妊娠、雄と雌が交わり新たな生命を作る神秘の一種。
命が繁栄する限り約束された行為である。
その負担は主に女性にのしかかることは想像に難くない。
だが、男女比が異様に傾いた世界では僕が知ってる世界よりも遥かに手厚い手当がある。
女性なら新たな命を産む未来のために、男性なら手厚く保護して世界に種をばら撒くために。
それくらい手厚い福祉があるからこそ人口が40億まで達成できたのかもしれない。
まあ、それはさておき…………
「妊娠かぁ、先越されちゃったな」
「ルゥ、まだ大学生なんだから後に支障が出ますわよ」
「ふぅん、ちょっといいな。親になるって感覚はどうなんだ?」
この姉達、全く気にしていない。自分の弟が一回り年上を妊娠させておいて何も感じていないくらいだ。
むしろ羨ましそうにしている…………一応血の繋がった家族ではあるんだけど?
そう言いたかったがぐっと飲む。
古来と言うくらい昔は今よりも出生率が悪いため手当たり次第に孕ませていたというのをあらかじめ調べていた。
手当たり次第の範囲は、もちろん姉妹だけでなく母親、果ては祖母まで手を出していたという。
それくらい必死だったのかもしれない。僕を転生させてくれた神様もどことなく切羽詰まっていた気もする。
うーん、流石に時間が経ちすぎて細かいところは思い出せない。
とにかく、僕がこうしてこの世界に来たのはそういったのを含めて第二の人生を歩んでほしかったのかもしれない。
「そういうことですので、彼女達はしばらく産休に入ります」
「坊ちゃまに会えなくなるのが寂しいです…………」
「あ、でも次会う時はパパですね」
「奥様もついに祖母ですね」
「貴女、後で話があるわ」
しれっと図に乗ってるメイドを詰める用意をする母さん。間違いではないけど相手が悪いよ。
とりあえず生きて帰る事はできるだろうけど、僕の子がお腹にいるんだから強く言うのはやめてね?
「新しく保育所を建てるべきね。今年中には建てるよう手配するわ」
「仕事が早すぎない?」
「スウェンの子だもの。それに孫でもあるんだから当然よ」
「いつか孫兼娘もしくは息子も出来ますからね」
「ちょっと業が深くない?」
近親相姦しても問題ないと何故か歴史が立証している世界だからあり得る話だから、普通に怖い。
業が深い発言にはみんな首を傾げてるし、僕がおかしいのか?いや、もう母さんと姉さん達と色んな意味で寝てる時点で何言えないけど!
「ところで、貴女達はスウェンを担いでどこに行くつもり?」
「あん?ああ、また引きこもろうとしてたからパソコンから引き剥がしてカラオケでもしようってしてたんだよ」
「あら、健康的でいいわね」
「室内なのに健康的?」
「引きこもりが不健康なのよ、スウェン」
「スウェンは何も言う権利がないと思うぞ」
なんだよなんだ、みんな僕を責めて!
ただ10時間パソコンの前で座ってアテレコ練習したりカタカタと入力するのが不健康だってのか!?
…………不健康だ、うん。
流石に反省はしないといけない。早死にするには早すぎるから、まだまだ駆け足で人生走らないと。
「お腹の子にも音楽を聞かせてあげた方がよいでしょうか?」
「まだまだ胎児ですが…………」
「ぜひパパの美声を聞かせてあげてください」
「どうか、私達にも聞かせてください」
「…………しょうがないにゃあ」
「あ、いま猫の言葉だった」
こうせがまれては断れない。僕はゲーム関連以外では流されやすいのだ。
今日はもうゲームつくりはさせてくれないだろうし、ストレス解消の代わりにめっちゃ歌おう。
お腹の子にも響くような歌を、これから生まれてくることを祈って。
〜●〜●〜●〜●〜
こうしてケイ・ゲームズという会社の裏の権限を与えられた事によって本来かかるはずの時間を大幅に短縮する事ができ、僕の負担もそこそこ減った。
まあ、一番大変なのは録音だったけど。
何せ4人の声を取るのだ、やり取りも全て一人芝居で一文ずつ声を当てていく必要があった。
その度に声を変えてやっていたのだが、これがもうすごい騒動になった。
ダイジェストにはなるが、ゲーム一本、それも売りに出すための製品は決して手を抜くことができないためプロの監修を雇って行われた。
その監修さんもまさか13歳の子供が声を当てるとは思いもしなかったようで滅茶苦茶驚いていた。それはもう、声にならない声をあげていた。
気を取り直して音声の収録だが、内容が内容なだけにとんでもなく冷えた空気になっていた。
何人か吐いたし、何人か失神して救急車を呼んだ。
幸いなことにケイ家の敷地内に作ったスタジオで収録したから外に事情は漏れる事はなかった。
こうしてPVからプリップリで若い男達の声と自己紹介を載せた動画をアップロードする事はできた。
後は発売までデバッグ作業をしてバグがないか確認だ。
もう念入りにデバッグ作業をしてる。僕だけじゃなくてケイ・ゲームズの人達が狂ったようにシナリオを回している。
目が死んでるのをリモート越しで見たんだけど『あれはあれで大丈夫です…………ハイ…………』とリンタッタさんが言っていたので「無理はしないでね」とだけは言っておいた。
それで死んだ目のまま余計に心意気だけが燃え上がって頭を抱えていたのは見ないふりをした。
そんなトラブルがあったが、完成までもう少し。後3ヶ月で発売だ。
母さんや姉さん達が根回しや会議をした結果、販売はダウンロードのみということになった。
ちょっと特殊だし、店頭で販売したら暴動が起きかねないという理由だ。
物を売るレベルじゃないほどになるというのは僕にも分かるので僕も承諾した。
では、発売まで待つとしよう。
ケイ・ゲームズwithスリップ工房提供ゲーム。
『デッド・セレクション〜愛するのは君だけだ〜』
感想をいただけると励みになります。