怒られないかチキンレースします。
「……………………んあ?」
目が覚めた。温かいものの上で、妙に爽快な気分だった。
そう、滅茶苦茶激しい運動をして疲れ切った体を睡眠で全回復させたような気持ちがいい目覚めだった。
なんでこんないい目覚めをしたんだろう?というか、何で疲れてたと思ったんだろう?
そして、今僕は『誰』の上に居る?
明らかにベッドではなく、複数人が横たわる身体の上で僕は寝ていたのだ。
誰の上に?
メイドと、ロウル姉さんとルゥ姉さんだ。
その周りには他のメイドさん達とウェイル姉さんに母さんまで居る。
うん、全員見事なまでに肌色だ。
そして僕も肌色だ。
…………昨日何したっけ?
確か歌ってたらメイドさん達が集まってきて路上ライブ状態になって、姉さんたちが帰ってきたと思ったら、昔取った杵柄かなにかで買ってたらしい楽器を持って来て演奏し始めたんだ。
そこから滅茶苦茶大盛り上がりして、僕が暴走して上を脱いじゃって…………
それでみんなの元へ飛び込んで…………
………………………………たぶん、やらかした。
いいのか?倫理観皆無だがいいのか?家族でもこういう話題は全くでないとはいえいいのか!?
この世界の歴史を紐解けば男女の交わりに血筋は関係ないとされてる記載は珍しくはないとはいえ、いや、さ、男女比が1:200の割に人口が40億まで成長できていることがその証明にちかいけどさ!
純粋な交わりだけじゃなくて体外受精という科学が進歩したおかげで今までは苛酷な肉体労働が自慰行為だけで済むようになっただけ相当マシにはなっているだろうけども!
ダメだ、現実逃避はできない。僕はやったんだ、勢いとノリに任せてやってしまったんだ。
ここから何人産まれる…………そういうことも後回しだ。今は確定したわけじゃない。
頭痛の種が出来てしまったことは、いずれなる事が先に来てしまったと前向きに考えよう。
僕だって男の子だ、そういうことに興味がない訳じゃなく、起きるべくして起きた。
それにしても窓の外が明るいな。客室は日当たりがいいのは相場だけど、こんなに明るかったっけ?
時計は…………とっくに10時を過ぎていた。夜遅かったから随分寝てたんだなぁ。
あれ、今日は平日だったはず。
僕は毎日が休日みたいなものだけど、母さんや姉さん達、メイドさん達は違う。
職場で働かなければいけないし、学校にも行かなければならない。
つまり、今はほぼ確実に大遅刻という訳で。
「マイクマイク…………」
僕は幸せそうに眠っている姉やメイドさん達を踏みながら昨晩使っていたマイクを探す。
スピーカーへの接続はルゥ姉さんがやってくれていたので電源さえ入ればいつでも大声が出せるのだ。
部屋の隅っこまで転がっていたマイクを見つけ、僕はそれを持ち電源を入れた。
そして…………
「ぼえーーーーーーーーーーーーー!」
あえて汚い声を出し音割れも発生させて叫んだ。
大音量が響き渡ったことで皆飛び起きる。
叫んだ僕もちょっと耳が痛いくらいだから、寝起きに爆音を聞かされた皆んなは心臓バクバクしてそうだ。
なになに!?と皆キョロキョロと辺りを見渡したところで僕はこほんと咳払いをするふりをしてみる。
そうすると1発で僕に注目が集まる。
「ただいま10時25分です。昨日のことで浮かれずに、今日も一日がんばろー」
我ながらわざとらしい棒読みだった。
自慢のぼっちゃまが何言ってるのか分からないという顔をしていたが、次第に始業時間や登校時間がとっくに過ぎていることに気づいていき顔を青くしていく。
怖いなー、社会人になると遅刻が怖いなー。前世の僕もそういう時期がありました。
「やっ、やばい!学校完全に遅刻ってレベルじゃない!」
「業務っ!業者が今日来るのに何も準備してない!」
「みんな体を綺麗にして!朝ごはんの準備!」
「あわわわわ、遅刻は減給になるのにぃ!」
「…………もう大学いいや。サボろ」
「かっ、会社に連絡を!事情があって遅れますわと誰か連絡入れてくださいまし!」
「もう商談の時間!?10億の商談が飛んじゃう!?」
バタバタと皆一斉に、いや1人完全に諦めの境地だけど、慌てて動き出す。
凄い光景だ。全員スタイルいいからすっごい揺れてる。何がとは言わないけど揺れている。
そういう僕も全裸のままだから服を着ないといけない。
僕だっていつまでもプラプラさせる訳にいかないのだ。
こっそりと僕の服を探そうとしたが、誰かが持ち去ったようで見つからなかった。
仕方なしに僕は何かあった時のために仕舞ってある服に着替えるため自分の部屋に戻るのであった。
〜●〜●〜●〜●〜
これはとある神様のお話である。
あるところに命を司る神と死を司る神がいました。
相反しながらも結びつきが強く離れることができない二柱の神は仲がとても悪いのです。
とある事を巡って喧嘩を繰り返す毎日でしたが、とうとう死を司る神が激怒しながら言いました。
「これから私は引きこもる。そして毎日1000人の男の命を奪う」
「ならば私は1500人の人間を…………待て、片方だけを狙うな」
命を司る神の言葉を聞かずに死を司る神は引きこもり、宣言通り毎日1000人の男が死ぬよう呪いをかけました。
命を司る神も負けじと生誕を調整しましたが、命は全て平等であり性別も平等にしなければならないのです。
そんな中で1500人と言わずもっと生まれるペースを早めたのですが、やはり男が減る数の方が多く、人口比が大きく歪んでしまったのです。
ただでさえ男が産まれ辛いというのにこの仕打ち。流石に命を司る神も音をあげて死を司る神に懇願しました。
死を司る神はその態度に満足はしていましたが、しばらくそのままにしようと考えて放置しました。
彼らは神です。人の子と生きる時間が大きく違うのです。
ようやく引きこもりを脱した死を司る神が事の大きさに気付いたのは数千年後でした。
まだ科学が発達していないその時代の男は貴重品であり、数人動かすだけで利益だけでなく国すら動かせる行事になってしまっていたのです。
体外受精もない時代、子作りは1人で何百、何千と女の相手をしなければならない過酷な労働とされ丁重に扱われながら酷使されていたのでした。
死を司る神は思いました。
『たぶん、やらかした』
科学が発達した今こそ過酷な労働となる子作りは殆どなくなりましたが、逆にそういった仕事をせざるを得なかった故に優遇されていた男は一箇所に集められ精を出す仕事のみになってしまったのです。
皮肉な事か、楽になった分だけ人ではなくおもちゃのような扱いをされてしまうのです。
男達が慰み物まで堕ちてしまった現状を憂る命を司る神は、現状を打破するべく一人の男の魂を異世界から呼び戻しました。
生きていれば世界に多大な影響を及ぼす筈だった若き魂を転生させ、代わりに世界のあり方を少しでもいいから変えてほしいと。
彼は二度目の人生ならと軽く了承し、命を司る神は彼の助けになるよう特典を与えた。
ただ、彼が望んだのは『あらゆる音を出せる声』だけであった。
流石にそれだけでは後が大変だろうと命を司る神は気を利かして『自身の精神状態を他者に反映する見えぬオーラ』と『絶倫』を与えた。
ゲームを作りたい彼に落ち着いた環境を与えねば支障が出るだろう、彼が落ち着いている限り周囲も落ち着く力を授けた。
『絶倫』に関しては将来的にたくさん子供を作ってもらわないと困るのでついでに与えたという感じである。
こうして救世主になりうる男を送り出した命を司る神だったが、いくつかの誤算があった。
彼は二度目の人生のせいか精神的に無敵になっていた事、鬱やホラーばかり作る才能を元々有していたことを。
既に数多の人間の心にダメージを与え、家族含む館内にいる人間を性的に食らった少年をライブ中継で見ながら命を司る神は言った。
『たぶん、やらかした』
この後に死を司る神と彼、スウェン・ケイについて再び大喧嘩を始めるのであった。
感想を頂けると励みになります。