あべこべ世界でゲームを作ろう!   作:蓮太郎

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30.初手レア演出は奇跡

 

 今日は『デッド・セレクション~愛するのは君だけだ~』の配信日。

 

 大抵なら深夜12時に配信されるものだが、事前予告から昼の12時に配信されることになった。

 

 何故かはわからない、だが夜にやるようなものではないと薄々察していた。

 

 それでも止めることは出来ない。購入者の一人である女性はパソコンの前で全裸待機していた。

 

「へへへ、一番乗りは私になる…………はず」

 

 新しく購入してスペックを上げたパソコンには予約でインストールしていたゲームが正式配信するまでのこり1分。

 

 期待で胸が高まり、どこの誰が作ったかを忘れて時が来るまで待つ。

 

 そして…………

 

「キタキタキタキタ!」

 

 丁度12時00分00秒、ゲーム配信開始と同時に即座に起動した。

 

 一体なにが飛び出してくるのか、どのような声で喋ってくれるのか、私にどのような表情を向けてくれるのか。

 

 期待していた、ただただ期待していた。

 

 すっかり失念していたことを忘れて。

 

『ミツケタ』

 

「へ?」

 

 真っ黒の画面の真ん中に赤文字が突然表示される。

 

 本来なら真っ白な画面から企業ロゴが表示されてオープニング、タイトル画面へ移行するのが定石である。

 

 意味不明な画面を見せつけられた女性は困惑した。

 

 その困惑は一瞬で終わる。

 

 何故なら…………

 

 

『ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタ』

 

 

「ぎゃあああああああああああああああっ!?」

 

 ケキャキャキャキャと奇怪な笑い声と共にメインヒロインである筈のキューリューが辛うじて人の形を保った物の怪の如く赤文字に紛れて振動しながら画面へと躍り出た。

 

 それはもう、完全に不意打ちであり画面の前に居た女性は椅子から転げ落ちてひっくり返った。

 

 勢いよく転げ落ちたため腰を強く打ち付けて悶える羽目になる。

 

「あが、いだだだ…………」

 

 全裸でのたうち回る彼女はしばらく恐怖と痛みで呻き声を出しながら冷たい床上を転がる。

 

 そして落ち着いてきたところで冷静になり、仰向けになった。

 

「そうだった…………忘れてた…………」

 

 冷静になったことで自分が全裸で床上に転がる情けない女であることを自覚してしまう。

 

「『スリップ工房』が優しい物語を作るわけないじゃん…………」

 

 しばらくむせび泣いた。世の中の残酷さに打ちひしがれるように…………

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「100万!200万!同時接続数がまだ上昇してますわよ!?」

 

「時間経過と共に比例して…………あ、スチール(ダウンロードゲーム販売サイト)がクラッシュした」

 

「恐ろしい…………これが弟の力」

 

 パソコンの前でキャッキャしてるのが僕の姉さん達だ。

 

 この日の為にわざわざ有休をとった、と言っているが世間はもうびっくりするくらい有給をとる人が多くて会社が回らないって嘆いていた。

 

 その自分もちゃっかり有給を取ってるんだから何も言えないと思うけど。

 

 僕は毎日が休みみたいなものだから好きなこと出来ちゃう。だって大富豪の息子だから。

 

 勝ち組とはいえ趣味でお金を稼げる分には貢献してるのでニートではない…………はず。

 

「1000万!1500万!ひぃっ、恐ろしいほどに止まりませんわ!?」

 

「…………これは舐めてたかもな。というか姉さん何で見れてんだよ、スチールがクラッシュするし滅茶苦茶重くなって」

 

「あっ、最近発売された最新モデルじゃん。いいな、いつゲットしたんだろ」

 

「キリシア株式会社と、ちょっと取引しましたの。その伝手でちょっと、ね」

 

「ズルだ!ウェイル姉さんズルしてる!」

 

「既に発売されてるものですもの、即日購入できるよう手配しただけでうじうじ言いませんことよ?」

 

「ちっ、見ろよスウェン。上姉が大人げなくいじめてくるよ、酷いよなぁ?」

 

 しれッと自慢するウェイル姉さんへの当てつけかの如くロウル姉さんが僕を抱きしめる。

 

 ちゃっかり胸を顔に押し付けて色々とアピールしてくるなぁ。

 

 昨日みんなに内緒で抱いたからかな?メイドさんの何人かにはバレてるのは知ってるけど黙っておくのが優しさってものでしょ。

 

 SNSは…………思ったより沈黙してるな。

 

『#デトセレ』で感想を投稿してねって『スリップ工房』と『デッド・セレクション』の公式SNSで発信してるんだけど、みんなネタバレを載せたくないのか投稿が少ない。

 

 それだけ集中してるってことで片付けておこう。横で『3000万!?』と悲鳴を上げてるウェイル姉さんは無視しておく、

 

 …………いや3000万はやり過ぎでしょ。総人口約40億だってのに、約1%の人間がこれを今プレイしてる?

 

 それほど注目されてるのは嬉しいけど、どれほどの金が動くのかが気になってしまう。

 

 前世は弱小企業でゲーム作って、初めて公式の製品を売り出す前に死んじゃったから、どうなったのかも知らない。

 

 心残りはそれくらいだけど、今を見据えないと。

 

「それだけの数は世界中でやってるってことだよね」

 

「翻訳も公式の言語設定で出来るからね。翻訳家の人泣いていたよ」

 

「それは、ごめんなさい」

 

 結構な文章量とホラー表現が難しかったもんね、僕は母国語でしか喋らないから何重にもとるということは無かったけど、苦労は掛けるもんだからね。

 

 お?SNSで新しい投稿があったぞ?

 

『人類には早かった #デトセレ』『これ乙女ゲーじゃない、ホラーだ#デトセレ』『OPでヤバいことになって心臓止まった#デトセレ』

 

 …………よしよし、効果は上々。楽しんでくれて何よりだ。

 

 もっと楽しんでくれ、僕の大事な『デッド・セレクション~愛するのは君だけだ~』を。

 

 




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