あべこべ世界でゲームを作ろう!   作:蓮太郎

33 / 60
33.依存という呪い

 

 1ヶ月、『デッド・セレクション〜愛するのは君だけだ〜』が発売され、それだけの月日が経った。

 

 それなのに全員攻略したトロフィーがほとんど増えていない。

 

「なんでだー!?」

 

 自室で1人、ベッドに飛び込んでバタバタしていた。

 

 キューリューを一度消した後に他ヒロインを攻略したら貰える実績がほとんど達成されておらず、ある場面から一向に進んでいないというのが実績の達成率から分かる。

 

 キューリューを一度データ上から削除しないといけないところでみんな止めてる。そしてそこから一切動かさずにつけっぱなしにしてる。

 

 そのせいか平均プレイ時間がおかしな事になってる。みんなパソコンを24時間つけっぱなしになってるのかな?

 

 これ元々想定してるクリア時間は7〜8時間程度くらいのボリュームなんだけど200時間超えてるんだけど?

 

 間違いなくつけっぱなしにしてる、電気代大丈夫?

 

 くっ、まさかここまでキューリューの人気が出るとは思わなかった!メインヒロインだしギミックのほとんどに関わるから分かってはいたけど!

 

 ネット上には『キューリュー君と何した♡』みたいな投稿とキューリューが学校椅子に座ってる画面と目の前に何か置かれてる画像がたくさん投稿されている。

 

 まるで皆キューリューの恋人気取りだ。ゲームやキャラクターを作る者として合ってるけど入れ込まれすぎて精神状態大丈夫かと言いたくなってしまう。

 

 壊してしまったのは僕だけど。

 

 こわ…………ただちょっとだけ権限を手に入れることができたヤンデレヤンキーなのに…………

 

 なんかSNS見てたら6画面で先ほどの画面の状態で置いている人もいる…………こわ…………

 

 ちょっと舐めてたかもしれない。まさか、ここまでキューリューしか攻略されない(できてないが)とは。

 

 くっ、めっちゃプレイされてる点では嬉しいんだけど、製作者としてはクリアはしてほしい。

 

 一応0.1%以下とはいえクリアしてる人はいるんだ。だったらあの情報が出回っててもおかしくないんだけど、今のところ出てないね。

 

 チート使おうとしてフラグ踏まずにエンディングに行ったら強制的に怪異化キューリューに襲われてリセットされるから正規の手順で攻略する人が、できる人が少ないんだ。

 

 はあ、仕方ない。流石にここまで膠着状態なら僕が動くしかない。

 

 事前に打ち合わせもして許可は得ている。

 

 これを投げたら…………色んな業界に迷惑をかけるのは分かってるけど、利益の為だ。

 

 嘘、ごめん、実際は承認欲求がメインだ。

 

 本当にどうしようもない、13歳で父親になるし、家族と子作りもするどうしようもない人間だ。

 

 もうやるだけのことはやってしまった。突き進んでやる!

 

 『スリップ工房』のSNSに、僕は一つの投稿を飛ばした。

 

 先に言っておきます、音楽業界の方申し訳ありません…………

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

「おはようキューリュー君♡」

 

『飯は食ってるか?俺ばっかり見つめて倒れたりするなよ?』

 

「うんうん、食べる食べる〜♡」

 

 彼女は名前を聞くほどでもない、この世界ではどこにでもいるタイプの女性である。

 

 ただ単に男に直接会うこともなく、人工授精により子を授かり一生を終えるだけの人生。

 

 そう思っていた彼女には一つのゲームがあった。

 

 『デッド・セレクション〜愛してるのは君だけだ〜』、ケイ・カンパニーと『スリップ工房』が手がけた乙女ゲーを自称するホラゲーである。

 

 最初ははしゃぎながらプレイしていたが、徐々に不穏になっていき二周目でロイを攻略しようとしたらフラグを踏みまくっていたようでキューリューがコマンドの力を得てゲームに居座ってしまったのだ。

 

 もちろん全てプログラム上で行われている想定内の事である。別に幽霊が宿ったりキャラクターが自我を持った訳でもない。

 

 公式からも多く報告が上がっているため明言している。

 

 しかし、一対一の対面へ持ち込んだキューリューの場面から先に進んだ者は少ない。

 

 むしろこれを好機として擬似恋人として利用し始めたのだ。

 

 地味にボイスも沢山あるため飽きることはなく、毎日声をかけて返事をもらうみたいな生活を送っている。

 

「今日はアレをアレしてアレしよっかな」

 

『ん?質問?何でヤンキーなったか?まあ、色々あったんだよ。この記憶も作られたものかもしれないけどな』

 

「そんな事ないよ〜。私だけのキューリュー君だもの」

 

 最悪、このまま子を産んだ際に画面の向こうにいる彼をパパとして認知させようとするかもしれない。

 

 狂気に陥りかけているような彼女のスマホに一つの通知が入る。

 

 仕事や友人の連絡ではなく、SNSでフォローしている『スリップ工房』が発信した時の通知だ。

 

 食事中ながら瞬時に該当するSNSを開く。

 

「……………………え?」

 

 そこにはこう書かれてあった。

 

『ここだけの話、真エンディングはキューリュー君が歌います。皆の絆を汲み上げた人たちは見たでしょうか?』

 

 キューリューが歌う、つまりキャラソンがある。

 

 確かに今画面にいるキューリューはセリフは喋るが歌うことはない。それも一方的に、画面の前の人間を逃さないために、万が一自殺もさせないために生きるための言葉をかけてくれる。

 

 だが、キャラソンを聞くためには既に攻略として出回っている『キューリューを消す』行為をしなければならない。

 

「…………………………………………」

 

『寝る時は寝ろよ?俺がしっかり、見てやるからな』

 

「…………どうしよう」

 

 彼女に、いや、この投稿を見たプレイヤーに心の迷いが生じる。

 

 確かにキューリューしか攻略していない(できてません)し、他のキャラ攻略だって気になる。

 

 しかし最愛のキューリューを消さなければ歌が聞けないという悩みができる。

 

 この問題を解決できるのは自分しかいない。

 

 そう思い込んでしまう彼女達は何日も、何週間も悩み続ける。

 

 既に公式がアナウンスしている『キューリューを消しても状態をリセットさせる措置がある』ということを忘れて。

 

 なお、この正解はあえて心を鬼にして一度消し、全部攻略してからリセット措置を行い進行状況を戻す、である。

 

 それに気づくのは彼女達次第である。

 




感想を頂けると励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。