皆さんに感謝永遠に。
「スウェン、ごめんなさいね、これだけは言っておかなくちゃいけないの」
母さんに呼び出されて食卓につく。食卓といっても今はご飯の時間じゃないから実質会議室みたいなものだ。
ほら、母さんは大富豪だから家も部屋も全部デカくて代用できちゃうやつ。そういう部屋が沢山ある。
「もう2ヶ月になるわよね、あのゲームが販売されてから」
「やっと達成率が0.2%になったよ!」
「…………いえ、結局大多数がクリアしてないという事じゃないかしら?」
母さんからの指摘にグサッと胸に何かが刺さる音がした、気がした。
そうだけどさ?クリアして欲しいという願いもあるけど『My Road(動画投稿サイト)』にエンディングのキャラソン乗っちゃったし、対応しようとした時点で拡散されちゃったから収集つかなくなっちゃってクリアへの探究心が薄まってしまったのが原因だから…………
訴訟はしました。あといくらか経ったら正式に配信する予定であったため法務部が大騒ぎしてる。
その法務部も違法に動画投稿されてしまったキャラソンを持ってると自白は取ったけど、もう仕方のない事だ。
「まあ、その話は一回置いておきましょう。それよりも…………」
母さんが何か言おうとしているが、どう言おうか悩んでるみたいで一度言葉を切ってからはなかなか口に出ない。
とりあえず待つ。身長も伸びてきても未だに椅子が高く感じられるため、ギリギリ地面につく程度に足をプラプラさせる。
何でうちにある物は全部高さがあるんだ?マールさんが連れてきた男の人たちも今思えば椅子の高さについていけてなかったような気がするぞ。
「今回は明らかにやり過ぎたわね」
「…………そうかな」
「ええ、間違いなく」
『デッド・セレクション~愛するのは君だけだ~』は色々と影響を及ぼし過ぎた。
ゲームに取り込まれる人は多く、生活の一部となってしまっている。プレイしている人のブログやSNSの反応を見たら、購入者の殆どがキューリューと共に生活してると言って過言ではない。
僕が演じているとはいえ、画面外に居るプレイヤーに語り掛けてくる男が居ただろうか?
意外そうではあるが、この世界のネット上でそう言ったゲームは存在しなかった。
そもそも乙女ゲー自体があまり出来が良くないのだ、本格的にしてはフィクションが大盛となっているこれがリアルに侵食するくらいには。
おかしいな、割と怪異多めに作ってあるピーキーな作品であることは自覚してるよ?
劇物になるとは予想はしていたけど、確信犯ではあったけどやりたいことはやり切ったし…………
「スウェン、まさかとは思うけど次のものを作っていたりしないでしょうね?」
「あれからまだ何も作ってないよ」
「『まだ』、ね。反省自体は無さそう…………ええ、私が叱るのは無理、ええ、無理ね」
何か小さい声で呟いているが、対面で話をしているため聞き取れなかった。
流石に話すときは膝の上で、とかではない。真面目な話はこうして話す。
でないと色々やっちゃうからだ。色々は色々だ、うん。
「だけど、これは会社としてやらないといけない事なの…………よし!」
母さんが自分に言い聞かせるようにして呟き、自身に活を入れた。
一体なにを言うんだろう?それほどまで覚悟して言うことが気になって仕方ない。
「スウェン、これから作る作品は検閲していくわ」
「………………………………検閲?」
「今回は私達も色々と見誤っていたと言わざるを得ないわ。あれは事前に知っていたとしても劇物でしかなかった、それがケイ・カンパニーとしての見解なの」
「………………………………ウソォ」
「本当よ」
母さんの発言に若干のめまいを感じた。
僕が僕であるためにゲームを作る。それがどのような物であろうと作っている。
『悪霊の館』や『めざましの刻』、『デッド・セレクション(略)』ははっきり言って完全に自分の趣味で作ってしまった。
この世界に滅多に露出しない男性像を背負って。
「内容も恐ろしいものばかり、男性も妙に女性に突き刺さるような癖をして歪みまくらせる。この件のクレームが多く寄せられて今もコールセンターがパンクしそうになってるのよ」
「そ、そうなんだ…………」
「他にも『スリップ工房』についての問い合わせも数多に寄せられていて正体をはぐらかすのも苦労してるのよ?」
「あ、あちゃー…………」
こればかりは難しい問題だ。僕が前の世界を元に作ったものがナイフよりも鋭く突き刺さってしまっており、その制作者を世は探している。
でも僕のところはこれが普通だったし耐性が無い方が悪いんじゃない?
え?常識が違う?郷に入っては郷に従え?
それは…………言い訳のしようがないほどそうとしか言えない。
「オリジナルを作る活動は一旦停止よ」
「そ、そんな!僕は『スリップ工房』だよ!」
「その『スリップ工房』が、たった3年程度でこれほどの影響を無秩序に与えてるのよ」
「ぐぐぐぐぐぐぐぐ…………」
「代わりと言っては何だけれど、ケイ・ゲームズから発信している既存のゲームを弄る権利を与えるわ」
「わーい!」
「チョロすぎ…………?」
オリジナルはしばらく禁止になるとはいえ、既存のゲーム開発を進める権利を貰えたのは奇跡だった。
僕がこの世界のゲームを学ぶ時点で、僕がよく遊んだのはケイ・カンパニーのゲームだ。
伸び代はあっても意欲が他よりも薄く感じられて微妙なラインで停滞しているように感じ取れてしまっていた。
そこに手を加えたいと思っても、あの時はまだ一個人でしかなかった。
だが今は違う!
「本当に反省して欲しいところだけど…………」
完全オリジナルはしばらくお休みだけど修行として既存の作品を弄って人気作にするのも頑張るぞ!
と、こんなに調子に乗っていた。
この調子乗りは次の日になぜか意気消沈して当分大人しくなってしまうのである。
それは何故か、このお叱りと言えないお叱りを受けた僕の夢枕にある方が現れたからであった…………
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