脚本の会議を何度も行い、乙女ゲーにおける物語は殆ど完成することができた。
あとはシステム面を組んで声を入れるだけ、何だけど…………
「スウェン、流石に人を使うことを考えてくれって」
「私もそう思いますわ。せめて動作とかは他の人材に作らせた方が良いですわ」
「どう見ても過労になる、コネもお姉ちゃんたちが何とかするから」
「やだ、僕がやる!やりたいようにやるんだ!」
「要望通りに作れるプロはいますわ!だから、今日はパソコンを没収ですわよ!」
男女比が偏るということは、生物学的にもパワーバランスが崩れるという事。
男は女に弱い、物理的に弱いため抱き上げる程度なんてことない。
それに、ケイ家は何かと暴力で解決することが多いから見た目に反して全員武闘派、つまり普通に力強い。
パソコンに縋りつこうとする僕を軽々と担ぎ上げ、そのまま僕の部屋から遠ざかっていく。
どうして!僕のやりがい!生きる意味の一つ!
声の仕事を軽んじてる訳じゃないけどメインではあるんだ!
「まだっ、まだやる事があるんだ!動画配信してたら反応するようにしないと!裏でチート使おうとしたら強制的にバグらせるコード入れなきゃいけないんだ!」
「それで何日も悩んで籠ってるじゃん。たまにはお姉ちゃんと遊ぼうよ」
「うぐ、ごごごごご…………」
「聞いた事ない声出してるぜ…………」
声変わりして上手く地の底から響くような悪魔の声を初めて出すが、ちょっと引かれるだけで何も変わらない。
確かにさ?最近は忙しいから篭りっきりだよ?
でも毎晩寝ろと言わんばかりに代わる代わるみんなが来て色々やって泣かしてくるけどさぁ。
たまに日中の運動をすっぽかしちゃうことあるけどまだ若いから平気だもん!
まだ無茶をしても死なない!生きる!ゲームを作るまで死ねないんだ!
「ぬ、抜けられない…………!」
「そう簡単に逃げられると思いませんことよ」
「そもそも館に監視カメラたくさんあるからどこに行っても見つかるよ」
「まぁじぃ…………?」
確かに結構監視カメラ見るとは思ったけど、色々と対策バッチリだね、うん。
「それにさ、何を見たらあんなシナリオ思いつくのか分からないよ」
「しばらくホラー映画も禁止だからな」
「えーーーーーーーーーーーーーっ!」
参考資料を見るのも禁止されてしまった。
だけど期間は聞いてないし、そもそもこっそり確認したらいい。
何だったらスマホとかの端末で思いついたコードを入れて後で写すのもできる。
抜け穴だってまだある筈だ、僕は諦めないぞ…………!
「なんでこう、ゲーム狂いになってしまったんだろうね」
「前から天才なのは知ってましたけれど、執着が強いのも理解はできますわ」
「シナリオは私たちも読んだけど、あれヤバいって。どんな発想したら演出込みで出来るんだ?」
なんか割と散々な言われ方してない?泣くよ?声変わり終わった13歳児泣いちゃうよ?
「どうせ声を使うならカラオケでもしようぜ。スウェンはキャラソンとか好きだろ?」
「好き!」
「決まりですわ。そこのメイド、カラオケセットを持ってきなさい。もちろん最新のものをですわ」
家族4人、母さん抜きではあるが子作り以外で集まって遊ぶのは久しぶりな気がした。
僕は引きこもりだし、ウェイル姉さんとロウル姉さんは仕事、ルゥ姉さんは大学があるから日中に集まるのは中々ない。
カラオケセットだって割と最近に購入したのに倉庫の隅に置かれてるような物だった。
前にライブをした際に母さんが購入した物だ。それの金額はあまり見たくないが、とにかく高い。
まあいいんじゃないかな、と思う。それだけのものを買って使わないより家族団欒のために使おうよ。
今発表されている大体の曲は入ってることだし、僕も練習がてら張り切って歌おう。
何せ、今回のゲームは乙女ゲー、フルボイスでやろうとしているから喉を痛めないようにしつつ、いつでも声を変えられるようにしておかないと。
となると、デュエットとか1人でやるみたいなのがいいよね。
今回使ってる乙女ゲーも、もしかしたらキャラソン作るかも知れないし練習して損はない。
何事もチャレンジだ、前へ進め進め。
「あ、スウェンお坊ちゃまとお嬢様方」
「…………最近思ってたけど雇われてる癖に私たち一緒くたにされてるよね」
「まあ、みんなスウェンが大好きだからな」
「スウェンが嫌いと言うなら居なくなってますわよ」
どこに?と何故かウェイル姉さんに聞けなかった。
わずか一瞬の出来事のはずなのに、なんだこの寒気は。
ちょっとふるえたくらいではびくともしない姉さん達だが、ふとぴたりと足が止まる。
誰が来たのか顔を上げて見ると、母さんとメイド長、その後ろに何人かメイドを引き連れていた。
何で大所帯で引き連れているのか、とはあまり疑問に思わない。
母さんは家主であり雇い主だ。部下を引き連れるという事はよくある事である。
ただ、妙に浮かれているような気がする。どことなく幸せそうなオーラを纏っているというか、ほやほやしているというか。
そんな前方から来る親を不審に思ったのか姉さんたちが口を開く。
「お母様?どうしたの?」
「なんか気色悪いな、何人引き連れてどうするつもりだ?」
ニコニコした母さんは僕を見た。
「増えるわよ」
「何が?新しく人を雇うの?」
主語がない言葉にルゥ姉さんが改めて尋ねる。
増える、という言葉に妙な心当たりがある。
だって、人が増えるのはただ外から人を招くだけじゃない。
「4人、現時点で妊娠してることが分かったわ」
後ろで控えていた4人のメイドさんは頬を赤めて熱っぽく僕を見つめていた。
13歳児、パパになる。
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