あべこべ世界でゲームを作ろう!   作:蓮太郎

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24.じゃぶじゃぶ

 

 チュンチュンと雀っぽい鳥の鳴き声が部屋に届く。

 

 窓の外を見たら既に太陽が上っており朝を迎えたことが分かる。

 

 よく眠れた、とっても良く眠れた。久しぶりにぐっすり眠れた。

 

 ここ最近は乙女ゲー作るために夜なべしてパソコンと向かい合ってたから少しスッキリした気がする。

 

「んふふ…………坊ちゃまぁ…………」

 

 横でだらしない顔をしながら寝てるメイドさんの事を気にしなければ良い朝だったかもしれない。

 

 …………色々と酷くない?

 

 寝るのを疎かにした僕が悪いよ?それは前提として、パソコンの代わりに子作りさせて体力消耗させて寝かすって力づく過ぎじゃない?

 

 それで寝られちゃってる僕も大概だけどさぁ!

 

 これで僕のスケジュールに入浴が1日1回から2回と追加される訳で。

 

 身から出た錆ではあるんだけどさぁ、メイドさん達のスケジュールにも僕との夜の時間を組み込まれるって言ってたし回避のしようがないんだけど?

 

 それに、このペースで皆を妊娠させたらさせたで人手が足りなくなるんじゃないか?

 

 妊娠したら休みを取って出産しなきゃいけないし、子育てのための育休とかも取らなきゃいけない。

 

 いや、そこは外部から新しくメイドを雇って何とか回していくのかな?

 

 だとしても相当お金も飛ぶし、いや、何なら保育所を敷地内に作る可能性がある。

 

 母さんならやりかねない。暴力と財力に関しては超一流だからそういう事はやる。

 

 そうして僕は子供達に囲まれて…………

 

 おかしいな、まだ成人してないのに子持ちになるのイメージがつかない。

 

 もう止められない事だけどね。

 

「んぁ…………おはようございます、坊ちゃま」

 

「うん、おはよう。もう9時すぎてるけど、どうする?」

 

「…………もう1発、昨日の『シチュエーション』の続きは出来ますか?」

 

「いいけど仕事は大丈夫?」

 

「有休をとってるので大丈夫です」

 

 なら大丈夫かぁ。多分、異変に気づいて家族やメイド長が突撃してくると思うけど。

 

 とりあえず、ものは試しとイケイケ系を演じてみたらマールさんが病院送りになっちゃったから他の人は大丈夫なのかとメイドさんにも試してみたけど、大丈夫そう。

 

「お坊ちゃまもそういう面があったんですね…………」

 

「演じてみただけだよ」

 

「とても名優でしたよ」

 

「お世辞でも嬉しいよ」

 

 そう言ったら何故か苦笑いされた。

 

 演技力だってまだまだなのに、それに今回は台詞を全部入れるつもりだから練習だって足りていない。

 

 そういった褒められ方もちょっと気になるお年頃というやつだ。

 

 そして、そのまま僕は昨夜の続きをリクエスト通りするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね、それで私に話が回ってきたと」

 

 ヤノ・マルリータは脚本家である。

 

 そこそこ多くの脚本を執筆してはドラマやアニメにされてヒット作になる程の才を持つ女である。

 

 ここ最近は特に男性が絡む話を作っており、つい最近放送されたドラマにも男性が登場するなど活躍していた。

 

「ケイ・カンパニーは大手よ。スポンサーとしてついたらしばらく資金は気にしなくて済むわよ」

 

「絞れるだけ絞る、ね。はいはい、いつもの事よ」

 

 マネージャーと次の仕事をする彼女は何処と無くつまらなさを感じていた。

 

 脚本家として男性を書く以上、男性のことを知らなくてはならない。よって大金叩いて男を買い取材をしたことがある。

 

 誰も彼も陰鬱だった。

 

 ヤノがかつて理想として妄想していた男性像とは程遠く、どこまでも社交辞令的であり、抱いた時の反応も仕事のように淡白だった。

 

 何人もそうやって繰り返すうちに、理想は理想として現実を切り離したリアリティのない男性を脚本に写すことしか出来なかった。

 

 知らないものは作れない、未知を切り開けるほど運に恵まれてもない。

 

 ヤケになって書いたものが売れるのは脚本家、作家としてどうかと思う部分はある。

 

 だからといって手放せる訳がないが。

 

「ノベルゲームの脚本の補助をして欲しいですって?メインは別の人が?」

 

「そうみたい。ただ、その人の事は仕事を受けない限り教えてくれないみたいなのよ」

 

「怪しいわね。けれどケイ・カンパニーがそこまで厳重に情報を遮断しようとするなら変わり種か、相当な人物かもしれないわね」

 

「もしかしたら身内のお嬢だったり?」

 

「その場合は容赦なく添削していくわ」

 

 腐り気味な彼女とてプライドはある。

 

 気に入らない脚本を作るくらいなら違約金を払ってでも取りやめる。

 

「まあ、大仕事には変わりないわ。受ける方向でいい?」

 

「ええ、そうして頂戴。あと正体不明の脚本家さんからのサンプルを送って貰うのも忘れないように」

 

 こうしてヤノ・マルリータはケイ・カンパニー関連会社が作るゲームプロジェクトに参加することが決まった。

 

 そして細かい取り決めを定めた数日後に7割がた完成されたメインの脚本が届けられたのだが…………

 

「…………嘘でしょ」

 

 全てにおいて異質だった。

 

 何をどうすればこのような状況になるか、どのような思考回路をしたら独特すぎる話の展開に持っていけるのか。

 

 内容としては滲み出るような悪意を感じるのはともかく、ヤノの人生で見た事がないようなシチュエーションが散りばめてある。

 

 何よりも、全く知らない男性像がそこに書かれてある。

 

「…………簡単に明かせないのも納得だわ」

 

 確かに興奮する。その背景の考察を放棄するという前提を置かなければならないが、これで滾らない女性はかなり少ないだろう。

 

「…………ちょっとトイレ」

 

 我慢できない衝動に、届いた脚本を持ちながら彼女は個室トイレへと駆け込む。

 

 なぜならここは彼女の事務所。はしたない姿を堂々と晒す事はできないのだから。

 




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