あべこべ世界でゲームを作ろう!   作:蓮太郎

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11 がおー、だよ

 

 『めざましの刻』、一世を風靡した『悪霊の館』作者である『スリップ工房』最新作である。

 

 最初に公開されていたPVでは女4人の勇者パーティが相手を意のままに眠らせ倒さない限り目覚めない凶悪な魔法を使う魔王を倒す物語だった。

 

 どう見ても単純、かの有名な酢ポン酢酒と呼ばれるイラストレーターやケイ・カンパニーが関わっているとはいえフリーゲームとして発売されている以上、おそらく試験的で幼稚な物と考えられている。

 

 絵も音楽もRPGとしてよくあるもの。『めざましの刻』というタイトルに恥じぬ魔王と対峙するPVだった。

 

 ただ、登場人物が魔王以外全員女だった事で落胆の声が生じる。

 

 魔王はモヤがかかった人形で正体不明の存在、街中にいるのは女商人や村娘等徹底的に女性しかいない。

 

 男が出ないことに不満を見せるコメントが多く寄せられているが、『悪霊の館』を輩出した『スリップ工房』が本当にそれだけで終わるのだろうか?

 

 考察やゲーム内に残されたメモで大まかな背景が見えてきたことで発覚した鬱要素。

 

 『悪霊の館』の正体が虐げられていた男性の怨念という社会的にクリティカルなダメージを与えていたのだ。 

 

 そういった皮肉要素によって数日寝込む者も数知れず、性欲のままにプレイして冷静になった後に真面目にプレイした者どもの心を折った。

 

 何か無いはずはない。ポップなPVと裏腹に恐ろしい何かがあると勘のいいものは察していた。

 

 好奇心は止められない。もしかしたら隠しボイスで男の子の声が入っているかも知れない。

 

 そうして配信してすぐインストールするものは続出。

 

 一時は『スリップ工房』のサイトが落ちるほど集中した上に製作者がそれを解決できず泣きを入れて寝るという旨をSNSに投稿して起きろコールが起きたのは言うまでもない。

 

 それはそれとして、運良く最初にインストールした人がSNSで『いえーい、乗り遅れたやつ見てる〜?』と煽りながら投稿したが、その後約1時間もの間、SNSに浮上しなかった。

 

 そして、その次に呟かれた台詞はこれであった。

 

『だめ、たおせない』

 

 『めざましの刻』を始めた女性はこの言葉の意味をすぐ知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

「ウェイル、分かってたけどさ?キャラクターの絵を描かせてもらったから先行でプレイさせてもらった身から言うけどさ?」

 

『…………言いたい事は分かりますわよ』

 

「モンスターに子供が、男の子が声当てるのは正気と思えないよ?」

 

『分かってますわよ!ええ!これ事後承諾で作られてギリッギリまで黙っていたんですわよ!?」

 

「だよねぇ。あそこから別のとこに声仕込まないと行けないし、割と頑張って録ってるよねこれ」

 

『10種類を入れて作り上げる手腕は幼いながら恐ろしい才能と思いますわ』

 

「本人は奇声上げてるつもりだろうけど、分かっちゃうよね〜」

 

『加工も入れてましたけれど、あってないようなものですわ…………』

 

 『スリップ工房』ことスウェン・ケイの姉ウェイルと協力者酢ポン酢酒ことアンリエッタ・シュバリエ。

 

 内容のほとんどはスウェンの自主性を重んじて、何かやらかすと思いながらも、特に修正等なしに進ませてることにした。

 

 それが何を考えてモンスターに声を当てるなど思いもしなかった。

 

「普通は王子様とかさ、商人とかやるもんだと思ってた」

 

『せめて大トリに出ると思ってましたわ。「悪霊の館」は悲鳴だけでしたが、奇声で攻めてくるとは…………』

 

「でもさ、これ子供が演技してるって感じはあるけど子役が本気でやってる感じもあるよね」

 

『演技力も磨いてたのでしょうね。いえ、動物の演技が上手くなるのもどうなのかと思いますが…………』

 

「断末魔も収録とは恐れ入ったよ」

 

『それですわよ!問題なのは!』

 

 『スリップ工房』名物の悲鳴まで入っていることもある意味問題である。

 

 モンスターの子供っぽい奇声に断末魔、子供が作っているというのが分かると同時にプレイする手が止まる人が続出した。

 

 貴重な性対象である男を擬似的に殺して強くなるコンセプトになっているというスウェンが意識しているかどうかわからない事をしている。

 

 恐らく分かってやっているのだと思われるが、SNSで人の心がないと言われている始末である。

 

「これに意味があるって最初に知らされてないと戦えないよねぇ」

 

『心を鬼にして戦わないと行けないから勇者なのでしょうね』

 

「これ酷だろうな〜。何も知らない人の苦しみを楽しむって愉悦だったりする?」

 

『知りませんわよ。私は低俗な輩ではないので』

 

「風俗利用したことない人が言うと違うね」

 

『だぁれが処女は小学生までですわ!?』

 

「なんか変な感じになってるって。までですわ、は分からないって」

 

 からかわれて変な語彙になってしまったウェイルに苦笑いしつつ、アンリエッタは『酢ポン酢酒』としてのSNSアカウントを開く。

 

「うーわ、こっちにもダイレクトメール(DM)爆弾来てるわ。どうやって関わったとかさ、裏知ってるなら教えろって」

 

『守秘義務は分かってますわよね?』

 

「まだ私も社会的に抹殺されたくないからね。あ、でもこの件で他のところから干されたら専属で雇ってくれる?」

 

『考えておきますわ』

 

 関係者だからこそ秘密を教えろと聞いてくる輩は数知れず、それを教える義理も無いとアンリエッタは全て断りを入れた。

 

 通話していたウェイルに釘を刺されながらも、彼女は仕事とは別の絵を描いていた。

 

 それは自身がデザインしたモンスターの擬人化である。

 

 ショタが奇声を上げてるとはいえ子供らしさが残るそれを、ショタとして描き直し自身で使用するためである。

 

「げへへ…………いいもん提供してくれたなぁ。持つべきものは親友!」

 

 友達の弟をオカズにするという背徳感を感じながらも自身だけの欲望に忠実なのは、誰にも変わらぬサガであった。

 




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