹部メンバーなどが指揮を取っていますが半数以上のプレイヤーは混乱に陥っていった。このままでは戦闘になるかすら怪しいだろう。

 

 ───躊躇いなんて必要ないですね

 

 キリトやアスナが手を染める必要なんてありはしない。そもそも私が逃げに入った彼らを仕留めきれなかったからこの作戦が行われたのですし。…そもそも私みたいなものが彼らと関わりあっていたのがおかしかったんでしょう。

 

 ──後はただ刀を振るうだけ

 

 

 

 

 

「キヒッヒ!」

 

「ぐっ!」

 

 突然のレッドプレイヤーの奇襲に押されて、防戦一方になっているプレイヤーがいた。焦りで上手く体が動かず少しずつ体が切り付けられていく。この世界での生死を分けるただ一つの絶対的な指標であるHPバーが削れて行く。緑から黄色に、そして赤へ。

 

 自分の命が徐々に擦り減っていく様を冷静に捉えることができなかった。今ここで死にたくない。どうやっても生き残ってやる。そんな生への希求が、死への逃避が体を鈍らせていく。体が力みいつも通りに動かない。如何したって人間の悪性をこれでもかと撒き散らす殺気に体が竦む。そうして幾度か剣撃が交わされた後、敵の攻撃をいなすことが出来ず自分の得物が弾かれた。

 

「なぁ、今どんな気持ちだ?おい、教えてくれよ?」

 

「く、来るな!」

 

 ああ、これで終わりか。そんな声が自然と出てくる。自分のHPバーは僅か数ミリといったところ。それなりに健闘したつもりだがそもそも前提が違ったのだ。自分たちはこの作戦のことを心のどこかで試合のようなものだと思っていたのだ。この世界の悪人や犯罪者を正義の名のもと叩き潰そう。そんな薄っぺらい動機でデュエルの延長線上程度にしか捉えていなかったのだ。

 

「ま、終わりだ。精々いい顔見せてくれよ」

 

「ヒッ!」

 

 余りにも気が抜けすぎているとしか言いようがない。あちらは最初から()()()を望むような異常者の集まりだというのに。今更遅すぎる認識の訂正を行いながら、顔面に迫りくる剣を眺めるしかなかった。最後に見るのがこんな人格から歪み切ったような笑みになるとは。恐怖で凝り固まった体は動かすことすら叶わない。

 

「それj────

 

「………え?」

 

 見たくないもない人の業を煮詰めこんだような顔は一瞬の静止ののち、言葉を最後まで紡ぐこともなく宙を舞った。目の前で起きたことが受け入れられず喉から掠れた声が捻り出される。そして血を思い起こす真っ赤なポリゴンエフェクトとして溢れ出て肉体(アバター)が散っていく中、この事態を引き起こしたであろうプレイヤーに目が向かう。

 

 黒袴を同色の腰巻きで締め上げ、白の襦袢の上に浅葱色の羽織をかぶり首の周りは黒い襟巻きで覆われている。特徴的な服装からあの《神速》だと分かった。

 

「斬り合いの最中に気を散らすようなバカで助かりました」

 

 だが、そんな命の恩人と称するべき人物に対しても礼を告げることはなかった。いや、できなかった。彼の表情は本来人が備えるべきものをすべて置き去っていた。彼の顔からは何一つ感情を読み取ることができない。その無機質な在り方はもはや人と呼ぶことさえ危ういものだった。

 

 そんな、彼に自分は恐怖していたのだ。理性では自分を斬ることはない、味方なんだという判断を下している。しかし、そんなちっぽけなものはあっさりと人という獣が持つ本能によって呆気なく覆される。──自分(弱者)の命を脅かす根源的な恐怖(強者)というものに。

 

 そんな間にも彼は無表情を一転させて、貼り付けたような笑みを浮かべながらこちらに向き直る。この剣戟を打ち合う音が響くこの空間で日常を思い起こす無邪気さを含むようなそれは余りにもアンバランスであった。腰も抜けてまともに動かない体を必死に捩らせ後ずさる。

 

「大丈夫ですか?」

 

 こちらを気遣うような台詞が述べられる。ありがとう、助かった、そんな当たり前のことを告げるだけでいいはずだ。なのに空虚な質感を伴ったそれは先程の光景と共に自分の正常な判断機能を蝕んでいく。

 

「………ち、近寄るな!」

 

 出てきたのは自分の身を案じ、恐怖を遠ざけようというもの。仮にも命の恩人にこんなことをぶつけた自分が嫌になる。それでも恐怖に支配された体から吐き出された言葉は戻らない。

 

「……そうですか、では」

 

 そんな自分の対応に何一つ顔色を変えることがないまま彼は去っていった。

 

 

 

 

 戦場は地獄絵図と化していた。殺すか、殺されるか…奪うか、奪われるか、そんな異様な有様にキリトもアスナも、全員がその空気に呑まれていた。そんな戦場を私は駆けずり回る。どんなことがあろうと私は足を止めるわけにはいかない。

 

 

 ──一体何のために剣を振るうんですか?

 

  目の前の人を救うため。

 

 ──そのために人を切り殺すと?

 

  ええ、必要とあらば。

 

 ──救うために殺すとは随分と身勝手ですね

 

  自覚はしています。

 

 ──結局自分の都合で殺す、それじゃあの人らと変わらないじゃないですか

 

  大した違いはありませんよ。

 

 ──否定はしないんですね

 

  戦場に事の善悪なし、ただひたすらに斬るのみですよ。てか、斬った時点で同類ですし。個人の主張主義なんてそれこそここじゃ何の意味も持ちません。

 

 ──それに自分にはここが相応しいって薄々感じてるんじゃないですか?

 

  ……そうですね、(これ)は私の唯一の取り柄ですし。

 

 ──こんなんじゃ周りは一体どう思うんでしょうね?

 

  ま、()()()ですからねー。想像はつきますよ。

 

 

 脳裏に思い浮かぶのは、激動の時代を駆け抜けた一人の侍の記憶。それは一つの幻想(ファンタズム)ながらも私の中で息づく確かな存在。それは敵を切り捨て、粛清による仲間同士での闘争で血まみれになりながらも進み続けた、人としてありながら人ならざる刃を身に宿し人斬りと称された一人の人間の人生。

 

 

  「お前を血祭にしてやるぜ!消え───

 

 

  ──速く

 

 

  「死ね!死n────

 

 

  ──速く

 

 

  「殺せ!皆殺しd───

 

 

  ──速く

 

 

  「な、なに───

 

 

  ──速く

 

 

 ひたすらに首を切り飛ばして、胴を一刀両断して、心臓を切り裂いて。かの剣士の動きをなぞりつつ刀を振るう。助けられたプレイヤーから送られる目線に気にすることはない。

 

 自分でも自覚している俊敏性を活かしてただ敵を切り捨てていく。投降してくるプレイヤーは他人に処理を任せひたすらに刀を振り続けていく。

 

 人を助けるために人を殺す……その矛盾に満ちた行いも終わりが見えてきたところで、上から人が飛び降りてきて来たことを察知する。降り下ろされるエストックをすぐさまバックステップで回避しつつザザに向き直る。

 

「また、会ったな、待っていた、ぞ、ソウジ!」

 

 ザザから憎悪のこもった声で呼び掛けられます。

 

「ええ、あの時以来ですね。───では、速攻でカタを付けましょうか」

 

 ザザと言葉を交えた後、互いの剣が激しくぶつかり合い、閃光が散る。ザザの刺突を全ていなしながら、腕や足を狙い、刀を振ります。

 

「お前の、戦場を、駆け回る、際の顔、特にその、()()()()()()()()()()()()()()()()、目は、実に見もの、だったぞ」

 

「随分とどうでもいいこと見てるんですね?暇なんですか?」

 

「……お前には、恐怖や、高揚……感情の、ような、ものは、感じられ、なかった。殺意しか、感じ取れない、戦い方……まるで、()()の、ような、お前には、この俺も、恐怖せざるを、得なかった…お前は、そちらに、いるべき、人間では、ない!」

 

「そうですか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    それじゃさっさと斬られて貰えます?」

 

 

 

 

 

 明らかに前回の彼と比べても速さ、膂力、立ち回り、鋭さ、何もかもが優れています。何らかの訓練をずっと行ってきたのでしょう。ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 会話を打ち切った瞬間ノータイムで首めがけて放たれた一閃を合図に二人は刀身を打ち付け合う。ザザは少しずつソウジの刀を避けきれなくなり攻撃が頬や脇腹に赤いラインを残していきダメージが蓄積していく。目まぐるしく降り注ぐ剣戟を前に、ザザが攻撃に転じる余地はすぐになくなった。

 

 今や防御姿勢と苦し紛れの後退でひたすらに凌ぐばかりだ。反撃のチャンスさえ見いだせないと、このままではマズイと判断したのかザザは言葉で動揺を誘ってくる。鍔競り合いから、いきなり力を抜き、態勢を崩して単発ソードスキルでザザを斬り付ける。

 

「くそ、なぜ、おまえは!」

 

「別に強くなるのは貴方だけの特権ではありませんし。それにここに慣れているのがあなたたちだけとは限りませんよ」

 

「!…そうか、ならば、お前を、ここで殺す」

 

 今の発言が琴線に触れたのか、ザザはリニアーを放ってきました。下級のソードスキルではありますが、ザザのレベルとシステム外スキル《スキルブースト》を以ってすれば、それは《閃光》にも匹敵しかねない速さとなります。重い一撃をもらうのを覚悟で私に一撃を入れに来ましたか……が──

 

「これで……終わりです!」

 

「これ、は!」

 

「貴方は暴れられると危険なので念の為、麻痺状態になっていただきます」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()すぐに踏み込みを行い、ザザのリニアーに初速が乗る前に柄で受け止めソードスキルを中断させた後、すぐさま短刀に武器を持ち替えて腕に刺しザザを麻痺させました。

 

「なぜ、おまえの、ような、やつが、そちらに」

 

「…………」

 

「…おま、え、に、いつか、地獄を、見せ、て、やる」

 

「そーですか、期待せずに待っておきますよ」

 

 こうしてザザは私に言い残しつつ他の攻略組メンバーに引き取られました。戦闘は既に終わっており捕縛したレッドプレイヤーは丸ごと《黒鉄宮》に転送されました。結果的に攻略組の死者は7、レッドプレイヤーの死者は28。そのレッドプレイヤーの半分以上が私が手をかけた者です。

 

「ふー、これでようやく片付きましたね」

 

 全てが片付きひと段落ついたところで辺りを見回す。

 

 

    ──お、おい、あいつ……

 

 ──……そんなに殺す必要あったのか?

 

      ──レッドプレイヤーと対して変わらねぇじゃないか

 

  ──……まさかあいつも……違うよな?

 

 ──……予想はしていましたけどね。

 

 

 周囲から送られてくる視線は犯罪者を弾劾するものとするものと何ら変わりはない。まぁ、私が人斬りであることには違いない。レッドプレイヤーであろうと人を殺したのは紛れもない事実ですし、人殺しを忌避するのはヒトとして正しい判断なのだろう。そんな険悪な空気の中、二人が声を上げる。

 

「ちょっと聞いてくれ!ソウジは別に彼らを殺したくてそんなことをやったわけじゃ!」

 

「そ、そうよ。どうしても攻略組の人を助けるためにやむを得ない状況でしか!」

 

 私を庇うような発言をした二人は確かに私を思ってくれているのだろう。そんな二人に体を向け顔に笑顔を浮かべながら感謝を伝える。

 

「キリト、アスナ、ありがとうございます。ただ、彼らの言ってることは実際事実ですから。あの人たちの反応はいたって正常だと思います。私が人を殺したのには変わりありませんし」

 

 その言葉を放った私にし対して二人の体が小さく震える。目に前にいる人物がどうであれ人を殺めたということを突き付けられたからだろうか。

 

「ソウジ……」

 

「御二人とも別に私の心配なんかしなくていいんですよ。士気の問題もありますし、余り私の矢面に立つのは良くありません。取り敢えず此処からは暫くの間離れます」

 

 そう言うと二人とも表情を暗くさせます。本当に二人とも優しいですね。こんな(もの)を心配する必要なんてありませんのに。

 

「じゃ、それでは」

 

「「…………」」

 

 二人の瞳には困惑、恐怖、悔恨といったものがない交ぜになっている。おそらくここに自分がいても彼らを不快にさせるだけだろう。そう考え体ごと向きを変え足を動かし始める。

 

「おい、ソウジ!本当に戻ってくるだろうな!」

 

「ん-、どうでしょう」

 

 私の足を止めるかのようなタイミングでクラインに声を掛けられる。

 

「……分かった。それでも俺たちはいつでも待ってるからな!」

 

「……ええ、では」

 

 そうして攻略組の一団から私は離れていく。後ろを見る気にもなれずひたすらに駆けて行った。

 

 

ー22階層の拠点にてー

 

 そこまで全力で動いているわけでもないのに息切れを起こす体を動かし、拠点に辿り着き中に入ると同時に床に座り込む。

 

「今日はちょっと疲れちゃいましたねー」

 

 特に誰かに聞かせるわけでもない言葉を吐き出す。

 

「そんなに私が好んで人を殺しているように見えるんですかね……まー、ぶっちゃけ仕方ないところはありますよね。別にやりたくて殺したわけでは無いんですけど……」

 

 とりとめもないことを呟く。そうした後、一息ついてから自分の手のひらを宙に掲げて見上げる。

 

 この手は既にどす黒い赤で汚れきっている。あの時の自分は他人からどう見られていたのだろうか。まあ、あんな目を向けられていたのだし《笑う棺桶》なんかよりもよっぽどたちの悪いものだったのだろう。

 

「人が殺すのが楽しいなら私はとっくに《笑う棺桶》に入ってたと思うんですけどね……」

 

 思っていることを再び口から吐き出す。どうやら自分は人に手をかけたことに対して何とも思っていないらしい。この世界であるからそうなっている、というわけでもないだろう。そんな私でも周りからの目を気にしたり自分のことを嫌悪する程度の情緒はまだ残っているらしい。

 

「どこまで行っても人斬り……ですか。人を斬ってもなにも感じない()()ですし」

 

 感情の揺らぎすら見せずただ人を斬っていく。おそらく人が見て気持ちの良いものではないだろう。刀としての機能以外を削ぎ落としたような自分は。

 

 ──死んだから死んだ。死んでないから生きた。

 

 そんな感想しか浮かばない自分。壁にもたれ掛かりながら床に座りこみ、いつもと何ら変わらない血に濡れた手を見つめながらぼそりと呟く。

 

「やはり、ここでも私の居場所はないんでしょうか」

 

 確かにアイツの言うように私は碌なものじゃないでしょう。それにこの世界には……

 

「だとしても、こでいつまでもぐだぐだしているわけにはいきませんし。………約束もありますしね」

 

 ただいつまでもグジグジしているわけには行きませんし、何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この身が朽ちるその時まで私は進み続けなければならない。

 

 この光の差し込まない薄暗い部屋の中に浸っていたいと思うことも許されない。

 

 

 

 

 

 

 ──こうして《笑う棺桶》討伐は犠牲者を生み出しながらも攻略組の勝利に終わった

 

 

 

 

ー67階層の攻略会議にてー

 

 

ーキリトsideー

 

 

 67層の攻略戦が行われる。しかしこの場にソウジはいない。あいつが攻略会議に来たときに一部のプレイヤーが叫んだからだ。

 

「人殺しめ!なんで消えねぇんだよ!」

 

「殺人鬼が、ここに顔を出すんじゃねぇ!!」

 

「《大量殺人者》のくせに何そんな顔して戻ってきてんだ!牢屋にさっさとぶち込まれろ!!」 

 

 そんなことを言った奴らは討伐戦には参加していないプレイヤーだった。あの戦いのことは誰も自分たちから話そうとしないだろうから、憶測やデマといったものが広まりやすい。死亡数や捕縛数といった数字でしかあの戦いを知らないのだ。その心もない誹謗中傷を聞いた討伐戦に参加していたプレイヤーは彼らを咎めようとしたが、ソウジの動きの方が早かった。

 

「それは事実ですね。まあ、あちらが斬りかかってきた以上はこちらも手を緩める理由がありません。私は犠牲を最小限に収めるために動いたつもりですが」

 

 こうしてソウジが放った言葉に辺りは静まりかえる。皆が我に戻った後、悪罵の声を発した連中はただちに退出させられた。

 

「やはり私は……」

 

 そうぽつりとつぶやいたソウジの言葉は俺の耳にしか入らなかったようだ。そこにはさっきの言葉に傷ついた様子はなく、自分たちに迷惑をかけて申し訳なさが含まれていた。

 

 そんな様子に、ソウジがどんな人物なのか俺の中でつかみ損ねていた。どこか達観した様子や、いつもの彼とその冷徹さを見せた彼が予備動作なく切り替わる様は正直に言うと若干の恐怖を感じた。今までの俺が関わって来たソウジも嘘ではないのだろう。だがそれがあの討伐戦の時のソウジとはまるで結びつかない。

 

 それでもアイツは俺の友達だし事情もある筈だ。過去に何があったのか。俺たちはそこに触れることは今は出来ない。それでもソウジに寄り添おう、そう心に誓った。

 

 

 

 

 

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